2025.4.3
たくさんの技術が集まることで成り立っているゲームチャットですが、その調整の中でも難しかったり葛藤したりしたことなどはありますか。
さきほどゲーム実況のような見え方にできる、という話をしたんですけど、一方でゲームチャットはゲーム実況のツールではないので、そう見えないようにしようというのは意識しました。
ゲームチャットのメインは声を使ったコミュニケーションなんです。それにゲーム画面共有やカメラの機能もあるので、ぜひ仲のよい人たち同士で遊んでもらいたいと思っています。
ゲーム実況のように見せられるのは、あくまでそういったこともやろうとすればできるというだけで、基本はコミュニケーションのための機能ということですね。
そのあたりは誤解のないように、特にゲーム画面共有のレイアウトは試行錯誤がありました。
例えば他の人のゲーム画面を拡大して見る機能があるんですけど、そのときは拡大されるのはゲーム画面だけで、遊んでいる人のカメラ映像までは一緒に拡大されないようになっています。ゲーム画面を拡大するときに、しっかりと確認したいのはゲーム画面のはずで、その画面をみながらボイスチャットなどで気心知れた人たちと楽しく会話してもらうことを意識しています。
確かに「部室」っておっしゃっていましたもんね。
「気心知れた人たちが集まる場所」みたいなものを意識してたんですよね。
みんな同じ空間にいるんですけど、ある人はスマートフォンをいじっていて、また別の人はゲームをしていて、また別の人は漫画を読んでいて・・・それぞれやりたいことを別々にやっているけど一緒にいて居心地がよい・・・みたいな。
このゲームチャットも、みんなで同じゲームを遊んでもいいし、それぞれが別々のゲームを遊びながら会話を楽しむのでもいい。そんな自由な居心地のよい空間を実現できればと思っています。
ゲームチャットがあることで、友だちとの会話が「15時からマリオカートやろうよ」というものから「とりあえずゲームチャットに招待しておくから来て」に変わるんじゃないかと思っています。
例えばこれまでの任天堂のゲーム機でのオンラインプレイは何のゲームをいつから始めるって事前に決めておかないと集まりにくかったと思うんです。
でも、ゲームチャットがあることで、いつから何のゲームを始めるかを事前に決めなくてもフレンドがチャットに集まってきて、それぞれが好きなゲームをしながら、そしてフレンドが遊んでいるゲームを横目に見ながら「次は何で遊ぼうか」みたいな相談ができることになるので、大きな変化かな、と思います。
なるほど、「部室」とおっしゃっていた意味がよくわかりました。用がなくてもなんとなく集まってしまう場所、みたいなことですね。
それから、ゲーム画面共有を試していて、間を持たせるような効果もあるな、と気づきました。
間を持たせる?
ボイスチャットって、どうしてもしゃべり続けないといけないみたいなことを考えがちなんですけど、自分のゲーム画面を共有して見せることで、しゃべらなくても情報発信しているような気持ちになるので居心地が悪くなく、その場にいられたりするんですよね。
それで、たまたま目に入った相手のゲーム画面から会話が生まれたりして。
「このゲーム何?」とか、「今のどうやったの?」とか、相手の画面を見ているだけでも会話が増えますよね。そしたらちょっと自分のゲームの手を止めてみんなでひとりの画面に注目したりして。
カメラで手元を映して「このボタンを使うといいよ」とプレイ方法を教え合うこともできますし、今までひとりでやっていたゲームも、また新しい楽しみ方が増えると思います。
新しい楽しみ方といえば、『Stardew Valley』※11というオンラインで遊べるゲームをゲームチャットと組み合わせてみんなで遊んでいたときに発見がありました。
みんながそれぞれ役割分担して素材集めを始めるとお互いがどこにいるのかわからなくなりがちなのですが、ゲームチャットでゲーム画面共有をしていると相手が何をしているかがすぐにわかるんです。
「あ、洞窟にもぐって苦労してるんだね。じゃあヘルプに行くよ!」みたいな会話が生まれたりして。一緒に遊んでいる人の情報がより伝わりやすくなるとゲームの遊び方自体の幅も広がるというのは開発しながらわかってきたことでもありました。
