私は逆転裁判の実況を聴くのが好きだ。
　というか、逆転裁判が好きだ。
　だからもう軽く10年以上、逆転裁判の実況を聴き続けている。

　「見る」ではなく「聴く」と書いているように、運動中など画面を見る事ができない状況の時に、いわばラジオ感覚で聴いていることが多いのだが、最近特に思うのは、VTuberの逆転裁判実況はハズレ率が高すぎるということだ。

　そもそも、逆転裁判の実況は玉石混交である。
　かつてゲーム実況の主戦場だったニコ動時代からして、つまらない逆裁実況動画は多々あった。
　良い逆転裁判の実況になるにはいくつか条件があるとされており、

1. 真面目な場面で茶化さない

2. アテレコを頑張り過ぎて不自然な演技をしない

3. 淡々と朗読するのではなく、リアクションをとる

4. 鋭すぎて真相を先回りし過ぎない

5. 逆に馬鹿すぎて視聴者をイライラさせ過ぎない

6. 裁判後の突き付けを真剣にやる

7. （男性実況者の場合）女性キャラの台詞を読む際の裏声がキモくない

　などなど、なかなかハードルが高い。
　これらの条件をある程度満たして初めて、優れた逆転裁判の実況と認められる。

　その為、ニコ動時代からいくつもの実況を聴いてみては、優良な実況を見つけ出す苦労を強いられてきた（逆転裁判１-２話の冒頭が丁度良いリトマス紙になっており、ここでフザけたり、反応が鈍い実況者には大抵見切りをつける）。

　しかしながら、近年YouTubeで逆転裁判実況を漁るようになってから、新たな壁にぶつかるようになってしまった。
　それこそが、Vチューバーという実況者の存在である。

　YouTubeのゲーム実況というと、どうしてもVチューバーを避けては通れないわけだが、彼ら特有の問題が逆転裁判の実況と非常に相性が悪いのだ。

　特有の問題、即ち、チャットに対する応答である。

　探偵パートで一息ついた際などだけチャットに触れるなら良いのだが、ストーリーの途中でいちいちチャットの内容に反応するVチューバーが多すぎる。
　真面目な場面なのにウケ狙いの下らないコメントに反応して緊張感を壊したり、挙句の果てにはコメントを皮切りに逆転裁判の内容から外れ、無関係な話を長々と繰り広げる奴までいる。
　そういう脱線が始まる度に私は、

　こっちは逆転裁判の実況を聴きに来てるんだよ
　テメェ等のクソつまらねえ雑談なんて聴きたくもねえんじゃボケが

　とブチキレているわけだ。

　悲しいかな、弱小のVチューバー程この傾向が強い。
　無論、ほとんどチャット欄が読まれない大手と違い、コメントに逐一反応してくれることこそが登録者数の少ないVチューバーの強み、むしろファンサービスなのは解る。

　解るのだが、プレイしているゲームの種類を考えてくれよと言いたくなる。
　小まめなチャット欄への反応はアクションゲーやら何やらを配信してる時にやれば良いわけで、逆転裁判みたいなシナリオメインのゲームでまでイチイチ反応する必要なくない？

　中小Vチューバーの中にも「集中したいからチャット欄は基本的に読みません」という素晴らしいスタンスの人もいるにはいる。
　しかし、今まで数十人のVチューバーによる逆裁実況を見てきて、出会ったのはたった１人だけだ（その人の実況はリアクションが悪かったので切った）。

　リアクションや推理力の程度は抜群なのに、チャット欄への反応が頻繁なVチューバーに当たると、本当に勿体ないと思う。
　逆転裁判実況中でも、探偵パートの会話の合間とか、休廷中のセーブとか、クリア後等々のタイミングはあるわけで、視聴者と雑談するにしてもゲームの種類によってメリハリはきちんと考えて欲しいものだ。
　それが新規のチャンネル登録者を開拓する道にも繋がるだろうに。

　大手のVチューバーはチャット欄の流れが速い為か、比較的そういったことは少ないが（中には頻繁に触れる実況者もいたけども、そんな奴は即切り）、結局は上記の【良い逆転裁判実況の七箇条】の基準を満たせない者が大半である。
　今のところ大手と言えるVチューバーで褒められる逆裁実況をしているのは、ニュイ・ソシエールとフレン・E・ルスタリオの２人くらいだ。

　逆転シリーズ実況の需要は高い。
　チャンネル登録者を増やす為にも、今後Vチューバーが逆転裁判を実況する際には、【良い逆転裁判実況の七箇条】と共に、コメント読みのタイミングについて是非ともよく考えてもらいたい。