新サイバー犯罪条約(ハノイ条約)全文日本語訳
文章での活動は本意ではないので、しばらく何も発信しないつもりでしたが、いてもたってもいられなくなったので、殴り書きしました。冷静にならないといけないとは思うのですが、自分でも何を書いてるのかよく分かりません。
単なるアホがアホな妄想をしただけで済めば、それに越した事はないですが、この条約への追加議定書は絶対必要に感じます。
第14条だけが注目されていて他の条文をほとんど見ないのでPDFを日本語訳しましたが、外務省のサイトから国連のサイトに飛ぶ事が出来て、新サイバー犯罪条約の英文がHTLM化されていたので、そちらを見て貰った方が速いかもしれません。我ながら何をやってんだろうなって気持ちです。
https://www.unodc.org/unodc/en/cybercrime/convention/text/convention-full-text.html
- 34
- 56
- 3,167
新サイバー犯罪条約全文の日本語訳は、罫線───────の下から始まります。
最初は、私個人の意見、個人的な危惧や危機感の話ですので読み飛ばして頂いて構いません。
まず、先入観無しで条文を読みたい人は、罫線まで飛ばして下さい。
新サイバー犯罪条約(正式名称「国連サイバー犯罪防止条約:情報通信技術システムを用いて行われる特定の犯罪への対策と重大犯罪に関する電子的証拠の共有のための国際協力の強化」)が、2024年12月24日国連総会で最終採択されました。
日本のネット上では創作物の犯罪化に関わる、第14条3項の留保規定が注目されています。
「児童の性的虐待又は児童の性的搾取に関する資料」(以下、CSAM)の定義に絵、動画、文章、音声の架空の創作や模擬的行為も含め、18歳未満の少年少女のみならず、視覚的に18歳未満に見える成人も含めた性描写が、今後、今年の秋以降の、立法や法改正などの法整備次第では、刑事犯罪になるという話です。
本当にこの条約が、漫画やアニメやゲームを犯罪化する様に機能するのか。
Google翻訳と、DeepL翻訳の両方で英文を検証しながら、国連加盟国が合意した2024年11月27日時点の国連の公文書、全文を日本語に雑訳してみました。
(あまりに長いので機械翻訳の手を借りました。雑訳ですので、もし誤った内容になっていたら、申し訳ありません。)
国連のサイトでは2024年12月31日の最終決定の条約文も公開(公開自体は12月27日から)されてますが、条文の内容は見回した限り変更は無いと思います。
https://www.unodc.org/unodc/en/cybercrime/convention/text/convention-full-text.html
なので、ここでは経緯が大まかに書かれている前者11月27日時点の報告書を翻訳しました。
結論から書けば、第14条3項の留保規定を採用しなかった場合、日本のあらゆるジャンルの文章、画像、音声、動画コンテンツから、教育、事件報道、現在の物はもちろん過去の芸術、文化的財産まで含めて、日本文化が壊滅的打撃を受ける可能性は十二分にある様に思います。
生活が変わらず、困らない一般人も居るかと思いますが、コンテンツ産業に関わる人々にとっては致命傷は避けられないと言っていい。
条約は既に採択されていて、日本は、日本国憲法第98条に基づき、国際条約に従い法整備を行わなければいけません。
日本はアドホック委員会での副議長国を務めた立場上、法整備を拒否する事も困難。
現在日本は、ベトナムのハノイでの署名に向けて、法整備の準備段階に入っていて、ママパパ議員連盟でワーキンググループが組まれています。
そのママパパ議連にロビイングしている団体がECPAT、ぱっぷす、チャイルドファンドジャパンで、生成AIによるディープフェイクを規制する為に、新サイバー犯罪条約第14条3項の留保規定を使わない事を要求しています。
フェイクポルノの根絶を目指す為、ママパパ議連に所属する国会議員には、留保規定なしを是とする意見が多い報告が上がっている様です。
留保規定なしを主張する議員からは、他の架空の創作物も確実に巻き添えになる事に対して何も言及がありません。
ディープフェイクによって実在の人間が名誉や尊厳を傷つけられた場合、現行法でも対応可能とはいえ、個人での法的対応も限界があるので、十分に議論を尽くして法整備を進める事に関しては、私は必要があると考えますし、それ単独の問題であれば特に反対する理由もありません。
しかし対策が必要だからといって、全ての国民が普通に文章を書き、絵を描いて、声を出して、作品を創ったり、意見を表明する民主主義において当たり前の基本的人権を巻き添えにする事を、公権が厭わないならば、私は大反対の立場に回ります。
本来ならば、偽画像による侮辱や名誉棄損、権利侵害に対する対策と、表現の自由や言論の自由は両立を目指すべきであって、天秤にかけるべきではないのですが、副作用を提示しないまま、それしか手段がない様な欺瞞を使うなら批判もします。
2025年6月の現時点では、完全に日本国内の立法や法改正の段階の問題ですが、その根拠となる新サイバー犯罪条約の目的そのものに問題があると私は考えています。
新サイバー犯罪条約はロシア、中国の主導で審議が進められた捜査権の拡大を目的にした条約であって、公権の権限を定める性質上、子供の権利条約や、女子差別撤廃条約の様な私人の人権保護を目的にした条約とは真逆の方向を向いています。
この条約は、ブダペスト条約と、児童の人権に関わる部分は欧州評議会ランサローテ条約が下敷きにされている様です。
この条約は、サイバー犯罪に関する条約(ブダペスト条約)、サイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書を踏まえた上で解釈し、読まなければいけないでしょう。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/soshiki/cyber/index.html
その上で、新サイバー犯罪条約第14条(第18条→第13条→第14条に変更)がどの様に構築されたか。
まず2022年、この条約自体はブダペスト条約の留保規定を排除したロシアの提案から始まりました。
そしてCSAMに文章、音声まで含めたカナダ案が足され。
残虐描写を禁止するオーストラリア案が足され。
採用はされませんでしたが漫画、アニメーション等の文言を条文に入れた中国案も審議されました。
大まかに書くと、第14条の最終的な条文は、世界でも特に厳しい表現規制が敷かれている国々の規制の全部乗せをした様な内容になっています。
最終採択されたCSAMの定義は、当初のロシア案からは変更が繰り返され、日本からも案が出て第14条は丸ごと変更はされてはいるのですが、第14条2項の定義は、複数の表現方法で拡大解釈が可能な条文になっていますし、第14条3項(b)は「視覚的に描写(Visually depicts)」を含む為、留保規定を使わない場合、これは確実に創作物規制になります。
この条約が賛成多数の状態で審議されたと言っても、賛成に回った国の多くは独裁政権国家。または、ロシアや中国から支援を受けている開発途上国です。
イランをはじめとした中東諸国やロシアや中国が、人権の尊重の第6条の削除を要求しましたし、日本が第14条3項の留保規定の盛り込みに成功して審議が終了した2024年2月直後に、エジプト、ロシア含む多くの国が第14条3項の留保規定の削除を要求し、2024年8月まで審議期間が延びて揉めに揉めました。
国連の審議中に明らかに日本のコンテンツを狙い撃ちにした場面もあり、この様な経緯で出来た条約に対して、もし、日本が莫迦正直に条約に従って法整備したとして、他の締約国が条約を骨抜きにした法整備をした場合、他国はそのままで、日本は憲法上で保証されている筈の、表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密まで海外まで筒抜けで、干渉を受ける形で日本国憲法の一部が死文化する事にもなりかねません。
日本は法体系上、国際条約は法律より上位、国際条約より日本国憲法が上位になっていますが、もし法整備がなされた後に、違憲立法審査がなされて、違憲だと認められたとしても、再度法改正するまでの期間に多くの犠牲を出し、大きな不具合を社会に起こす事が十分に予想されます。
恐らく、この条約でジャーナリストも大きな影響を受けると思うのですが、不思議な事に日本ではあまり報道もされず、大手メディアではあまり問題視もしていない様に伺えます。
ですが、海外では、電子フロンティア財団をはじめとした複数団体、サイバーセキュリティ企業やインターネット企業、報道機関、国際商工会議所、また国連人権高等弁務官事務所も含めて、反対声明が強く出されていてかなり問題視されています。
電子フロンティア財団と並んで、ヒューマンライツウォッチもこの条約を強く批難していますが、その適用範囲の広さ、人権保障の欠如、そして子供の権利に及ぼすリスクがあると、この条約の重大な欠陥を指摘しています。
それら団体の反対声明の内容は、民主化運動やジャーナリズム、LGBTや、マイノリティのコミュニティが危機に晒されるといった物で、これまでのサイバー犯罪防止法を悪用し、弾圧を行ってきた国々の事例と同様に、権力の濫用に、この条約が有利すぎるという物。
特に証拠収集権限が国境を超えており、年中無休の監視機関の設置の義務や、容疑者の所在の特定などが可能で、表現活動への適用範囲が広範な上、その過剰な犯罪化は、情報収集の名目でスパイ活動にも悪用出来る事。
人権保障措置については締結国の国内法に委ねられていて、法整備に不備があれば、本来容疑者に対する捜査は裁判所を通さなければならない所を、条約はいきなり警察当局に監視、捜査権を与えている事。
二国間、または複数国で犯罪化が認められる行為に対して、国家が協力する形で弾圧が可能である事。
北アフリカ、中東、東南アジア諸国では過去にサイバー犯罪法を悪用し、学生や弁護士、研究者、LGBTやジャーナリスト、民主化運動家が反政府的な言論を弾圧された前例が相当数ある為、新サイバー犯罪条約の悪用可能な条文が具体的に挙げられ、反対声明を出している団体は実際に問題の条文の削除を、国連人権高等弁務官事務所を通して求めている形跡もありました。
新サイバー犯罪条約には、権力濫用のブレーキとして、第5条の主権の保護や、第6条の人権の尊重の条文、第14条5項には子供の権利の国際条約に関する配慮が書かれています。また、各所に条約や国内法で定められた権利の保護を義務付ける条文や、第37条15項や第40条22項の様に、思想や人種、属性を理由とした弾圧を防ぐ為の条文も、ある事はあるんですが、それを保証する安全策や、それを破った場合のペナルティの言及はこの条約内にはありません。
条約全文を読むと、一般市民の人権保障についての取り決めは申し訳程度に書かれているだけで、内容のほとんどは締結国間の協力関係の取り決めと、捜査権を持つ当局の権限についての条文ばかりの印象を受ける事は確かです。
実際、漫画を描いただけで、容疑者として扱われ、海外に身元や住居の情報まで共有される様な、条約に忠実な国内法がもし出来る事があれば、自身の生存権さえも脅かされるのではないかと思う程に恐ろしい物があります。
日本と海外では騒がれ方も温度差も違うのですが、第14条に関しては共通しています。
国連人権高等弁務官事務所は、CSAMの定義から科学的、医学的、芸術的、教育的価値、証拠能力を有する物、18歳未満の関与がない資料を除外する様に要求し続けていました。
しかし採択までにそれは果たされず、今後の働きかけにも注目せねばなりません。
国連人権高等弁務官事務所はさらに、第14条4項にも言及し、自撮り、自己制作物によって児童本人が、訴追される事からは除外されるべきだと要求しましたが、条文は「犯罪化を排除するための措置をとる」ではなく「措置をとることができる」に留まりました。
この第14条4項も未成年の判断能力を認めない中東諸国含め多くの国が、削除を要求した物の1つです。
CSAM(Child Sexual Abuse Material)という用語は、実在の18歳未満の児童が暴行や脅迫、権威による強要などで合意なく撮影させられた記録、身体に性的または暴力的虐待を受け、それによって児童の保護者または第三者が利益を得る、または性的搾取の為、虐待を記録された素材に対して使うべき用語であって、特に年長の未成年の自撮りを自身で所持する事や非搾取の体験や妄想の制作物、日常的な家族写真を犯罪化した場合、児童を守る目的が果たされないという考え方があります。
それは国際刑事警察機構がCSAMという用語を推奨する際や、日本の「児童ポルノ」という法律用語を「児童虐待記録物」に変えようという主張の中でたびたび見かける物です。私もその考え方には同意します。
自撮りは権利と保護のバランスが非常に複雑で、今回深くは言及しないでおこうと思いますが、新サイバー犯罪条約の児童を守る為の条文が児童の権利を守らない形になっている部分が多々あるという指摘は、私も同様に感じる所です。
少なくとも保護者から虐待を受けている児童が、SOSを出し虐待痕を証拠として自撮りした為に虐待被害者が当局に検挙され、虐待される環境に戻されるなんて事は絶対にあってはならない事です。
本当にCSAMの定義は難しい問題で、あらゆる想定をしなければならず、何の為に何を守るのかを明確にしておかなければいけません。
それにも関わらず、この条約におけるCSAMの定義はあからさまに雑です。
その様な複雑で繊細な物である以上、今日本で議論されているフェイクは、フェイクとして単独で扱うべきです。
成人には適用されず、現実の虐待環境からの未成年の救出やケアも考慮しなければならないCSAMに、フェイクポルノを雑に含める事を、私は良しとしません。
架空の創作物に話を戻したいと思いますが、何の知識も無く、新サイバー犯罪条約の第14条だけを読んでも、恐らくは、この条文に日本が従った所で、漫画やアニメやゲームが全滅する事などないだろうと考える人も多いかと想像します。
不快な児童の性的搾取を助長する表現なんて、無くなったって困らない。困るのは性犯罪者予備軍か、小児性愛者だけだと思う人も居るとは思います。
きちんと認識して頂きたいのですがこの条約ではCSAMから「科学的、医学的、芸術的、教育的価値、証拠能力を有する物、18歳未満の関与がない資料」は除外されていません。
つまり、実在非実在を問わず未成年に見える人の性表現なら、性教育も性被害の告発も学術的、文化的な物も区別しない。免罪されないという事です。
そんな莫迦な法運用がある物かと思われるかもしれません。
しかしそれを1992年から実際に行ったのがカナダです。
最初は反ポルノフェミニストの思想を最高裁が採用したポルノ規制でした。
それが同性愛に波及し、同性愛からフェミニズムと女性文学に飛び火。性虐待の報告書まで書店から当局によって撤去されるに至りました。
出版社は委縮して自主的に規制を進めて、女性の性被害の告発すら困難になっています。
その結果、家父長制議員が台頭したとも言われています。
カナダの表現規制は苛烈で、文章、音声にも渡っており、日本のアニメや少女漫画の一部はCSAM扱いで持ち込む事も出来ません。
ホラー小説で小説家が児童虐待に数行触れただけで逮捕された事件が2020年にありましたので、その規制の苛烈さは現在も続いています。
カナダは性犯罪件数世界ワースト7位と言われ、性被害1000件中33件の届出の少なさで暗数も多い国です。
日本はその様な莫迦な法運用はしないだろう思われるかもしれません。
ですが、ママパパ議連にロビイングしている団体のECPATと同住所の、日本キリスト教婦人矯風会の重鎮は「カナダは良い見本」と主張しています。
ECPATインターナショナルは、カナダの裁判所に2001年に働きかけ、文章の犯罪化を推進しました。
日本キリスト教婦人矯風会は、元々は禁酒法運動の日本支部であり、百年前は禁欲主義、純潔主義を推し進め、日本の軍国主義を礼賛していた団体です。
明治、大正時代は廃娼運動を道徳を乱す理由で進めた為、当時の婦人解放運動のフェミニストからは貧困問題に目を向けなければ遊女の問題は解決しないと、矯風会の道徳保守の姿勢が強く批難されていました。
そして、21世紀になっても海外の児童保護団体からは、現実の児童の保護よりも道徳を優先する事を非難されていて、道徳保守の矯風会の姿勢は現在も変わっていません。
日本の「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」は第一条から児童保護や被害者のケアを第一に個人法益を目的にしており、実在の人間を写した物に限って犯罪化しており、創作物は違法化していません。
その個人法益の目的を、道徳の社会法益の問題に擦り替えて、創作物も規制しようと毎年国会に請願を出しているのがECPATです。
ECPATにとっては、新サイバー犯罪条約の批准は創作物を違法化させる絶好のチャンスですから、いくらでも不利な情報を隠して国会議員にロビイングを続けるでしょう。
新サイバー犯罪条約の第14条の条文は本当に厄介です。
カナダの道徳を乱す物の違法化の思想が入っていますから「模擬的な性行為」は、同じ部屋に一晩2人居た事を匂わせただけでもCSAM判定されるレベルで、バナナを食べたり、ホイップクリームが顔につくといった表現すら犯罪化されるでしょう。
視覚的に18歳未満に見えればCSAM判定されるので、成人が学生服を着る、架空の種族で1000歳を超えるといった設定を創っても通用しません。
残虐表現も禁じているので、未成年が暴力を振るうバトルのジャンルもCSAM判定になりますし、品位を貶めるだけでもNGなので、苦悶の表情や困り顔だけでも危険です。
ボディラインを強調するボディポジティブな表現をするだけでも危険で、うどんを食べているだけで性的なサインだと言われれば逮捕されかねません。
カナダの事について代表的に書いていますが、イギリス連邦の国は同じ様な道徳を乱す罪を法律にしてしまう国ばかりです。
