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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第八章 生きては帰さぬ地下迷宮
108/352

8-17 兄妹の吸血鬼

久々ですがステータス紹介


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 ●凶鳥

==========

“●レベル:8”


“ステータス詳細

 ●力:21 ●守:13 ●速:24

 ●魔:12/12

 ●運:5”


“スキル詳細

 ●レベル1スキル『個人ステータス表示』(強制解放)

 ●アサシン固有スキル『暗器』

 ●アサシン固有スキル『暗視』

 ●アサシン固有スキル『暗躍』

 ●アサシン固有スキル『暗澹』

 ●アサシン固有スキル『暗影』

 ●死霊使い固有スキル『動け死体』

 ●死霊使い固有スキル『グレイブ・ストライク』

 ●スキュラ固有スキル『耐毒』

 ●魔法使い固有スキル『三節呪文』

 ●救世主固有スキル『???』(非表示)

 ●実績達成スキル『吸血鬼化(強制)』

 ●実績達成スキル『淫魔王の蜜(強制)』

 ●実績達成スキル『記憶封印(強制)』

 ●実績達成スキル『凶鳥面(強制)』

 ●実績達成スキル『正体不明(?)』

 ●実績達成ボーナススキル『経験値泥棒』

 ●実績達成ボーナススキル『吊橋効果(極)』

 ●実績達成ボーナススキル『オーク・クライ』

 ●実績達成ボーナススキル『成金』

 ●実績達成ボーナススキル『破産』

 ●実績達成ボーナススキル『一発逆転』

 ●実績達成ボーナススキル『エンカウント率上昇(強制)』

 ×他、封印多数のため省略。封印解除が近いスキルのみ表示”


“職業詳細

 ●死霊使い(Dランク)

 ●救世主(初心者)(非表示)

 ×アサシン(?ランク)(封印中)”

==========


 暗澹あんたん空間内で、エミールはギラリと赤い眼光を強めて俺を直視した。どうも俺の姿が見えている様子だ。単純な闇ではないため夜目が利くぐらいで見えるものではないのだが、気配を探られたのかもしれない。ささやく距離まで近づかないと声が伝わらないのが暗澹空間なので仕方がない面でもある。


「死に損ないめッ。既に魔王連合は決起した。今更化けて出て何がしたい!」

「っと、暴れて立ち上がるな。ほら、飲み水を『浄化』した聖水だ」

「キサマァァッ、顔はヤメロォッ!!」


 水筒からリセリがスキルにて清めた水をかけてやる。イケ面であるのなら、水ぐらいしたたっていなければなるまい。

 たまらず、エミールは蝙蝠こうもりに分裂していく。数百匹の小さな蝙蝠が暗澹空間内に散らばって外を目指した。

「小さくなった分、個々の能力が低くなるのが定番だよな。怨嗟えんさ魔王戦で丁度良いスキルを得たから、試してやる」

 大量にあるスキルの中から、一番新しいスキルを選び出す。

 スキルの種類は職業固有スキル。職業の種類は死霊使い。

 職業固有スキルは職業ランクが上がるたびに自動取得されるので、実績達成スキルよりは取得し易い。が、そもそも職業ランクが上がる条件が定かではないため、やっぱり取得が困難なのが職業固有スキル。

「召喚物、板塔婆いたとうばを三十本」

 怨嗟魔王戦の何が良かったか分からないけれども、得たからには使いたくなる。


「『グレイブ・ストライク』開始!」


==========

“『グレイブ・ストライク』、墓地のあらゆる物を投擲する罰当たりなスキル。


 墓地に存在する物に限定した召還魔法し、投げ付ける。消費する『魔』は重量に依存し、だいたい百キロで1消費する”


“実績達成条件。

 死霊使いとして、人の道を二歩踏み外す”

