神奈川 座間 男女9人殺害 白石隆浩死刑囚に刑執行

裁判で主任弁護人を務めた大森顕弁護士は、死刑判決が確定したあとも半年から1年に1回の頻度でこれまでに5、6回面会したということです。

そして、3日前にも20分間、面会していていつもと変わらない様子で拘置所内での生活の話などをしていたということです。

死刑執行を受けて「突然のことなのでコメントがすぐには浮かばない。じっくり考えたい」と話しています。

殺害された埼玉県所沢市の当時、大学2年だった女性の恩師が27日午後、取材に応じました。

猪俣修さんは、女性が中学3年だったときの担任を務めていて当時の様子について「真面目で努力家だった女性が志望する高校に合格するため懸命に勉強していたのが印象に残っている」と振り返っていました。

猪俣さんは裁判を傍聴していたということで「裁判のときは反省の色が見えず、不誠実に見えました。死刑が執行されて安心した気持ちがある一方、きちんと罪に向き合ってほしかったです」と話していました。

女性に対しては「死刑が執行されたからといって彼女が戻ってくるわけではないので、安らかに眠ってくださいとしか言えません」と話していました。

殺害された神奈川県横須賀市の当時20歳の男性の友人がNHKの取材に応じ「刑が執行されてもこれで終わりという思いにはなれない」などと心境を語りました。

亡くなった男性とは一緒にライブを見に行ったりご飯にも行ったりする仲だったということで「人なつっこくて私にとってはかわいらしい人でした」と述べ生前の様子を思い浮かべていました。

そのうえで「友人を殺害され死刑囚に対してはずっと憎いという気持ちです。刑が執行されたからといって亡くなった人たちは帰ってきませんので、これで終わりという思いにはなれない。友人が殺害されたという思いはずっと消えず、こんな事件は起きてほしくなかった」と話していました。

この横須賀市の当時20歳の男性と高校時代に一緒にバンド活動をしていたという村上和輝さん（27）はNHKの取材に対し「男性は誰からも好かれる性格で社会に出て、人生はまさにこれからという時に亡くなった。今でも泣くほど悔しく死刑囚には『なぜ殺したんだ』という恨みがある」と話していました。

白石死刑囚と接見して本を執筆したことがあるフリージャーナリストの渋井哲也さんは「断られることも多かったが3回接見することができた。会った印象は凶悪事件を犯す人間というより普通の青年という印象だった」と話していました。

事件を起こした目的について尋ねたところ、白石死刑囚は「殺人が目的ではなくお金を出してくれる女性を探していた」と話していたということです。

ただ渋井さんは「ターゲットとなったのは10代や20代の若者で、お金もなく、結果として殺害に至っている。接見で話していた目的と、実際に行われた犯行の手段が乖離していると感じた。裁判の傍聴や接見を重ねてもこの点は結局、分からなかった。今後、同じような事件を防ぐための検証として、もう少し詳しく知りたかった」と話していました。

白石隆浩死刑囚が住んでいた神奈川県座間市のアパートの近くに住む70代の女性は「刑の執行は事件の遺族のことを考えると当然かと思う。この地域に30年以上、住んでいるが、あんな恐ろしい事件は初めてだった。プライバシーが尊重される世の中だが、近所の付き合いでこのような事件を防ぐこともできるのではないか」と話していました。

生きづらさを抱える10代や20代の女性の支援を行っている東京 渋谷区のNPO法人「BONDプロジェクト」の橘ジュン代表は「事件当時、被害を受けた方と私たちへの相談者が重なって見えて急きょ、相談者の皆さんに連絡を取りました。『被害を受けた方の相談を受けられていたならば』と思ったことを覚えています」と振り返りました。

また、橘代表は白石死刑囚と面会したときのことについて「なぜ自殺願望のある子を狙ったのかと尋ねると『彼女たちは話を聞いて欲しくて、僕に会いに来ていた』と話していました。そして『あなたみたいな人に誘い出されないために、どうしたらいいのか』と尋ねると『僕につながる前にあなたたちが見つけたらいい。あなたたちの支援は必要だ』と言われました。死にたいと言っている人も誰かに話を聞いて欲しいのだと改めて思ったし、それ以降も似たような事件が起きているので、被害を繰り返さないためになんとかしなければといけない思いました。こうした事件を2度と繰り返さないためにも『死にたい』ということばでしか誰かとつながることができない人たちの支援を続けていきたいと思います」と話していました。

この事件を受けてインターネット上の違法・有害情報の通報を受け付ける「インターネット・ホットラインセンター」では、インターネット上で自殺に誘ったり、自殺の手助けを申し出たりする投稿を「自殺誘引情報」として位置づけSNS事業者などに対して速やかな削除を求めています。

警察庁によりますと2024年の1年間にセンターに寄せられた「自殺誘引情報」は6582件にのぼり、増加傾向が続いています。

センターが分析したところ、自殺の手助けを申し出るなど、自殺に関与する投稿が84件、集団自殺を呼びかけるなど自殺を勧誘する投稿が6498件だったということです。

また、その後も投稿が残ったままになっていた6359件についてサイトを管理する事業者などに削除を要請し、およそ78％にあたる4986件がことし1月までに削除されました。

しかし、残りの1373件は事業者が要請に応じなかったことなどから1月の時点で削除されないままになっていたということです。

SNSを使って自殺に誘う事件はことしに入ってからも相次いで発覚しています。

SNSで知り合った山形県内の10代の女性の自殺を手助けしたなどとして36歳の被告が起訴された事件では、被告はほかにも福島県内で男女4人の自殺をほう助して死亡させた罪に問われています。

いずれも、被告が「いっしょに自殺しませんか」などとSNSに書き込み、接触していたということです。

また、今月、山梨県の富士山の樹海で、自殺したとみられる女子高校生の遺体が見つかった事件では、直前まで一緒に行動していた21歳の容疑者がSNSを使って誘い出していたことがわかり、未成年者誘拐の疑いで逮捕されています。

この事件では、SNSで「死にたい」などと書き込んだ若者が被害にあったため、厚生労働省はSNS上で自殺願望を書き込む若者などの相談体制を強化しています。

厚生労働省はSNS上で相談事業を行うNPO法人などの団体に財政支援を行っていて、令和5年度には5つの団体があわせて27万5000件あまりの相談を受けています。

このうち、半数近くの13万3900件は「死にたい」など自殺に関する相談だったということです。

また相談を寄せた人のうち10代以下が40％と最も多く、次いで20代が26.6％となっています。

男女別では女性が82.2％と多くなっています。

また厚生労働省では不安や悩みを抱える人の相談窓口を設けています。

「まもろうよこころ」では、電話や、LINEなどのSNSやチャットで相談できる窓口を紹介しています。

厚生労働省が紹介している24時間対応の主な相談窓口です。

「よりそいホットライン」0120-279-338。

「24時間子供SOSダイヤル」0120-0-78310。

厚生労働省は「電話やSNSなどで相談が出来るので、悩みや不安があれば伝えてほしい」と呼びかけています。