イギリスでは30代の日本人のグラビアがCSAM判定された事がありますし、残虐行為を禁止する条約案を出したオーストラリアでは、一部の州は女性が成人していても、胸が小さければポルノに出演できません。
日本のアニメの絵柄のキャラクターのほとんどを未成年と看做し、北米基準のプラットフォームでは日本の絵柄に影響を受けた作品をBANするのみならず、アジア人は西洋人と比べて幼く見える為に、実在の人間を成年であっても未成年と認識します。
イギリスでも性虐待を親から受けた体験談を書いた漫画があり、芸術とCSAMの境目はどこかとブログに漫画を引用した人が、その引用をCSAMの頒布と看做されて逮捕される事件が起きてます。
その基準で新サイバー犯罪条約の留保規定を使わない場合、日本は人種的にも文化的にも圧倒的に不利で、どこまで規制されるかなんて想像がつきません。
アニメや漫画、ゲームはどうなるのでしょう。小説はどうなるのでしょう。Vチューバーの配信は、映画は、演劇は、フィギュアは、人形は、銅像は、落語は、絵画は、聖書やコーランは、日本の古典は、浮世絵は、国内外の神話はどうなるのでしょう。
恐らくほとんどの日本人が想像出来ない、荒唐無稽なレベルの表現規制が行われてもおかしくはないのです。
実際に日本の警察その他行政、委託監視機関がその判断をするかは不明ですが、恣意的に運用可能な曖昧さを、時の権力者によっては利用可能な状態にしておく事そのものが危険なのです。
それほどの危機が、現在日本に訪れています。
実際にそれほどの表現規制をしたならば、創作物から影響を受けて児童虐待を起こす人は減るだろうと思う人も居るかもしれません。
ですが実際には逆です。より正確に言えば相関関係にないです。
2009年、スイスで児童の裸の写真を見た人間で児童虐待をする犯罪者を調査した所、前科者以外の一般人は影響を受けないという結果が出ました。
2013年、デンマーク法務省が非実在の児童の性表現を規制しようと調査を行った結果、表現を見て虐待をする人は増えないという結果が出ました。その為、法規制を行いませんでした。
1999年、日本の科学警察研究所とハワイ大学の共同研究では、日本のポルノ雑誌、ポルノコミックの出版数の増加と、性犯罪件数には相関関係がなく、1972年から1995年にかけて人口は増えているのに、未成年の性犯罪に関しては顕著に減るという結果が出ています。
現実に児童に性的虐待を行う性犯罪者は、一番多いのが実父と継父。顔見知りや近親者も多く、教師やコーチ、国によっては牧師といった子供に接近できる立場の者が多く、小児性愛者ではない事の方が多いです。小児性愛者は3割です。
児童虐待を行う人間は小児性愛者に違いないという神話めいた偏見がありますが、これが事実と乖離している事は、オーストラリア犯罪学研究所の調査をはじめ、多くの国でも共通している事が判明しています。
性犯罪者は社会的に見た目上、信用を得やすい立場で良い人を装う為、防犯対策として、小児性犯罪者は小児性愛者だという偏見は一切役に立ちません。監視カメラなどによって物理的な死角を減らし、子供と大人が1対1になる状況を作らない事の方がずっと効果的です。
厳しく児童の性表現を規制している国、イギリスもカナダもオーストラリアも、児童虐待事件が桁が違うレベルでとてつもなく多く、千人を超える規模の虐待事件が街ごと隠蔽されて放置されたり、アジア人の人身売買が発覚したり、カトリック教会においては数万人という規模の子供の虐待被害の報告がされています。
他にも創作上の児童の性表現を規制している韓国やスウェーデンでは、現実の性虐待と関係のない漫画やアニメを所持していた人間が逮捕され、警察が点数稼ぎでネットで画像ばかり追う様になってしまい、現実の児童を救うリソースが割かれてしまう事が起きてます。
その為、韓国では現実の性犯罪者を捕まえて欲しいと性虐待被害者が警察を批判し、スウェーデンでは現実の子供を救わせて欲しいと警察のトップが法律を批判する事も起こってます。
法整備による表現規制をする際には違憲審査基準「明白かつ現在の危険」を科学的根拠に基づいて示さなければいけません。
憲法が正しく機能するならば、法益を示す事が出来ず根拠が明確でもないのに、私人の権利を国や公権力が制限するのはただの権力濫用の弾圧であって、それは法治主義、民主主義国家において、行ってはならない事です。
現在、ユーチューブでは卑劣な事件に未成年が巻き込まれない様に呼びかける啓発動画もペナルティを食らう状況です。
遠隔医療の為に子供の写真を撮って医者に送信した所、写真がCSAMの自動検出で機械的に通報されてしまい、親の利用記録ごとグーグルアカウントがBANされた話もあります。
各プラットフォームの規制の厳しさは年々増すばかりで、こういう話はあらゆる所で起きています。
これでは、一体何を守る為の表現規制なのか分かりません。
実在しない児童をいくら守った所で、被害とは言えないコンテンツを規制した所で、現実の児童は守れませんし性虐待は減りません。
表現規制によって性犯罪を減らした国を私は1つも知りません。
私の知る初犯の性暴力を顕著に減らした取り組みは、性教育と性同意教育だけです。
性の情報を与えずして、他人との違いを認識出来なくして、判断材料を失えば人は何も守れはしませんよ。
西側諸国の表現規制の話はここまでですが、新サイバー犯罪条約による表現規制の影響は恐らく、漫画やアニメやゲームで終わりません。
なぜなら、中国とロシアが主導で進められた物だからです。
中国では同性愛者が弾圧され、LGBTの市民団体は解散させられ虹色の服を着ると拘束されるレベルです。
伝統的文化を汚すとして、和服を着ても拘束されます。
ゲーム業界には勧告が出ており異性装すら、伝統的文化を汚すとして禁じ、男性は男性らしく、女性は女性らしく描かなければいけません。BLも禁止されています。
中華BL作品が何ヶ国にも翻訳されて流行っている様に見えていても、中国国内では有名作家も含め、3~10年の禁錮刑という有罪判決を受けている人がかなりの人数居ます。
ロシアでも、同性愛を肯定する発言や宣伝は違法化され、同性愛者というだけで収監されています。
ロシアでは現実に見えない世界を描いた「異世界もの」は規制されています。
中国もロシアも民主化運動には苛烈な弾圧を行っていますし、民主化を主張する国内外の人間に対し死刑判決も頻繁に出しています。
プロパガンダになりかねない日本の漫画、戦争や正義に疑問を抱かせる様な進撃の巨人、デスノートの様な漫画やアニメも規制しています。
中国やロシアの基準を、日本の警察や監視機関が採用しなかったとしても、条約の法改正でロビイングしているECPATやぱっぷすは、ポルノ同様にBLも、TLも、GLも規制対象として標的にしているので、近年の東京都条例の指定と同様、男性向け、女性向けのジャンルを問わず、見逃される様な事はありません。
働きかけている団体が団体ですから、安全圏はありません。
新サイバー犯罪条約には気になる条文がいくつもあります。
ネット事業者や、法人の責任を追及しやすくしている条文がある事。
これは先の電子フロンティア財団からも、違法な表現を流した事で、利用者ではなくサービス事業者が、刑事責任を問われる事に対しておかしいと非難している部分でもあります。
近年、クレジットカードの決済代行会社からの規制によって、成人向け作品が購入出来ず、一部のネットサービスが受けられない問題が起きていますが、それを加速させる様な条文です。
刑事責任を負いたくないが為に、今以上に民間プラットフォームの自主規制が進みかねません。
ここからは完全に邪推の領域の話になります。
新サイバー犯罪条約には、当局の捜査権を大幅に拡大する条文が並んでいる中で、非政府組織、市民社会組織、学術機関、民間団体等にも協力を求める条文が複数回出てきます。
ネット上の監視に相当なリソースを持たせる為に、当局だけでは足りない手を、民間委託で補う事を求める条文ではないか、とは思います。
中国のネットでは当局によって膨大な数の人員による監視網が敷かれていて、検閲や不利な情報の削除、情報操作の工作も常態化している、といった話は聞いた事があるのではないでしょうか。
それに法的根拠を持たせ正当化する為の条文に思います。
既に、日本でも、ネットを監視する警察下部組織インターネットホットラインセンターには、ECPATの関係者や元警察官僚が関わっていますし、その延長上で、強い権限を持った利権団体が大量に作られる布石に見えなくもないとも思います。
2022年の、韓国のブルーアーカイブ騒動はご存じでしょうか。
ブルーアーカイブは年齢等級がPG12からR18まで引き上げられ、韓国には非実在青少年の性表現もCSAMとして扱うアチョン法がある為、学生を扱う内容でR18では表現が違法化してしまい、ブルーアーカイブの開発元はゲーム提供を継続する為、韓国向けと、海外向け2つを分けて制作、配信しなければならなくなりました。
この騒動は元々はプロジェクトセカイが配信停止となり、それを引き金に通報合戦が勃発。
多くのゲームアプリの年齢等級が引き上げられ、ブルーアーカイブの後も通報合戦は治まらず、アークナイツやFGOやウマ娘、あんさんぶるスターズ含む多くのゲームが年齢等級の上昇に巻き込まれました。
あまりにおかしな判断が下された為、国民同意請願制度が利用されて国会を巻き込んだ騒動になり、元々判断の不透明さが指摘されていた、ゲーム物管理委員会(GRAC)が調査される事となりました。
その結果、年齢等級を判断するGRACが韓国文化体育観光部の下で法的権限を持っているにも関わらず、仕事をせず、委託業者に業務を丸投げし虚偽の報告書を作成しており、その不正と不払いが発覚。利権団体化している事が判明しました。
韓国には兵役がある社会でもある為に、ネット上ではフェミニストとアンチフェミニストの政治闘争が苛烈な背景がありますが、強い表現規制があると相互監視の実質的な検閲社会になる実例で、その中に利権構造が出来る実例でもあります。
漫画やアニメの推奨年齢を決める女性家庭部も利権団体化している為、大統領選の公約に女性家庭部の解体が使われるほど、韓国の男女間の政治闘争は強いです。
2015年ごろにはアチョン法を利用し、同人即売会の会場を当局に通報して中止させる男女闘争がありました。警察が取り合わなくなるまで通報合戦が続き、それによってR19(R18と同義語)の同人誌が2022年まで扱えなくなる事態になっています。
近年の韓国の委縮は、性表現だけに留まらず残虐表現にまで広まっていて、韓国のウェブトゥーンでは性表現に強い規制がかかるのみならず、暴力的表現にモザイクがかかる状況になってきています。
ママパパ議連に対するロビイングでECPATは、フェイクポルノも包括的に規制出来る韓国のアチョン法を、モデルとして褒め称えたそうですが、当の韓国が厳しい規制によってコンテンツ業界が苦しみ、法規制を根拠にして腐敗が起こっている状態で、警察下部組織にも入り込んで特権的な位置に居る、ECPATの主張を信用出来るでしょうか。
そしてこの様な、法規制や当局を利用した通報による委縮から連想するのは、矯風会が礼賛していた戦前の日本です。
戦前の日本では1938年に「婦人雑誌ニ対スル取締方針」「児童読物改善ニ関スル指示要綱」が内務省から発行されました。
それは法的拘束力はない物の、事実上の検閲制度として機能し、フリーセックス表現、性暴力的表現、猟奇的表現、異性装、同性愛表現、共産主義やプロレタリア文学、それらと混同されたフェミニズムまで禁止され、あらゆる雑誌が刊行停止、その影響は漫画や小説、児童文学や歌の歌詞にまで影響を及ぼしました。
歴史をご存じの方ならば、戦前の日本では当局による検閲や監視が厳しくなっただけではなく、目をつけられた人は当局に通報される様になり、全体主義の相互監視社会になり、戦前の日本からは有事に楽しむ事は許されないと、ほとんどの娯楽が消滅した事もご存じでしょう。
規制による文化の委縮や消滅は、国や当局が強権を振るった事だけではなく、「善良」な国民が公権や当局に協力する事によって起こります。
カナダの例も同じですが、一度強力な表現規制が行われると歯止めが利かなくなるのは、この様なプロセスを踏むからです。
強い表現規制によって、文化が消滅する事はありえるのです。
1960年代の台湾でも漫畫審査制度という、荒唐無稽な表現や、犯罪を推奨する様な表現を禁止する現在の中国やロシアに匹敵する広範な検閲が行われ、結果、台湾漫画業界は壊滅しました。
これは漫画の話ですが、今の台湾のサブカルチャーが日本とそっくりなのは、一度台湾発の漫画雑誌が書店から消滅し、日本の漫画ばかりが並ぶ様になったからです。
それと他にも条約内に気になる所があります。国際協力について、開発途上国に対して締約国間で、支援や開発援助についてやたら強調している事です。
ロシアは中東諸国と組んでいて、中国はアフリカ諸国を援助していると言われています。
この条約の採択の際に、賛成に回った国は、ロシアや中国から援助を受けているであろう、中東諸国とアフリカ諸国が多いです。
実際には開発途上国の援助、発展に寄与する名目で、ネットを掌握する形で言論統制、思想統制を行おうとしていないでしょうか。
それを正当化する条文に見えて仕方がありません。
そして、クレジットカードの決済会社に対して、東南アジアのパトロール会社から通報が行われた結果として、決済代行会社が検証なしに自主規制を行うといった報告も聞いているので、この条約によって、キャッシュレス決済に大きな影響が出るのではないかと想像しています。
あと、地域的経済統合機関(Regional economic integration organization)という聞きなれない単語を見て、意味を調べるとEUや、ASEANの様な連合を指す単語だと分かりました。
そこで頭に浮かんだのが、国連に加盟していない台湾の事です。
この単語を見るまで、新サイバー犯罪条約が効力を持っても、台湾は日本と比べても影響が少ないだろうと思っていました。
しかし台湾は独自に世界貿易機関などの連合に加盟していて、中国と外れて自治権を持っていますが、中国は台湾を国として認めていません。
その中でサイバー犯罪の防止の取り決めの条約の筈なのに、第63条に紛争の解決という項目があり、地域的経済統合機関について触れている事に違和感があります。
これは本当に直感的な話なんですが、嫌な予感しかしません。
新サイバー犯罪条約に40ヶ国が署名し、条約に効力が発生した時に、起こってはならない有事が発生する布石ではないか。
そういう気がしてなりません。
最近、日本の現政権が親中、親露派なのではないかと思わせるニュースが流れませんでしたか。
これに関しては戯言で済めばよいのですが。
現実に戦争行為が行われたとしても、一切の報道がされない、報道したくてもこの条約のせいで出来ない、なんて事は絶対に避けなければいけません。
ひとまずは、条約の全文を読んで、上っ面の表現規制だけでは済まない気はしています。
ここに書いている全てが私の思い込みの暴走であって、何も起こらなければそれに越した事はありません。
第14条3項の留保規定が無かった場合の自分事。
私も、ymils名義で発表している作品の全てがCSAM扱いとなり、逮捕され、所持している漫画の単行本含めて、自身の作品も保存媒体ごと押収され、場合によっては財産を没収されて、刑事罰を受け、性犯罪の前科がついて正真正銘の犯罪者になるかもしれません。
不起訴になったとしても、子供を搾取し虐待を行った極悪人としてレッテルを貼られて一生を送る事になると思います。
これまで私は、絶対に描き残したい物語が存在し、それを描く為だけの極々個人的な理由で、表現規制に反対してきましたが、もし、留保規定なしの立法、法改正がされた場合は、どうすれば良いのでしょうね。
その先の自分の人生を想像する事が出来ないです。
その為にも、留保規定は最低でもありの形で日本は批准して欲しいです。
日本が頑張って第14条3項を付け加えて、削除要求に対しても耐えきったのに、当の日本がその留保規定を使わないなんて莫迦みたいじゃないですか。
そして、留保規定があったとしても不安は拭えない点は沢山あります。
条約の批准を拒否できるならして欲しいです。
ひとまず何をすれば良いのでしょう。
ツイッターアカウントの凍結で情報収集もままならない状態で、今の私に何が出来るのでしょうか。
民主主義国に住んでいて歴史の教科書でしか知らない様な、行軍の足音が聞こえる最悪の想像をする内容の条約に、日本が批准する事になっているのに、知名度が全然ない事に危機感があります。
影響を受けるであろう業界に知らせる事でしょうか。出来る事ならば、絵、音声、文章、動画に関連する全ての業界に声を上げて頂きたいのですが。
選挙が近いので個人で出来る事は投票行動でしょうけど、個人でできる事には限界がどうしてもあります。
特権的な位置に居ながら、日本を潰したい人は日本の中に居ます。
国会議員と接点のある人はロビイングとまではいかなくても、留保規定ありの陳情をして欲しい。
多分この条約の批准で影響を受けるのは、恐らくはクリエイターだけではない。
多くの人に知らせて頂きたい。
書き殴りの雑文で申し訳ないですが、よろしくお願い申し上げます。
以下、国連報告書、条約本文。
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
国際連合 A/79/460
総会 配布:一般
2024年11月27日
原文:英語
第79回会期
議題108
犯罪目的の情報通信技術の利用への対策
第三委員会報告書
報告者:ロビン・デ・フォーゲル氏(オランダ王国)
I. はじめに
1. 総会は、2024年9月13日の第2回総会において、一般委員会の勧告に基づき、第79会期の議題に「情報通信技術の犯罪目的での利用への対策」と題する項目を含め、第三委員会に割り当てることを決定した。
2. 委員会は、2024年10月7日及び11月11日の第5回、第6回及び第48回会合において、議題107「犯罪防止及び刑事司法」及び議題109「国際麻薬統制」と合同で、この項目に関する対話および一般討論を行った。委員会による本議題の審議の記録は、関係概要記録に記載されている。※1
※1 A/C.3/79/SR.5, A/C.3/79/SR.6 and A/C.3/79/SR.48.
