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100m近いハイピア、2層RCアーチなど様々な形式

NEXCO西日本新名神大津 新設が8橋、拡幅が27橋 全てで難易度高し

西日本高速道路株式会社
関西支社 新名神大津工事事務所
所長

大城 壮司

公開日:2021.05.24
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 NEXCO西日本関西支社新名神大津事務所は、新名神大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間(延長約25km)のうち、滋賀県域の延長12.2kmの建設事業(京都府域は新名神京都事務所担当)と、甲賀土山IC~大津JCT(仮称)間(延長28.5km)の6車線拡幅事業を担当している。橋梁は新設が8橋、4車線から6車線への拡幅対応をしなければいけない橋梁は27橋に上る。新設部は波形鋼板ウェブはもちろん、2層アーチ形式の橋梁などもあり、多様性に富む。拡幅部は1日5万台の交通量をさばきながら施工しなくてはいけないため、工事の安全と品質、サービス確保において、非常に厳しい工事と言える。同事務所の大城壮司所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
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建設事業概要
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6車線化概要

拡幅部27橋 下部工は一部を除いて6車線対応済み
 新設、6車線化含めて、山岳橋梁

 ――新名神の拡幅工事と管内の進捗状況からお願いします
 大城所長 新名神高速道路は、名古屋市を起点として、神戸市に至る延長約174kmの高速道路です。昭和40年に全線開通した現在の名神高速道路は、東西を結ぶ大動脈として、国民生活、産業経済活動に大きな貢献をしてきましたが、現在は交通量の増加による交通混雑が頻発し、高速道路本来の機能が十分発揮できない状況となっています。
 新名神高速道路は、名神高速道路などと交通機能を補完することにより、高速道路ネットワークに求められる「高速性」「定時制」「快適性」「安全性」などの機能を高めるとともに、沿道および西日本の国民生活、産業のさらなる発展に寄与することを目指しています。
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 また、甲賀土山IC~大津JCT(仮称)については平成31年3月29日に、大津JCT(仮称)~城陽JCT・ICについては令和2年3月に、それぞれ6車線化の事業化がなされたことにより、更なる物流の効率化による生産性向上等に寄与するものと考えられます。
 当事務所では、大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間(延長約25km)のうち、滋賀県域の延長12.2kmの建設事業(京都府域は新名神京都事務所担当)と、甲賀土山IC~大津JCT(仮称)間(延長28.5km)の6車線拡幅事業を担当しています。
 大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間における滋賀県域の構造物数と構造物比率は、橋梁が8橋で約3.6km(30%)、トンネルが2本(上下線)で約0.7km(6%)、土工部が約7.9kmとなっています。
 甲賀土山IC~大津JCT(仮称)間は現況4車線で供用していますが、これを6車線化します。内訳は、土工部が15.9km、橋梁拡幅部が27橋で6.2km(22%)、トンネル部が6.4km(22%)です。トンネルについては、上下線とも3車線断面となっていますので、施設と舗装のみの対応となります。
 ――27橋の拡幅ですが、下部工は6車線化対応済みですか
 大城 2橋対応しなければならない橋梁がありますが、残りは6車線構造として完成しています。
 ――では、上部工を架設するだけですね
 大城 そうです。
 ――常磐道などでは橋脚から構築して大変でしたけど、本区間ではそれはないということですね
 大城 その意味では幸運でした。
 ――新東名などでは橋梁によっては6車断面でつくって、上下1車線ずつを路肩扱いにしています。例えば、豊田アローブリッジなどですが、本区間ではそのような橋梁はありますか
 大城 例えば、近江大鳥橋などは完成していて路肩運用しています。それ以外のものが27橋あります。
 ――大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間の滋賀県域における橋梁数は
 大城 18橋です。
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建設中(および6車線化中)の橋梁一覧
 ――新設と6車線化の区切りは
 大城 大津JCT Bランプ橋から大石小田原橋(上下一体)までが新設です。
 ――地勢的特徴は
 大城 新設、6車線化含めて、山岳橋梁となっているのが特徴です。
 ――滋賀県南部の山岳地帯を通るような形ですか
 大城 新設区間は滋賀県南部、6車線化区間は滋賀県南東部となります。
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現場は山岳地帯を通る

 ――いずれも山岳地帯ですか
 大城 そうです。

地盤は花崗岩主体で比較的安定
ピア高最高は信楽川橋の97m 新名神最高レベル

 ――地盤は
 大城 ほとんどが花崗岩を主体とする地域です。
 ――軟弱地盤はほとんどないということですか
 大城 沈下が心配されるような意味での軟弱地盤はありません。
 ――それ以外では
 大城 例えば、き裂が多い岩盤斜面は何箇所かあります。
 ――き裂が多い箇所ではどのような対策を施していますか
 大城 新設区間ではまだ確認されていませんが、供用区間ではフリーフレームが施工してあったり、鉄筋補強がされている区間があります。
 ――新設区間でも切土補強などが必要になりますか
 大城 現在のところはまだありませんが、その可能性はあります。山を見ての判断となります。
 ――橋脚高は
 大城 最も高い橋脚は、信楽川橋の97mとなります。新名神高速道路では、供用区間で最も高橋脚な川下川橋の95mを超え、最高レベルの高さの橋脚となります。
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信楽川橋上下線下部工一般図
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信楽川橋下部工のハイピア

