18-11 鳥の鳴声以外であるはずはない
ゼァミリアが聞いた赤子の鳴き声は途中からか細くなった。
不安を掻き立てられながら、それでも魔界を走り抜けた結果、ゼァミリアは同じ年の友人トピューアの発見に成功する。
「トピューア!」
彼女は里から随分と離れた森の奥地で突っ立っていた。何が楽しいのか、愉快に笑っている。
魔界を歩くにしては酷く軽装で、上下一体の寝巻きしか身に付けていない。治療所から突然いなくなったのだからそれは仕方がない。
ナイフを手に持って武装しているが、そのナイフで切ったのは己の後ろ髪である。切った髪の房を手の平の上で遊ばさせて、風に乗せて楽しんでいた。
「お前は……トピューアで間違いないか?」
奇行の目立つためゼァミリアは慎重に近づく。この地帯に人類に擬態する性根の腐ったモンスターはいないが、用心はした。
「もう来たのか、ゼァミリア。でも、もう終わった」
笑うのを止めて、トピューアなる若いエルフはゼァミリアと視線を合わせる。本人で間違いなさそうだ。
「どうして、髪を切った。気に入っていたのだろ」
「必要ないから切ったまで。私にはもう不必要だ」
「どういう意味だ?? それに……お前の子供はどこにいる?」
トピューアが里から飛び出す奇行を仕出かしたのは、彼女が子供を出産した翌日だった。出産したばかりで体力が回復していないはずなのに、子供と共に里から消えたのである。
里は今、襲撃を受けたかのように慌しく動いている。まだ修行の身であるゼァミリアさえ動員され、夕暮れ時の魔界を探索しているぐらいだ。
母子がモンスターに襲われてからでは遅いと里の住民は必死だった訳であるが、消えたトピューアはここにいる。ゼァミリアが無事に探し当てた事により一件落着である。
ただし……トピューアの赤ん坊はどこにもいない。
理由はトピューア自身が明かす。
「必要ないから捨てたまで」
どこに捨てたか。何を捨てたかは言われるまでもない。
ここにはトピューア一人しかおらず、ここは弱きが喰われる食物連鎖の魔界なのだ。
ゼァミリアは友人だと思っていた人物の襟首を掴んで、エルフナイフを突きつけて脅す。
「お前ッ、何をしたのか分かっているのか!」
「止めておけ。里から一日に二人も減るぞ」
「キサマッ!」
近年、森の種族は減少が続いていた。魔界に誕生した大魔王の魔王軍侵攻により里が次々と落とされているからである。
種族存続の危機とまで言われている。滅亡回避のカウンターメジャー、直接戦力たる精霊戦士型のエルフと、種の存続に特化した幼精型のエルフが数多く生まれている状況が証拠である。
精霊戦士型はレベルアップし易く、パラメーター上昇率が高い。ゼァミリアはこの精霊戦士型のエルフである。まだ修行が足りないものの、強くなれる才能を持って生を受けた。
「ゼァミリア、お前は恵まれていたのだ」
幼精型のエルフは性の未確定時期があり、男が少なければ男、女が少なければ女へと成長する。トピューアはこの幼精型のエルフである。戦士として修行を開始したばかりのゼァミリアと同年齢という若い身でありながら、女として成長し、既に子供を生んだのだった。
「一方で、私は恵まれていなかった」
母親となった事を、トピューアは後悔していたが。
