参政党のこれまでを振り返る(結党前史編)

今年の参院選で勢力を伸ばすのではないかと予想されている参政党。都議選での4人中3人の当選や、梅村みずほ議員の入党による政党要件充足もあって注目度が急上昇し、先日の黒猫ドラネコさんの記事はかなりの話題を呼んでいた。

これも参政党について関心を持っている人が多いことの表れだろう。

そこで、黒猫さんほどではないが、参政党を見てきた筆者の目線でも過去の記録を含めた振り返りを書いておきたい。読者の参考になれば幸いである。

興味深い点の多い参政党前史

参政党というと、「最近いきなり出てきた党」というイメージを持っている方がいるかもしれない。しかし、参政党の結党は2020年、そして代表である神谷宗幣氏が吹田市議会議員になったのは2007年である。決して「政治の素人がいきなり立ち上げた党が、突然急成長している」わけではない。

そして、結党以前の神谷氏の活動は、いわば参政党の前史となる。実は、筆者にとって興味深い点がこの前史に多く含まれているため、ここから記述を始めたい。

前述の通り、神谷氏は2007年から吹田市議会議員を務めていた。神谷氏は2期目の途中で市議を辞職し、2012年の衆院選、2015年の大阪府議選に挑むも連続で落選してしまった。政治家としては決して順風満帆なキャリアとは言えないだろう。それではその間、神谷氏はどのような活動を行っていたのだろうか。

龍馬プロジェクト、林英臣政経塾、にんげんクラブ

落選していたとはいえ、神谷氏は政治運動を諦めたわけではなかった。氏のこの期間の主な政治活動として挙げられるのが龍馬プロジェクトである。龍馬プロジェクトとは、神谷氏によって2010年に立ち上げられた地方議員・首長のネットワークであり、主に保守派によって構成されている。

2012年時点の龍馬プロジェクトトップページ

一時は役員に杉田水脈氏も名を連ねていた。

2012年当時のメンバーページ

このように、神谷氏は元々地道な人脈作りを行ってきており、何かの飛び道具で突然人が集まってきたわけではない。

龍馬プロジェクトは現在も活動が続いており、その最新の活動記録では「阿波古代史とソロモンの秘宝についてお話を頂きました。古代ユダヤの聖壇の箱アークは剣山にあります。これは単なる都市伝説的な話ではなく、我々の知らない歴史とそしてそれを知る事で大きな時代の変革期の中でこれからどう生きていくか、私たちの常識を覆すものでした。」と書かれており、神谷氏は参加していないものの、剣山ソロモン伝説についての資料館を訪れた様子が掲載されている。

オカルト好きな人ならこの話を何度も聞いたことがあるだろう。古代イスラエルを追われたユダヤ人が遥か遠くの日本へと辿り着いて日本人の祖先となり、その証拠に日本の祭りや習慣の中にユダヤ教と共通したものが云々、ソロモンの秘宝やアーク(聖櫃)が徳島県の剣山に眠っており…などと続く、いわゆる「日ユ同祖論」である。オカルトを強く支持しているかどうかは分からないが、「単なる都市伝説ではなく」「常識を覆す」意義があるものとして取り上げるのに抵抗はなさそうだ。

そして、そのような話題に関心を持って執筆している筆者にとって興味深いのが、この龍馬プロジェクトが林英臣政経塾のメンバーによって結成されていたことである。

龍馬プロジェクト結成を振り返る神谷氏のブログ

林英臣氏は、東西の文明が交代しながら800年周期で盛衰を繰り返すという「文明法則史学」を推進している人物であり、その講義体系に「大和言葉の縄文日本学」が含まれ「元氣」が使われるなどスピリチュアル色が見られる。神谷氏はこの頃から、オカルトやスピリチュアルの混じる政治活動に抵抗を感じていなかったのではないだろうか。

林氏の講義体系
文明法則史学解説の一部

龍馬プロジェクト発足時の興味深い情報としては、神谷氏が「にんげんクラブ」に所属していたと見受けられる点が挙げられる。龍馬プロジェクトが発足した2010年、若き神谷氏がにんげんクラブの支部リーダー・プログラムで龍馬プロジェクトの始動スピーチを行っている動画を現在でも確認できる。

この「にんげんクラブ」とは、「オカルトのドン」と呼ばれた舩井幸雄氏を支持する人々のコミュニティであり、古神道や偽史を通じて保守派と相性が良い。

かつてのトップページ

「オカルトのドン」と呼ばれるだけに舩井幸雄氏はスピリチュアル色が強く(というより、ビジネス・自己啓発系のスピリチュアル業界を牽引した人物である)、その関連サイトにはスピリチュアルグッズが並ぶ。

スピリチュアルに関心を持っている人なら、類似の商品を何度も見たことがあるだろう

過去に神谷氏が幹部を務めていた団体が参政党の後ろ盾ではないかと言われることがあるが、そうした団体の代表を見ると船井幸雄氏やにんげんクラブの界隈でセミナー開催や書籍出版をたびたび行っていることがあり(例としてはイスラエル関連の団体)、筆者は特定の団体が参政党の人手や資金を一手に引き受けて今の姿を作り上げてきたというよりは、苦戦しながら政治家としての基盤を築こうとしていた神谷氏がスピリチュアルに抵抗を覚えていなかった(あるいは親和的だった)ため、深く考えずに引き受けた結果ではないかと考えている。