※11ConcernedApeが発売した、さまざまな道具や資源をつかって自給自足をしながら、祖父から受け継いだ農場を発展させていく農場系ロールプレイングゲーム。2018年1月にNintendo Switch版が発売された。
『あつまれ どうぶつの森』※12もそうですよね。オンラインプレイでフレンドの島に行けたりするんですけど、自分の島で島づくりに励んでいても、ゲーム画面共有でチャット相手がどんなことをしているかが見えていれば「そっちの島につねきち来てるじゃん。買いものに行かせて」 ということができたり。
自分だけのゲームの世界から視界がワッと広がった感じがして、私はその体験がすごくいいな、と思いましたね。
※122020年3月発売のNintendo Switchソフト。現実と同じ時間が流れる無人島を舞台に、釣りやムシとり、ガーデニングやお部屋づくりなどを自由気ままに楽しむゲーム。
タイムアタック系のゲームも、ゲームチャットを使うとさらに違う面白さが生まれることがわかりました。
『はたらくUFO』※13はオンライン対戦ができないんですけど、例えばローカルで二人プレイをしている人たちが、ゲームチャットでつないでゲーム画面を共有すると、2対2でスコアを競うような遊び方もできるんです。
ちらっと見たときに相手組の残りタイムが見えて「あ、今こっちが勝ってる!」とか、状況もわかりますし、また、相手組のゲーム画面が攻略のヒントになったりと、新しい遊びがつくれたような感覚になりました。
※132020年10月発売のNintendo Switchソフト。クレーン付きのUFOを操作し、つかんで、はこんで、つみあげることでお題をクリアするゲーム。
『リングフィット アドベンチャー』のような一人用のゲームも、ゲームチャットを使えば対戦できたりしそうですね。※14
※14『リングフィット アドベンチャー』をNintendo Switch 2 で遊ぶ場合は、Nintendo Switch用のJoy-Conが必要です。
ゲーム画面の共有で対戦もできると思いますけどNintendo Switch 2 カメラが広角で映るので、ゲーム画面よりもゲームを遊んでいる人の動きを見せ合った方が面白かったりもするかもしれません。
それに、一緒にやるという意味では、ひとりでもくもくとやるとちょっとつらいトレーニングも、みんなで一緒にやれば乗り越えられるかも・・・?
なるほど、それはカメラがあるからこその楽しみ方ですよね。ところで、Nintendo Switch 2 では「カメラプレイ」という手元のカメラとゲームを組み合わせた遊びができると聞きましたが。
カメラプレイでは、ゲームの中にカメラ画像を取り込んで遊べます。例えばカメラプレイに対応している『スーパー マリオパーティ ジャンボリー Nintendo Switch 2 Edition + ジャンボリーTV』※15では、プレイしているキャラクターの横にカメラで映した自分の顔を表示できるようになります。
パーティーゲームって、だれがどのキャラクターを使っているのか、わかりにくかったりすることがありますが、動画ミニゲームで1位になればプレイヤーの顔に王冠がのったり、負けたら「ウワァ~」ってやられるような演出がついたりするので、バラエティ番組みたいで面白いです。
※152025年7月発売予定のNintendo Switch 2 Edition ソフト。シリーズ最多のミニゲームを収録した2024年10月発売のNintendo Switchソフト『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』に、Nintendo Switch 2 のマウス操作やボイス操作、カメラを使った遊びなどの新要素を追加したアップグレード版。『Switch 2 Edition』の詳細はこちらをご確認ください。
このカメラプレイは、オンラインじゃなくても遊べるんですけど、オンラインでゲームチャットしているときにも遊べるようになっていますから、ゲームチャットとカメラプレイを組み合わせて遠くのフレンドとも一緒にカメラプレイを楽しんでいただけます。
自分がゲームをプレイしているときの表情って普段見ないと思いますけど、それがゲーム画面の中にあって、みんなと一緒に並んでいるのも新鮮です。
それは確かに面白そうです。ただ、そこまでハッキリと顔や表情が映り込むとなると、全体的に安全面は気になりますよね。そのあたりはどのような仕組みになっているのでしょうか。
