2025.4.2
Nintendo Switch 2 を開発するにあたって決めた方向性は理解しましたが、具体的にはどのような部分が強化されたのでしょうか。
いろいろな変化はあるのですが、パッと見てすぐにわかる変化としては、画面サイズが大きくなっています。たぶん、本体を最初に見たらまず、「画面でか!」と思ってもらえるんじゃないかと思います。
(笑)。
本体の厚さはSwitchのままで、画面は大きいだけでなく、より高解像度であざやかな、そしてなめらかな表示が可能になっています。Switch 2 は、ハードとしての「器」を大きくするために、コンピューター以外のいろんなところもパワーアップさせています。
ちなみに技術に明るい方はご存知かもしれませんが、任天堂はこれまで本体に搭載するメモリーの容量に重点を置いてゲーム専用機を開発してきました。今回は特にアグレッシブにメモリー容量を増やしています。
コンピューター以外に液晶ディスプレイやメモリー容量やストレージと・・・もちろんすべての機能にコストやメモリー容量が必要ですから、バランスをとりながらパワーアップさせるんですけどね。
バッテリーの持続時間もバランスの検討要素でしたね。高い性能のコンピューターや容量の多いメモリーは電力を多く消費するので、バッテリーの持続時間は減ってしまいます。
ただ、持ち歩いて遊んでいただくことを念頭に、バランスを取る必要があるとも考えているので、バッテリー容量をSwitchから1.2倍にするなどして、持続時間が大きく減ってしまわないよう工夫も施しました。
Nintendo Switchを多くのお客さまに受け入れていただき、長い期間触れていただけるものになったので、Switch 2 も同じように、長い期間触れていただくことになったとしても耐えられる性能を搭載したゲーム専用機にしたいと考えました。処理性能とメモリー容量のバランスをよく考えて、時間が経っても古いと思われないものをつくれたのではないかと思います。
長い期間通用する性能を考えたことで、少し制限が加わったこともあります。Switch 2 になると、これまでよりソフトの容量が大きくなりますが、ゲームの処理をスムーズにこなしながらデータを読み込むには、それ相応の速度が必要になります。
例えば、『マリオカート ワールド』では広い世界をカートで自由に走り回ることができますが、当然プレイヤーの向かう先が表示されていなければなりません。大きなデータを先に読み込んですばやく描画するためには、これまでのmicroSDカードではなく、より速い転送速度を持つmicroSD Expressカードを使用していただく必要があるということです。
ただ、Switch 2 は本体の保存メモリー容量が256GBありますので、ほとんどの方は本体を買ってすぐにmicroSD Expressカードが必要になる、ということはないかなと思います。
持ち運べる据置型ゲーム機という側面から必要な要素を確保しつつ、できるだけ処理性能を上げることを優先してバランスをとった感じですね。本体の性能以外でも、Switchといえば象徴的なのがJoy-Conですが、こちらも変化があったり、強化があったりするのでしょうか。
今回のJoy-Conである、「Joy-Con 2」も全部イチからつくり直しています。アナログスティックはSwitchのJoy-Conよりも大きくなって、耐久性も上がっていますし、動きが滑らかになるようにしています。
本体が大きくなったのに合わせて、Joy-Con 2 も大きくしたのですが、SwitchのJoy-Conを単に縦に伸ばした形にしてしまうと、Lボタン/Rボタンに指が届かなくなったり、手のひらの形と合わなくなったりして、とても持ちにくくなってしまいます。
そのため、Lボタン/Rボタンを長くしたり、Joy-Con 2 の下の角に丸みをつけたり、スティックやボタンの配置をミリ以下の単位でいろいろ試して、今の形になっています。
手の大きさによっても触り心地が変わってしまうので「手の小さい人知らない?」って社内で手の小さい開発者を探して試作を触ってもらったりしました(笑)。
あとは見た目ではわかりませんが、Nintendo Switch 2 の「HD振動2」も、より多彩な動きができるように変更しています。Nintendo SwitchのJoy-ConのHD振動※10はいろんな触感がつくり出せたのですがJoy-Con自体の大きさもあって、ニンテンドー ゲームキューブ※11のコントローラーのような強い振動は実現できませんでした。
でも、今回搭載しているHD振動2では、強い振動だけでなく、よりリアルな触感や、より反応の速い振動も実現しています。
こうしたJoy-Con 2 の機能など、Nintendo Switch 2 のハードの機能は『Nintendo Switch 2 のひみつ展』※12で紹介していますので、ぜひそちらも体験いただきたいです。