「種族のために尽くすのであれば、せめてお前のように戦いに挑みたかったというのに……っ」
トピューアの言いたい事ぐらいゼァミリアには分かる。里の中で同世代同士、一緒に遊び、学び、育ってきた間柄である。トピューアが精霊戦士に憧れる夢を持っていた事など知っていた。
夢抱いていた精霊戦士であったが、ある夜より、トピューアは夢を語らなくなった理由も分かってはいたのだ。
「自分の股座から新しい命が這い出してくる経験など、したくなかったのだ!」
「それが母親になった者の言う言葉かッ」
「だから、母親であるのを止めた。母親になった自分に後悔したゆえ、女である事さえ止めた。……気付かぬか?」
一緒に育ったのだから、ゼァミリアは熟知している。トピューアは女性として成長した。
「母性の象徴たる子を捨てた事により、私は男として性のやり直しに成功したぞ」
しかし、トピューアは性別の転換に成功する。
里から消える直前まで膨らんでいた乳房は、森に子供を置き去りにした瞬間にトピューアの望み通り萎み消え失せた。
胸倉を掴んだままゼァミリアは確かめるが、確かに女の胸部にしては固すぎる。母乳が詰まっている母親の胸であるはずがなかった。
幼精型だから性別が変化可能、という訳ではなかった。異例であるのは間違いない。
「幼精型などという突然変異から私は目覚めたのだ! いや、私の不幸を憐れんだ創造主が新しい人生をくださったに違いなく、今の私は知識型のエルフに階級昇華を果たした!」
「そんな事のためにッ、あの子を捨てたのか! まだ名前さえ名付けていなかったではないか!」
「……やはり祝ってはくれぬか、ゼァミリア」
「どこに置き去りにしたのか、早く言え!」
新しい己を喜んでくれないゼァミリアに失望しつつ、トピューアは冷めきった口調で答える。
おぎゃー。おぎゃー。おぎゃー。おぎゃー。
「馬鹿め。せっかく女を捨てたのだ。誰が教えるものか」
「子供の泣き声が聞こえないのか!」
おぎゃーギャーおギャーぎャーギャー、たす、ギャーおぎャーギャー、さん、ギャーギャーおギャー、見捨。
「聞こえぬ。そもそも、あれのどこが赤子の泣き声なのものか。あれは……な――」
ギャーギャーギャーギャーギャー、たす、ギャーギャーギャー、さん、ギャーギャーギャー、見捨、ギャーギャーギャー、置いて、ギャーギャーギャーギャー。
「――、あれは鳥の鳴声だ」
友人でなくなったものに容赦するゼァミリアではない。
くの字の戦闘特化なエルフナイフを振り上げる。戯言を喚く愚か者を男からまた女に戻し、捨てた場所を吐かせようと実力行使し掛ける。が、もう手遅れだったらしい。
奴等が現れた時点で、捨てられた赤子の生存は既に絶望的だ。
“――食イ物。腹減っタ”
木の枝の上で羽音がしたと思って見上げた先で、人面鳥が小さく呟いたのだ。
“――どこに、ドコに?”
魔界の最下層生物にして森の掃除屋、ハルピュイアが降り立った。醜きこの鳥は貪欲の塊。食べられるのならば腐った肉でも喜んで食べる。柔らかな赤子ならば尚更である。
そして、ハルピュイアは一羽見付かれば、百羽は現れるものでもある。
“――ドコか食ベ物”
“――憐レに捨テらレた生き物。ドコ?”
