第3回高専GIRLS SDGs×Technology Contest(高専GCON2024) 読み込まれました

【イベントレポート】 東京水道本社で豊田高専チームが受賞プレゼンを披露

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     2024で豊田工業高等専門学校(以下豊田高専)の早坂・大畑Labが、協賛企業・東京水道株式会社の賞に輝きました。
    その副賞として東京水道の本社および水道施設の見学会が開催されました。

     水道施設の見学を終え、新宿駅近くの東京水道本社に到着した豊田高専生9名と先生2名に、東京水道の谷口博管路整備部長が会社説明を始めます。

     水道事業は市町村運営が一般的です。しかし東京都は、一部の市を除いて都が一元管理しているのが特徴です(23区および多摩26市町)。給水区域面積1,239km₂・給水人口13,755千人・1日の平均配水量417万m₃・配水管延長27,520kmと、国内最大の事業規模を誇ります。

     「東京都水道局と当社の役割分担について気になった人もいるかもしれません」と谷口部長が投げかけました。水道局と東京水道は、グループとして水道事業を担っているとのこと。
    水道局は、水道料金の設定や施設整備計画の策定など事業の根幹に関わる業務、東京水道は、管路更新に関わる工事監督や浄水場の運転管理などの現場業務を担当しています。

     東京水道の現場業務として具体的には、水道水を安定的に供給するため、水道管の維持管理を行うとともに、震災時の断水被害を防ぐため、地震に強い管(耐震継手管)への取り替えを行っています。現在約50%の耐震化率は、令和12年度末には61%となるよう更新工事を進めています。

     今後2030年頃までに料金関連やお客さま窓口などの営業系業務、2040年頃までに工事監督業務などの技術系の仕事が水道局から東京水道に移転される予定とのこと。「東京水道グループという一体的事業運営体制で、業務の効率化や質の向上を図っていきます」と谷口部長は強調しました。

     耐震継手管の模型などを目の前に並べた状態で、谷口部長の説明は進みます。地震による地盤移動があっても、管が伸び縮みして抜けない仕組みにメンバーは興味津々です。耐震化率50%の現状に至るまでに何年ほどかかったのか、耐震継手はいつ頃から使われているのかなどの質問がメンバーから飛び出しました。

     続いて、豊田高専早坂・大畑Labのメンバーによる、GCON2024で東京水道賞に輝いた「DAMONDE」のプレゼンテーションが東京水道の社員に披露されました。

     DAMONDEは、構造物の3Dスキャンデータとコンクリート画像を使った深層学習によってCO₂(二酸化炭素)吸収量を推定するWebアプリケーションです。
    3Dスキャンでの点群データで算出した構造物全体の表面積と、コンクリートの表面画像や施工年度などのデータを掛け合わせ、CO₂吸収量の推定や推移のグラフ化、金銭的価値の算出を可能にします。

    「私たちは、コンクリートに新たな価値を与えようと思います」とメンバーの一人は力強く語り、DAMONDEで測定したCO₂吸収量を「カーボンクレジット」の認証対象にするのが目標だと説明しました。カーボンクレジットとは、政府が推進する、CO₂の排出権を企業間で売買できる仕組みです。

     日本には117億m₃のコンクリートストックがあるといわれています。コンクリートは1m₃あたり最大200kgのCO₂を吸収するため、日本には最大23.4億万tのCO₂を吸収できる量のコンクリートストックがあるということになります。

     「これは日本の森林が吸収するのに46年かかる量に相当します。コンクリートが吸収する膨大なCO₂量が認証されれば、23.4京円分に相当するカーボンクレジットが発行可能です」と熱弁しました。

     建物を所有する企業にも恩恵があるので、長期的な維持管理を促せるとのこと。コンクリートがカーボンクレジットの認証対象になり、日本を資源大国「ホワイトカーボン大国」にするのが彼らの最終的な目標です。
    コンテストへの出場や技術展への出展などの段階をふみながら、社会実装を目指して自治体や政府の協力を取り付けるべく、地元・豊田市の市長(太田稔彦さん)や議員(元環境副大臣・八木哲也さん)を訪問し、有用性を評価する言葉を得ています。次は経済産業省の協力を得てステップアップしたいと語りました。