※102017年3月発売のNintendo SwitchのJoy-Conに搭載されている振動機能。リニア振動モーターが生み出す非常に細かな振動で、ボールが転がる感触やグラスの中で氷がぶつかる感触などを表現できる。
※112001年9月発売の据置型ゲーム機。立方体型の本体や、ソフトに8cmの光ディスクを採用したことなどが特長。
※122025年6月発売予定のNintendo Switch 2 ダウンロード専用ソフト。まるで展示会を見回るような感覚で、ミニゲームなどを通してNintendo Switch 2 がもつ機能を体感して知ることができる。
Joy-Conといえば、今回本体への装着がマグネット式になりましたよね。
もともとSwitchの開発時にJoy-Conをマグネットで本体に装着する案があったんです。マグネットなら、すぐに外せて、すぐにつけられるので、おすそわけも手軽にできますし。 当時の社長の岩田さん※13に試作品を持って行って相談していたのですが、残念ながら当時の試作はマグネットでJoy-Conを本体に装着すると接続部分が弱い構造でぐらぐらしてしまっていました。
それではお客さまが不安になるからやめましょう、となり、結果、Switchではぐらぐらしにくいレール式を採用しました。でも、もっと気軽に付け外しができるようにしたいなあ、と思っていたんです。
※13岩田聡。元任天堂代表取締役社長。ニンテンドーDSやWii等の発売、またNintendo Switchの開発を指揮し、任天堂の娯楽をより多くの方へ届けることに尽力した。「Nintendo Direct」では自ら出演し、“直接” お客さまに製品やサービスをご紹介した。2015年逝去。
マグネットについては、私たちのチームでSwitchの開発時からずっと研究していました。私たちとしてもそれを諦めたくなくて。
ぐらぐらしないように、しっかりくっついてほしい。それと同時にお子さんや力の弱い方でも簡単に外せてかつ気持ちよく装着できるように。・・・と技術開発部のハードウェア担当には無茶なお願いをしました(笑)。
でも、本当に何度も試行錯誤してもらって最終的にはしっかりくっついて、軽く取り外しボタンを押すだけで気持ちよく取り外せるようになりました。
もともと機能面や利便性からマグネットを採用したのですが、最終的には装着したときの気持ち良さまで技術開発部の皆さんが落としこんでくれたんです。それが、このゲーム機を象徴する重要な要素になったと思います。こればかりは触っていただかないと、なかなか伝わらないと思うので(笑)、ぜひ、お客さまには手に取って試していただきたいです。
Switchの開発時から温めてきたということだと、10年越しの思いですね。
任天堂では昔から、いろいろなことを諦めきれない人がずっと執念を持ってさまざまな研究をしている気がします。今回は残念ながら採用されていないようなアイデアでも、 将来それを実現する機会が生まれるかもしれません。
重要な要素というと、今回Joy-Con 2 はマウスとしても使用できるんですよね。この機能も以前からアイデアとして温められていたのでしょうか。
初期の企画にはなかったのですが、PCゲームをマウスで遊んでいた時にひょっとして、Joy-Conもマウスになれるんじゃないかとひらめいたんです。
もともとSwitch 2 はコンピューターの処理速度を良くすることで幅広いソフトを遊べるようにしようとしているわけで、 それならマウス操作が必要な面白いソフトも遊べた方が良いじゃないですか。
世の中で広く使われているマウス操作をJoy-Conで実現するのはそこまでコストがかかるものではないですし、それこそ「枯れた技術の水平思考」※14かな、と。 すごく良いアイデアだと思って、技術開発部に提案したら・・・ 「私たちもそれ、昔から考えていましたよ」って(笑)。
※14電子玩具や「ゲーム&ウオッチ」、「ゲームボーイ」の開発を手がけた元任天堂開発第一部部長の横井軍平が提唱した開発思想。最先端ではないが世の中で広く使われている技術を新しい別の用途で使うことで、新たなヒット商品が生み出せるのではないかという考えかた。その後の任天堂のものづくりに影響を与えた。
(笑)。
いつか言われるんじゃないかと思って、実現するための技術をウォッチしていたんですよ。今回はタイミングよく解決する提案ができたかなと思います。
Joy-Conは2つあるので、例えば『メトロイドプライム4 ビヨンド』※15のNintendo Switch 2 Editionでは、左手でJoy-Con 2 (L)を持ってスティックでキャラクターを移動させながら右手でJoy-Con 2 (R)をマウス操作して狙い撃つ、みたいなこともできます。
動画Joy-Con 2 を2つ使って『Drag x Drive』※16のようなゲームができたり、動画『スーパー マリオパーティ ジャンボリー Nintendo Switch 2 Edition + ジャンボリーTV』※17のようにふたりでマウスを使う遊びもつくれるのでさらにいろんなゲームが遊べるようになります。