3. 委員会は、本議題の審議にあたり、事務局が再招集された総括会合において提出した「犯罪目的での情報通信技術の利用に対抗するための包括的国際条約策定のための特別委員会」の報告書(A/79/196)に関する覚書を審議した。
4. 10月7日の第5回会合において、国連薬物犯罪事務所政策分析・広報部長が冒頭発言を行い、コロンビア、カナダ、アメリカ合衆国、欧州連合、イスラエル、メキシコ、シリア・アラブ共和国の代表者からの質問やコメントに回答した。
5. 2024年11月11日の第47回会合において、アメリカ合衆国代表は、委員会に提出された決議案に関して声明を出した。※2
※2 See A/C.3/79/SR.47.
II. アドホック委員会報告書パラグラフ49およびドキュメントA/C.3/79/L.22に含まれる決議案およびその修正案の審議
6. 11月11日の第48回会合において、委員会は事務局の「犯罪目的の情報通信技術の利用に対抗するための包括的な国際条約を作成するための特別委員会の再開された総括会合における報告書」(A/79/196)と題する覚書を審議し、アドホック委員会報告書パラグラフ49(A/78/986)で勧告された決議案を送付した。
7. 同会議において、委員会はドキュメントA/C.3/79/L.52に含まれる決議案のプログラム予算への影響について報告を受けた。
ドキュメントA/C.3/79/L.22に含まれる修正案に関する措置
8. 11月11日の第48回会合において、議長(ブルンジ)は、ベトナムが提出したドキュメントA/C.3/79/L.22に含まれる決議案に対する修正案について委員会の注意を喚起した。委員会は、ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、朝鮮民主主義人民共和国、インドネシア、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー、ニカラグア、フィリピン、ロシア連邦、シンガポール、タイ、東ティモール、ベネズエラ(ボリバル共和国)が修正案の提案国に加わったことを報告された。その後、ブルンジが修正案の提案国に加わった。
9. 同会合において、委員会は、ドキュメントA/C.3/79/L.22により修正された決議案(ドキュメントA/C.3/79/L.53に含まれる)のプログラム予算への影響について報告を受けた。
10. 同会議において、ベトナム代表が声明を発表した。
11. 同会議において、委員会はドキュメントA/C.3/79/L.22に含まれる修正案を採択した。
12. 修正案の採択後、ジャマイカ代表が声明を発表した。
修正された決議案に関する措置
13. 11月11日の第48回会議において、委員会は、再開された総括会議に関する報告書のパラグラフ49においてアドホック委員会が勧告した決議案(ドキュメントA/79/196で送付されたもの)を修正した上で採択した(パラグラフ15参照)。
14. 同会議において、採択後、アメリカ合衆国、ハンガリー(欧州連合を代表して)、イラン・イスラム共和国、ニュージーランド、リヒテンシュタイン、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、スイス、カナダ、ベトナム、オーストラリア、中国、ニジェール、エジプト、キューバの代表、並びにローマ教皇庁のオブザーバーから声明が発表された。
III. 第三委員会の勧告
15. 第三委員会は、総会に対し、以下の決議案を採択するよう勧告する。
国連サイバー犯罪防止条約 情報通信技術システムを用いて行われる特定の犯罪への対処及び重大犯罪の電子的形態による証拠の共有のための国際協力の強化
総会
2019年12月27日の総会決議74/247において、犯罪目的での情報通信技術の利用に対抗するための包括的な国際条約を策定するため、すべての地域を代表する専門家からなるオープンエンドの政府間専門家委員会を設置し、犯罪目的での情報通信技術の使用に対抗するための国内、地域、国際レベルでの既存の国際文書と取り組み、特にサイバー犯罪に関する包括的研究を実施するためのオープンエンドの政府間専門家グループの作業と成果を十分に考慮することとした。
また、2021年5月26日の総会決議75/282を想起し、同決議において、犯罪目的での情報通信技術の利用に対抗するための包括的な国際条約を策定するためのアドホック委員会が、2022年1月からニューヨークとウィーンで作業を開始し、第78回総会に条約案を提出することの決定を想起し、サイバー犯罪による経済的・社会的悪影響、そして持続可能な開発と法の支配を損なう可能性に鑑み、サイバー犯罪の防止と撲滅に向けた国際協力の強化が緊急に必要であることを強く確信し、また、国連サイバー犯罪防止条約が、情報通信技術システムを用いて行われる特定の犯罪への対処及び重大犯罪の電子的証拠の共有のための国際協力の強化は、マネーロンダリング、汚職、テロ行為、人身売買、移民の密輸、銃器、その部品、構成部品及び弾薬の違法製造及び取引、違法薬物取引、文化財の違法取引など、情報通信技術システムの使用を通じて行われる可能性のある幅広い犯罪の電子的証拠の適時かつ合法的な収集及び共有を確保するための国際協力のための効果的な手段及び必要な法的枠組みを構成する。
本条約の署名式開催の申し出に対し、ベトナム政府に感謝の意を表す。
1. 犯罪目的での情報通信技術の利用に対抗するための包括的な国際条約策定のためのアドホック委員会が再開された最終会議において提出した報告書に留意する。この報告書において、同委員会は、サイバー犯罪に関する国際連合条約案の最終文書を総会に提出し、その検討と対応を求めた。また、アドホック委員会の活動を称賛する。
2. 本決議に附属する「国連サイバー犯罪防止条約 情報通信技術システムを用いて行われる特定の犯罪への対処及び重大犯罪の電子的形態による証拠の共有のための国際協力の強化」を採択し、2025年にハノイで署名のため開放し、その後2026年12月31日までニューヨークの国連本部で署名のために開放する。
3. すべての国及び権限のある地域的経済統合機関に対し、条約の速やかな発効を確保するため、可能な限り速やかに署名及び批准するよう強く求める。
4. 条約に基づき設置される締約国会議が別段の決定を行うまで、条約第56条に規定する口座は、国連薬物犯罪事務所が運営することを決定し、加盟国に対し、開発途上国及び移行経済国に対し、条約の批准及び実施の準備に必要な技術援助を提供するために、上記口座への適切な任意拠出を開始するよう奨励する。
5. また、アドホック委員会は、総会決議74/247及び75/282に準じて、特に適切な場合には追加の刑事犯罪を取り扱う、本条約を補足する議定書案の交渉を目的として、その作業を継続すること、並びにこの目的のため、それぞれ10日間の会期を2回開催することを決定する。第1回会期は総会による本条約採択の2年後に、第2回会期は翌年に、それぞれウィーンとニューヨークで開催される。この会期は、本条約第57条第5項(g)、第61条及び第62条に基づき、本条約締約国会議に検討及び更なる措置のため、その結果を提出する。
6. さらに、アドホック委員会は、条約採択の1年後に、総会決議74/247及び75/282に準じて、最長5日間の会議をウィーンで開催することにより、条約交渉から生じる任務を完了することを決定する。この会議は、条約締約国会議の手続規則及び条約第57条に規定するその他の規則の草案を作成するためであり、この草案は、締約国会議の第一回会合における審議のために提出される。
7. 加盟国に対し、国連薬物犯罪事務所に自発的な拠出を行い、支援するよう求める。
8. 条約締約国会議に対し、サイバー犯罪分野における技術開発の動向を常に把握し、適切な措置について勧告を行い、経験、課題、優良事例の交換のため、サイバー犯罪に関する各国の窓口機関による地域および国際的会議を促進するとともに、他の権限のある政府間機関が実施する関連作業との相乗効果を確保するよう要請する。
9. 事務総長に対し、条約第58条に基づき、国連薬物犯罪事務所を条約締約国会議の事務局として、またその指示の下で活動するよう指定するよう要請する。
10. また、事務総長に対し、国連薬物犯罪事務所に対し、条約の早期発効を効果的に促進し、条約締約国会議事務局の機能を遂行するために必要な資源を提供するとともに、上記5及び6項に基づくアドホック委員会の活動を支援するよう要請する。
11. さらに、事務総長に対し、条約の早期発効を促進するために実施された活動に関する報告書を作成し、第80回総会に提出するよう要請する。
12. サイバー犯罪とその撲滅及び防止における条約の役割に関する意識を高めるため、[総会による条約採択日]を国際サイバー犯罪対策デーと定めることを決定する。
附属書
国連サイバー犯罪防止条約
情報通信技術システムを用いて行われる特定の犯罪への対処並びに重大犯罪の電子的形態による証拠の共有のための国際協力の強化
前文
この条約の締約国は、
国際連合憲章の目的及び原則に留意し、
情報通信技術は、社会の発展に多大な可能性を有する一方で、犯罪者にとって新たな機会を創出し、犯罪活動の発生率及び多様化を助長し、国家、企業、並びに個人及び社会全体の福祉に悪影響を及ぼす可能性があることに留意し、
情報通信技術システムの利用が、人身売買、移民の密輸、銃器、その部品、構成部品及び弾薬の不正製造及び取引、麻薬取引、文化財取引といった、テロリズム及び国際組織犯罪に関連する犯罪を含む、犯罪の規模、速度及び範囲に相当な影響を及ぼし得ることを懸念し、
サイバー犯罪から社会を保護することを目的とした世界的な刑事司法政策を、とりわけ適切な措置を講じることによって優先的に推進する必要があることを確信し、共通の犯罪行為及び手続上の権限を確立し、国家、地域及び国際レベルでこれらの活動をより効果的に防止し、かつ撲滅するための国際協力を促進すること、
サイバー犯罪の発生場所を問わず、これらの犯罪を訴追することにより、サイバー犯罪に関与する者に対し安全な逃避先を与えないことを決意し、
各国、特に開発途上国の要請に基づき、各国に対し、相互に合意した条件による技術移転を含む技術支援及び能力構築を提供することにより、各国間の調整及び協力を強化する必要性を強調し、これにより、あらゆる形態のサイバー犯罪(その防止、摘発、捜査及び訴追を含む)に対処するための国内法及び枠組みの改善並びに国家当局の能力強化を図るとともに、この文脈において国連が果たす役割を強調し、
サイバー犯罪の被害者数の増加、これらの被害者のために正義を実現することの重要性、並びに本条約の対象となる犯罪の防止及び撲滅のために講じられる措置において、脆弱な立場にある人々のニーズに対応する必要性を認識し、
サイバー犯罪から社会を保護することを目的とした世界的な刑事司法政策を、とりわけ適切な措置を講じることによって優先的に推進する必要があることを確信し、共通の犯罪行為及び手続上の権限を確立し、国家、地域及び国際レベルでこれらの活動をより効果的に防止し、かつ撲滅するための国際協力を促進すること、
サイバー犯罪の発生場所を問わず、これらの犯罪を訴追することにより、サイバー犯罪に関与する者に対し安全な逃避先を与えないことを決意し、
各国、特に開発途上国の要請に基づき、各国に対し、相互に合意した条件による技術移転を含む技術支援及び能力構築を提供することにより、各国間の調整及び協力を強化する必要性を強調し、これにより、あらゆる形態のサイバー犯罪(その防止、摘発、捜査及び訴追を含む)に対処するための国内法及び枠組みの改善並びに国家当局の能力強化を図るとともに、この文脈において国連が果たす役割を強調し、
サイバー犯罪の被害者数の増加、これらの被害者のために正義を実現することの重要性、並びに本条約の対象となる犯罪の防止及び撲滅のために講じられる措置において、脆弱な立場にある人々のニーズに対応する必要性を認識し、
サイバー犯罪の結果として得られた財産の国際移転をより効果的に防止、摘発及び撲滅し、サイバー犯罪の結果として得られた財産の侵害を防止し、本条約に基づいて定められた犯罪による収益の回収および返還における国際協力を強化することを決意し、
サイバー犯罪の防止および撲滅はすべての国の責任であり、この分野における各国の努力が効果的であるためには、関係する国際機関および地域機関、非政府組織、市民社会組織、学術機関、民間団体の支援と関与を得て、各国が相互に協力しなければならないことを念頭に置き、
国内法に従い、本条約の対象となる犯罪の防止および撲滅のためのあらゆる関連する努力においてジェンダーの視点を主流化することの重要性を認識し、
法執行目的の達成ならびに適用可能な国際文書および地域文書に謳われている人権および基本的自由の尊重を確保する必要性に留意し、
プライバシーへの恣意的または違法な干渉からの保護を受ける権利、および個人データの保護の重要性を認識し、
サイバー犯罪の防止と対策における国連薬物犯罪事務所およびその他の国際機関および地域機関によるサイバー犯罪の防止および撲滅における活動を称賛し、
2019年12月27日の総会決議74/247及び2021年5月26日の総会決議75/282を想起し、
刑事問題における協力に関する既存の国際条約及び地域条約、並びに国連加盟国間に存在する同様の条約を考慮し、
以下のとおり合意した。
第1章
総則
第1条
目的
この条約の目的は、次のとおりである。
(a) サイバー犯罪をより効率的かつ効果的に防止し、及び対処するための措置を促進し、及び強化すること。
(b) サイバー犯罪の防止及び対処における国際協力を促進し、促進し、及び強化すること。
(c) 特に開発途上国の利益のために、サイバー犯罪の防止及び撲滅のための技術支援及び能力構築を促進し、促進し、及び支援すること。
第2条
用語の使用
この条約の適用上:
(a)「情報通信技術システム」とは、一つ以上の装置がプログラムに従って電子データを収集し、蓄積し、及び自動処理する装置又は相互接続され、若しくは関連する装置のグループをいう。
(b)「電子データ」とは、情報通信技術システムにおける処理に適した形式で事実、情報又は概念を表現したものをいい、情報通信技術システムに機能を実行させるのに適したプログラムを含む。
(c)「トラフィックデータ」とは、情報通信技術システムによる通信に関し、通信の連鎖の一部を構成する情報通信技術システムによって生成された電子データであって、通信の発信元、着信先、経路、時刻、日付、サイズ、期間又は基礎となるサービスの種類を示すものをいう。
(d)「コンテンツデータ」とは、加入者情報又はトラフィックデータを除き、情報通信技術システムによって転送されるデータの内容に関する電子データを意味し、画像、テキストメッセージ、音声メッセージ、音声録音、ビデオ録音が含まれるが、これらに限定されない。
(e)「サービスプロバイダ」とは、次の行為を行う公的機関または民間機関をいう。
(i) 当該サービスの利用者に対し、情報通信技術システムを用いて通信する機能を提供する者。
(ii) 当該通信サービス若しくは当該サービスの利用者に代わって電子データを処理若しくは保存する者。
(f)「加入者情報」とは、サービスプロバイダが保有する、トラフィックデータまたはコンテンツデータ以外のサービスの加入者に関する情報であって、以下の事項を特定できるものをいう。
(i) 利用されている通信サービスの種類、それに関連する技術的規定、およびサービスの期間。
(ii) サービス契約または取決めに基づいて入手可能な、加入者の身元情報、郵便または地理的住所、電話番号またはその他のアクセス番号、請求または支払情報。
(iii) サービス契約または取決めに基づいて入手可能な、通信機器の設置場所に関するその他の情報。
(g)「個人データ」とは、特定または特定可能な自然人に関する情報をいう。
(h)「重大な犯罪」とは、最長4年の自由の剥奪、またはより重い刑罰に処せられる犯罪行為をいう。
(i)「財産」とは、有体・無体、動産・不動産、有形・無形を問わず、仮想資産を含むあらゆる種類の資産、および当該資産の所有権または権益を証明する法的文書または証書をいう。
(j)「犯罪収益」とは、犯罪の実行により直接的または間接的に生じた、または取得されたあらゆる財産をいう。
(k)「凍結」または「押収」とは、裁判所またはその他の権限のある当局の発した命令に基づき、財産の移転、転換、処分もしくは移動を一時的に禁止すること、または財産を一時的に保管もしくは管理することを意味する。
(l) 「没収」とは、該当する場合には没収を含む、裁判所その他の権限のある当局の命令による財産の永久的な剥奪をいう。
(m) 「前提犯罪」とは、その結果として生じた収益が、この条約第17条に定義される犯罪の対象となる可能性のある犯罪をいう。
(n) 「地域経済統合機関」とは、ある地域の主権国家によって構成され、その加盟国がこの条約の規律する事項に関する権限を委譲し、かつ、その内部手続に従い、この条約に署名、批准、受諾、承認または加入することを正当に授権されている機関をいう。この条約における「締約国」への言及は、当該機関の権限の範囲内において適用される。
(o) 「緊急事態」とは、自然人の生命または安全に対して重大かつ差し迫った危険がある状況をいう。
第3条
適用範囲
この条約は、別段の定めがある場合を除き、次の事項について適用される。
(a) この条約に従って定められる犯罪の防止、捜査及び訴追(当該犯罪による収益の凍結、押収、没収及び返還を含む。)
(b) この条約第23条及び第35条に規定する、犯罪捜査又は刑事訴訟の目的のための電子的形態による証拠の収集、入手、保存及び共有
第4条
他の国連条約及び議定書に従って定められる犯罪
1. 締約国は、自国が締約国となっている他の適用のある国連条約及び議定書を実施するにあたり、当該条約及び議定書に従って定められる犯罪が、情報通信技術システムを用いて行われた場合には、国内法上の犯罪とみなされることを確保する。
2. この条のいかなる規定も、この条約に従って刑事犯罪を定めるものと解釈してはならない。
第5条
主権の保護
1. 締約国は、この条約に基づく義務を、国の主権平等及び領土保全の原則並びに他国の内政への不干渉の原則に合致する方法で履行する。
2. この条約のいかなる規定も、締約国に対し、他国の領域内において、当該他国の国内法により当該他国の当局にのみ留保されている裁判権の行使及び任務の遂行を行う権利を与えるものではない。
第6条
人権の尊重
1. 締約国は、この条約に基づく義務の履行が国際人権法に基づく義務と一致することを確保する。
2. この条約のいかなる規定も、適用される国際人権法に従い、かつ、これと一致する方法で、表現の自由、良心、意見、宗教又は信念の自由、平和的集会及び結社の自由に関連する権利を含む、人権又は基本的自由を抑圧することを許容するものと解釈してはならない。