==========


 暗澹空間の直上に蝙蝠の数と同数の長板を召喚する。長板の正体は、日本では墓石近くに突き刺さっている板塔婆だ。板に書かれている戒名は、達筆過ぎて解読できない。

 所詮はただの板なので物理攻撃力は低いものの、小さな蝙蝠を撃ち落すには十分だった。板に薄い羽を貫かれて次々と蝙蝠が墜落していく。

 近場に、陸に上がった魚のように跳ねている一匹がいたので、踏み付けて潰すと灰となって崩れる。


「やはり一匹ごとなら駆除はし易い。すべてを駆除するのは難しいから現実的ではないみたいだが」

「キサマよくも!」


 暗澹空間から逃れた蝙蝠が集結して叫んだ。

 ただし、無事に脱出できたのは総数の半分ぐらいだったらしい。出現したエミールは腰から下が足りていなかった。

「『暗澹』解除」

 球状に広がる暗澹空間を解除して突撃する。エルフナイフを両手で掴み、エミールの脇腹に刺して半回転、えぐる。


「馬鹿め、心臓を外したぞ」

「どうせ不滅なんだろ? だったら痛覚を刺激した方が気分が良い」

「がァッ、邪魔ばかり邪魔ばかり邪魔ばかりッ! 魔王連合の結成を遅らせた元凶め! 魔王を苦しめて何が楽しかったのだ貴様!」


 怒れるエミールの手刀を仰け反って仮面ギリギリで避ける。下手に組み付くと『力』の差にやられかねない。接近戦は注意深く行うべきだ。

 上半身だけの体を、エミールは蝙蝠羽で浮遊させている。そのため、重心が安定しているとは言い難い。

 また、あおった分だけ怒って頭に血を上らせている。冷静さを失った相手ならば、魔王だろうとタイマンをれる。

 ……とはいえ、このまま順調に、という訳にはいかないだろう。


「今度は俺を狙うか! 不滅の魔王たる俺達、『永遠の比翼』吸血魔王を! 愚かなアサシンめ、俺達は兄妹同時でなければ決して滅びないというのに!」


 エミールは残っていた上半身を蝙蝠に分解する。

 再結成したのは数メートル後方であり……五体揃った美少女の姿をした吸血鬼が出現した。


「兄様とエミーラは二人揃っての吸血鬼。片翼がどんなに傷付き灰になろうとも、比翼の理は崩れない。世界の法則さえ二人を引き裂けない。兄様がエミーラを、エミーラが兄様を相互に保障し続ける」


 エミーラの白く小さな指先は、兄と同じく赤い爪が長く伸びている。その爪先を伝って血が流れて落ちる。空中で凝固し、いびつに結合して弓の形を成した。

 百パーセント血液が原材料の弓に、同じく血液が原材料の矢が装填され、迅速に放たれる。矢の初速に対して距離が近過ぎて、俺は回避する間もなく太股を穿うがたれてしまった。


「困った兄様です。明らかに格下の相手なのですから、お怒りになっていないで仕留めてしまえば良いというのに」

「痛ぃっ、くッ。妹の癖に兄をしたうか」

「不滅の愛に何か意見でも?」

「はっ、笑えなぃイィぁガがっ」


 二本目の矢も無事な方の太股を貫通。動きを封じ込められた。


「兄様とエミーラを疑うなんて……死になさい」


 そして、エミーラは冷たい言葉と共に猫のように瞳孔を細めて三本目の矢を放つ。


「違う。お前等は、どこか嘘っぽいっ、ガァぁあが痛がだ!」


 心臓への直撃を防ごうと体をねじったお陰で、左胸付近に矢が刺さってくれた。その代わり肺に穴が開いたため、陸上にいながら窒息の苦しみにもがく。

 パンクしたタイヤみたいな呼吸音を喉からしぼり出しつつ、震える手で腰に手を伸ばす。伸ばした先には竹筒の水筒が吊るされている。エミールにかけてやった聖水とは別の水筒だ。

 力任せに水筒を取り上げると中身をあおる。行儀悪く口から半分程度がこぼれてしまい、口元から首筋にかけて赤く汚れた。

「クソ、痛いなッ」

 胸の矢を引き抜く。刺さった時よりも痛い。これを足に刺さった二本分も続けなければならないのは憂鬱である。ただし、矢を抜いた場所の肉体は急速に新しい組織が生じ、ものの数秒で埋まった。


「そんな出鱈目でたらめな体で、ホントに人間族??」

「お前の兄が、俺を『吸血鬼化』したんだろうが」


 竹筒の中身は、新鮮なエルフの生血である。魔王一匹を呼び出すためだけに、アイサに身を切らせた訳ではない。

 血を摂取した事により、『吸血鬼化』スキルが活性化する。証拠に犬歯が伸びる。


==========

“●レベル:8”


“ステータス詳細

 ●力:25 = 21 + 4

 ●守:15 = 13 + 2

 ●速:28 = 24 + 4

 ●魔:11/12

 ●運:1505 = 5 + 1500”

==========


「半分以上吸血鬼と化しておいて、まだ人間族のつもりなんて。兄様、あのような見苦しい吸血鬼もどきは早々に処分してしまいましょう」


 エミーラが蝙蝠羽を大きく広げると、体を蝙蝠へと分解させていく。

 空中で再結集した時には美男、エミールが爪を尖らせて現れる。

 エミールはすぐに分解していき、一メートルほど進んで美少女、エミーラが獰猛な笑顔で現れる――。

 エミールとエミーラは交互に出現しながら、俺へと近づく。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
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 助けたいシリーズ一覧

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 第二作 誰も俺を助けてくれない

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