そもそもオカルトやスピリチュアル、陰謀論について執筆していた筆者が参政党に関心を持つようになったのも、調べてみるとこのようなオカルト・スピリチュアルに接続された政治思想が見えてくるためだ。筆者が神谷氏を知ったのも、水質浄化が可能という黒い粉末を全国の公共河川に投げ込むスピリチュアル系の人が大量に発生した「バクチャー」について調べていた際、周辺人脈として浮かび上がってきたためであった。

神社や神道にスピリチュアルな力を見出すところから日本の精神の根源を辿る流れに乗り、縄文時代にまで遡った上で太古の日本や「日本民族」に理想を見出すような形で保守に接近する傾向は以前からあり(カウンターカルチャーからの流れでいくと、欧米では現代西欧文明のオルタナティブとして東洋文化が歓迎されたが、日本はそもそも東洋なので、現代社会に反発しながらも日本の伝統や精神の根源を探る方向に向かう。ただし、そこで偽史が使われることも多々ある。もちろん欧米でも過去を理想化するタイプのスピリチュアルが白人至上主義に接近する例があるが、それはまた別の機会に書きたい)、政治家がスピリチュアルに接近している例も珍しいものではない。この時期の神谷氏の活動もその一つだろう。

早い時期から行っていた動画発信

もう一つの目に付く活動としては、動画を使った情報発信がある。神谷氏は2013年に株式会社グランドストラテジーを設立し、「チャンネルグランドストラテジー(CGS)」というウェブサイトで動画を公開している。動画発信についても神谷氏は長年行ってきており、現在のYoutubeやTiktok活用の下地は、この頃既に作られ始めていた。

2019年時点の番組一覧を見ると小名木善行氏や山岡鉄秀氏、河添恵子氏などその後参政党に関わって来る人々が名を連ねており、また神谷氏がゲストを招いてトークする「神谷宗幣が訊く」では多数のゲストが登壇していた。地道に人脈を築いていたことがうかがえる。

現在の過去講師のリストには参政党に関わることとなる人々が名を連ねており、築いた人脈がその後に活用されていることが分かる

健康グッズ販売にセミナービジネス

また神谷氏は、自身のビジネスのポータルとなるイシキカイカク.comを立ち上げ、様々なセミナーやグッズの販売を行っていく。「怪しげな高額商品を販売していた」として現在も批判文脈で引用されるシャンプーやマコモ、バクチャー活性エキス(前述した「バクチャー」の関連製品)も、このサイトで販売されていたものだ。

ちなみに、上記のシャンプーやマコモ製品は、昨年12月にインスタグラムへアップロードされた「うちのお風呂…1年半お湯変えてません!」の強烈なインパクトから瞬く間にネットミーム化した、マコモ湯の素を販売している企業の製品(この企業はニッチな市場ながらも長年マコモ製品を最大手として取り扱ってきており、マコモ湯とくればほぼこの会社の製品と考えて良い)である。政治家がこのような商品を販売しているのに違和感を持つ人がいるだろうが(だからこそ批判によく使われる)、前述したスピリチュアル界隈との関わりを考えれば納得だろう。

神谷氏は、2018年に「イシキカイカク大学」というセミナーを開始している。講師陣の例としては、「ディープ・ステート」についての書籍を複数発行している馬渕睦夫氏や、著名なスピリチュアリストである並木良和氏などが名を連ねていた。それまで築いてきた人脈をセミナービジネスに結実させている。

画像

その告知ページはこの手の商材でよく見る縦に長いランディングページで、この時期の神谷氏がこうしたノウハウも飲み込んでいたことを物語る。

とにかく縦に長い

政党DIYから参政党へ

そして、龍馬プロジェクトや動画発信、セミナービジネスなどを行い人脈を築いてきた神谷氏が中心となり2019年4月にYoutubeチャンネル「政党DIY」が開設され、これが参政党の実質的な前身となった。最初期のメンバーは神谷氏、渡瀬裕哉氏、KAZUYA氏の3人であった。

政党DIY時代の動画は既に非公開となっているものの、当時シェアされていた情報から、選挙プランナーの松田馨氏が登場したり(松田氏はイシキカイカク大学にも講師として参画していた)、地方組織の重要性を確認していた痕跡がうかがえる。神谷氏はこの頃から選挙戦術を学び、地方組織の構築を重視していたのだろう。

そして翌年の2020年4月11日、参政党は正式に結党されることとなる……がその後、渡瀬氏とKAZUYA氏は神谷氏と路線対立し離脱、代わって武田邦彦氏や赤尾由美氏、吉野敏明氏が台頭するのであった。

ここまでの流れを見ると、2000年代後半にはスピリチュアルに接続された保守派と接近していた神谷氏が、落選続きの2010年代になりふり構わず人脈を広げてビジネスを展開してきた様子が浮かび上がってくる。その結果、神谷氏は自身が中心となった政党の結成を実現するものの、そこには陰謀論やスピリチュアルが混ざり込むこととなった。

このような手を使ってでも政治家になろうとしてきた自負が、倉山満氏に放ったとされる「陰謀論、ネットワークビジネス、そういうものを許容しないと広がりが無い」という発言に表れたのだろうか。

(続く)


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