第二章
犯罪化
第7条
不法アクセス
1. 締約国は、情報通信技術システムの全体又は一部に無断で故意にアクセスすることを自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
2. 締約国は、電子データを取得する意図、その他の不正な目的、若しくは犯罪目的をもって、セキュリティ措置を侵害することにより、又は他の情報通信技術システムに接続された情報通信技術システムに関連して、当該犯罪が行われることを要件とすることができる。
第8条
違法な傍受
1. 各締約国は、技術的手段を用いて、情報通信技術システムへの、情報通信技術システムからの、又は情報通信技術システム内における電子データの非公開の送信(当該電子データを伝送する情報通信技術システムからの電磁的放射を含む。)を故意に、かつ権利なく傍受することを自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
2. 締約国は、不正若しくは犯罪目的をもって、又は他の情報通信技術システムに接続された情報通信技術システムに関連して、当該犯罪が行われたことを要件とすることができる。
第9条
電子データへの干渉
1. 各締約国は、電子データの損傷、削除、劣化、改変又は隠蔽を故意に、かつ権利なく行ったことを自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
2. 締約国は、1項に規定する行為が重大な損害をもたらすものであることを要件とすることができる。
第10条
情報通信技術システムへの干渉
締約国は、電子データの入力、送信、損傷、削除、劣化、改変又は隠蔽により、情報通信技術システムの機能を故意に、かつ、権利なく妨害することを自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
第11条
装置の不正使用
1. 各締約国は、次の行為が故意にかつ権利なく行われた場合、自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
(a) 次のものを入手、製造、販売、使用のために調達、輸入、頒布し、又はその他の方法で利用可能にすること。
(i) この条約の第7条から第10条までの規定に従って定められている犯罪のいずれかを実行することを主たる目的として設計又は改造されたプログラムを含む装置、又は
(ii) 情報通信技術システムの全体又は一部にアクセスすることができるパスワード、アクセス認証情報、電子署名またはこれらに類するデータであって、プログラムを含む当該装置、又はパスワード、アクセス認証情報、電子署名若しくはこれらに類するデータを、この条約の第7条から第10条までの規定に従って定められている犯罪のいずれかを実行する目的で使用することを意図して、取得、製造、販売、使用のために調達、輸入、頒布し、又はその他の方法で利用可能にすること。
及び
(b) 第1項(a)(i)又は(ii)に規定する物品を、本条約第7条から第10条までの規定に従って定められる犯罪のいずれかを実行する目的で所持すること。
2. この条は、第1項に規定する物品の入手、製造、販売、使用のための調達、輸入、頒布その他の提供、又は所持が、情報通信技術システムの許可された試験又は保護のため等、本条約第7条から第10条までの規定に従って定められる犯罪を実行する目的で行われていない場合には、刑事責任を課すものと解釈してはならない。
3. 各締約国は、本条第1項の規定を適用しない権利を留保することができる。ただし、当該留保は、第1項(a)(ii)に規定する物品の販売、頒布その他の方法による提供に係るものでない限りとする。
第12条
情報通信技術システムに関連する偽造
1. 締約国は、電子データの入力、変更、削除又は隠蔽により真正でないデータが生じることを故意に、かつ、権利を行使することなく、当該データが直接読み取り可能かつ理解可能であるか否かを問わず、法的目的において真正であるものとみなされ、又は当該データに基づいて行動することを意図して行われた場合、自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
2. 締約国は、刑事責任を問うために、詐欺の意図又はこれに類する不正若しくは犯罪の意図を要件とすることができる。
第13条
情報通信技術システムに関連する窃盗又は詐欺
締約国は、故意に、かつ、権利なく次の行為により他人の財産に損害を与えることを自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
(a) 電子データの入力、変更、削除又は隠蔽。
(b) 情報通信技術システムの機能に対する妨害。
(c) 情報通信技術システムを通じて事実関係を偽り、当該人が通常行わない行為又は行わない行為を行わせる行為。
詐欺的または不正な意図をもって、自己または他人のために、権利なく金銭またはその他の財産の利益を得ること。
第14条
オンライン上の児童の性的虐待又は児童の性的搾取に関する資料に関連する犯罪
1. 各締約国は、次の行為が故意にかつ権利なく行われた場合、自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
(a) 情報通信技術システムを通じて、児童の性的虐待又は児童の性的搾取に関する資料を製作、提供、販売、頒布、送信、放送、展示、出版その他の方法で利用可能にすること。
(b) 情報通信技術システムを通じて、児童の性的虐待又は児童の性的搾取に関する資料を勧誘、調達又はアクセスすること。
(c) 情報通信技術システム又は他の記憶媒体に記憶された児童の性的虐待又は児童の性的搾取に関する資料を所持し、又は管理すること。
(d) この項の(a)から(c)までの規定に従って定められる犯罪に資金を提供すること。締約国は、これらの犯罪を別個の犯罪として定めることができる。
2. この条の規定の適用上、「児童の性的虐待又は児童の性的搾取に関する資料」とは、18歳未満の者を描写、記述又は表現する視覚資料を含むものとし、文章又は音声によるコンテンツを含むことができる。
(a) 現実の又は模擬的な性行為に従事しているもの。
(b) 性行為を行っている者の前で行われているもの。
(c) 主として性的な目的で性器が露出されているもの。
(d) 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは処罰を受けており、かつ、当該資料が性的な性質を有するもの。
3. 締約国は、この条第2項に規定する資料を、次に掲げる資料に限定することを要求することができる。
(a) 実在する人物を描写、記述又は表すもの。
(b) 児童の性的虐待又は児童の性的搾取を視覚的に描写するもの。
4. 締約国は、国内法及び適用のある国際的義務に従い、次のものの犯罪化を排除するための措置をとることができる。
(a) 児童が、自ら作成した自己を描写した資料について行った行為。
(b) 2項(a)から(c)に規定する資料の合意に基づく作成、送信、又は所持であって、描写された行為が国内法によって適法と判断され、かつ、当該資料が関係者の私的かつ合意に基づく使用のためにのみ保持されている場合。
5. この条約のいかなる規定も、児童の権利の実現に一層資する国際的義務に影響を及ぼすものではない。
第15条
児童に対する性犯罪の実行を目的とした勧誘又はグルーミング
1. 各締約国は、この条約の第14条に従って定められる犯罪の実行を含め、国内法で定義される児童に対する性犯罪の実行を目的として、情報通信技術システムを通じて故意に連絡し、勧誘し、グルーミングし、又は何らかの取り決めを行う行為を、自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
2. 締約国は、1項に規定する行為を助長する行為を要件とすることができる。
3. 締約国は、児童であると思われる者に関して、1項に規定する犯罪化を拡大することを検討することができる。
4. 締約国は、1項に規定する行為が児童によって行われた場合には、その犯罪化を排除するための措置をとることができる。
第16条
親密な画像の同意のない頒布
1. 締約国は、情報通信技術システムを用いて、人物の親密な画像を、画像に写っている人物の同意を得ることなく、故意に、かつ、権利なく販売、頒布、送信、出版その他の方法で利用可能にすることを、自国の国内法上の犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
2. 1項の規定の適用上、「親密な画像」とは、写真、ビデオ録画を含むあらゆる手段により作成された18歳以上の人物の視覚的な記録であって、性的な性質を有し、当該人物の性器が露出しているか、又は当該人物が性行為に従事しており、記録当時は私的なものであったもの、及び、犯罪発生当時、当該画像に写っている人物がプライバシーを合理的に期待していたものをいう。
3. 締約国は、適切な場合には、親密な画像の定義を、18歳未満の者の描写にまで拡大することができる。ただし、当該者が国内法上性行為を行う法定年齢に達しており、かつ、当該画像が児童虐待又は児童搾取を描写していない場合に限る。
4. この条の規定の適用上、親密な画像に描かれている18歳未満の者は、この条約第14条に定める児童の性的虐待又は児童の性的搾取の資料を構成する親密な画像の頒布に同意することはできない。
5. 締約国は、刑事責任を問う前に、危害を加える意図を要件とすることができる。
6. 締約国は、自国の国内法に従い、かつ、適用のある国際的義務に合致する範囲で、この条に関連する事項についてその他の措置をとることができる。
第17条
犯罪収益のロンダリング
1. 各締約国は、自国の国内法の基本原則に従い、次の行為が故意に行われた場合を犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
(a)
(i) 犯罪収益であることを知りながら、当該財産の不法な起源を隠蔽し、若しくは偽装する目的、又は前提犯罪の実行に関与した者が自己の行為の法的結果を回避することを幇助する目的で、財産を換金し、又は移転すること。
(ii) 犯罪収益であることを知りながら、財産の真の性質、出所、所在地、処分、移動、所有権若しくは当該財産に関する権利を隠蔽し、又は偽装すること。
(b) 自国の法制度の基本概念に従うことを条件として、次の行為を行うこと。
(i) 受領の時点で当該財産が犯罪収益であることを知りながら、財産を取得し、保有し、又は使用すること。
(ii)本条に従って定められる犯罪のいずれかについて、参加、関与、共謀、未遂、幇助、教唆、促進、助言を行うこと。
2. この条第1項の規定を実施し、又は適用するにあたり、次のとおりとする。
(a) 各締約国は、この条約第7条から第16条までの規定に従って定められる関連犯罪を前提犯罪として設定する。
(b) 締約国は、その法令において特定の前提犯罪の一覧表を定める場合には、少なくとも、この条約第7条から第16条までの規定に従って定められる包括的な犯罪を当該一覧表に含める。
(c) この項(b)号の規定の適用上、前提犯罪には、当該締約国の管轄権の内外を問わず犯された犯罪を含む。ただし、締約国の管轄権の外で行われた犯罪は、該当行為が行われた国の国内法において刑事犯罪であり、かつ、この条を実施し、又は適用する締約国の国内法において、当該国で行われたとすれば刑事犯罪となる場合にのみ、前提犯罪を構成する。
(d) 各締約国は、この条の規定を実施する自国の法律及び当該法律のその後の変更の写し、又はその説明を国際連合事務総長に提出する。
(e) 締約国の国内法の基本原則により要求される場合には、1に定める犯罪は前提犯罪を行った者には適用されないものとする。
(f) 1に定める犯罪の要件として要求される知識、意図又は目的は、客観的な事実関係から推論することができる。
第18条
法人の責任
1. 締約国は、自国の法的原則に従い、この条約に従って定められる犯罪への参加についての法人の責任を確立するために必要な措置をとる。
2. 締約国の法的原則に従い、法人の責任は、刑事責任、民事責任又は行政責任とすることができる。
3. この責任は、犯罪を行った自然人の刑事責任に影響を及ぼさないものとする。
4. 締約国は、特に、この条の規定に従って責任を負う法人が、金銭制裁を含む、効果的で、相応かつ抑止力のある刑事的又は非刑事的制裁の対象となることを確保する。
第19条
参加及び未遂
1. 締約国は、共犯者、幇助者、教唆者等のいかなる立場においても、この条約に従って定められる犯罪に故意に参加した場合には、自国の国内法に従って犯罪とするために必要な立法その他の措置をとる。
2. 締約国は、この条約に従って定められる犯罪の未遂が故意に行われた場合には、自国の国内法に従って犯罪とするために必要な立法その他の措置をとることができる。
3. 締約国は、この条約に従って定められる犯罪の準備が故意に行われた場合には、自国の国内法に従って犯罪とするために必要な立法その他の措置をとることができる。
第20条
時効
締約国は、適当な場合には、犯罪の重大性を考慮し、この条約に従って定められる犯罪について、自国の国内法に基づき、訴訟を開始するための長期の時効期間を設定するものとし、被疑者が司法の執行を逃れた場合においては、より長い時効期間を設定し、又は時効の停止を定める。
第21条
訴追、裁判及び制裁
1. 各締約国は、この条約に従って定められる犯罪の実行に対し、犯罪の重大性を考慮した、効果的で、均衡のとれた、かつ、抑止力のある制裁を科すものとする。
2. 各締約国は、自国の国内法に従い、重要な情報インフラに影響を及ぼす状況を含め、この条約に従って定められる犯罪に関して加重情状を立証するために必要な立法その他の措置をとることができる。
3. 各締約国は、この条約に従って定められる犯罪について人を訴追することに関する自国の国内法に基づく裁量権が、当該犯罪に関する法執行措置の有効性を最大化するため、かつ、当該犯罪の実行を抑止する必要性に十分な考慮を払って行使されることを確保するよう努める。
4. 各締約国は、この条約に従って定められる犯罪について訴追される者が、国内法に従い、かつ、公正な裁判を受ける権利及び弁護の権利を含む締約国の適用のある国際的義務に適合するすべての権利及び保障を享受することを確保する。
5. この条約に従って定められる犯罪については、各締約国は、自国の国内法に従い、かつ、弁護の権利を十分に考慮して、裁判又は控訴中の釈放の決定に関連して課される条件が、その後の刑事手続における被告人の出廷を確保する必要性を考慮に入れることを確保するよう努めるため、適切な措置をとる。
6. 各締約国は、当該犯罪で有罪判決を受けた者の早期釈放又は仮釈放の可能性を検討するに当たっては、当該犯罪の重大性を考慮する。
7. 締約国は、児童の権利に関する条約及びその適用議定書並びにその他の適用可能な国際文書又は地域文書に基づく義務に従い、この条約に従って定められる犯罪で訴追される児童を保護するため、国内法に基づく適切な措置が講じられることを確保する。
8. この条約のいかなる規定も、この条約に従って定められる犯罪の内容及び適用される法律上の抗弁若しくは行為の合法性を規律するその他の法的原則は締約国の国内法に留保され、かつ、当該犯罪は当該国内法に従って訴追され、処罰されるという原則に影響を及ぼすものではない。
第三章
管轄権
第22条
管轄権
1. 各締約国は、次の場合において、この条約に従って定められる犯罪についての管轄権を設定するために必要な措置をとる。
(a) 犯罪が当該締約国の領域内で行われる場合。
(b) 犯罪が、犯罪発生時に当該締約国旗を掲げる船舶内又は当該締約国の法律に基づいて登録されている航空機内で行われる場合。
2. この条約第5条の規定に従うことを条件として、締約国は、次の場合にも、当該犯罪についての管轄権を設定することができる。
(a) 犯罪が当該締約国の国民に対して行われる場合。
(b) 犯罪が当該締約国の国民又は当該締約国の領域内に常居所を有する無国籍者によって行われる場合。又は
(c) 当該犯罪が、この条約第17条1項(b)(ii)の規定に従って定められる犯罪の一つであり、この条約第17条1項(a)(i)若しくは(ii)又は(b)(i)の規定に従って定められる犯罪を自国の領域内において行うことを目的として、自国の領域外で行われた場合、又は
(d) 当該犯罪が、自国に対して行われた場合。
3. この条約第37条11の規定の適用上、各締約国は、容疑者が自国の領域内に所在し、かつ、当該容疑者が自国の国民であるという理由のみで当該容疑者を引き渡さない場合には、この条約に従って定められる犯罪についての自国の裁判権を設定するために必要な措置をとる。
4. 各締約国は、容疑者が自国の領域内に所在し、かつ、当該容疑者を引き渡さない場合には、この条約に従って定められる犯罪についての自国の裁判権を設定するために必要な措置をとることができる。
5. 締約国が本条第1項又は第2項の規定に基づいて裁判権を行使する場合、他の締約国が同一の行為について捜査、訴追又は司法手続を行っていることを通告され、又はその他の方法で知った場合には、当該締約国の権限のある当局は、適当な場合には、その行動を調整するため相互に協議する。
6. この条約は、一般国際法の規範に影響を与えることなく、締約国が自国の国内法に従って設定した刑事裁判権の行使を排除するものではない。
第四章
手続的措置及び法執行
第23条
手続的措置の適用範囲
1. 各締約国は、特定の犯罪捜査又は刑事訴訟のために、この章に規定する権限及び手続を確立するために必要な立法その他の措置をとる。
2. この条約に別段の定めがある場合を除くほか、各締約国は、1に規定する権限及び手続を次の事項に適用する。
(a) この条約に従って定められる犯罪。
(b) 情報通信技術システムを用いて行われるその他の犯罪。
(c) あらゆる犯罪に関する電子的形態の証拠の収集。
3. (a) 各締約国は、留保に定める犯罪又は犯罪の類型についてのみ、第29条に規定する措置を適用する権利を留保することができる。ただし、当該犯罪又は犯罪の類型の範囲は、第30条に規定する措置を適用する犯罪の範囲よりも限定的であってはならない。各締約国は、第29条に規定する措置を最も広範に適用することができるよう、当該留保を制限することを考慮する。
(b) 締約国は、この条約の採択時に施行されていた法令の制限により、次の条件を満たすサービスプロバイダの情報通信技術システム内で送信される通信に、第29条及び第30条に規定する措置を適用することができない次のいずれかの場合:
