学校では当たり前のように存在するいじめ。わたしの通っていた小学校でもそれはあった。
当事者であるいじめられっ子にとって辛いことなのはもちろんだが、それ以外の子にとっても何とかしてやり過ごさなければいけない辛い時間だった。
見て見ぬふりをする子、遠巻きに笑う子。わたしは、ただ祈るように下を向くのが精いっぱいだった。
そんな中、ひとりだけ空気を読まない生徒ががいた。
真田君。
彼は誰かがいじめられていると知るや、何の前触れもなくそのいじめっ子に突進し「八つ裂き光輪!」と叫びながらただの体当たりをかますのだった。
なにひとつ八つ裂き光輪のマネになってない(チョップですらない)、その姿は小学生ながら狂気じみていて、いじめっ子からすら気味悪がられていた。
いま思うと、発達障害の類だったのかもしれない。
だが、だれかれ構わず暴力を振るうのではなく的確にいじめっ子だけを狙うその姿勢には、ただの無法ではなく何らかのポリシーが感じられた。正義感と呼ぶにはあまりにも乱暴すぎるが。
真田君の八つ裂き光輪はいじめられっ子を助けるだけでなく、クラスの淀んだ空気を切り裂き、その他の生徒の心も救ってくれていたのだ。
結局わたしは、真田君とまともに会話を交わすことなく小学校を卒業した。
真田君は私立の中学校に進んだ(奇行はあったものの真田君の成績はとても良かった)ため、卒業式が真田君を見た最後だ。
あの日の真田君は、この際だからとたくさんの生徒から感謝の言葉をもらい、珍しく照れた顔を見せていた。
真田君。
あなたは今もどこかで、暗い何かを八つ裂きにしているのでしょうか。
XX年後ならツインサテライトキャノンと言いながら体当たり