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Conversation

ここからが本題になりますが、「条約に明記されている留保(実は条約に明記されていない留保をつけることもできる)を行うこと」は政府の判断であり、これを留保なしで国会において議決することはできない、つまり政府の判断とは異なる形で国会が留保の取り扱いを決めることを政府は否定しています。(資料5 立法と調査2012.7参議院事務局 資料P.15) 条約の締結権は憲法上、内閣に委ねられており、条約の国会承認を行うにあたって、諮られるのはあくまで「政府の考える条約承認を可決するか否決するか」のみであり、条約の中身について修正を行うということはできないという修正権否定説が政府見解であり、通説とされています。実際に、国会では年間20件前後の条例が承認されていますが、条約本体を修正議決した事例はおろか、修正を希望する旨の決議を行なった事例もないとされています。資料は2012年のものですがそれ以降も無かったと聞いています。(資料6 立法と調査2012.7参議院事務局 資料P.14) 留保条項(14条3項)については、政府も必要だとしてきた立場ですので、政権が変わらない限りは、「非実在を含まない」解釈で提案するでしょう。同時に法改正が提案されるとしても、この解釈に沿ったものになります。そして野党は、この解釈について質問等で問うことはできるものの、留保が受け入れられないという方向で出来うる選択は、14条3項の一点をもって、条約承認そのものを否決するということになります。ちなみに過去の歴史の中で衆議院において条約の国会承認が否決されたことは一度もありません。(参議院においては2例あったものの、衆議院の議決が国会の議決とされた。) (資料7 立法と調査2012.7参議院事務局 資料 P.13) 条約は他国との交渉・約束事であるので政府の専権事項であるという考え方が、(それが良いのか悪いのかはさておき)根強く、条文の解釈等について附帯決議や要望決議をつけることも避けることが慣例となっています(資料8 立法と調査2012.7参議院事務局 資料P.11) 仮に万が一、留保条項を理由に歴史的な国会承認の否決があったとしても、条約が締結されないのだから、「表現の自由」の懸案は払拭されます。 上述してきたように、条約の締結においては外交を行っている政府の考えが尊重されるような国会での審議が行われており、「留保なしで締結される」というシチュエーションは、絶対に避けなくてはいけないものの、現実的には限られるようにも感じられます。 国連サイバー犯罪条約の内容について懸案があるのは確かですが、日本は2004年に国会承認されたブダペスト条約(旧サイバー犯罪条約)においても、非実在児童ポルノの犯罪化などについて留保をつけて運用してきた経緯があります。「創作物と実在の被害者がいるものは別」政府がこの方針を曲げない限り(政府全てを肯定するわけではありませんが、この点については守り続けて欲しいと思います。)、また社会が極めて表現規制に傾き、そうした方向性の政権が誕生しない限りは、この条約の影響を最小限に抑えることは可能ではないかと考えています。この条約の問題については引き続き、詳細な議論を深めるとともに、多くの議員に伝えてきたいと思います。
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