(i) 限られた利用者集団の利益のために運営されていること。
(ii) 公衆通信網を用いておらず、かつ、公衆であるか私的であるかを問わず他の情報通信技術システムに接続されていないこと。
当該締約国は、これらの措置を当該通信に適用しない権利を留保することができる。各締約国は、この条約第29条及び第30条に規定する措置を最も広範に適用することができるよう、当該留保を制限することを考慮する。
第24条
条件及び保障措置
1. 各締約国は、この章に規定する権限及び手続の設定、実施及び適用が、自国の国内法に定める条件及び保障措置に従うことを確保する。これらの条件及び保障措置は、国際人権法に基づく自国の義務に従い、人権の保護を規定し、かつ、比例原則を組み込むものとする。
2. 各締約国の国内法に従い、かつこれに基づき、当該条件及び保障措置には、関係する手続又は権限の性質に鑑み、適切な場合、とりわけ、司法審査その他の独立した審査、効果的な救済を受ける権利、適用を正当化する根拠、並びに当該権限又は手続の範囲及び期間の制限が含まれる。
3. 締約国は、公益、特に司法の適正な運営と両立する限りにおいて、この章に定める権限及び手続が第三者の権利、責任及び正当な利益に及ぼす影響を考慮する。
4. この条の規定に従って設けられる条件及び保障措置は、国内における刑事捜査及び刑事訴訟の目的のため、並びに要請を受けた締約国による国際協力の実施の目的のため、この章に定める権限及び手続について国内レベルにおいて適用される。
5. この条第2項に規定する司法審査又はその他の独立審査とは、国内レベルにおける当該審査をいう。
第25条
保存された電子データの迅速な保存
1. 各締約国は、自国の権限のある当局が、情報通信技術システムによって保存されたトラフィックデータ、コンテンツデータ及び加入者情報を含む、特定の電子データの迅速な保存を命じ、又はこれに類する手段によって当該電子データの迅速な保存を確保することができるよう、必要な立法その他の措置をとる。特に、当該電子データが特に滅失又は改ざんされやすいと信ずるに足る理由がある場合に限る。
2. 締約国は、ある者に対し、その者が所有又は管理する特定の保存電子データを保存するよう命令することにより、本条第1項の規定を実施する場合、当該締約国は、当該者が、権限のある当局が当該電子データの開示を求めることができるよう、必要な期間、最長90日にわたり、当該電子データの完全性を保存し、及び維持することを義務付けるために必要な立法その他の措置をとる。締約国は、当該命令をその後更新することができる旨を定めることができる。
3. 各締約国は、電子データを保存すべき管理者その他の者に対し、自国の国内法に定める期間、当該手続の実施について秘密を保持することを義務付けるために必要な立法その他の措置をとる。
第26条
トラフィックデータの迅速な保存及び部分的開示
各締約国は、この条約第25条の規定に基づいて保存されるべきトラフィックデータに関して、次の事項を行うために必要な立法その他の措置をとる。
(a) 通信の伝送に一又は複数のサービスプロバイダが関与したか否かを問わず、トラフィックデータの迅速な保存が利用可能であることを確保すること。
(b) 締約国がサービスプロバイダ及び通信又は示された情報が伝送された経路を特定できるように十分な量のトラフィックデータが、締約国の権限のある当局又は当該当局が指定する者に迅速に開示されることを確保すること。
第27条
提出命令
各締約国は、自国の権限のある当局に対し、次の事項を命令する権限を与えるために必要な立法その他の措置をとる。
(a) 自国の領域内にいる者に対し、その者が保有または管理する特定の電子データであって、情報通信技術システムまたは電子データ記憶媒体に記憶されているものを提出すること。
(b) 自国の領域内でサービスを提供するサービスプロバイダに対し、そのサービスプロバイダが保有または管理する当該サービスに関する加入者情報を提出すること。
第28条
保管された電子データの捜索及び押収
1. 各締約国は、自国の権限のある当局に対し、当該締約国の領域内において、次のものについて捜索又はこれに類するアクセスを行う権限を与えるために必要な立法その他の措置をとる。
(a) 情報通信技術システム、その一部及びこれに保管された電子データ。
(b) 捜索の対象となる電子データが保管されている電子データ記憶媒体。
2. 各締約国は、自国の当局が1(a)の規定に従って特定の情報通信技術システム若しくはその一部に対し捜索又はこれに類するアクセスを行う場合において、捜索の対象となる電子データが自国の領域内にある他の情報通信技術システム若しくはその一部に保管されており、かつ、当該データが当該システムから合法的にアクセス可能であり、又は当該システムにおいて利用可能であると信ずるに足る根拠があるときは、当該当局が当該他の情報通信技術システムへのアクセスを得るための捜索を迅速に実施することができることを確保するために必要な立法その他の措置をとる。
3. 各締約国は、自国の権限のある当局に対し、1又は2の規定に従ってアクセスされた自国の領域内にある電子データを押収し、又はこれに類する安全を確保する権限を与えるために必要な立法その他の措置をとる。これらの措置には、次の権限を含む。
(a) 情報通信技術システム若しくはその一部、又は電子データ記憶媒体を押収し、又はこれに類する安全を確保すること。
(b) 電子形式で当該電子データの複製を作成し、保管すること。
(c) 関連する保管電子データの完全性を維持すること。
(d) アクセスされた情報通信技術システム内の当該電子データをアクセス不能にし、又は削除すること。
4. 各締約国は、自国の権限のある当局に対し、問題となる情報通信技術システム、情報通信ネットワーク若しくはそれらの構成要素の機能、又はそれらの中の電子データを保護するために適用される措置について知識を有する者に対し、1から3までに規定する措置の実施を可能にするために必要な情報を合理的な範囲で提供するよう命じる権限を与えるために必要な立法その他の措置をとる。
第29条
トラフィックデータのリアルタイム収集
1. 各締約国は、自国の権限のある当局に次の権限を与えるために必要な立法その他の措置をとる。
(a) 自国の領域内において技術的手段を用いて収集し、又は記録すること。
(b) サービスプロバイダに、その既存の技術的能力の範囲内で、次のことを強制すること。
(i) 自国の領域内において技術的手段を用いて収集し、又は記録すること。
(ii) 自国の領域内において情報通信技術システムを用いて送信される特定の通信に関連するトラフィックデータをリアルタイムで収集し、又は記録することについて、権限のある当局に協力し、及び援助すること。
2. 締約国は、自国の法制度の原則により1(a)に規定する措置をとることができない場合には、これに代えて、自国の領域内において伝送される特定の通信に関連するトラフィックデータのリアルタイムでの収集又は記録を、当該領域内における技術的手段の適用により確保するために必要な立法その他の措置をとることができる。
3. 締約国は、サービスプロバイダに対し、この条に規定する権限の行使の事実及びこれに関連する情報を秘密に保持することを義務付けるために必要な立法その他の措置をとる。
第30条
コンテンツデータの傍受
1. 各締約国は、国内法で定める一連の重大な刑事犯罪に関連して、自国の権限のある当局に次の権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。
(a) 自国の領域内において技術的手段を用いて収集し、又は記録すること。
(b) サービスプロバイダに対し、その既存の技術的能力の範囲内で、次のことを強制すること。
(i) 自国の領域内において技術的手段を用いて収集し、又は記録すること。
(ii) 自国の領域内において情報通信技術システムを用いて送信される特定の通信のコンテンツデータをリアルタイムで収集し、又は記録することについて、権限のある当局に協力し、及び援助すること。
2. 締約国は、自国の国内法制度の原則により、1(a)に規定する措置をとることができない場合には、その代わりに、自国の領域内における技術的手段の適用を通じて、特定の通信に関するコンテンツデータのリアルタイムでの収集又は記録を確保するために必要な立法その他の措置をとることができる。
3. 締約国は、サービスプロバイダに対し、この条に規定する権限の行使の事実及びこれに関連する情報を秘密に保持することを義務付けるために必要な立法その他の措置をとる。
第31条
犯罪収益の凍結、押収及び没収
1. 締約国は、自国の国内法制度の範囲内で最大限可能な範囲で、次のものを没収するために必要な措置をとる。
(a) この条約に従って定められた犯罪から得られた犯罪収益又はその価値が当該収益に相当する財産。
(b)この条約に従って定められる犯罪に使用され、または使用されることとなっている財産、設備またはその他の器具。
2. 各締約国は、1に規定する物品の最終的な没収を目的として、その識別、追跡、凍結又は押収を可能にするために必要な措置をとる。
3. 各締約国は、自国の国内法に従い、本条1及び2に規定する凍結、押収又は没収された財産について、権限のある当局による管理を規制するために必要な立法その他の措置をとる。
4. 犯罪収益が全部又は一部、他の財産に転換又は変換された場合、当該財産は、犯罪収益に代えて、この条に規定する措置の対象となる。
5. 犯罪収益が正当な源泉から取得された財産と混在した場合、当該財産は、凍結又は押収に関するいかなる権限も害されることなく、混在した収益の評価額を上限として没収の対象となる。
6. 犯罪収益、犯罪収益が変質し若しくは転換された財産、又は犯罪収益が混入された財産から得られた収入その他の利益についても、犯罪収益と同様の方法及び範囲において、この条に規定する措置が適用される。
7. この条及び第50条の規定の適用上、締約国は、自国の裁判所その他の権限のある当局に対し、銀行、金融又は商業記録の開示又は押収を命じる権限を与える。締約国は、銀行秘密を理由として、この項の規定に基づく措置を拒否してはならない。
8. 締約国は、自国の国内法の原則及び司法手続その他の手続の性質に適合する限りにおいて、犯罪者に対し、犯罪収益又は没収の対象となるその他の財産の合法的な起源を証明することを求める可能性を検討することができる。
9. この条の規定は、善意の第三者の権利を害するものと解釈してはならない。
10. この条のいかなる規定も、この条に規定する措置が締約国の国内法の規定に従って定義され、及び実施されるという原則に影響を及ぼすものではない。
第32条
前科の確定
締約国は、自国が適当と考える条件及び目的において、この条約に従って定められる犯罪に関連する刑事訴訟において当該情報を利用する目的で、被疑者が他の国において有罪判決を受けたことがあることを考慮に入れるために必要な立法その他の措置をとることができる。
第33条
証人の保護
1. 各締約国は、自国の国内法に従い、かつ、自国の能力の範囲内で、この条約に基づいて定められる犯罪に関する証言を行い、又は誠意を持って、かつ、合理的な根拠に基づき、情報を提供し、その他捜査当局若しくは司法当局に協力する証人、並びに、適当な場合には、その親族その他の近親者に対し、報復又は脅迫の可能性から効果的な保護を与えるため、適当な措置をとる。
2. 1項に規定する措置には、特に、適正手続きを受ける権利を含む被告人の権利を害することなく、とりわけ、次のことを含めることができる。
(a) 必要かつ実行可能な範囲で、これらの者の居住地を移転すること、並びに適当な場合には、これらの者の身元及び所在に関する情報の非開示又は開示の制限を認めることなど、これらの者の身体的保護のための手続を定めること。
(b)ビデオリンクなどの通信技術やその他の適切な手段を用いて証言することを認めるなど、証人の安全を確保する方法で証言を行うことを認める証拠規則を定めること。
3. 締約国は、1項に規定する者の移転のため、他の国と協定または取決めを締結することを考慮する。
4. この条の規定は、被害者が証人である限り、被害者にも適用される。
第34条
被害者への援助及び保護
1. 各締約国は、自国の能力の範囲内で、この条約に従って定められる犯罪の被害者に対し、特に報復又は脅迫の脅威がある場合に、援助及び保護を提供するための適切な措置をとる。
2. 各締約国は、自国の国内法に従うことを条件として、この条約に従って定められる犯罪の被害者が補償及び賠償を受ける機会を提供するための適切な手続を定める。
3. 各締約国は、自国の国内法に従うことを条件として、犯罪者に対する刑事訴訟の適切な段階において、弁護人の権利を害さない方法で、被害者の意見及び懸念が提示され、及び考慮されることを可能にする。
4. この条約の第14条から第16条までの規定に従って定められる犯罪に関し、各締約国は、自国の国内法に従い、関連する国際機関、非政府機関及び市民社会の他の構成員と協力し、当該犯罪の被害者に対し、身体的及び精神的回復を含む援助を提供するための措置をとる。
5. 締約国は、本条第2項から第4項までの規定を適用するにあたり、被害者の年齢、性別並びに児童の特別な状況及びニーズを含む被害者の特別な状況及びニーズを考慮する。
6. 締約国は、自国の法的枠組みと両立する範囲内において、本条約第14条及び第16条に規定するコンテンツを削除し、又はアクセス不能とする要請への対応を確保するための効果的な措置をとる。
第5章
国際協力
第35条
国際協力の一般原則
1. 締約国は、本条約の規定、刑事問題における国際協力に関するその他の適用可能な国際文書及び国内法に従い、次の目的のため相互に協力する。
(a) 本条約に従って定められる犯罪の捜査及び訴追並びに当該犯罪による収益の凍結、押収、没収及び返還を含む当該犯罪に関する司法手続。
(b) この条約に従って定められる犯罪行為に関する電子的形態の証拠の収集、入手、保存及び共有。
(c) この条約の採択時に効力を有する他の適用のある国連条約及び議定書に従って定められる重大な犯罪を含む、あらゆる重大な犯罪行為に関する電子的形態の証拠の収集、入手、保存及び共有。
2. この条1項(b)及び(c)に規定する犯罪行為に関する電子的形態の証拠の収集、入手、保存及び共有については、この条約第40条並びに第41条から第46条までの関連規定が適用される。
3. 国際協力に関する事項において、双罰性が要件とみなされる場合において、援助が求められている犯罪の基礎となる行為が両締約国の法律の下で刑事犯罪であるときは、要請を受けた締約国の法律が当該犯罪を要請を行った締約国と同じ犯罪の範疇に位置付けているか、又は同じ用語で当該犯罪を呼んでいるかにかかわらず、当該要件は満たされたものとみなされる。
第36条
個人データの保護
1. (a) この条約に従って個人データを移転する締約国は、自国の国内法及び適用のある国際法に基づいて負う義務に従って移転を行う。締約国は、個人データの保護に関する適用のある法律に従って個人データを提供できない場合には、この条約に従って個人データを移転することを要求されない。
(b) 個人データの移転が本条第1項(a)の規定に適合しない場合には、締約国は、個人データの提供要請に応じるため、当該適用法令に従い、当該規定の遵守を達成するための適切な条件を課すことを求めることができる。
(c) 締約国は、個人データの移転を容易にするための二国間または多国間の取決めを確立することが推奨される。
2. 締約国は、この条約に従って移転される個人データについて、受領した個人データが締約国のそれぞれの法的枠組みにおける効果的かつ適切な保護措置の対象となることを確保する。
3. 締約国は、この条約に従って取得した個人データを第三国または国際機関に移転するために、当初の移転締約国にその意図を通報し、その許可を求める。締約国は、当初の移転締約国の許可を得た場合にのみ、当該個人データを移転するものとし、当初の移転締約国は、書面による許可を求めることができる。
第37条
犯罪人引渡し
1. この条は、犯罪人引渡しの請求の対象となっている者が、請求を受けた締約国の領域内に所在する場合において、この条約に従って定められる犯罪について適用する。ただし、犯罪人引渡しが求められている犯罪が、請求を行った締約国および請求を受けた締約国の双方の国内法に基づいて処罰することができる場合に限る。引渡しが、引渡し犯罪に関して科せられた懲役刑その他の拘禁の最終刑に服する目的で要請されている場合には、要請を受けた締約国は、国内法に従って引渡しを許可することができる。
2. 1項の規定にかかわらず、締約国は、その国の法律で認められる限りにおいて、この条約に基づいて定められる犯罪行為のうち自国の国内法では処罰できないものについて、その者の引渡しを許可することができる。
3. 引渡しの請求が複数の別個の犯罪行為を含み、そのうちの少なくとも一つがこの条に基づいて引渡し可能であり、かつ、他の一部が拘禁期間により引渡し不可能であるものの、この条約に基づいて定められる犯罪行為に関連する場合においては、請求を受けた締約国は、これらの犯罪行為についてもこの条を適用することができる。
4. この条の規定が適用される各犯罪行為は、締約国間の現行の犯罪人引渡条約において引渡犯罪行為とみなされる。締約国は、相互間で締結されるすべての犯罪人引渡条約において、これらの犯罪行為を引渡犯罪行為とみなすことを約束する。
5. 条約の存在を犯罪人引渡しの条件とする締約国は、自国と犯罪人引渡し条約を締結していない他の締約国から犯罪人引渡しの請求を受けた場合には、この条が適用されるいかなる犯罪についても、この条約を犯罪人引渡しの法的根拠とみなすことができる。
6. 条約の存在を犯罪人引渡しの条件とする締約国は、次のことを行う。
(a) この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の際に、この条約を他のこの条約締約国との犯罪人引渡しにおける協力の法的根拠とするかどうかを国際連合事務総長に通報する。
(b) この条約を犯罪人引渡しにおける協力の法的根拠としない場合には、適当な場合には、この条を実施するため、この条約の他の締約国と犯罪人引渡しに関する条約を締結するよう努める。
7. 条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国は、相互間で、この条の規定が適用される犯罪を引渡犯罪として承認する。
