旗艦ファンドファーストクローズに寄せて - Trailblaze Asset Management, inc.
この度、旗艦ファンドと位置付ける訴訟・仲裁ファンドにおいて、約10億円にてファーストクローズを完了しました。継続して募集はしつつ、今後は米国をメインに、シンガポール、香港を含むAPAC諸国にて投資活動を本格的に進めていきます。
同時に、グロービス様、グローブアドバイザーズベンチャーズ様、弁護士ドットコム様、MSquared様、その他ファミリーオフィスおよび個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約2.1億円を調達しました。
エクイティにて調達した資金は、当社のミッションである「経済変動と相関性のないプライベートクレジットおよびスペシャルシチュエーションを中核としたオルタナティブアセット提供」の実現に向けて活用していきます。具体的には、旗艦ファンドの規模拡大、海外ファンドやパートナー企業とのJV / Co-GP Fund設立、他プライベートクレジット領域への参入などを予定しています。
本noteは個人的な備忘録的なものとして残します。これからファンド設計をされる方やファンドレイズされる方など少しでも役に立てばいいなと思う一方で、再現性はそこまでなさそうなので半分ジョーク程度で読んでください。
旗艦ファンドファーストクローズとAM会社としての展望
実質2024年の6月から12月までのファンドレイズでしたが、ただでさえ専門性・新規性共に極めて高いアセットクラスであり、それを当時ネットワークもない21歳の人間が実施するのは非常に困難なものでした。(1年前に戻るならやりたくない)
21 - 22歳の人間が「訴訟・仲裁ファンドに投資してください。ミニマムは3,000万円です。」と提案したら瞬時に左にスワイプするのが極めて一般的だと思います。それでも投資いただいた方々には頭が上がりません。
振り返ると6 - 7ヶ月で300以上の投資家の皆様とお話しさせていただきました。苦しい時間が多くを占めた一方で、非常に充実した時間でした。徐々に出資の有無に関わらず支援者が増え、実現したいビジョンの輪が大きく広がっていく時間は充実したものでした。改めて皆様ありがとうございます。
ファンドレイズ成功の要因を一つに絞ることは難しいものの、実務的には以下の二点が奏功したと考えています。
キーパーソンへの深耕アプローチ
面談後に改めて自筆のレターを送付するなど、要所でパーソナル・タッチを加えたことで信頼形成を加速。投資家プロファイルごとの提案最適化(数字は個人的な勝手な見解です)
純資産 20 億円未満:リスク許容度が高く、リターン最大化型の構成を志向。
100 億円〜 1,000 億円超:ダウンサイドを限定し、ポートフォリオ全体でボラティリティを低減する構成を重視。
この知見は、今後のプロダクト設計に大きく寄与します。
また、上記2を基に考えると、弊社の旗艦ファンドである訴訟・仲裁ファンドに関して、最も大きな魅力としてはやはり「経済変動との非相関性」であります。今後の主要ターゲットは大口の機関投資家であることに加え、この強みを最大限活かすとするならば、以下のファンド設計が最適だという結論に至りました。
運用モデル:
投資案件を広範に分散しダウンサイドを抑制
アップサイドは市場平均並みもしくは多少それ以下を確保
キャッシュフローを早期に回収・分配
市場を見る限り、訴訟ファンドで上記を徹底した設計はまだ多くありません。課題は案件ソーシングの網羅性にあり、当社は「従来型の関係起点アプローチ」と「データドリブンな機械的スクリーニング」を組み合わせたハイブリッド手法を採用しています(詳細は事項に後述)。
AM会社としては、会社のミッションにある通り、「経済変動と相関性のないプライベートクレジットおよびスペシャルシチュエーションを中核としたオルタナティブアセット提供の実現」を掲げ、順次投資対象を拡大していく方針です。
また現在は「訴訟・仲裁ファンド専業AM会社」と見られがちですが、当社にとって訴訟ファンドは マーケット参入プロダクトにすぎません。今後は、
早期回収が可能
まだニッチ領域な一方で成長率が極めて高い
当社のソーシング・テクノロジーを最大限に活用できる
オルタナティブ/プライベートクレジット領域へ投資範囲を広げ、より多様な非相関アセットを運用する総合アセットマネジメントファームへと進化してまいります。
ファンド設計と機械的アプローチの活用方法
①伝統的なソーシング手法:従来の訴訟ファンドは、法律事務所とのリレーション構築に注力し、紹介案件を継続的に獲得するモデルが主流です。
メリット:ニーズを抱える原告に効率的にアクセスでき、着手までのコストが小さい。
デメリット:
ファンドの存続期間(通常 6 年)内に 質の高い案件を十分な量・タイミングで紹介してもらえる保証がない。
ソーシングの主導権をファンド側が持てず、機会損失や投資戦略の選択肢が限定される。
初期デューデリジェンスに人的リソースと時間がかかり、顧客体験が悪化(エクイティ調達で嫌というほど経験しました、最悪です)。
②当社のハイブリッド・アプローチ:当社は伝統的アプローチに加え、データドリブンの「機械的アプローチ」を導入し、案件分散とレバレッジ効率を高めています。
データ取得の整備
米国を中心に、過去および係属中の訴訟データは公共データベースで取得可能。
ただし 管轄・地区ごとに仕様が異なり、データの統合・クレンジングに多大な工数を要する点が課題。
ネガティブ・スクリーニング/スコアリング
「勝訴確率◯%」のポジティブ評価だけでは公開データの欠損・偏りが大きく、精度が上がらない。
