房州に夏の訪れを告げる沿岸小型捕鯨漁が6日から始まった。南房総市和田地区の和田漁港では7日午前0時すぎ、同地区の外房捕鯨株式会社(庄司義則社長)が、ツチクジラ1頭の解体を行った。
全国に4カ所ある沿岸捕鯨基地の内、関東唯一の和田地区。今年は6日から操業を開始し、初日から1頭の捕獲に成功した。
初漁のツチクジラは、体長9・99メートルの雄。6日午前8時15分ごろ、和田漁港から123マイル(約198キロ)の茨城県沖で、同社の第51純友丸が捕獲した。
約16時間、船で運びながら海中で熟成させ肉を柔らかくし、7日午前0時ごろに和田漁港の処理場に引き揚げた。
解剖員らは、初漁を祝って引き揚げられたクジラに神酒をかけ、作業と今後の漁の安全を祈願。刃渡り約30センチ、全長約2メートルのなぎなたのような刃物を使って解体に取り掛かった。
威勢の良い掛け声とともに最初の刃が入れられると、解剖員らが手分けしてヒレなどを切り取り、皮をワイヤで引っ張りながら切り離したり、赤身を手際良く切り分けたりした。
庄司社長によると、6月29日まで青森県八戸沖でミンククジラ漁をしていたが、北方水域の水温が低かったためか成果が振るわなかったといい、「ツチクジラ漁の海域でどの程度の影響があるのかは予測がつかない状況。令和に入ってから不漁続きなので心配しているが、初日に初漁を迎えられて、一安心している」と話していた。
近年は、環境や海水温の変化の影響か、クジラの発見頭数が減っていることなどから、捕獲数は2020年以降9頭前後で、昨年は10頭を捕獲。今年の同社の捕獲枠は19頭で、漁期はミンククジラ漁との調整で例年より短く、8月のお盆ごろまでを予定している。
クジラは、加工食品として店頭に並ぶ他、安房地域では切り分けられた生肉が販売される。
(清水利浩)
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