8. 犯罪人引渡しは、請求を受けた締約国の国内法又は適用のある犯罪人引渡し条約に定める条件に従う。この条件には、特に、犯罪人引渡しの最低限の刑罰に関する条件及び請求を受けた締約国が犯罪人引渡しを拒否することができる根拠に関する条件が含まれる。
9. 締約国は、自国の国内法に従うことを条件として、この条の規定が適用されるいかなる犯罪についても、引渡し手続を迅速化し、及び引渡し手続に関連する証拠要件を簡素化するよう努める。
10. 要請を受けた締約国は、自国の国内法及び犯罪人引渡し条約の規定に従うことを条件として、状況が正当かつ緊急であると確信する場合、かつ、要請を行った締約国の要請(当該要請が国際刑事警察機構の既存の経路を通じて伝達される場合を含む。)に基づき、引渡しを求められている者であって自国の領域内に所在するものを拘禁し、又は引渡し手続における当該者の出頭を確保するためのその他の適切な措置をとることができる。
11. 自国の領域内に容疑者が発見された締約国は、当該容疑者が自国の国民であるという理由のみでこの条の規定が適用される犯罪について当該容疑者を引き渡さない場合には、引渡しを求める締約国の要請により、当該事件を自国の権限のある当局に遅滞なく付託し、訴追する義務を負う。当該当局は、当該締約国の国内法に基づく同種の性質を有する他の犯罪の場合と同様の方法で決定を行い、及び手続を行う。関係締約国は、特に手続面及び証拠面において、当該訴追の効率性を確保するため、相互に協力する。
12. 締約国は、自国の国内法に基づき、当該国民の引渡し又はその他の方法での引渡しが、当該引渡しの対象となる裁判又は手続の結果として科された刑に服するために当該締約国に送還されるという条件付きでのみ認められている場合において、当該締約国と当該国民の引渡しを求める締約国との間でこの選択肢及び適当と認めるその他の条件に合意するときは、当該条件付きの引渡し又は引渡しは、本条第11項に定める義務を履行するのに十分である。
13. 刑の執行を目的として請求された犯罪人引渡しが、請求対象者が請求を受けた締約国の国民であるという理由で拒否された場合、当該請求を受けた締約国は、自国の国内法が許し、かつ、当該国内法の要件に従い、請求を行った締約国の申請に基づき、請求を行った締約国の国内法に基づいて科された刑の執行又はその残余の刑の執行を検討する。
14. この条の規定が適用される犯罪のいずれかに関連して訴訟手続が行われている者は、当該訴訟手続のあらゆる段階において、当該者が所在する締約国の国内法に定めるすべての権利及び保障の享受を含め、公正な取扱いを保障される。
15. この条約のいかなる規定も、引渡しの要請を受けた締約国が、当該要請が性別、人種、言語、宗教、国籍、民族的出身若しくは政治的意見を理由として当該者を訴追し若しくは処罰する目的で行われたと信ずるに足りる相当な根拠を有する場合、又は、当該要請に応じることによりこれらの理由のいずれかにより当該者の地位が害されるであろうと信ずるに足りる相当な根拠を有する場合には、引渡しの義務を課するものと解釈してはならない。
16. 締約国は、犯罪が財政問題にも関連するとみなされるという理由のみで、引渡しの要請を拒否してはならない。
17. 要請を受けた締約国は、犯罪人引渡しを拒否する前に、適当な場合には、要請を行った締約国と協議し、当該要請を行った締約国に対し、意見を表明し、かつ、その主張に関連する情報を提供する十分な機会を与えるものとする。
18. 要請を受けた締約国は、要請を行った締約国に対し、犯罪人引渡しに関する自国の決定を通知する。要請を受けた締約国は、自国の国内法又は国際法上の義務により妨げられない限り、要請を行った締約国に対し、犯罪人引渡しを拒否する理由を通知するものとする。
19. 各締約国は、署名の際、又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、犯罪人引渡し又は暫定逮捕の要請を行い、又は受理する責任を有する当局の名称及び住所を国際連合事務総長に通報する。事務総長は、締約国により指定された当局の登録簿を作成し、最新の状態に保つものとする。各締約国は、登録簿に記載された事項が常に正確であることを確保するものとする。
20.締約国は、犯罪人引渡しの実施又はその実効性を高めるため、二国間又は多数国間の協定又は取決めを締結するよう努める。
第38条
受刑者の移送
締約国は、受刑者の権利を考慮し、この条約に従って定められる犯罪により拘禁刑その他の形態の自由の剥奪の刑を宣告された者が自国の領域において刑期を全うできるよう、当該者を自国の領域に移送することに関する二国間又は多国間の協定又は取決めを締結することを検討することができる。締約国は、また、同意、更生及び社会復帰に関する事項も考慮することができる。
第39条
刑事訴訟の移送
1. 締約国は、特に複数の司法管轄権が関係する場合において、訴追を集中させるため、この条約に従って定められる犯罪の刑事訴追のための訴訟を相互に移送することが司法の適正な運営に資すると認められる場合には、当該訴訟を相互に移送する可能性を検討する。
2. 刑事訴訟の移送を条約の存在を条件とする締約国は、この件に関して自国と条約を締結していない他の締約国から移送の要請を受けた場合には、この条が適用されるいかなる犯罪についても、この条約を刑事訴訟の移送の法的根拠とみなすことができる。
第40条
法律上の相互援助に関する一般原則及び手続
1. 締約国は、この条約に従って定められる犯罪に関する捜査、訴追及び司法手続において、また、この条約に従って定められる犯罪及び重大な犯罪に関する電子的証拠の収集のために、相互に最大限の法律上の相互援助を与える。
2. 要請を受けた締約国においてこの条約第18条の規定に基づき法人が責任を問われる可能性のある犯罪に関する捜査、訴追及び司法手続に関し、当該要請を受けた締約国の関連法、条約、協定及び取決めに基づき、最大限可能な範囲で相互に法律上の援助を与えるものとする。
3. この条の規定に従って与えられる相互に法律上の援助は、次のいずれの目的のためにも要請することができる。
(a) 個人からの証拠の収集又は供述の聴取。
(b) 司法文書の送達。
(c) 捜索、押収、及び凍結。
(d) この条約第44条の規定に基づき情報通信技術システムによって保存された電子データの捜索若しくはこれに類するアクセス、押収若しくはこれに類する確保、及び開示。
(e)本条約第45条に基づくリアルタイムでのトラフィックデータの収集。
(f) 本条約第46条に基づくコンテンツデータの傍受。
(g) 物件及び場所の調査。
(h) 情報、証拠及び専門家の評価の提供。
(i) 政府、銀行、金融機関、法人又は事業所の記録を含む関連文書及び記録の原本又は認証謄本の提供。
(j) 証拠目的のため、犯罪収益、財産、手段その他の物の特定又は追跡。
(k) 要請締約国における人々の自発的な出頭の促進。
(l) 犯罪収益の回収。
(m) 要請を受けた締約国の国内法に反しないその他の援助。
4. 締約国の権限のある当局は、国内法の適用を妨げることなく、刑事事項に関する情報が他の締約国の権限のある当局による調査及び刑事訴訟の実施若しくはそれらの成功裏の終結に資する可能性があると信ずる場合、又は当該他の締約国がこの条約に基づき行う要請につながる可能性があると信ずる場合には、事前の要請なく、当該情報を当該他の締約国の権限のある当局に伝達することができる。
5. 4項の規定による情報の伝達は、情報を提供する権限のある当局の国における調査及び刑事訴訟に影響を及ぼすものではない。情報を受領する権限のある当局は、一時的であっても、当該情報の秘密の保持又はその使用の制限の要請に応じるものとする。ただし、このことは、受領締約国が自国の手続において被告人の無罪を免れる情報を開示することを妨げない。この場合において、受領締約国は、開示に先立ち、送付締約国に通知するものとし、要請があった場合には、送付締約国と協議する。例外的な場合において事前の通知が不可能である場合には、受領締約国は、遅滞なく、情報を送信締約国に通知する。
6. この条の規定は、法律上の相互援助を全部または一部規定している、または将来規定する二国間または多数国間の他の条約に基づく義務に影響を及ぼすものではない。
7. この条の8項から31項までの規定は、関係締約国が法律上の相互援助に関する条約に拘束されていない場合には、この条の規定に従って行われる要請に適用する。これらの締約国がそのような条約に拘束されている場合には、当該条約の対応する規定が適用される。ただし、締約国がこれに代えてこの条の8項から31項までの規定を適用することに合意する場合は除く。締約国は、これらの規定が協力を促進する場合には、これらの規定を適用することを強く奨励される。
8. 締約国は、双罰性が存在しないことを理由として、この条の規定に従って援助を提供することを拒否することができる。ただし、要請を受けた締約国は、適当と認める場合には、当該行為が要請を受けた締約国の国内法上の犯罪を構成するか否かを問わず、その裁量により決定する範囲内で援助を提供することができる。要請が些細な性質の事項、又はこの条約の他の規定に基づいて求められる協力若しくは援助が受けられる事項に関するものである場合には、援助を拒否することができる。
9. ある締約国の領域内で拘禁され、又は刑に服している者が、身元確認、証言、又はこの条約に従って定められる犯罪に関する捜査、訴追若しくは司法手続のための証拠の入手におけるその他の援助の提供の目的で、他の締約国への出頭を要請された場合、当該者は、以下の条件を満たす場合に移送することができる。
(a) 当該者が自発的にインフォームド・コンセントを与えていること。
(b) 両締約国の権限のある当局が、当該締約国が適当と認める条件を付して合意していること。
10. 第9項の規定の目的は、次のとおりとする。
(a) 当該者が移送される締約国は、当該者が移送された締約国から別段の要請又は許可がない限り、移送された者を拘留する権限及び義務を有する。
(b) 当該者が移送される締約国は、両締約国の権限のある当局が事前に合意し、又は別段の合意をしたとおり、当該者が移送された締約国の拘留に当該者を返還する義務を遅滞なく履行する。
(c) 当該者が移送される締約国は、当該者が移送された締約国に対し、当該者の送還のための犯罪人引渡し手続を開始することを要求してはならない。
(d)移送された者は、移送元の国において服役中の刑期を、移送先の締約国における拘禁期間中、控除される。
11. 移送元の締約国が本条第9項及び第10項の規定に従って同意する場合を除き、当該者は、国籍のいかんを問わず、移送元の国の領域を離れる前の行為、不作為又は有罪判決に関して、移送先の国の領域内において、訴追され、拘留され、処罰され、又はその他の自由の制限を受けない。
12. (a) 各締約国は、法律上の相互援助の要請を受理し、当該要請を執行し、又は執行のため権限のある当局に送付する責任及び権限を有する一又は複数の中央当局を指定する。締約国が、法律上の相互援助に関する別個の制度を有する特別の地域又は領域を有する場合には、当該地域又は領域について同一の機能を有する別個の中央当局を指定することができる。
(b) 中央当局は、受理した要請の迅速かつ適正な執行又は送付を確保する。中央当局は、当該要請を執行のため権限のある当局に送付する場合には、当該権限のある当局による当該要請の迅速かつ適正な執行を奨励する。
(c) 国際連合事務総長は、各締約国がこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する際に、この目的のために指定された中央当局について通知を受けるものとし、締約国により指定された中央当局の登録簿を作成し、最新の状態に保つ。各締約国は、登録簿に記載された事項が常に正確であることを確保する。
(d) 法律上の相互援助の要請及びこれに関連するあらゆる連絡は、締約国が指定する中央当局に伝達される。この規定は、締約国が、当該要請及び連絡が外交上の経路を通じて、また、緊急の状況において締約国が合意する場合には、可能な限り国際刑事警察機構を通じて行われることを要求する権利を害するものではない。
13. 要請は、書面により、又は可能な場合には書面記録を作成できるあらゆる方法により、要請を受ける締約国が受け入れ可能な言語により、当該締約国が真正性を証明することができる条件の下で行われるものとする。各締約国がこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する際に、各締約国が受け入れ可能な言語について、国際連合事務総長に通告される。緊急の状況において、かつ、締約国が合意する場合には、要請は口頭で行うことができるが、直ちに書面により確認されなければならない。
14. 締約国の中央当局は、それぞれの国内法によって禁止されていない場合、要請を受けた締約国が真正性を立証し、かつ、通信の安全を確保できる条件の下で、法律上の相互援助の要請、これに関連する通信及び証拠を電子形式で送受信することが推奨される。
15. 法律上の相互援助の要請には、次の事項を含める。
(a) 要請を行う当局の識別情報。
(b) 要請が関係する捜査、訴追又は司法手続きの主題及び性質、並びに捜査、訴追又は司法手続きを実施する当局の名称及び機能。
(c) 司法文書の送達を目的とする要請を除く、関連事実の要約。
(d) 求められる援助の内容及び要請を行う締約国が従うことを希望する特定の手続の詳細。
(e) 可能かつ適切な場合には、関係者の身元、所在地及び国籍、並びに関係する物品又は口座の原産国、説明及び所在地。
(f) 該当する場合には、証拠、情報又はその他の援助を求める期間。
(g) 証拠、情報又はその他の援助を求める目的。
16. 要請を受けた締約国は、自国の国内法に従って要請を履行するために必要と思われる場合、又は自国がそのような履行を容易にすることができる場合には、追加情報を要請することができる。
17. 要請は、要請を受けた締約国の国内法に従って履行され、また、要請を受けた締約国の国内法に反しない範囲で、かつ、可能な場合には、要請において指定された手続に従って履行される。
18. ある個人が一方の締約国の領域内におり、他の締約国の司法当局により証人、被害者又は専門家として審問を受ける必要がある場合において、当該個人が要請国の領域内に自ら出頭することが不可能又は望ましくないときは、当該一方の締約国は、他方の締約国の要請に基づき、可能な限り、かつ、国内法の基本原則に反しない範囲で、ビデオ会議による審問の実施を認めることができる。締約国は、審問が要請国の司法当局によって行われ、要請を受けた締約国の司法当局が出席することに合意することができる。要請を受けた締約国がビデオ会議の開催に必要な技術的手段を利用できない場合には、相互合意に基づき、要請国が当該手段を提供することができる。
19. 要請締約国は、要請を受けた締約国から提供された情報又は証拠を、要請に記載されたもの以外の捜査、訴追又は司法手続のために、被要請締約国の事前の同意なく、送付し、又は使用してはならない。この19項のいかなる規定も、要請締約国が自国の手続において被告人の無罪を証明する情報又は証拠を開示することを妨げるものではない。後者の場合、要請締約国は、開示に先立ち、被要請締約国に通知するものとし、要請があった場合には、被要請締約国と協議する。例外的な場合において事前の通報が不可能である場合には、要請締約国は、被要請締約国に対し、遅滞なく、開示について通知する。
20. 要請締約国は、要請の履行に必要な範囲を除き、被要請締約国に対し、要請の事実及び内容を秘密に保持することを要求することができる。要請を受けた締約国が秘密保持の要件を遵守できない場合には、速やかにその旨を要請を行った締約国に通知する。
21. 法律上の相互援助は、次の場合には拒否することができる。
(a) 要請がこの条の規定に適合していない場合。
(b) 要請を受けた締約国が、要請の実施により自国の主権、安全、公共の秩序その他の重要な利益が害されるおそれがあると考える場合。
(c) 要請を受けた締約国の当局が、自国の管轄権に基づく捜査、訴追又は司法手続の対象とされていた場合、同様の犯罪に関して要請された措置を実施することが自国の国内法により禁止される場合。
(d) 要請を認めることが、要請を受けた締約国の法律上の相互援助に関する法制度に反する場合。
22. この条約のいかなる規定も、要請を受けた締約国が、当該要請が性別、人種、言語、宗教、国籍、民族的出身若しくは政治的意見を理由として当該者を訴追し若しくは処罰する目的で行われたと信ずるに足りる実質的な根拠を有する場合、又は、当該要請に応じることによりこれらの理由のいずれかにより当該者の地位が害されることとなると信ずるに足りる実質的な根拠を有する場合には、法律上の相互援助を提供する義務を課するものと解釈してはならない。
23. 締約国は、犯罪が財政問題にも関連するとみなされるという理由のみで、法律上の相互援助の要請を拒否してはならない。
24. 締約国は、銀行秘密を理由として、この条の規定に基づく法律上の相互援助の供与を拒否してはならない。
25. 法律上の相互援助を拒否する場合には、理由を明示しなければならない。
26. 要請を受けた締約国は、法律上の相互援助の要請をできる限り速やかに履行するものとし、要請を行った締約国が提示し、かつ、できれば要請書において理由が示されている期限をできる限り十分に考慮する。要請を受けた締約国は、要請を行った締約国からの合理的な要請に対し、要請の状況及びその処理の進捗状況について回答しなければならない。要請を行った締約国は、求められた援助が不要となった場合には、速やかにその旨を要請を受けた締約国に通知しなければならない。
27. 要請を受けた締約国は、進行中の捜査、訴追又は司法手続を妨害するという理由で、相互法律援助を延期することができる。
28. 要請を受けた締約国は、21項の規定に従って要請を拒否し、又は27項の規定に従ってその実施を延期する前に、要請を行った締約国と協議し、必要と考える条件を付して援助を供与することができるかどうかを検討する。要請を行った締約国は、当該条件を付して援助を受け入れる場合には、当該条件を遵守する。
29. 本条第11項の適用を妨げることなく、要請締約国の要請により、要請締約国の領域内における手続において証言し、又は捜査、訴追若しくは司法手続に協力することに同意する証人、専門家その他の者は、当該要請締約国の領域から出国する前の行為、不作為又は有罪判決に関して、当該領域内において起訴、拘留、処罰され、又はその他の自由の制限を受けないものとする。この安全な行為は、証人、専門家その他の者が、司法当局により当該者の立ち会いがもはや必要でない旨の公式の通告を受けた日から連続して15日間、又は締約国が合意する期間、立ち去る機会を有していたにもかかわらず、要請を行った締約国の領域内に自発的に留まった場合、又は当該領域を離れた後、自らの自由意志により戻ってきた場合には、終了するものとする。
