信じてはいけない水分補給の6大誤解、「1日2L」や「コーヒーやお茶はNG」ほか
水分が足りているかどうかのサイン、飲むべきタイミングと量などを専門家が伝授
水は人体に最も多く含まれる物質だが、その重要性は必ずしも十分に知られていない。米世論調査会社CivicScienceが2900人近くを対象に行った2023年の調査によると、米国の成人のおよそ半数が、1日に推奨される水分量を取っていないことがわかった。これは困った問題だ。なぜなら、適切な水分補給は、健康を保つうえで非常に手軽で、かつ効果的な方法の1つだからだ。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 まず、水分は体温の調節や関節の潤滑、消化、解毒、栄養素の運搬、エネルギーの生成、そして心臓や脳の機能に不可欠だ。さらに、米国立衛生研究所(NIH)の最近の研究によれば、適切な水分補給は、慢性疾患の発症リスクや早期死亡のリスク、生物学的年齢が実年齢を上回るリスクの低下とも関連している。 「水分補給は、体内のあらゆる細胞機能の基盤です」と語るのは、米ニューヨーク市で統合医療を専門とする医師であり、共著に『「食べる水」が体を変える : 疲労・肥満・老いを遠ざける、最新の水分補給メソッド』(講談社)などがあるダナ・コーエン氏だ。 「ですが、多くの人が軽度の脱水状態のまま日常を過ごしており、自覚すらしていません。こうした慢性的な水分不足は、疲労や頭痛、集中力の低下、関節の痛みを引き起こすだけでなく、空腹だと勘違いしてしまう状態を招くこともあります」 こうした落とし穴にはまらないために、水分補給にまつわる代表的な俗説の真偽をひも解いていこう。
誤解1:成人は毎日2リットルの水を摂取すべき
「毎日約2リットルという教えは、私たちの頭の中に刷り込まれています。ですが実際には、必要な水分量は体格や活動量、生活環境によって人それぞれ異なります」と、米サンディエゴを拠点にする栄養士で健康専門家のウェンディ・バジリアン氏は語る。氏は、ポッドキャスト「1,000 Waking Minutes」のホストも務める。 実際、全米科学・工学・医学アカデミーは、体の適切な水分量を維持するには、食事からの分も含めて成人女性は1日あたり2.7リットル、成人男性は3.7リットルの水分を摂取するよう推奨している(編注:厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、十分な情報が整っていないとして水の目安量は定めていない)。 気温や湿度が上がる夏場には、特に屋外で過ごしたり運動をしたりする場合、必要な水分量はさらに多くなる可能性がある。たとえ汗をかいていないように見えても、呼吸や皮膚の表面からの蒸発によって、体は水分を失っている。高温多湿の環境や標高の高いところなどでは、その傾向が強くなる。軽い作業中でも、あるいは休息しているときでさえ、水分補給が重要とされるのはそのためだ。 軽度の脱水状態であっても、熱けいれん、熱疲労、熱射病といった熱中症のリスクが高まるので注意が必要だとコーエン氏は語る。 「暑いときは、汗が目に見えて流れていなくても、発汗による水分の損失は加速します。つまり、夏は水分補給がいっそう重要になるのです。目安として、暑い屋外にいるときや運動中は、1時間ごとに少なくとも約470ミリリットルの水分を補給しましょう」