フジテレビ問題でフジより注目された企業
――反対に、日本企業の課題はどんなところでしょうか。本の中でもフジテレビ問題が取り上げられていますが、やはりコーポレートガバナンスに対する意識が低いところでしょうか。
【佐藤】これまではグローバル化、ダイバーシティの実現、イノベーションの創出などが課題として挙げられてきましたが、近年、特に指摘されているのがコーポレートガバナンスです。
いわゆる「フジテレビ問題」は日本では大きく報じられていますが、アメリカでは全くと言っていいほど知られていません。ハーバード大学経営大学院でも認識しているのは、日本企業のコーポレートガバナンスを研究している教員ぐらいではないでしょうか。
しかも、アメリカのコーポレートガバナンスの研究者や投資家が興味を持っていたのは、フジ・メディア・ホールディングスのガバナンス機能不全よりもむしろ、トヨタ自動車やホンダなど、世界経済にも影響を与える日本の大企業がいかにこの問題に対応したかです。
つまり、すぐにCMの出稿を取りやめたのを見て、逆に「日本の大企業のコーポレートガバナンスは健全に機能している」ことを確認したわけです。
コーポレートガバナンスは日本だと「不祥事を未然に防ぐための仕組み」のようにとらえられていますが、本来の目的は価値創造。つまり、健全な経営を実現し、もっと効率的に儲けて、利益を増やして、株主などのステークホルダーに利益を還元するための仕組みです。フジ・メディア・ホールディングスをはじめ、多くの日本企業は、それを今まさに学んでいる渦中にあるのではないでしょうか。
ですからハーバード大学経営大学院の教員も投資家も関心があるのは、個別の不祥事案件よりも、むしろ日本企業が低い利益率をどう改善して、株主に還元していくのかという点だと思います。
――ハーバード大学経営大学院の教員や学生の間では、日本経済はさらに成長すると考えられていますか。
【佐藤】それについては賛否両論がありますが、確実に言えるのは、「日本企業にはまだまだ伸びしろがある」と考えている人が増えていることです。
ハーバード大学経営大学院のチャールズ・ワン教授によれば、これまで多くの日本企業の経営者は「会社は社員や事業に直接関わる人々のものだ」と認識し、「会社を存続させることこそが経営者の責任なので、赤字さえ出していなければOKだ」と考える傾向にあったそうです。そのため、株主への還元は後回しにされてきました。
しかし近年は、コーポレートガバナンス改革が進み、資本コストを意識した経営を実施している企業も増えてきました。またそれに対応するように株価も上昇してきています。こうした変化を見て、教員や学生の中にも日本経済はこれからさらに成長するとみる人も出てきています。
そう考えるとフジ・メディア・ホールディングスも、これから再生する可能性は非常に高いと思います。アクティビストがあれだけ真剣に株主提案をするのも、まだまだ成長する能力があると見ているからだと思います。先ほども申し上げましたが、日本企業は現場の社員が優秀なので、これまで能力を存分に発揮できなかった社員が奮起すれば、見事に再生できるのではないでしょうか。
同じように、今、行き詰まっている日本の企業も、経営者が本気になって自社の経営を見直し、社員の能力を活かせば、再生できる可能性は非常に高い。日本企業には、そのための底力が備わっていると思います。