30. 要請の履行に要する通常の費用は、関係締約国が別段の合意をしない限り、要請を受けた締約国が負担する。要請の履行に相当な費用又は臨時の費用が必要である場合、又は必要となる場合には、締約国は、要請の履行に関する条件並びに費用の負担方法について協議する。
31. 要請を受けた締約国は、次のとおりとする。
(a) 自国が保有する政府の記録、文書又は情報であって、自国の国内法により一般公衆に利用可能とされているものの写しを、要請を行った締約国に提供する。
(b) 自国が保有する政府の記録、文書又は情報であって、自国の国内法により一般公衆に利用可能とされていないものの写しを、自国の裁量により、要請を行った締約国に、全部若しくは一部、又は自国が適当と認める条件を付して提供することができる。
32. 締約国は、必要に応じ、この条の規定の目的にかなう、この条の規定を実際的に実施する、又は強化する二国間又は多数国間の協定又は取決めを締結する可能性を考慮する。
第41条
年中無休ネットワーク
1. 各締約国は、この条約に従って定められる犯罪に関する特定の刑事捜査、訴追若しくは司法手続のため、又はこの条第3項の規定の適用上及びこの条約に従って定められる犯罪並びに重大な犯罪に関連して電子的形式の証拠の収集、入手及び保全のため、即時の援助の提供を確保するため、1日24時間、週7日対応可能な連絡窓口を指定する。
2. 国際連合事務総長は、当該連絡先について通告を受け、この条の規定の適用上指定された連絡先の最新の登録簿を保管し、毎年、締約国に最新の連絡先リストを送付する。
3. 当該援助には、次の措置を容易にすること、又は、要請を受けた締約国の国内法及び慣行により認められる場合には、当該措置を直接実施することを含む。
(a) 技術的助言の提供。
(b) この条約第42条及び第43条の規定に従って保存された電子データの保全。適当な場合には、要請を行う締約国が要請を行うにあたり援助するため、要請を受けた締約国が知っている場合には、サービスプロバイダの所在地に関する情報を含む。
(c) 証拠の収集及び法的情報の提供。
(d) 容疑者の所在の特定。
(e) 緊急事態を回避するための電子データの提供。
4. 締約国の連絡窓口は、他の締約国の連絡窓口と迅速に連絡をとる能力を有するものとする。締約国が指定する連絡窓口が、当該締約国の相互司法援助又は犯罪人引渡しの責任を負う当局に所属していない場合、当該連絡窓口は、当該当局と迅速に調整を行うことができるようにしなければならない。
5. 各締約国は、24時間365日体制のネットワークの運用を確保するため、訓練を受け、十分装備を備えた人員を確保するものとする。
6. 締約国は、適切な場合には、自国の国内法の範囲内で、既存の公認連絡窓口ネットワークを活用し、強化することもできる。これには、迅速な警察間協力及びその他の情報交換協力のための国際刑事警察機構のコンピュータ関連犯罪のための24時間365日体制のネットワークが含まれる。
第42条
保存された電子データの迅速な保全のための国際協力
1. 締約国は、他の締約国に対し、この条約第25条の規定に基づき、当該他の締約国の領域内に所在する情報通信技術システムによって保存された電子データであって、当該電子データの捜索若しくはこれに類するアクセス、差押え若しくはこれに類する確保又は開示について、相互に法律上の援助を求めることを意図するものについて、迅速な保全を命じ、又はその他の方法で取得することを要請することができる。
2. 要請締約国は、この条約第41条に規定する年中無休のネットワークを利用して、情報通信技術システムによって保存された電子データの所在に関する情報、及び、適切な場合には、サービスプロバイダの所在に関する情報を求めることができる。
3. この条第1項に基づいて行われる保全の要請においては、次の事項を明記するものとする。
(a) 保全を求める当局。
(b) 刑事捜査、訴追、または司法手続きの対象となる犯罪および関連事実の簡単な概要。
(c) 保存される保存電子データおよび当該犯罪との関係。
(d) 保存電子データの管理者または情報通信技術システムの所在地を特定できる入手可能な情報。
(e) 保存の必要性。
(f) 要請締約国が、保存電子データの捜索もしくはこれに類するアクセス、押収もしくはこれに類する確保、または開示について、相互に法的に援助する要請を提出する意図があること。
(g) 適切な場合、保存要請を秘密に保ち、利用者に通知しない必要があること。
4. 他の締約国からの要請を受けた締約国は、自国の国内法に従い、指定された電子データを迅速に保存するためのあらゆる適切な措置をとる。要請への対応に当たっては、双罰性は、当該保存を提供するための条件として要求されないものとする。
5. 保存された電子データの捜索若しくはこれに類するアクセス、押収若しくはこれに類する確保又は開示に関する相互法律援助の要請への対応の条件として双罰性を要求する締約国は、この条約に従って定められる犯罪以外の犯罪に関しては、開示の時に双罰性の条件を満たすことができなかったと信ずるに足る理由がある場合には、この条に基づく保存の要請を拒否する権利を留保することができる。
6. 加えて、保全の要請は、この条約第40条第21項(b)及び(c)並びに第22項に定める理由に基づいてのみ拒否することができる。
7. 要請を受けた締約国は、保全によってデータの将来の利用可能性が確保されないか、又は要請を行った締約国の調査の秘密が脅かされ、若しくはその他の形で阻害されると信じる場合には、速やかにその旨を要請を行った締約国に通報するものとし、要請を行った締約国は、それでもなお要請を実施すべきかどうかを決定するものとする。
8. 第1項の規定に従って行われた要請に応じて行われる保存は、要請を行った締約国がデータの捜索若しくはこれに類するアクセス、押収若しくはこれに類する確保又は開示を求める要請を提出することができるように、60日以上とする。当該要請の受領後、当該要請に関する決定が行われるまでの間、データは引き続き保存される。
9. 要請締約国は、本条第8項に規定する保存期間の満了前に、保存期間の延長を要請することができる。
第43条
保存されたトラフィックデータの迅速な開示のための国際協力
1. この条約第42条の規定に基づき、特定の通信に関するトラフィックデータの保全を求める要請の履行の過程において、要請を受けた締約国が、他の締約国のサービスプロバイダが当該通信の伝送に関与していたことを知った場合には、要請を受けた締約国は、当該サービスプロバイダ及び当該通信が伝送された経路を特定するのに十分な量のトラフィックデータを要請を行った締約国に対し、迅速に開示する。
2. この条第1項に基づくトラフィックデータの開示は、この条約第40条第21項(b)及び(c)並びに第22項に定める理由に基づいてのみ拒否することができる。
第44条
保存された電子データへのアクセスに関する相互法的援助
1. 締約国は、他の締約国に対し、要請を受けた締約国の領域内に所在する情報通信技術システムによって保存された電子データ(この条約の第42条の規定に従って保存されている電子データを含む。)の捜索若しくはこれに類するアクセス、押収若しくはこれに類する確保、及び開示を要請することができる。
2. 要請を受けた締約国は、この条約の第35条に規定する関連する国際文書及び国際法の適用により、並びにこの章の他の関連規定に従って、要請に応じる。
3. 要請は、次の場合には、迅速に応じる。
(a) 関連するデータが特に滅失又は改変されやすいと信ずるに足る根拠がある場合、又は
(b) この条第2項に規定する文書及び法律において、迅速な協力について別途規定されている場合。
第45条
トラフィックデータのリアルタイム収集に関する法律上の相互援助
1. 締約国は、情報通信技術システムを用いて自国の領域内において送信される特定の通信に関連するトラフィックデータのリアルタイム収集について、相互に法律上の相互援助を提供するよう努める。本条第2項の規定に従うことを条件に、当該援助は、国内法に定める条件及び手続に従うものとする。
2. 各締約国は、少なくとも、同様の国内事件においてトラフィックデータのリアルタイム収集が利用可能となる刑事犯罪に関して、当該援助を提供するよう努める。
3. 1. の規定に従って行われる要請には、次の事項を明記するものとする。
(a) 要請当局の名称。
(b) 要請に関連する捜査、訴追又は司法手続の主な事実及び内容の概要。
(c) トラフィックデータの収集が必要とされる電子データ及び当該データと犯罪との関係。
(d) データの所有者若しくは利用者又は情報通信技術システムの所在地を特定できる入手可能なデータ。
(e) トラフィックデータの収集の必要性の正当性。
(f) トラフィックデータの収集期間及びその期間の相応する正当性。
第46条
コンテンツデータの傍受に関する法律上の相互援助
締約国は、情報通信技術システムによって送信される特定の通信のコンテンツデータのリアルタイムでの収集又は記録について、自国に適用される条約又は自国の国内法によって認められる範囲内で、相互に法律上の相互援助を提供するよう努める。
第47条
法執行協力
1. 締約国は、それぞれの国内法制及び行政制度に従い、この条約に従って定められる犯罪と闘うための法執行活動の実効性を高めるため、相互に緊密に協力する。締約国は、特に、次の事項について効果的な措置をとる。
(a) 締約国間の権限のある当局、機関及び部局間の連絡経路を強化し、必要な場合には、国際刑事警察機構の経路を含む既存の経路を考慮に入れ、この条約に従って定められる犯罪のあらゆる側面に関する情報の安全かつ迅速な交換を促進するため、関係締約国が適当と認める場合には、他の犯罪活動との関連を含む、情報の交換を促進するため連絡の経路を強化、また必要な場合には確立すること。
(b) この条約に従って規定される犯罪に関し、次の事項に関する調査を行うにあたり、他の締約国と協力すること。
(i) 当該犯罪に関与した疑いのある者の身元、所在及び活動、又はその他の関係者の所在。
(ii) 当該犯罪の実行により得られた犯罪収益又は財産の移動。
(iii) 当該犯罪の実行に使用された、又は使用されることが意図された財産、装備又はその他の手段の移動。
(c) 適当な場合には分析又は捜査のために必要な物品又はデータを、提供すること。
(d) 適当な場合には、偽の身分証明書、偽造、変造又は虚偽の文書の使用その他の活動隠蔽手段、サイバー犯罪の戦術、技術及び手続を含め、この条約に従って規定される犯罪を実行するために用いられる具体的な手段及び方法に関し、他の締約国と情報交換すること。
(e)関係締約国間の二国間協定又は取決めを条件として、連絡官の配置を含む、権限のある当局、機関及び部局間の効果的な調整を容易にし、職員及びその他の専門家の交流を促進すること。
(f)この条約に従って規定される犯罪の早期発見を目的として、適切な場合には、情報を交換し、執られる行政措置その他の措置を調整すること。
2. 締約国は、この条約を実施するため、自国の法執行機関間の直接協力に関する二国間または多数国間の協定または取決めを締結することを考慮し、また、そのような協定または取決めが既に存在する場合には、これを改正する。関係締約国間にそのような協定または取決めがない場合には、締約国は、この条約を、この条約に従って定められる犯罪に関する相互の法執行協力の基礎とみなすことができる。締約国は、適当な場合にはいつでも、自国の法執行機関間の協力を強化するため、国際機関または地域機関を含む協定または取決めを十分に活用する。
第48条
共同捜査
締約国は、この条約に従って定められる犯罪であって、一国又は二国以上の国において刑事捜査、訴追又は司法手続の対象となるものに関し、関係する権限のある当局が共同捜査機関を設置することができる二国間又は多数国間の協定又は取決めを締結することを検討する。このような協定又は取決めがない場合には、共同捜査は、個々の事案ごとに合意により行うことができる。関係締約国は、当該捜査が行われる領域を有する締約国の主権が十分に尊重されることを確保する。
第49条
没収における国際協力による財産の回復のための仕組み
1. 各締約国は、この条約に従って定められる犯罪の実行を通じて取得された財産、又は犯罪の実行に関連して取得された財産に関し、この条約第50条の規定に従って法律上の相互援助を提供するため、自国の国内法に従い、次のことを行う。
(a) 自国の権限のある当局が他の締約国の裁判所が発した没収命令を執行することを認めるために必要な措置をとること。
(b) 自国の権限のある当局が管轄権を有する場合、マネーロンダリング犯罪もしくは自国の管轄権内にあるその他の犯罪に関する裁判によって、または自国の国内法で認められているその他の手続きによって、外国原産財産の没収を命じることを認めるために必要な措置をとること。そして、
(c) 犯罪者が死亡、逃亡もしくは不在のため起訴できない場合、またはその他の適切な場合において、有罪判決を受けることなく当該財産を没収することを認めるために必要な措置をとることを検討すること。
2. 各締約国は、第50条2項の規定に基づいて行われた要請に基づき法律上の相互援助を提供するため、自国の国内法に従い、次のことを行う。
(a) 要請を行った締約国の裁判所又は権限のある当局が発した財産の凍結又は押収の命令であって、当該要請を受けた締約国が、当該措置をとる十分な根拠があり、かつ、当該財産が最終的にこの条第1項(a)の規定の適用上、没収命令の対象となると信ずるに足りる合理的な根拠を提供するものに基づき、自国の権限のある当局が財産を凍結し、又は押収することを可能とするために必要な措置をとる。
(b) 要請を受けた締約国が、当該措置をとる十分な根拠があり、かつ、当該財産が最終的にこの条第1項(a)の規定の適用上、没収命令の対象となると信ずるに足りる合理的な根拠を提供するものに基づき、自国の権限のある当局が財産を凍結し、又は押収することを可能とするために必要な措置をとる。そして、
(c) 自国の権限のある当局が、例えば、当該財産の取得に関連する外国での逮捕又は刑事訴追を根拠として、当該財産を没収のために保全することを認めるための追加的な措置を講じることを検討する。
第50条
没収のための国際協力
1. この条約に従って定められた犯罪について管轄権を有する他の締約国から、自国の領域内にあるこの条約第31条1項に規定する犯罪収益、財産、装備又はその他の手段の没収の要請を受けた締約国は、自国の国内法制度の範囲内で最大限可能な範囲で、次の措置をとる。
(a) 没収命令を取得するため、権限のある当局に対し要請を提出し、没収命令が発令された場合には、これを執行する。
(b)要請された範囲において、要請締約国の領域内にある犯罪収益、財産、装備品その他の手段に関連する限りにおいて、本条約第31条1の規定に従って要請締約国の領域内の裁判所が発した没収命令を自国の権限のある当局に提出し、執行する。
2. この条約に従って定められる犯罪について管轄権を有する他の締約国からの要請があった場合、要請を受けた締約国は、要請を行った締約国又はこの条の1項の規定に基づく要請に従って要請を受けた締約国により最終的に没収が命じられることを目的として、この条約第31条1項に規定する犯罪収益、財産、装置又はその他の手段を特定し、追跡し、凍結し、又は押収するための措置をとる。
3. この条約第40条の規定は、この条に準用する。この条約第40条15項に規定する情報に加え、この条に基づいて行われる要請には、次の事項を含める。
(a) この条1項(a)に関連する要請の場合には、没収の対象となる財産の説明、並びに可能な限り、当該財産の所在地、及び関連する場合には当該財産の推定価値を含む、要請締約国が自国の国内法に基づく命令を求めるのに十分な根拠となる事実の説明。
(b) 本条第1項(b)に関連する要請の場合、要請締約国が発した当該要請の根拠となる没収命令の法的に認められる写し、当該命令の執行が要請される範囲に関する事実及び情報の説明、善意の第三者への適切な通知及び適正手続きの確保のために要請締約国がとった措置を明記した陳述、並びに当該没収命令が最終的なものである旨の陳述。
(c) 本条第2項に関連する要請の場合、要請締約国が依拠する事実の説明及び要請される措置の説明、並びに入手可能な場合には、当該要請の根拠となる命令の法的に認められる写し。
4. 本条1項及び2項に規定する決定又は措置は、要請を受けた締約国により、自国の国内法及び手続規則、又は要請を行った締約国との関係において当該締約国が拘束される二国間若しくは多数国間の条約、協定若しくは取決めに従って、かつ、これらの規定を条件として行われる。
5. 各締約国は、この条の規定を実施する自国の法令の写し及び当該法令のその後の変更の写し又はその説明を、国際連合事務総長に提出する。
6. 締約国が、本条第1項及び第2項に規定する措置をとるにあたり、関連する条約の存在を条件とすることを選択する場合には、当該締約国は、この条約を必要かつ十分な条約上の根拠とみなす。
7. 要請を受けた締約国が十分かつ適時に証拠を受領しない場合、又は当該財産の価値が極めて小さい場合には、本条に基づく協力を拒否し、又は暫定措置を解除することができる。
8. 要請を受けた締約国は、本条に基づいてとられた暫定措置を解除する前に、可能な限り、要請を行った締約国に対し、当該措置を継続する理由を提示する機会を与える。
9. 本条の規定は、善意の第三者の権利を害するものと解釈してはならない。
10 締約国は、この条の規定に従って行われる国際協力の実効性を高めるため、二国間または多数国間の条約、協定または取決めを締結することを考慮する。
第51条
特別協力
各締約国は、自国の国内法を害することなく、この条約に従って定められた犯罪収益に関する情報を、自国の刑事捜査、訴追または司法手続を害することなく、事前の要請なしに他の締約国に送付することができるようにするための措置をとるよう努める。ただし、当該情報の開示が、受領する締約国が刑事捜査、訴追または司法手続を開始し、もしくは遂行する上で役立つ可能性があると認める場合、または当該締約国によるこの条約第50条の規定に基づく要請につながる可能性があると認める場合はこの限りではない。
第52条
没収された犯罪収益又は財産の返還及び処分
1. 締約国が本条約第31条又は第50条の規定に基づき没収した犯罪収益又は財産は、当該締約国が自国の国内法及び行政手続に従って処分する。
