第4回「アミールが死んだ」 野放しだった容疑者、沈黙の当局
今年2月5日深夜、枕元に置いていた携帯電話の画面が明るくなった。メッセージが届いたサインだ。アフガニスタンの情報提供者が、助手を通じて連絡してきた。メッセージは短かった。
連載「実行犯の『遺言』 ~中村哲さん殺害事件を追う~」
2019年にアフガニスタンで起きた、医師の中村哲さん殺害事件の全貌に迫る連載です。アフガニスタン当局が取り逃がしたアミール。情報をつなぎ合わせれば実在する人物であることが確認でき、記者はなんとか直接取材を試みようとします。そんな矢先に、驚くような知らせがありました。アミールのその後を伝える連載4回目です。
「アミールが死んだ」
目を疑った。中村哲さん殺害の容疑者とされる男アミール・ナワズ・メスードが、突然死んだというのだ。信じられなかった。いったい何があったのか。
メッセージには、写真が添えられていた。ピストルと手投げ弾を持った体格のいい男が、頭から血を流し、大の字に倒れている様子が映っていた。遺体のほお骨の張りや鼻の高さは、アミールに似ていた。下唇のすぐ下に生えたひげのうち、中央部だけを残し、左右をそるスタイルも同じだった。
メッセージを送ってきたのは、アミールと同じイスラム武装勢力「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」のメンバーで、第2話にも登場したアミールの知人だった。
助手を介して詳しい経緯を聞き取った。アミールは1週間前に仲間数人と首都カブール東部の住宅街で襲撃事件を起こした際、警備員に反撃され、射殺されたのだという。仲間1人も負傷し、逮捕された。残った仲間数人がクナール州の隠れ家に逃げ帰り、家族やTTP執行部に事のてんまつを報告したという。
アミールはどこで、どうやって死亡したのか。さらに、アフガニスタン当局がアミールを中村哲さん殺害事件の容疑者として捜査していたことも報じられます。当局、そしてアミールが所属していたイスラム武装組織はどう対応したのでしょうか。
2月6日の昼には、別のTT…
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