フリーランスが直面する子育ての現実 難しい「働いていること」の証明…出産翌日から仕事再開も #令和の人権
「代わりがいない」フリーランス 病院ベッドの上でも仕事
妊娠・出産期の過ごし方という点でも、会社に雇用されているとさまざまな健康上の配慮を受けられるが、フリーランスの場合、それも自分で行うことになる。しかし、妊娠・出産についてよほど知識があるか、自分で勉強したのでない限り、多くの人は健康面を度外視して無理をしてしまう。 東京都に住む浦上藍子さん(44)は、11年前に出版社を退社、編集者・ライターとして独立した。数年にわたる不妊治療を経て、42歳で第一子を出産。翌日から仕事を再開した。 「病院のベッドの上でメールチェックして、原稿に赤を入れていました。幸い体調に問題はありませんでしたが、出産直前まで原稿を抱えて仕事をしていたのは、今思うとヒヤヒヤします。高齢出産でもありましたし、何かあれば取引先にも迷惑をかけるところでした」 背景には、出産後はしばらく仕事ができなくなるかもしれないという不安もあった。 「高齢出産での初めての子育て。不安から、妊娠中の今、できる仕事はどんどん受けようと、つい詰め込みすぎてしまって……。その結果、産後もバタバタと過ごすことになりました。フリーランスは自分が手を止めたら、代わりになる人がいません。受けた以上は、責任を持って納品しなければいけませんから」 不妊治療との両立でも、企業の環境整備が進む一方で、フリーランスにはそうした制度がない。 「通院のために断らざるを得ない仕事もあり、治療期間中は収入も減りました。スケジュール調整しやすいのはフリーランスの強みではありますが、そのぶん不安定さも痛感しました」
フリーランスに対する出産・育児支援の制度整備は進まず
フリーランス支援や実態調査などを行うフリーランス協会の代表理事・平田麻莉さんは、「テレビや出版、IT、スポーツインストラクター、講師業など、雇用契約に基づかず働く人が多い業界では、制度の支援が届きにくいため、妊娠・出産・育児との両立が難しくなりがちです」と話す。 フリーランスの側から、国に対して、妊娠・出産・育児期のセーフティーネットを整備してほしいという働きかけをしてこなかったわけではない。平田さんらフリーランス協会は、設立当初から「契約ルールの整備」と「働き方に中立なセーフティーネット」を2本柱として訴えてきた。 「契約ルールの整備については、昨年11月に施行されたフリーランス新法により大きく前進しました。しかし、セーフティーネットの議論は手つかずのままです」