     プレゼンテーションが終わると、質疑応答が始まりました。早速、東京水道の社員数名が手を挙げます。「コンクリートの老朽化の度合いや中の空気の有無もわかるのかなと思っています。すごい研究をされていますね」との感想とともに、建物の体積の算出をAIにどのようにさせているのか、中に入っている鉄筋などは控除して計算しているのかとの質問が出ました。

     「まず建物のコンクリートのうち、むき出しで空気に触れていてCO₂を吸収する部分の表面積をセンサーで算出します。あわせて、どの程度の年月をかけて表面から何cmまでCO₂を吸収しているか(炭酸化深さ)をAIで算出し、表面積と炭酸化深さを掛け合わせれば体積がわかる計算です」と早坂・大畑Labのメンバー。そこから1m₃あたりの吸収量を掛け合わせて、全体を計算しているといいます。

     鉄筋については、コンクリートの中でさびる・ひび割れが生じる点がデメリットと指摘されてきたと説明しました。その上で、CO₂を吸収して炭酸化すると、コンクリートは強度が上がる点を指摘します。また今後はエポキシ樹脂による塗装でさびを防ぐなど、デメリットを補えるアプローチを考えていきたいと丁寧に回答しました。

     続いての質問では、コンクリートが吸収したCO₂の量を色で判別できることは最初からわかっていたのか、それとも試行錯誤をしてたどり着いたのかをたずねられました。

     「CO₂の吸収量を左右するのは、コンクリートを作るときの水とセメントの比率です」と着想のポイントから、メンバーは説明を始めます。比率が違えば、生成される成分が変わり、CO₂の吸収量も変わってきます。
    水の加減による色の違いは、論文で発表されているのはもちろん、現場で働く人であればわかるレベルだそう。「現場の職人の感覚から着想を得てまとめていきました」と結論を述べました。

     事前に共有されている質問ではないにも関らず、メンバーはよどみなく次々と答えていきます。プレゼンテーションで説明をするだけでなく、日頃の研究や学習から多様な知識を身に付けているのが感じ取れるやりとりでした。社員からは、「論文をぜひ読んでみたい」という声があがり、内容に対する期待が感じられました。

    だ=DAC(Direct Air Capture)を利用したコンクリートで
    もん=問題解決をすることで
    で=できる脱炭素社会

     発表後で次の準備が進むわずかな時間も、東京水道社員の話に関心を寄せるメンバー。その期待に応えるように、東京水道社員も丁寧にアドバイスを送っていました。

     プレゼンテーションと質疑応答が終わると、東京水道の野田数代表取締役社長から挨拶がありました。

     「皆さんの研究は、大都市・東京にとって意義深いものだと理解しています。ぜひ夢を大きく持ちながら、具現化していっていただきたいです」と、いろいろなハードルがあっても、諦めず前向きに、しぶとく続けていくと目標や夢は叶うと激励の言葉をメンバーに贈りました。

     また、水道施設で使用されている膨大な量のコンクリートに対してDAMONDEで固定化されたCO₂を算定できれば、現状取り組んでいるCO₂削減に大きく貢献できるのではと考えたため、東京水道賞を贈ったと選出の意図を明かしました。

     参加者一同での記念写真撮影の後、隣接するホテルでのスイーツビュッフェでは、メンバーたちの楽しそうな笑顔がたくさん見られました。

     

    今回のイベントに関しての感想として
    「部外者では入れない場所を実際に見ることができ、実地で得る質の高い学びの大切さを再認識できた」
    「独自の技術や工夫が大変興味深く、水道についての理解が深まった」
    「社員の方から直に説明を聞くことができて、自分の研究を見つめ直す機会にもなった」
    との声があがり、彼らの学び・研究がより実践的で深いものになり、あわせて今後のキャリアの参考になる貴重な機会だったのが伺えました。