2025-07-07

まれてはじめて推せる政党が見つかった

「ね!みんな食べてないでしょ!ほんとはアレ食べられるんですよ!ぜんぶ日本人の体から出てるから!」

選挙カーを囲む群衆から大きな拍手と歓声が上がっている。

「あらゆる植物穀物にとって!ね!肥料になるなら!人間が食べてもどえらい栄養になるんです!

なのに!今の政府はそれを隠して!食べ物を輸入に頼って! 外国に!ね! 外国に!我々の税金を売り渡してるんです!!」

バイト面接のために久々に外に出てみたら、練馬駅ロータリー選挙活動集会みたいになっててびっくりした。

選挙カーの上で、派手な色のTシャツを着た男が熱弁している。知らない政党ぽい。

人だかりがすごいので、とりあえず階段を登って上の歩道から駅に向かう。

「だからね!日本人ウンコは!捨てずに!回収してお店に並べるような形やればいいんですよ!

そして!そして!ね!!外国人のウンコは!食べたら!癌になるんです!!」

「そうだ!」という声が群衆の中から上がると、下から大きな拍手が起こってビビる

話の内容はよく聞きとれなかったけど、声に説得力というか、必死さがあって、シンプルに「いいな」とおれは思う。

ていうか、今選挙やってたんだ。

40過ぎてから会社が潰れて、それなりにキャリア積んだつもりだったのにハロワトライアルでボロカスに言われて、しばらく引きこもって貯蓄を食いつぶしていた。

政治のせいじゃない、自分が悪いって思ってた。

でも、本当にそうなのか、誰にも相談できなかった。

「癌という病気も!もともとは!海外から持ち込まれ病気なんです!

から!ね!!日本人きれいな人糞だけを食べれば!出てくる人糞きれいなままなんです!

純粋日本人だけの!日本人のためだけの!究極の食料を守んなくちゃいけないんですよ!」

男が叫ぶ度に、大きな拍手と歓声が上がる。

今まで見たこと無かった政党だし、演説の内容はよく聞こえなかったけど、少なくとも100人以上いる聴衆がめっちゃ支持してるのはわかるし、それだけ信用を集めているひとなんだろうなと思う。

「この国の!ウンコみたいな!間違った食糧事情を正したいつってんですよ!」

響き渡る歓声を背に、券売機10円玉を入れながら、おれは生まれてはじめて「投票に行ってみようかな」と思っていた。

明日食べられるものを、来週食べられるものを持っていたいから。

その日の面接は落ちた。

インド人店長に、流暢な日本語で「人の話はちゃんと聞くようにしたほうがいいですよ」と言われてムカついた。クソが。

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