夜で視界がきかないというのに、臭いのみを頼りに集まったハルピュイア共で森の木々は埋まっていた。
ギャーギャーギャー。
もう夜がきてしまう。
紅い空が黒く染まって、遠くにある剣山のような連峰の端が薄っすらと色付いているのみである。
タイムアップ直前の焦燥感を払拭できないまま森を走る俺の耳は、痛い程の幻聴に支配されていた。
ギャーギャーギャーギャーギャー。
「ええいっ、SAN値が減ったのか! 精神安定系の『破産』スキルがなかったらとっくの昔に動けなくなっていたところだっ」
タイムアップが近づくと音楽のリズムが早まる。それは分かるが、鳥の鳴声に騒音レベルで鼓膜を叩き付けられている現状は、万力で頭蓋骨を締められているのに等しい。
『破産』スキルで耐えている。が、それもタイムアップと共に限界を超える。スキルをごり押しで突破可能な程に重い感情が、この鳴声には含まれてしまっている。
寂しい。見捨てられたから。
怖い。置いていかれたから。
悲しい。見捨てられたから。
寒い。置いていかれたから。
苦しい。見捨てられたから。
暗い。置いていかれたから。
侘しい。見捨てられたから。
憎い。置いていかれたから。
切ない。見捨てられたから。
怒り。置いていかれたから。
耳に痛いというか脳細胞が捻り切れていく思いだ。原始的な感情を濃縮されて、鳴声を介してダイレクトに脳へと伝わってくる。強制的な精神感応に耐え切れずにうずくまってしまいたい。
それでも、俺が耐え切れているのは異世界での辛い日々のお陰だ。不幸自慢なら俺だって負けていない。奴隷になったり魔王になったり。耐え難い感情に心は多少以上に慣らされてしまっている。
「だからって耐えられるものか。どうすれば――っ」
両耳を手で塞いでもまだ聞こえてくる。さすがに耳栓は用意していないが、代わりになるスキルは所持していた。
「そうかっ! 『暗澹』発動!」
遮音性ならば『暗澹』スキル以上に優れるものはない。正確には、世界の一部を黒い海の浅瀬たる暗澹空間で上書きしてテリトリーとしたためだろう。奇妙な世界から隔絶された事によって鳥の鳴声が静まった。
連続使用時間に問題はあるものの、スキルの限界よりもタイムリミットが早い。
「……スマフォが通じないからペーパーは頼りにならない。もう、迷っている暇もないか。あんまり頼り過ぎると悪霊に近づくから呼びたくはないのだが」
鳥の鳴く森の神秘に対抗するためには、自前の神秘を用いるしかないだろう。
指で仮面を摘み、唾を飲み込みつつ仮面と顔の隙間を少しだけ開く。
死霊使いスキルの『グレイブ・ストライク』、墓場にあるものを手元に呼び寄せるスキルにて、黒い世界より現状を打開できそうな悪霊を召喚した。
「誰かある。凶鳥面の神秘に挑戦する時間だぞ」
仮面の隙間を通り抜ける悪寒に鳥肌がたった。
生者ではない気配を目前に感じたため、すぐに仮面を押さえ付けて隙間を封じる。
「さて、誰が現れたのか――ん?」
凶悪な力を有する者は多くとも、神秘に対抗できる者など多くはいない。
どんな悪霊が俺の呼び声に答えたのか期待していたが、その悪霊は随分と小さかった。小さいというか背骨が曲がっているので縮んでしまっている。
“――やれやれ、せっかくきてやったというのに。この老体では不満か?”
「お前は……オールド・ゴブリン。オーリン」
ミイラ寸前にまで年老いたゴブリンが、足の筋力もないため杖を支えにようやく立っていた。生きていないので当然だが、風が吹いて倒れただけでも死んでしまいそうな弱々しい風貌だ。
“記憶の抜けるザルのごとき頭でも覚えておったようじゃの。その調子ならばこの老体の記憶が現れる心配などなかろうて。大変結構”
オーリンは骨が折れてしまいそうな程に肩を上下して俺を笑った。オーリンは得意な相手ではないので苦々しい愛想笑いを返すしかない。
「現れたのはお前かよ……。で、オーリンに何か策はあるのか? 暗澹空間の外は鳥の鳴声で満たされていて活動できない。鳴声の元が鳥の鳴く森の神秘の核だと思われるが、どう探し出す?」
“であるから、耳の遠いこの老体が現れたのだ”
「茶化さず早く教えろ。時間がない!」
オーリンは震える指先で自分の顔を示す――、
“鳥の鳴声がやかましいのは当たり前じゃ。やかましく感じないのは、同じ鳥ぐらいだろうて”
==========
“『知恵比べ』、相手の裏を突く者のスキル。
相手の思考を逆手に取り易くなる。曖昧な効果しか発揮できないが、あると便利”
“実績達成条件。
勇者《勇敢なる者》職のDランクに相応しくなる”
==========
――いや、オーリンは自分の顔を示したのではない。俺が付けている凶鳥面を示したのだ。
“ハルピュイア共を動員し、鳴声の中核を探すように命じさせるのだ”
オーリンの甘言にのって、魔王固有スキルたる『低級モンスター掌握』を発動して魔界に散らばるハルピュイア共を集めて、捜索に当たらせた。
魔界で最も下等な生物たるハルピュイアが役に立つかは不安もあったが、捜索対象がハルピュイア好みのものであったのが幸いしたのだろう。鳴声に含まれる感情が、嫌われ者のハルピュイア共に共感をもたらした面も強い。
“――カワイソウ、可哀想”
“――醜イニモ程ガアル。母ニ捨テラレル程に醜イ子”
“――ダカラ、オ前ハ鳥ダ。我等ト同ジ、鳥ナノダロウ?”