当社は ファンドの投資基準に基づく“投資非適格変数”を設定し、70〜75%の精度でスクリーニングフィルターを実装。
再現性が高く、入口を狭めすぎずにリスク案件を排除できる。
規模レンジの全網羅
Small〜Large まで全レンジの案件を機械的に捕捉可能。
特に Small〜Mid Size 案件は伝統的な他ファンドがアクセスしづらく、当社の分散ポートフォリオ構築とマーケットエントリーに最適。
市場を俯瞰して、従来型ネットワークドリブンの良さをは残しつつ、データドリブンな機械的手法を組み合わせることで、ファンド自ら案件供給をコントロールし、投資機会の質とタイミングを最適化しています。
実務面のペイン
今回のファンドはケイマン籍であり、スキームの設計を ゼロベースで行った ため、立ち上げには想定以上の時間と労力を要しました。
海外ファンド特有の課題として、ファンドアドミニストレーション費用やリーガルフィーが総じて高水準になりがちである点を改めて痛感しています。
KYC/CDD(顧客確認・継続的デューデリジェンス)の厳格化
個人投資家の KYC でさえ国内ファンドと比較して煩雑ですが、法人投資家の場合は UBO(Ultimate Beneficial Owner)10%超全員分のパスポートおよび住所証明を提出するなど、要求事項が大幅に増加します。
次号ファンド以降は、アドミチームの体制強化と事前チェックリストの標準化により、KYC プロセスを大幅に短縮・簡素化することが必須と認識しています。
コスト構造の最適化
ケイマン法務・規制対応の固定費を抑制するため、管理業務の一部をオンショア/ニアショアに移管する選択肢を検討。
早期のスキーム確定とドキュメントのテンプレート化により、リーガルレビュー回数を削減し費用効率を高める。
その他の運用上の論点は公開情報としては適切でないため、詳細をお知りになりたい場合は個別にご連絡ください。
会社の特性とExit戦略から逆算したエクイティ調達の実施
ベンチマークとして、訴訟ファイナンス最大手 Burford Capital(NYSE/LSE: BUR)は、ポートフォリオ約 US$ 7.2 billion に対し時価総額は約 US$ 3.1 billion(2025年7月3日終値ベース)で AUM 比およそ 4割。決算・ケース進捗に伴う株価変動で割安に見える局面もある一方、依然として上場プレミアムは維持していると認識しています。
PE/オルタナ運用会社の IPO は海外では一般的で、上場による GP キャピタル調達・信用力向上に加え、NAV ベース 30–40% までのレバレッジを導入できる点は資本効率上のメリットが大きいと考えます。
また海外プレーヤーは M&A を通じてプラットフォームとストラテジーを水平展開する事例が多いものの、セカンダリー取引は NAV に対し 10〜30% 的割引で成立することが多く、経済合理性を踏まえると戦略的シナジーが無い買収は回避すべきと判断します。
当社ファンド LPA では回収後の早期分配を原則としつつ、再投資リサイクル条項も限定的に設定することで、「迅速なキャッシュ回転 × 必要最低限の内部留保」を実現する設計としています。将来的には、最適なタイミングでの IPO を念頭に、自社株買い・配当政策を柔軟に選択できる資本構成を目指します。
このExit戦略を念頭においたラウンド実施は非常に大変でしたが、PEやHF含め日本を代表する / グローバルトップティアの専門家が株主に参画し、より強い体制となったと実感しています。
最後に
どれだけデータドリブンで機械的なアプローチを行っても結局のところは人が全てだと日々実感しています。
昨年はとにかくバーンレートを抑えるためにほぼ1人でやってきましたが、現在はほぼ計画通りに海外弁護士、CFO、海外MBA出身者やアドミなど上手く採用を進めて来れました。
スキルも大事なのですが、特に持っている価値観や人柄を重視しています。毎日オフィスに行ってしょうもないブラックジョーク言って笑えるくらいの人や飲みに行って楽しい人が良いです。あとは不義理をしない人。僕が言えるほど立派な人間ではないですが、これさえあれば勝てるのではと思うくらいです。
スキル面を敢えて挙げるなら、30~40 代でまだ大成功を収めていないものの、背伸びをしながら爆速で成長できる人材が理想です。僕自身 22 歳と若いこともあり、「背伸びして潰れる」のではなく、「背伸びして伸びる」人が集まることで、同じ方向を向いて、少しのことでは潰れないような強い組織が形成されると信じています。そういう仲間と切磋琢磨したいと思っています。
また、ファンドで働くことは、純粋な労働者でも、完全な資本家でもないという特異なポジションに立つことです。トマ・ピケティの r > g の枠組みで言えば、労働と資本の両世界に片足ずつ踏み入れ、努力によって収入を得ながら、徐々に「資本側」へ近づく稀有な瞬間を体験できる―そんな立ち位置です。
創業者としての願いは、チームに加わる皆さんが 訴訟ファイナンスやその他アセット投資を単に遂行するだけでなく、金融システム全体の裾野を広げ、パイそのものを拡大する側に立ってほしいということです。そのためには、一部の層だけが総取りするのではなく、インセンティブを全員に適切に分配し、メンバー全員がゆっくりと資本家サイドへ進む構造をつくりたいと考えています。
最後になりますが、このリスクの高いフェーズで支援してくださった外部パートナーの皆さまには、心より感謝申し上げます。
皆様、引き続きよろしくお願いいたします!



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