13-16 分かり切った答えを、俺は思い出す
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●凶鳥
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“●レベル:21”
“ステータス詳細
●力:7(弱体)
●守:5(弱体)
●速:8(弱体)
●魔:63/63
●運:5”
“スキル詳細
●レベル1スキル『個人ステータス表示』(強制解放)
●アサシン固有スキル『暗器』
●アサシン固有スキル『暗視』
●アサシン固有スキル『暗躍』
●アサシン固有スキル『暗澹』
●アサシン固有スキル『暗影』
●スキュラ固有スキル『耐毒』
●魔法使い固有スキル『三節呪文』
●救世主固有スキル『???』(非表示)
●実績達成スキル『吸血鬼化(強制)』(無効化)
●実績達成スキル『淫魔王の蜜(強制)』
●実績達成スキル『記憶封印(強制)』
●実績達成スキル『凶鳥面(強制)』
●実績達成スキル『正体不明(?)』
●実績達成ボーナススキル『経験値泥棒』
●実績達成ボーナススキル『吊橋効果(極)』
●実績達成ボーナススキル『オーク・クライ』
●実績達成ボーナススキル『成金』
●実績達成ボーナススキル『破産』
●実績達成ボーナススキル『一発逆転』
●実績達成ボーナススキル『エンカウント率上昇(強制)』
●実績達成ボーナススキル『救命救急』
●実績達成ボーナススキル『魔王殺し』
×他、封印多数のため省略。封印解除が近いスキルのみ表示”
“職業詳細
●救世主(初心者)(非表示)
×アサシン(?ランク)(封印中)
×死霊使い(無効化)”
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「わしは魔王、蛇けえのぅ。――発火、発射、火球撃」
「今までもこれからも、世界を席巻する義務がある。――串刺、発射、氷柱弾」
「蛇けど、まだまだか弱くてか弱くて。――稲妻、炭化、電圧撃」
「魔王連合に身を置いているのも限界を感じたからけぇ。まあ、所詮は放蕩者の浅知恵よ。御母堂には悪いと思っておる。――攻城、砲撃、岩石弾」
魔法を乱発しながらも、同時に多数の首が疑問を口にする。
「蛇からわしはここにおるん蛇けど、お前等はここで、何がしたかった??」
屈強なはずの熊の戦士達が血に沈む。畳みかけるような魔法攻撃は、頑丈なはずの体の限界を簡単に上回った。
俊敏なはずの山猫の戦士達が血に沈む。視界すべてを覆うような魔法攻撃は、身軽さで逃れられるものではなかった。
だが、戦士達は足を止めない。首の数はたったの三十本足らず。
同時にやられるにしても三十人が上限であるのならば、半数は合唱魔王に到達できるという計算だ。
「人類圏から遠く離れて暮しておったとはいえ、そこそこわしの名は知れ渡っとった蛇ろう? まさか勝つつもりで挑んできたとは思えんけぇ、何か目的があったはず。とはいえ、それが分からんのぅ」
「倒れた者達を踏み越えろッ」
「なるほど。獣であるのならレミング症候群を発症する事もある蛇ろう」
到達できた戦士達の内からガフェインが一歩先行した。合唱魔王の胴体に跳躍すると、重そうな体で軽々と首を伝って登っていく。
「馬鹿の一つ覚え。首がまた増えるだけの事」
ガフェインは背中に背負っていた大斧を掴み上げると、刃をひっくり返す。
「ああッ、だからお前は半殺しだ」
蛇の顎を、熊の馬鹿力で叩き割る。泡を吹いて首は弛緩していくが、刃で斬られた訳ではないのでまだ死んでいない。ガフェインはトドメを刺さずに次の首へと襲いかかっている。
「殺せば増える! だったら、殺さずに無力化するんだ!」
ガフェインの指示は、合唱魔王の『分裂再生』スキルを見抜いたものであった。首ごとにHPが設定されており、無限湧きする非常識な相手をまともに殺す必要はない。昏睡させて放置させておけば分裂する事なく戦力を削り取れる。
「流石はガフェイン。やります、わねッ」
兎の戦士たるローネもガフェインの策に乗った。槍を二度ほど突き出して蛇の目玉を潰しはしたものの、殺しはしない。
戦闘能力を失った首が増えれば増えるほど、垂れ下がって本体の動きが阻害される。仲間の撤退を支援するだけだったはずの居残り部隊の活躍は目覚しく、合唱魔王を追い込んでいるように思えた。
合唱魔王が自分で自分の首を引き千切らなければ、であったが。
「悪くない攻略法、ではあったな! 初めてやられていたならば動揺していた蛇ろう!」
合唱魔王は多くを体験し多くを乗り越えてきた古参の魔王だった。魔王ゆえ恐れられるものの、一方で討伐されかけた事も多いはずだ。だが、合唱魔王はそのたびに生き延びる知恵を身に付けて、命を賭す挑戦者達を返り討ちにしてきた。
この世で最も恐ろしいのは、知恵のある生物だ。
彼等は工夫する。対策を続け、耐性を身に付けてしまう。
合唱魔王の恐ろしい点はパラメーターやスキル、魔法ではなかった。長年を生き抜く知恵こそを真に危険視するべきであった。
自ら首を噛み潰して、増殖する合唱魔王。
伸びてきた首に跳ね飛ばされて空を飛び、四方から食いつかれてバラバラになってしまう者がいた。