ハルピュイアが何羽も集まった地点へと走った。
“助言した報酬に、この老体の願いを一つだけ聞いてもらおうかのう”
ちなみに、アドバイスを終えたオーリンはあっさりと黒い世界へと帰っていく。この世そのものに未練はないらしい。走れないから置き去りにして暗澹空間の範囲から離れた途端、霞のごとく消え去った。
“記憶であろうと主様が他の者に使われるなど、許し難い。確実に処理するように”
ギャーギャーギャー。
“――憐レ! 憐レ!”
「ここかっ!」
そして俺はようやく発見する。森が闇に埋没する寸前に、腐葉土の上に放置されている白い絹布の塊を抱え上げる。
「これが……いや、この赤ん坊が?! 鳥の鳴く森の神秘の正体なのか??」
ギャーギャーおぎゃーおぎゃー。
“――違ウ、違ウ! ソレは鳥ダ! 鳥ノ鳴声ダ! 赤子ノ泣き声ではナイ!”
おぎゃーおぎゃーおぎゃーおぎゃー。
うるさいハルピュイア共の言葉を無視して、俺は布に包まれた赤子をしっかりと抱え上げた。
まだ首も座わっていない赤子だ。腕を支えにしてやるしかない。不器用なりに慎重を期し、時限爆弾を扱うよりも優しく扱う。
“――母親ニ捨てラレタのだ。ソレは、醜イ鳥の子ダッ!!”
「――発火、発射、火球撃! うるさいぞ、お前等。こんなに可愛い子なのに酷い言い方して。散れ」
火球を放ってハルピュイア共を脅す。力のない人面鳥はそれだけで去っていく。
「よし、よーし。こんな魔界でどうしたんだ。お前?」
おぎゃーおぎゃーおぎゃー。
「すまないが胸を掴まれても乳はでない。小さいのに力があるのか。ん、耳が少し長いような」
赤子の言葉は分からない。母乳を欲しているのか、おむつを交換して欲しいのか。どちらにしても要望を叶えるのは難しいため、森の中でオロオロとしてしまう。
『暗澹』は解除しているが、もう鳥の鳴声は聞こえない。
鳥の鳴声だと思っていたものが、実は赤子の泣き声だと気付いたため神秘性が失われたのだろう。頭は痛くなく思考はクリアである。
「とはいえ、これからどうすれば」
おぎゃーおぎゃーおぎゃー。
「おっと、安心しろ。途中で見捨てたりしないから。助けてやるからな。……いや、俺らしく言うなら祟ってやるというべきか。うーむ」
==========
“ステータスが更新されました
ステータス更新詳細
●実績達成ボーナススキル『祟り(?)』を取得しました”
“『祟り(?)』、おぞましい存在の反感を買った愚者を証明するスキル。
無謀にも神秘性の高い最上位種族や高位魔族に手を出して、目を付けられてしまった。本スキルはその証である。
スキル効果は祟りの元である存在により千差万別。
本スキルについては次の通り。
一つ、スキル所持者の『魔』『運』に対して、祟り元の存在の『魔』『運』が加算される。
一つ、お互いの位置関係が感知できるようになる”
“実績達成条件。
仮面の男に助けられる”
==========
おぎゃー、おぎゃ……きゃはっ、きゃっ。
「あれ、笑い始めたぞ??」
何故か赤子が満足してくれたのは良いが、男の身では限界がある。父になれても乳は出ない。
笑う赤子を揺らしながら魔界を見渡す。俺一人では解決できないため、誰か頼りになりそうな者を探しているが、そんな好都合に――。
「――その子は……貴方の子供かしら。泣き声が聞こえたから様子を見にきたのだけれど」
