コメ価格の見通し指数 下げ幅最大 備蓄米放出が影響か

コメ取り引き関係者に調査した、向こう3か月のコメ価格の見通しを示す6月の指数は、調査を始めて以降、最も大きく下がりました。業界の間に、随意契約による割安な備蓄米の放出で、コメの価格は下がるという見方が強まっています。

JAグループやコメの販売業者などで作る「米穀安定供給確保支援機構」は、全国180の生産者や卸売業者などを対象にコメの価格や需給の見方などを毎月調査しています。

結果は0から100の指数で表され、100に近づくほどコメの価格水準が前の月より「高い」という見方が強いことを示しています。

4日に発表された6月の結果によりますと、価格の現状を示す指数は83と前回5月の調査から10ポイント低下しました。

さらに、向こう3か月の価格の見通しを示す指数は35と、24ポイント低下しました。

見通しの下げ幅は、2012年にこの調査が始まって以降、最も大きくなりました。

調査した団体は、先月から随意契約による割安な備蓄米が本格的に出回ったことで、価格が下がるという見方が強まったとみています。

コメの価格をめぐっては、政府が放出した備蓄米の流通が進む一方、今後はことし収穫される新米も店頭に並び始める見通しで、どのように推移するか注目されています。

スーパーでの価格値下がり 平均5キロ 3691円 2000円台も

全国およそ6000の店舗で6月29日までの1週間に販売されたコメの平均価格は、5キロあたり税込みで3691円と6週連続で値下がりしました。中には2000円台に下がった地域も出ています。

農林水産省は、随意契約の備蓄米によるコメ価格への影響などをより正確に示したいとして、先月から全国のスーパーなどおよそ6000店舗を対象にした民間のデータを新たに公表しています。

それによりますと、先月29日までの1週間に販売されたコメの平均価格は、5キロあたり税込みで3691円と、前の週より57円、値下がりしました。値下がりは6週連続です。

農林水産省は、随意契約による割安な備蓄米の販売が進んでいることが背景にあるとみています。

地域ごとにみると、▼もっとも安い「信越」は、前の週から431円下がって2968円と2000円台になりました。

また、▼「九州・沖縄」が3366円、▼「近畿」が3559円などとなっています。

一方、▼もっとも高い「東海」が4122円、▼「北陸」が4063円と4000円を上回る地域もあり、地域差が拡大しています。

埼玉 秩父のコメ屋 6月下旬から備蓄米の販売開始

埼玉県にあるコメ屋では、随意契約による備蓄米が6月下旬に入荷したことを受けて、入荷の翌日から販売を始めています。

埼玉県秩父市にあるコメ屋では、5月30日に随意契約による備蓄米、あわせて20トンの購入の申請を行いました。

申請を受けて店には、6月23日、令和3年に収穫された、青森県産の「まっしぐら」20トンが入荷しました。

店では精米作業を行って5キロごとに袋詰めにし、入荷の翌日から5キロ税込み1900円で販売を始めたということです。

この店では、十分な量のコメを仕入れることができず、店頭の品ぞろえが半分以下になっていたことに加え、コメの価格が高騰する中、価格が安いコメの需要もあると見て、備蓄米の申請を決めたということです。

入荷したコメは販売を始めてから1週間あまりで、3トン近く売れたということです。

備蓄米を購入した40代の女性は、「最近はコメが高く、なかなか手が出せなかった中、地元のお店で備蓄米を出していただいて、ありがたいです。最初はそのまま炊いておかずと一緒に味わってみたいです」と話していました。

「坂上商店」の店長守屋太一さんは、「ことしはコメがなかなか手に入らず、在庫が少ない状態だったので、売るものができたことが何よりもよかった。備蓄米をきっかけに幅広いお客さんに店に足をのばしてもらいたい」と話していました。

備蓄米が入荷せず 対応に苦慮するスーパー

米どころの山形県のスーパーでは全国の流通団体を通じて備蓄米を購入する契約を結びましたが、1か月以上たった今も入荷しておらず、対応に苦慮しています。

山形県天童市に本店があり、県内で4店舗を展開するスーパーでは、ことし5月下旬に全国の中小のスーパーが加盟し、共同で仕入れなどを行う流通団体と備蓄米9トンを仕入れる契約を結びました。

しかし、1か月以上たった今も入荷するめどが立っていない状況で、流通団体からは、米どころの東北のスーパーは後回しにしているという情報が寄せられたということです。

このスーパーの本店の村上兵太郎店長は「入荷せず、困っている。暑い時期になり、備蓄米の検査も追加で必要となって時間がかかっているため、九州地方の店舗を優先して入荷を進めていると聞いている」と話していました。

買い物に来ていた客は、備蓄米について「まだ買ったことがないが、売り出されたら試しに買ってみようと思う」と話していた一方、別の客は「味がわからないので、家族から『いつものコメの方がよい』と言われたら、銘柄米を買いたい」と話していました。

スーパーでは備蓄米への買い物客のニーズが二極化していることに加え、来月末までに販売することが購入の条件となっていることから注文をキャンセルすることも検討しているということです。

村上店長は「来月上旬に入荷すれば何とか売り切れるが時間の余裕はない」と話していました。

備蓄米の販売量 都道府県ごとの差も 流通拡大が課題

随意契約による備蓄米の販売量は、6月22日までで1万8000トンあまりにとどまっています。

都道府県ごとの差も生じていて流通をどれだけ拡大できるかが課題となっています。

農林水産省によりますと、小売業者などが販売した随意契約による備蓄米の量は、6月22日までで1万8391トンとなっています。

3日までにスーパーやコメの販売店などから申し込みが確定した量、29万トンあまりに対し、1割未満にとどまっています。

農林水産省は、随意契約の備蓄米の売り渡しの条件として8月末までに売り切ることを求めていて、流通をどれだけ拡大できるかが課題となっています。

また、地域ごとの差も生じています。

都道府県ごとにみると
▽東京都の1700トン、
▽大阪府の1563トン、
▽埼玉県の1242トン、
▽兵庫県の1207トンと消費地での販売量が多くなっています。

一方、7つの県では販売量が50トンを下回り、
▽秋田県が9トン、
▽岩手県が12トン、
▽青森県が15トン、
▽沖縄県が21トン、
▽高知県が31トン、
▽山形県が32トン、
▽島根県が48トンとなっています。

これらの地域で販売量が少ない理由について農林水産省は、備蓄米の保管場所から遠い西日本を中心に流通に時間がかかっているほか、コメの生産が盛んな東北地方では、親類や知人からの融通が多く備蓄米の需要は少ない可能性があるとしています。

専門家 “米どころ以外の地域優先した結果か”

コメの流通に詳しい流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は、随意契約の備蓄米の販売量に地域差があることについて「小売店が実際に商品を出していくときに人口が多い大都市部での販売量はどうしても多くなる。また米どころでは地元の銘柄米が安く出回っている地域もあるため、それ以外の地域に優先して配分した結果だと考えられる」と話しています。

また、備蓄米の販売量がスーパーなどから申し込みが確定した量の1割に満たない水準にとどまっていることについては、「スタートは早かったと思うが、期待よりは出回りが遅いという状況だ。精米と物流をいかに効率的に進めていけるかが今後の鍵になるが、随意契約の備蓄米をすべて8月末までに売り切るのはかなり難しい可能性が高い」と指摘しました。

そのうえで、「国が備蓄米の買い戻しをするか、8月末まで売れなくても引き続き売っていいという許可を出すか、その判断が問われることになる」と述べました。

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