「さあ、次はどんな攻略法を思い付いた? 採点しようかのぅ」
「クソッ、このおォォッ!」
「や、やめろ」
逃げ道に首を回されて、とぐろの中で三節魔法の炎に蒸し焼きにされる者がいた。
「イアガガッ、ギャアアアあああああああッ!!」
「どうしたん蛇? もう終わりか??」
「駄目だ。頭の中で、海に落ちていく音が響く。もうやめてくれ」
瓦解しかけた戦士達。彼等彼女等を救うため、突如、吹雪が吹き荒れる。魔法的現象であるのは間違いない。実際、『魔』の中心地点では青色の魔法使いが呪文を唱え続けている。
蛇は変温動物だ。冷やせば体が動かなくなるため、有効な攻撃方法ではあるだろう。
「いやいや。冬眠するには早過ぎる。――加熱、融解、熱崩壊」
合唱魔王も魔法が使えるので冷やし切るのは難しい。反対に、火属性魔法を放つ首五つに襲われて、青は窮地に立たされた。
「ローネッ!!」
「いいえ、お願い。こないでッ!」
「もう許してくれ。俺に誰かを助ける理由なんて、ないじゃないか!」
窮地に立たされていない者などいない。ローネは崖まで追い込まれて蛇の口を槍で食い止めている。それを助けようと走るガフェインの肩口には蛇の牙が刺さっていた。毒に蝕まれる体をアドレナリンで忘れてどうにか動いている。
全滅する予定で居残った部隊が全滅するだけ。そう思って目を背ける以外に方法はない。
そして、特に珍しくもない悲劇の締め括りは、一人の幼女が魔王へと駆けて行く姿だろう。これも珍しくない悲劇だ。
「皆ッ! 負けるんじゃない! 戦うんじゃ!」
幼女はジャルネで間違いなかった。小さな角を持つ彼女は、大人顔負けの知恵を持っているが戦力としては数えられない。必死に走っているのは分かるのだが、大人の早歩きよりもジャルネは遅く走っている。
パラメーター的には子供に等しいジャルネは、きっと、無駄死にをしたくて合唱魔王へと立ち向かっているのだろう。
あるいは……子供だから、自分は魔王に勝てると妄想してしまっているのか。
「戦うんじゃ! 戦わねば、戦わねばっ! だって、この世界はっ! 誰も、助けてくれないから!! 自分が戦わないと、誰も救ってくれないから!!」
ジャルネは合唱魔王を見ていたが、その瞳孔は虚空を眺めていた。黄昏色に染まった瞳。どこか、大きな存在より神託を受けているようにも見える。
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“『神託(強)』、高次元の存在より助言を得るスキル。
根本的には神頼りなスキルであり、いつも都合の良い助言が得られる訳ではない。そもそも、言語的な解読が困難な助言も多い。ただし意味が分かれば役立つ事も半分ぐらいある。
神便りというよりは、アンテナの向きや天候、波長の合わせ方次第とも言える。
結局は、スキル所持者の判断が求められる”
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“――『神託』する。
世界は滅びる窮地にあり。
最大級の窮地に、抗う術なし。
人類は滅びる。世界は終わる。生きとし生きるもの、皆等しく死滅する運命にあり。
しかし、救世主は既に現れた。
顔のない救世主は、そこにいる――”
「誰もッ! わしの家族を救ってはくれなんだ! この世にッ! 神様も救世主も、ありはしないからッ!! こんな神託は妄想だから! だから、皆戦い続けるんじゃ!」
“しかし、救世主は既に現れた。
顔のない救世主は、そこにいる――”
「だからッ! せめて、せめてッ! わしだけでもッ、私だけでもッ、救世主の代わりになって皆を救うんじゃあァァッ!!」
そうだ。この世の中に救いなどありはしない。
「だからッ、お願いじゃ! 皆は戦っ――」
「ふむ。肉の柔らかい子供は、喰うに限る」
だから、ジャルネは頭上から落ちてきた蛇の口に飲み込まれて死ぬ。
「ローネッ!!」
だから、壁に押し込まれてローネは圧死する。
「…………浅子。ごめんね」
だから、青の魔法使いは火炎魔法に巻かれて焼死する。
当たり前の現実に対して、俺は何もできずにいた。
ただただ、現実に潰されてしまって苦しくて苦しくて。
やりたくもない大事を任せてしまって。
でもやらないといけない気がして。
ストレスで内臓が歪みまくって。
嘔吐してしまうのを塞ごうと手を当てて――。
「――――ははっ、やめてくれって言っているのに、恥ずかしくも思い出しちゃったよ。世界は救わない。だからせめて自分だけはって考え方、誰だってするものだな」
――最後に、噴出し笑いを隠すために手で口を覆ってしまっていた。
「そうだな。世界は救ってくれない。だから俺が代わりに救……俺が代わりに祟ろう」
救われない現実を俺は祟ろう。
報われないはずの人々の末路を俺は祟ろう。
だがしかし、仮面を外せば行き着く先は悪霊魔王である。一度失敗しておいておいそれと仮面を外す事はできない。とはいえ、直近の命の危機は三箇所もある。仮面の内側以外に頼る手段があるかと言われると……何故だか存在する。
“スキル詳細
●救世主固有スキル『???』(非表示) → 『既知スキル習得(A級以下)』”
「自由度が高過ぎると逆に悩むんだが……。グウマ、頼らせてもらうぞ。『分身』発動!!」