山田裕貴、歴史を伝えること「重要な意味がある」沖縄戦の実話ベース『木の上の軍隊』慰霊の日上映会で思い
堤真一と山田裕貴が23日、新宿ピカデリーで行われた映画『木の上の軍隊』(7月25日公開)東京完成披露上映会に、平一紘監督とともに出席し、沖縄で起きた実話をもとにした本作について「僕がこういう仕事をやっている意味ってこういうことにある」と力強く語った。
【動画】堤真一&山田裕貴が思いを語る『木の上の軍隊』完成披露【トークノーカット】
ある2人の日本兵の実話を基にした、井上ひさし原案の舞台を実写化した本作は、太平洋戦争末期の沖縄でアメリカ軍から逃れて木の上に身を潜めた日本兵が、終戦を知らないまま2年間にわたって潜伏生活を送る姿を追ったドラマ。この日の上映会は、沖縄県が制定している、沖縄戦等の戦没者を追悼する「慰霊の日」にあたる6月23日に開催。映画上映後の会場で、観客に向かって「いかがでしたか?」と堤が問いかけると、会場からは大きな拍手が。それには登壇者たちもホッとしたような安どの表情を見せた。
本作は6月13日から沖縄で先行公開されており、初日から3日間の動員が沖縄でナンバーワンの出足を記録した。そのことに山田は「めちゃくちゃうれしいですよ。観てもらえるのが一番なので」と笑顔を見せ、「沖縄で公開された時、監督から電話がかかってきて。『(山田)裕貴さんすごいですよ。劇場に行列があって。全部『リロ&スティッチ』(目当ての観客)だと思ったら、『木の上の軍隊』でした』と驚いていたくらい。もちろん『リロ&スティッチ』もすばらしい作品ですが、目を向けてくれる人たちがこんなにいるんだということが、本当にうれしいなと思いました」
戦争をテーマとした作品に出演することについて「僕は広島に住んでいたことがあり、小さい頃に原爆ドームに足を運んで衝撃を受けました。その後(アニメ映画)『火垂るの墓』を観て、こんな思いをするのは嫌だなというくらいに心の片隅にそういう記憶は残っているんですけど、日常を過ごしていると忘れてしまいがち」だと語る山田。そのうえで、『木の上の軍隊』について「この映画は戦争の映画というよりも、家があること、食べられること、水があることがどれだけありがたいかということを感じるんだと思います」と思いをはせた。
本作の舞台となるガジュマルの木は、伊江島ミースィ公園にもともと移植されていたガジュマルに、もうひとつのガジュマルを移植して2本の木を根付かせ、樹上に大きなスペースのあるガジュマルをつくりあげたもの。堤が「木の上からの景色ってすてきなんですよ。ここに守られているという感覚はあの木じゃないとできなかったし、木の上にいるのが苦じゃない。撮影のために時々どくことはありましたけど、ほぼ2人で木の上にいましたね」と振り返ると、山田も「人間って順応していくんですよ。最初、堤さんも『いてて!』と言いながら木に登っていたんですけど、3、4日たてば二人ともスルスルと登って、座れる場所、寝転がれる場所を自然に探していて。実際の二人もあの木に対して、そういう家のような感覚を持っていたのかなと思いました」と続けると、「僕がこういう仕事をやっている意味ってこういうことにあるんだなと。こういった歴史を伝えられるのは重要な意味があるなと思いました」と付け加えた。
そんな本作について平監督は「この映画はあまりうそがないというか、本当の物語。ほとんどのロケを伊江島で行い、外の海も一部ありましたが、海も伊江島で撮影ができた。そして僕らが撮影のためにガジュマルを移植したんですが、その前にちょっとした場所で保管していたんですけど、そこから戦時中の20人の遺骨が出てきた。あらためて僕たちが撮っている現場は戦争の現場だったんだなということを思いましたし、そこから得られる力もあった」と振り返った。
山田と堤は本作が初共演。堤が「(山田は)うそのない人だし、まっすぐだし。スタッフからも愛されていましたね」と称賛すると、対する山田も「共演はなかったけど、実は10年くらい前にあるご縁でお家にお邪魔させてもらうことがあって。第一線で活躍されているのに、すごくフラットに話してくれて。それは撮影現場でも変わらなかったです」と振り返っていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『木の上の軍隊』は7月25日より全国公開