「誰だっ!?」
木陰の向こう側から声をかけられた。驚いてナイフを構えるが、もちろん赤子は離さない。
衣擦れするような音と共に、声の主が姿を現す。
「私が近づいても色香に酔わないのは、父親としては良い事だと思うわ」
蛇のような下半身を持つその人物の接近に合わせて、精神安定系のスキルを本能的に発動させていた。
「どうして、淫魔王がっ。生きている??」
「あら、酷い言い方。せっかく来てあげたのに」
上半身はほとんど裸の体にビキニのような鱗を備えただけの女性である。
男を惑わす香りからも淫魔王本人で間違いない。血の通いを感じるので死霊の類でもないはずであるが、淫魔王は俺を庇って死んだはずである。俺を己の子供であると勘違いして死なせてしまった。
神秘的な森なので奇跡だって起きるものなのだろうか。
しんみりと涙しているだけではいられない。俺の腕の中には赤子がいて、目前には母親としてこの上ない淫魔王がいる状況。
「淫魔王。この子を託したい。大切に育てて欲しい」
仕組まれているとしか思えないキャスト達だ。きっとこうして、赤子を淫魔王へと預けて育ててもらえという導きに違いない。
「良いの? 私は魔王よ」
「だからこそ安心もできる。頼んだぞ」
淫魔王は俺から赤子を受け取る。やはり、子供の扱いになれているのか危なげない横抱きでホールドしていた。
「……任せなさい。大切に育てて、立派で優しい子に育ててみせるわ」
赤子は淫魔王へと小さな手を伸ばして乳房へと吸い付き始める。その愛くるしい仕草を淫魔王は目尻を和らげながら見守っていた。
そして二人を視界に収めたまま、俺は後方へと引っ張られて行く。
意識が遠退いたのだ。この奇妙な森で終えるべき事柄のすべてを終えて、俺の意識は現実へと帰還を開始した――。
――ハッ、と息を飲み込むと共に意識を取り戻す。
俺は仰向けに倒れてしまっており、俺の上には鳥の鳴く森がマウントしてしまっていた。腕を足で押さえつけられているので動けない。鳥の鳴く森はナイフを振り上げてしまっており、丁度下ろしている最中だ。いきなりの大ピンチである。
「ちょっと待てェッ」
俺はあの森の中で失敗してしまったのだろうか。淫魔王へ赤子を預けてしまったのは失敗だったのだろうか。
「お前はァッ!!」
鳥の鳴く森はナイフを振り下ろした。
思わず目を瞑り、息を呑んでいた俺の耳へと……石床が砕かれる音が響く。
息を飲み込む俺の口であったが、息は飲み込めない。塞がれてしまった口から感じたのは甘さであり、俺ではない誰かの唾液だろう。
意味が分からなくて瞼を開くと……そこに見えたのは俺を見下ろしている鳥の鳴く森の素顔である。ハルピュイアの仮面はどこかに投げ捨てられている。
横に長いロバに似た形状の耳。
美しさの黄金比を構成する目と鼻と口の位置関係。
大きく見開かれた目。
「この……お前はっ、お前だけはいつもいつも俺を救ってばかりいて。だから嫌いなんだよ。お前は。だから俺がお前の悲惨な人生を奪ってやって……身代わりになってっ!」
森の種族と等しい特徴を持った見上げた先にいる女。
けれども彼女は……エルフと違って褐色の肌と深紫の瞳を所持していた。
「邪魔な魔王連合の奴等、全員ぶっ殺してみせてやるから、よ! お前は、もう無理するな。休め」
鳥の鳴く森は……俺に笑いかけながらカカカと泣いていた。