15-3 次の相手は雑魚です
魔王連合の愉快な仲間達
●『ダンジョン』迷宮魔王:種族不明
三騎士:オルドボ:オーガ
メイズナー(故):ミノタウロス
エクスペリオ:種族不明
×『終わりなきコーラス』合唱魔王:(故)ヒュドラー
×『永遠の比翼』吸血魔王(故):吸血鬼
副官:ゲオルグ(故):リッチ
亡者:グウマ(故):人間族
●『淫らな夜の怪女』淫魔王:種族不明
●『法螺吹き男』山羊魔王:種族不明
×『毒頭』寄生魔王(故):真性悪魔
体:スズナ(故):人間族
●『泣き叫び狂う』怨嗟魔王:種族不明
●『行軍する重破壊』墓石魔王:ゴーレム
●『古式竜』竜頭魔王:種族不明
●『翼竜の統治者』翼竜魔王:ドラゴン
従僕:ドラゴンゾンビ?
合唱魔王討伐に成功し、兎の部族の集落へと戻ってからずっとお祭り騒ぎだ。
徹夜明けの怪我人だらけだというのに、朝から夜までずっと踊っては歌って、食って笑ってのどんちゃん騒ぎ。魔王攻略に酒を使い果たして酔う手段を失っているというのに、皆はテンションのみで酔っ払っている。万年最下位の球団がリーグ優勝したってこんな喜び方はしない。
これは絶対に気のせいではないのだが、集落の人口は討伐に出向いた時よりも増えている。失敗した第一次出撃の時よりも多いだろう。魔王討伐を聞き付けた周辺部族が祝いの品々――という名目の、仲間に加えてもらうための支度金――を手に集まってきているのだ。
浮かれ過ぎてはいないだろうか。
勝って仮面の尾を絞めろ、という言葉があるではないか。
心の中では思っていても、そんな野暮ったい言葉は口にしない。
「酒はないが、乾杯じゃぁぁぁあぁっ!」
「酒はないが酔えッ、お前等全員酔え! 酔え!」
「ガフェイン。また傷から血が噴き出していますから、大人しくしてくださいね」
魔王討伐戦にて活躍したジャルネ、ガフェイン、ローネの三人が音頭を取って、集まった者達と民族茶を飲み交わしていた。魔王戦に参加した戦士達は負傷したままの状態だというのに楽しげだ。
中には担架に乗ったまま全身動かせないのに茶を飲もうとしている者までいるが、あれは合唱魔王と戦う発端となった山猫の部族長のマルテか。顔に類似点のある妹に介護されている。
「どうした、凶鳥! 飲んでないではないか」
「バター味のお茶なんて何杯も飲めるか。緑茶を用意してくれ」
「ん、異世界にも緑茶なんてあるんだ?」
「ん? 場所によってはあるんじゃないのか??」
ジャルネが運んできたお茶で三杯目。味が濃くてもう飲めない。
隣にいる皐月も同じようで、満杯になっている土器コップに口をつけようとしていなかった。やはり、日本人に馴染み深いお茶は緑茶だろう。
ちなみに、皐月はまた背が縮んでしまっていた。合唱魔王討伐に『魔』どころか生命力すら注ぎ込んでいたらしく、戦いが終わった後に心筋梗塞で倒れてしまったのだ。その後、炎の中から帰ってきた彼女はまた幼女に生まれ変わっていた。成長したり、若返ったりと忙しい子である。
「……この分なら、次は山羊魔王が相手か」
戦勝気分に囲まれながら、ふと、呟いてしまった。
そんなに好戦的な人格ではないと自分では思っているのだが、魔王と戦うのは宿命でないだろうかと最近考えている。その予感を証明するかのように、俺の職業ランクが上がっていた。
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“職業詳細
●救世主(Dランク)(New)
×アサシン(?ランク)(封印中)
×死霊使い(無効化)”
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百人近いレイドでの戦いだったため、合唱魔王討伐による経験値取得は微々たるものだった。レベルアップさえしなかったというのに、救世主職がランクアップしていた。座付きの魔王を倒したのが影響しているのか。
ついでに、職業スキルも――。
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“●救世主固有スキル『既知スキル習得(A級以下)』
●救世主固有スキル『カウントダウン』(New)”
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“『カウントダウン』、救世主的に必要なタイマースキル。
ある残り時間が見えるようになる”
“実績達成条件。
人類の危機となりえる魔王を討伐し、救世主職をDランクにする”
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“●カウントダウン:残り十年六ヶ月”
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――いったい、何のカウントダウンなのでしょうねぇ。
「そうじゃっ! 次は山羊魔王じゃ。合唱魔王を倒したわし等の解放軍は無敵であろう。自称救世主の凶鳥もいれば百人力じゃ」
ジャルネがお茶臭い息を吐きながら俺に絡む。角が腕にあたって痛い痛い。
「山羊魔王は獣の種族のほとんどを掌握して、配下にしているのだろう。単独で現れた合唱魔王とはまた異なると思うが」
「安心せよ。合唱魔王討伐の噂を、合唱魔王の首と共に広めておる。山羊の奴に本心より従っている者などおらんから、造反する部族は増しておる」
戦いが終わった後で、合唱魔王から斬り落とした首を集めていた。食うのかと思っていれば、軍師というか策士らしい使い方をする。
ここに多くの部族が集まってきているのは、ジャルネの策による結果だ。
名前しかなかった解放軍に合唱魔王討伐という箔が付いた。証拠となる巨大な蛇の首と共に、次は山羊魔王をヤる、と一句添えれば脅しとして十二分だろう。山羊魔王に従っていれば一緒に滅ぼすぞと警告しているようなものだ。
敵軍から戦力を奪い、逆に味方の戦力を増強する。姑息い戦略だ。
偉そうにしているジャルネを腕から引き離して、皐月に受け渡す。
「山羊魔王って確か、合唱魔王よりも弱いんだっけ」
「そうじゃ。海蛇座の合唱魔王と比べれば他の魔王など有象無象。特別、山羊魔王は存在が確認されてからまだ十年も経過しておらん若輩じゃ。経験値を得られん魔族にとって経年がすべて。若い魔王など、周囲の守りを引き離して孤立させれば倒すのは簡単じゃっ!」
「それなら安心ね。もう私の財布すっからかんだから。まぁ、その甲斐はあったけれども。……ね、師匠」
皐月が足元の影……の中に語りかけていた。影の中の人は恥ずかしそうにそっぽ向いてしまったみたいだ。
「次からはもっと火力を出せるから、山羊魔王は楽勝ね」
「かーはっは! 火の鳥殿に凶鳥に、二羽を看板とする解放軍は安泰じゃ!」
腰に両手を当てて仁王立ち。アルコールもないのにジャルネのテンションは最高潮だ。
話を聞く限り、山羊魔王は楽をできそうで安心できる。魔王連合には迷宮魔王、淫魔王、怨嗟魔王、墓石魔王、それにまだ見ぬ魔王が控えている。一体ぐらいは死ぬ思いをしなくて済むイージーゲームがあっても良いだろう。
「――山羊と戦うのは止めておけ。皆殺しにされるだけでは済まんぞ」
だというのに、冷や水をかけるがごとく背後から声がかけられた。
声質自体は氷点下のように冷たい訳ではなく、清らかで清んでいる。
「だ、誰じゃ……あッ!?」
それもそのはず、頭には輝くティアラ。
首元には青い宝石のネックレス。
背後に立っていたのは足元まで届く白金色の長髪、髪よりも白く白過ぎる肌を持つ深窓のエルフだ。
「嘘っ! お主は……、エルフの族長ッ!?」