ゲームチャットを安心・安全に使っていただけるかという部分はかなり検討を重ねました。
まず、Switchのフレンドをそのまま引き継いでいきなり全員とゲームチャット可能、ということはないようにしています。
フレンドの中には、オンラインプレイでたまたま一回遊んでなんとなくフレンド申請がきてフレンドになった、みたいな人もいるかもしれないと思ったので。それなのに、いきなりビデオ付きのチャットが全員と可能というのもちょっと怖いですよね。
なので、ゲームチャットを始める前に初期設定の中で、フレンドの中からこの人とはチャットしてもいいよ、という対象を選べるようにしています。
フレンドがつくった部屋に入ったとしてもそこには自分が承認したフレンドか、そのフレンドがゲームチャット相手として承認したフレンドしかいないことになります。その場合も、事前にチャットの参加者を確認できるので望まない相手といつの間にかチャットしてしまうことはありません。
なるほど。ですが、お子さんの場合はさらにケアが必要ですよね。
そこは社内でもかなりヒアリングをして検討しました。16歳未満の方がゲームチャットを利用するには保護者の方がスマートフォンアプリの『Nintendo みまもりSwitch』を使ってフレンドの中でも誰とチャットしていいかを許可する形にしています。
ボイスチャットについては、一度保護者が承認すれば、それ以降も承認した相手とつなげることができますが、ビデオチャットについては、もう一段、慎重にしています。
お子さんがSwitch 2 側でビデオチャットを始めようとすると、保護者の方のスマホアプリにリクエストが届きます。これを承認しなければビデオチャットは開始できません。お子さんにとっては少し窮屈かもしれないけど、安全を優先して毎回保護者の方に承認してもらう仕組みになっています。
カメラ側にも使わない時にレンズを閉じられるプライバシーシャッターをつけましたし、カメラを起動しているかどうかはひと目でわかるようにしています。
もちろんチャットでつながるうえで、フレンド同士であってもマナーは守っていただきたいですが、みなさんに快適に使っていただきたいので、嫌な思いをすることがないよう、安全面は重視しました。
ありがとうございます。誰でも快適に、安全に利用できるチャットを目指して開発されていることがよくわかりました。それでは最後になりますが、ゲームチャットをこれから利用されるお客さまへ、ひと言ずつお願いできますか。
気心知れた友だちと、とにかくまずは使ってみて、楽しんでいただきたいです。
私自身、発売されたら早速Switch 2 カメラも使って遠くに住んでいてなかなか会う機会がない友だちも誘って遊んでみようと思っています。ぜひいろんな方に体験してもらえると嬉しいです。
ゲームチャットをつかってこれまで発売されたゲームを遊ぶと、なんだか視界が開けたような感覚があって・・・全員にこの感覚を味わっていただけるかはわかりませんが、どんなゲームでもいいんです。まずは気軽に人を誘って一緒にやってみてください。
しゃべらずにただゲームをするだけでもいいですし、会話しながらゲームを楽しむのもいいです。いろんな遊び方があると思うのでぜひみなさんの日常のなかに、このゲームチャットを取り入れていただけたらありがたいな、と思います。
ボイスチャットがあって、ビデオチャットもできて、ゲーム画面の共有もできて・・・と、機能としては盛りだくさんのチャット機能にはなったんですけど、あまり難しいことは考えずに使えるように開発しています。
なので、初めての方も、ボイスチャットにはちょっと抵抗があるという方も、難しい機能は苦手だという方も、まずは触ってみてください。何気なく触っていたら自然と使いこなせるようになっている・・・そんなことを目指して開発しました。
それから、今まで遊んでいたゲームもゲームチャットの機能の使い方次第で違った見え方になると思います。その組み合わせは、私たち開発者も全部見つけられているわけではありません。
もっとお客さまのなかでいろいろと面白い使い方や新しい遊びが発見されていくといいな、と思っています。
これまでのゲームも、これからのゲームも、ゲームチャットによって遊び方の幅がどのように広がっていくのか楽しみですね。ありがとうございました。