※152025年発売予定のNintendo Switchソフト。主人公「サムス・アラン」の視点で360度に広がる世界を探索する「メトロイドプライム」シリーズ完全新作。『メトロイドプライム4 ビヨンド Nintendo Switch 2 Edition』ではスティックやジャイロセンサーを使う操作の他に、マウス操作による直感的なプレイが可能。
※162025年夏発売予定のNintendo Switch 2 ダウンロードソフト。2本の「Joy-Con 2」を両手に持ってマウスのように動かし、2つの車輪を操作して直感的に遊ぶ、3×3バスケのような新感覚のスポーツゲーム。
※172025年7月発売のNintendo Switch 2 Editionソフト。シリーズ最多のミニゲームを収録した2024年10月発売のNintendo Switchソフト『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』にNintendo Switch 2 のマウス操作やボイス操作、カメラを使った遊びなどの新要素を追加したアップグレード版。
ご存知のとおりSwitchの画面はタッチ操作に対応しているんですが、それを使えるのは携帯モードとテーブルモードの時だけなんです。TVモードになるとその機能が使えなくなってしまう。
Switch 2 でもタッチ操作に関しては同じなのですが、マウスがあることによって、まったく同じではないものの、WiiでいうTVの中の一点を指し示すポインティングみたいなことができるので、タッチ操作の代わりにもなるのではと思います。
それで思い出したんですが・・・実はSwitchをつくっていたとき、タッチパネルはTVモードでは使えないからボツにしようか・・・と悩んでいたのですが岩田さんが、「うまく使えるソフトはあるだろうから、つけておいたらどう?」と言ったので、入れたんです(笑)。
確かに携帯モードでタッチ操作するソフトは、TVモードでの操作が難しいですよね。マウスがあると、両モードでの体験の整合性が取りやすくなりそうです。
ソフトをつくる側からすると、そうやって対応できる選択肢があるのはありがたいですね。
コントローラーでいうと、新しくなったのはJoy-Conだけですか? Proコントローラーなどはどうでしょうか。
もちろん、Switch 2 でもSwitchのJoy-ConやProコントローラーはお使いいただけます。ですが、今回はさらに進化したコントローラーをつくりました。
Nintendo Switch 2 Proコントローラーは一見、SwitchのProコントローラーと色以外の区別がつかない方もいらっしゃると思うんですけど、これも全部イチからつくり直してもらいました。
特にLスティック/Rスティックは端まですばやく動かしても静かで、カチャカチャ言わなくなっています。
また、触り心地もとても滑らかなので「エアリアルスティック」と呼んでいます(笑)。
ああ、確かに触ってみると引っ掛かりのようなものをまったく感じないですね。
「エアリアルスティック」って呼んでいるくらいなので、スティックを倒した時に、衝突する感じを少なくする工夫をしているんです。実は極上のコントローラーをつくるのを目指そうというプロジェクトが長く社内にあって、そこでずっと研究を重ねていました。
グリップは今回、ゲームキューブのコントローラーを参考に、グリップの付け根を薄くしていて、指が窮屈になりにくくなっています。グリップ部分のパーツの継ぎ目もなくしてすっきりとした触り心地にしています。社内では「シームレスグリップ」と呼んでいます。
それから、ヘッドホンマイク端子が追加されて、ヘッドホンマイクが使えるのはもちろん、音を出して周囲の人の邪魔をしたくないときなどに便利になりました。
さらに今回、グリップの裏側にGLボタン/GRボタンという新しいボタンを追加しました。
その2つのボタンはJoy-Con 2 にはついていないボタンですよね?
はい。Nintendo Switch 2 Proコントローラーと、別売のJoy-Con 2 充電グリップにGLボタン/GRボタンがついています。
この2つのボタンには、お客さまが好きなボタンを割り当てることができるようになっています。しかもこの割り当てはゲームごと、そしてプレイヤーごとに保存されるので、よく使うボタンをここに割り当てたり、同時に操作しづらいボタンを割り当てたり、気軽にカスタマイズすることができます。
例えば、キャプチャーボタンをGLボタンに割り当てて、Lスティックから指を離さずにGLボタンを押してスクリーンショットを撮る、みたいなことができます。
なるほど、見た目だけでは気づきませんでしたが、かなりいろいろな部分が変わっているんですね。