 ――NEXCO西日本でも最高ですか
 大城 確認はしていませんが、高いほうとなります。

大津JCTもピア高80m
基礎は概ね深礎杭と大口径基礎

 ――平均の橋脚高は
 大城 山岳橋梁ですので、谷部に道路がある箇所を横架するとハイピアになります。これが信楽川橋のパースですが、このように道路を跨いでいる箇所が高くなります。これ以外には、大津JCTで橋脚高が80m程度になるところがあるくらいです。
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信楽川橋上り線一般図
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信楽川橋下り線一般図

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信楽川橋(パース)

 ――JCTで80mですか
 大城 これが大津JCTの現況です。

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大津JCTの施工状況

 ――あとはそれほど高くないのですか
 大城 高くないです。
 ――20~30mくらいですか
 大城 その程度です。
 ――基礎は、深礎と大口径深礎がほとんどですか
 大城 そうです。
 ――特殊な杭、ケーソンはないですか
 大城 ありません。
 ――大口径深礎では竹割工法を使うのですか
 大城 ほとんどすべてで竹割式土留めです。
 ――基礎の深さは
 大城 場所によって違いますが、大口径深礎では15m前後です。

4橋で波形鋼板ウェブ橋を採用 支間長は最大160m 桁高は最大11m
 ハイピアの下部工 能力の高いポンプを使う

 ――上部工では波形鋼板ウェブが多くなっていますね
 大城 大津JCT Bランプ橋、Cランプ橋と、JCT部の本線橋である大戸川橋、信楽川橋が波形鋼板ウェブで、ハイピアで支間長が長い箇所で採用しています。
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大津JCTBランプ橋全体一般図
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大戸川橋上り線全体一般図
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大戸川橋下り線全体一般図

 ――上部工は発注済みですか
 大城 大戸川橋は上部工に着手しています。
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大戸川橋付近鳥観イメージ

 ――発注前だったら、バタフライウェブに変えないのかなと思いましたので
 大城 (笑)。変更しませんでした。
 ――支間長および桁高は
 大城 信楽川橋が180m、大戸川橋が160mです。波形鋼板ウェブ橋の実績のなかでは最大級のスパンです。桁高は柱頭部で11m、中間部で5mに達します。
 ――架設方法は
 大城 カンチレバー架設です。
 ――下部工について。ハイピアの橋梁で工夫していることは
 大城 施工の面では型枠併用のセルフクライミング足場を使っています。
 ――内陸なので冬は寒くて、夏は暑いと思いますが、寒中コンクリートや暑中コンクリートで工夫したことはありますか
 大城 寒中コンクリートは一般的にヒーターで温める対応を行っています。寒さはその程度のレベルです。暑中コンクリートではクーリングといったような構造対応は一切していません。生コンの水を冷やすなどの一般的なレベルで対応しています。
 ――橋脚高80~90mとなると、生コンの配管や圧送が大変だと思いますが
 大城 圧送上の工夫ですよね。信楽川橋では現在、それを検討していて、プッツマイスターのような能力の高いポンプ車を持ってくる予定です。
 ――スランプは
 大城 ポンプ車の能力で変わってくると思いますので、現段階でははっきりしたことは言えません。特殊なフロー管理をするものを使用する予定はありません。自己充填などのレベルのコンクリートは使用しません。
 ――18cm程度にする必要はありますか
 大城 筒先で18cmはいらないと考えています。そこは配筋量で決まります。筒先12cm程度をイメージした配合になると想像していますが、検討しているところです。
もう一つ、信楽川橋は急峻な地形なので、インクラインを施工しています。NEXCO西日本では初となります。
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インクラインの採用

 ――信楽川橋の下部工の進捗状況は
 大城 おもに基礎を施工中で、橋脚は1脚が完成間近です
 ――橋脚は中空橋脚ですか
 大城 ハイピアはそうです。
 ――リード工法などは使わなかったのですね
 大城 プレキャストは使っていないです。
 ――現場打ちにした理由は
 大城 標準です。また、設計が古く、i-Construction推進の前でした。下部工もプレキャスト化している現場はあるのですか
 ――とくに常磐道4車化などの工期的に厳しいところは、30m弱であればリード工法を使っています。
 大城 適正な工期を設定しています(笑)。現場打ちでも十分対応できます。
 ――ハイピアなので配筋はD51ですか
 大城 鉄筋はD51を使用していますし、組み上げ時は下でユニット化して、クレーンで吊上げている現場が多いです。
 ――鉄筋の結節は基本的に機械継手ですか
 大城 機械継手が多くなっています。
 ――山岳地なのでエポキシ樹脂塗装鉄筋ですか
 大城 被りをきちんと確保していますので、普通鉄筋です。
 ――下部工にはエポ鉄筋は使用していないということですね
 大城 そうです。
 ――被り以外でコンクリートの改質などは行っていますか
 大城 特にありません。材質も下部工は普通コンクリートです。
 ――新設(18橋)と拡幅事業(27橋)での下部工の進捗状況は
 大城 新設の土工工事はすべて発注済みで、全工事着手済みとなっています。下部工の進捗はばらばらです。大津JCTで約60%です。それ以外では基礎の施工中であったり、1橋脚程度が立ち上がっている状況です。
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進捗状況①
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進捗状況②
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山城谷川橋下部工の施工状況

 ――信楽川橋は上部工を発注していますが、現況は
 大城 詳細設計中です。

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