2. 締約国は、本条約第50条の規定に基づき他の締約国から行われた要請に応じるにあたり、国内法で認められる範囲内において、かつ、要請があった場合には、当該要請を行った締約国が犯罪の被害者に補償を与え、又は当該犯罪収益又は財産を以前の正当な所有者に返還することができるよう、没収された犯罪収益又は財産を当該要請を行った締約国に返還することを優先的に考慮する。
3. 締約国は、本条約第31条及び第50条の規定に従って他の締約国から行われた要請に応じるにあたり、被害者への補償について十分な考慮を払った上で、次の事項について協定又は取決めを締結することに特別な考慮を払うことができる。
(a) 犯罪収益若しくは財産、又は犯罪収益若しくは財産の売却により得られた資金若しくはその一部又はその価値を、本条約第56条第2項(c)に従って指定された口座及びサイバー犯罪対策を専門とする政府間機関に拠出すること。
(b) 自国の国内法又は行政手続に従い、定期的に又は個別に、犯罪収益若しくは財産、又は犯罪収益若しくは財産の売却により得られた資金を他の締約国と配分すること。
4. 適当な場合には、締約国が別段の決定をする場合を除き、要請を受けた締約国は、この条の規定に従って没収された財産の返還又は処分につながる捜査、訴追又は司法手続に要した合理的な費用を控除することができる。
第六章
予防措置
第53条
予防措置
1. 各締約国は、自国の法制度の基本原則に従い、適切な立法措置、行政措置その他の措置を通じて、サイバー犯罪の既存又は将来の機会を削減するための効果的かつ調整された政策及び最良の実習を策定し、実施し、又は維持するよう努める。
2. 各締約国は、自国の能力の範囲内で、かつ、国内法の基本原則に従い、非政府組織、市民社会組織、学術機関、民間団体等の公共部門以外の関連する個人及び団体、並びに一般公衆が、この条約に従って定められる犯罪の防止に関連する側面に積極的に参加することを促進するため、適切な措置をとる。
3. 予防措置には、次の事項を含めることができる。
(a) この条約に従って規定される犯罪の防止及び撲滅に関連する側面に対処するため、法執行機関又は検察官と、非政府組織、市民社会組織、学術機関、民間団体等の公共部門以外の関連する個人及び団体との間の協力を強化すること。
(b) この条約に従って規定される犯罪の防止及び撲滅への国民参加を促進する広報活動、公教育、メディア及び情報リテラシーに関するプログラム及びカリキュラムを通じて、この条約に従って規定される犯罪によってもたらされる脅威の存在、原因及び重大性に関する国民の認識を高めること。
(c) この条約に従って規定される犯罪に対する国内予防戦略の一環として、刑事司法実務家の研修及び専門知識の育成を含む、国内刑事司法制度の構築及び能力向上のための努力を行うこと。
(d) サービスプロバイダに対し、国内事情に鑑み、かつ国内法で認められる範囲内で、サービスプロバイダの製品、サービス及び顧客のセキュリティを強化するための効果的な措置をとるよう奨励すること。
(e) 締約国の領域内に所在するサービスプロバイダの製品、サービス及び顧客のセキュリティを強化し、改善することのみを目的とする、セキュリティ研究者の正当な活動の貢献を、国内法で認められる範囲内において、かつ、国内法で定める条件に従い、認識すること。
(f) サイバー犯罪に関与するリスクのある者が犯罪者となることを抑止し、合法的な方法でその技能を習得するためのプログラム及び活動を開発し、促進し、及び推進すること。
(g) この条約に従って定められた犯罪で有罪判決を受けた者の社会復帰を促進するよう努めること。
(h) 情報通信技術システムの使用を通じて生じるジェンダーに基づく暴力を防止し、根絶するための戦略及び政策を国内法に従って策定し、並びに予防措置の策定に当たっては、脆弱な立場にある者の特別な状況及びニーズを考慮すること。
(i) 児童のオンライン上の安全を確保するための具体的かつ状況に応じた取組を実施すること。これには、オンライン上の児童の性的虐待又は児童の性的搾取に関する教育及び研修の実施、一般の意識向上、及びその防止に向けた国内法枠組みの見直しと国際協力の強化、並びに児童の性的虐待及び児童の性的搾取に関する資料の迅速な削除を確保するための取組を含む。
(j) 意思決定プロセスの透明性を高め、意思決定プロセスへの公衆の貢献を促進し、公衆が十分な情報にアクセスできるようにする。
(k) サイバー犯罪に関する公衆の情報を求め、受け取り、及び提供する自由を尊重し、促進し、及び保護する。
(l) この条約に従って規定される犯罪の被害者のための支援プログラムを開発又は強化する。
(m) この条約に従って規定される犯罪に関連する犯罪収益及び財産の移転を防止し、及び摘発する。
4. 各締約国は、サイバー犯罪の防止及び対策に責任を負う関係権限のある当局が、適当な場合には、匿名による通報を含む、この条約に従って規定される犯罪行為とみなされる可能性のあるあらゆる事件の通報のために、公衆に周知され、かつ、アクセス可能であることを確保するための適切な措置をとる。
5. 締約国は、この条約に従って規定される犯罪行為によってもたらされる変化する脅威に直面した際に、不備及び脆弱性を特定し、それらの関連性を確保するため、既存の関連する国内法上の枠組み及び行政慣行を定期的に評価するよう努める。
6. 締約国は、この条に規定する措置の促進及び発展にあたり、相互に協力し、また、関連する国際機関及び地域機関と協力することができる。これには、サイバー犯罪の防止を目的とした国際プロジェクトへの参加を含む。
7. 各締約国は、サイバー犯罪を防止するための具体的な措置の策定及び実施において他の締約国を支援することができる当局の名称及び住所を、国連事務総長に通報する。
第7章
技術援助及び情報交換
第54条
技術援助及び能力の開発
1. 締約国は、その能力に応じ、開発途上締約国の利益及びニーズを特に考慮しつつ、この条約の対象となる犯罪の防止、探知、捜査及び訴追を容易にするため、研修その他の形態の援助、関連する経験及び専門知識の相互交換並びに相互に合意する条件による技術の移転を含む、最大限の技術援助及び能力の開発を相互に提供することを考慮する。
2. 締約国は、必要な範囲内で、この条約の対象となる犯罪の防止、探知、捜査及び訴追の責任を負う職員のための特別な研修計画を発案し、策定し、実施し、又は改善する。
3 本条第1項及び第2項に規定する活動は、国内法の許容する範囲内において、次に掲げる事項を対象とすることができる。
(a) この条約の対象となる犯罪の防止、探知、捜査及び訴追に用いられる方法及び技術。
(b) サイバー犯罪の防止及び撲滅のための戦略的政策及び立法の策定及び計画に関する能力構築。
(c) 証拠の収集、保存及び共有に関する、能力構築。特に電子形式の証拠保全の維持及び科学捜査を含むもの。
(d) 最新の法執行機器及びその使用。
(e) この条約の要件を満たす相互司法援助及びその他の協力手段の要請の準備に関する権限のある当局の訓練。特に電子形式の証拠の収集、保存及び共有に関するもの。
(f) この条約の対象となる犯罪行為から生じる収益、財産、機器その他の手段の移動、並びにこれらの収益、財産、機器その他の手段の移転、隠蔽又は偽装に用いられる方法の防止、探知及び監視。
(g) この条約の対象となる犯罪行為による収益の押収、没収及び返還を容易にするための適切かつ効率的な法的及び行政的メカニズム及び方法。
(h) 司法当局に協力する被害者及び証人の保護に用いられる方法。
(i) 関連する実体法及び手続法、法執行捜査権限、並びに国内規則及び国際規則並びに言語に関する研修。
4. 締約国は、自国の国内法に従い、この条約の効果的な実施を促進するため、他の締約国並びに関連する国際機関、地域機関、非政府機関、市民社会組織、学術機関及び民間団体の専門知識を活用し、かつ、これらと緊密に協力するよう努める。
5. 締約国は、この条3項に規定する分野における専門知識を共有することを目的とした研究計画及び研修計画の企画及び実施において相互に援助するものとし、また、そのために、適当な場合には、協力を促進し、及び相互の関心事項に関する議論を刺激するため、地域会議及び国際会議及びセミナーを活用する。
6. 締約国は、要請に基づき、それぞれの領域内において行われた本条約の対象となる犯罪の種類、原因及び影響に関する評価、調査及び研究の実施について、相互に援助することを検討する。その目的は、権限のある当局、関連する非政府組織、市民社会組織、学術機関及び民間団体の参加を得て、サイバー犯罪を防止し、及びこれと戦うための戦略及び行動計画を策定することである。
7. 締約国は、適時の犯罪人引渡し及び相互法律援助を容易にする研修及び技術援助を促進する。このような研修及び技術援助には、語学研修、相互法律援助の要請書の作成及び処理に関する支援、並びに関連する責任を有する中央当局又は機関における職員の派遣及び交流を含めることができる。
8. 締約国は、必要な範囲において、国際機関及び地域機関並びに関連する二国間及び多国間の協定又は取決めの枠組みにおける技術援助及び能力構築の有効性を最大化するための努力を強化する。
9. 締約国は、技術援助プログラム及び能力構築プロジェクトを通じて、開発途上国によるこの条約の実施努力に財政的に貢献するため、任意のメカニズムを設置することを検討する。
10. 各締約国は、技術援助及び能力構築を通じてこの条約を実施するためのプログラム及びプロジェクトを国連薬物犯罪事務所を通じて促進するため、同事務所への任意の拠出を行うよう努める。
第55条
情報交換
1. 各締約国は、適切な場合、非政府組織、市民社会組織、学術機関及び民間団体を含む関係専門家と協議の上、この条約の対象となる犯罪に関する自国の領域内における動向、並びに当該犯罪が行われる状況を分析することを検討する。
2. 締約国は、サイバー犯罪に関する統計、分析の専門知識及び情報を、可能な限り、共通の定義、基準、方法論、並びに最良の実習を開発し、当該犯罪を防止し、及びこれと戦うため、相互に、また国際機関及び地域機関を通じて、作成し、共有することを検討する。
3. 各締約国は、この条約の対象となる犯罪を防止し、及びこれと戦うための自国の政策及び実際的措置を監視し、それらの有効性及び効率性を評価することを検討する。
4. 締約国は、サイバー犯罪及び電子的形態による証拠の収集に関連する法的、政策的及び技術的進展に関する情報交換を検討する。
第56条
経済開発及び技術援助を通じた条約の実施
1. 締約国は、この条約の対象となる犯罪が社会一般、特に持続可能な開発に及ぼす悪影響を考慮し、国際協力を通じて、可能な限りこの条約の最適な実施に資する措置をとる。
2. 締約国は、可能な限り、かつ、相互に、また、国際機関及び地域機関と連携し、次の事項について具体的な努力を行うことが強く奨励される。
(a) この条約の対象となる犯罪を防止し、及びこれと戦う能力を強化するため、他の締約国、特に開発途上国との様々なレベルでの協力を強化すること。
(b) この条約の対象となる犯罪を効果的に防止し、及びこれと戦う他の締約国、特に開発途上国の努力を支援し、並びにこの条約の実施を助長するための財政的及び物的援助を強化すること。
(c) この条約の実施に関するニーズを満たすことを支援するため、他の締約国、特に開発途上国に対し技術援助を提供すること。このため、締約国は、国連の資金拠出メカニズムにおいてこの目的のために特に指定された口座に、十分かつ定期的に任意拠出を行うよう努める。
(d)適当な場合には、非政府組織、市民社会組織、学術機関、民間団体及び金融機関に対し、特に開発途上国に対し、この条約の目的の達成を支援するため、より多くの研修プログラム及び近代的設備を提供することにより、この条の規定に従って締約国の努力に貢献することを奨励すること。
(e)透明性の向上、重複した努力の回避、及び得られた教訓の最大限の活用を目的として、実施された活動に関する最良の実習及び情報を交換すること。
3. 締約国は、協力及び技術援助を促進し、並びに開発途上国の特別な問題及びニーズを含む相互の関心事項に関する議論を刺激するため、会議及びセミナーを含む既存の小地域的、地域的及び国際的なプログラムの活用も検討する。
4. 締約国は、可能な限り、この条約の対象となる犯罪の安全な隠れ場所を根絶し、サイバー犯罪との闘いを強化するため、締約国間で共通の最低基準を確立することを目的として、基準、技能、能力、専門知識及び技術的能力の調和を支援するために、資源及び努力が配分され、かつ、向けられることを確保する。
5. この条に基づいてとられる措置は、可能な限り、既存の対外援助の約束又は二国間、地域的若しくは国際的なレベルにおけるその他の財政協力取決めを害するものであってはならない。
6. 締約国は、この条約に定める国際協力の手段を効果的なものとし、並びにこの条約の対象となる犯罪の防止、探知、捜査及び訴追のために必要な財政的取決めを考慮に入れ、物資援助及び後方支援に関する二国間、地域的又は多数国間の協定又は取決めを締結することができる。
第8章
実施メカニズム
第57条
締約国会議
1. この条約に定める目的を達成するための締約国間の能力及び協力の向上並びにその実施を促進し及び検討するため、この条約により締約国会議を設置する。
2. 国際連合事務総長は、この条約の効力発生後1年以内に締約国会議を招集する。その後は、締約国会議の定期会合は、締約国会議が採択する手続規則に従って開催される。
3. 締約国会議は、オブザーバーの承認及び参加、並びにこれらの活動の実施に要する経費の負担に関する規則を含む、この条に定める活動に関する手続規則及び規則を採択する。これらの規則及び関連する活動においては、実効性、包摂性、透明性、効率性、及び国の主体性といった原則を考慮する。
4. 締約国会議は、定期会合の開催に当たっては、本条第3項に定める原則に従い、同様の事項を扱う他の関連する国際機関及び地域機関並びにこれらの補助条約機関を含む類似の事項に関する機構の会合の日時及び場所を考慮する。
5. 締約国会議は、本条第1項に定める目的を達成するための活動、手続及び作業方法について合意する。これには次のものを含む。
(a) この条約の効果的な活用及び実施の促進、この条約に関する問題の特定、並びにこの条約に基づき、任意拠出金の動員の奨励を含む、締約国が行う活動の促進。
(b)締約国、関係国際機関及び地域機関、非政府組織、市民社会組織、学術機関、民間団体の間で、この条約に従って規定される犯罪に関する法律、政策及び技術の進展並びに電子形式による証拠の収集に関する情報、サイバー犯罪の傾向及びサイバー犯罪の防止及び対策に関する成功事例に関する情報の交換を、国内法に従って促進すること。
(c) 関連する国際機関及び地域機関、非政府組織、市民社会組織、学術機関、民間団体と協力すること。
(d) 不必要な作業の重複を避けるため、他の国際機関及び地域機関並びにこの条約に基づいて設立される犯罪の防止及び撲滅のためのメカニズムによって作成された関連情報を適切に活用すること。
(e) 締約国によるこの条約の実施状況を定期的に検討すること。
(f) この条約及びその実施状況を改善するための勧告を行うとともに、この条約の補足又は改正の可能性を検討すること。
(g) この条約第61条及び第62条に基づき、この条約の補足議定書を作成し、採択すること。
(h) この条約の実施に関する締約国の技術援助及び能力構築に関する要請に留意し、その点において必要と考えられるあらゆる措置を勧告すること。
6. 各締約国は、締約国会議の要請に応じ、この条約を実施するための立法上、行政上その他の措置並びに自国の計画、計画及び慣行に関する情報を締約国会議に提供する。締約国会議は、特に、締約国並びに権限のある国際機関及び地域機関から受領した情報を含む情報の受領及びこれに基づく対応の最も効果的な方法を検討する。また、締約国会議が決定する手続に従い正当に認定された、関連する非政府組織、市民社会組織、学術機関及び民間部門の団体の代表者から受領した意見も考慮することができる。
7. 本条5項の規定の適用上、締約国会議は、必要と考える検討の仕組みを設置し及び運営することができる。
8 本条第5項から第7項までの規定に従い、締約国会議は、必要と認める場合には、この条約の効果的な実施を援助するための適当な仕組み又は補助機関を設置する。
第58条
事務局
1. 国際連合事務総長は、この条約の締約国会議に必要な事務局サービスを提供する。
2. 事務局は、次のことを行う。
(a) この条約に定める活動の実施について締約国会議を援助し、この条約に関連する会議の会期のために手配を行い、必要なサービスを提供する。
(b) 要請に基づき、この条約に定めるところにより、締約国会議への情報提供について締約国を援助する。
(c) 関連する国際機関及び地域機関の事務局との必要な調整を確保する。
第9章
最終規定
第59条
この条約の実施
1. 各締約国は、自国の国内法の基本原則に従い、この条約に基づく義務の履行を確保するため、立法上及び行政上の措置を含む必要な措置をとる。
2. 各締約国は、この条約に基づいて定められる犯罪を防止し、及びこれと戦うため、この条約に規定する措置よりも厳格な措置をとることができる。
第60条
この条約の効力
1. 二以上の締約国が、この条約で扱われる事項に関して既に協定若しくは条約を締結し、又は当該事項に関して関係を確立している場合、又は将来締結する場合には、当該二以上の締約国は、当該協定若しくは条約を適用し、又は当該関係をそれに従って規制する権利を有する。
2. この条約のいかなる規定も、国際法に基づく締約国のその他の権利、制限、義務及び責任に影響を及ぼすものではない。
第61条
議定書との関係
1. この条約は、一又は二以上の議定書によって補足することができる。
2. 国又は地域的経済統合機関は、議定書の締約国となるためには、この条約の締約国でなければならない。
3. この条約の締約国は、当該議定書の規定に従って当該議定書の締約国とならない限り、当該議定書に拘束されない。
4. この条約の議定書は、当該議定書の目的を考慮に入れ、この条約と一体として解釈される。
第62条
補足議定書の採択
1. 補足議定書を締約国会議が採択することを検討するには、少なくとも60か国の締約国の同意が必要である。締約国会議は、補足議定書についてコンセンサスを得るようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しなかった場合には、補足議定書は、最後の手段として、その採択には、会議の会合に出席しかつ投票する締約国の少なくとも3分の2以上の多数決を必要とする。
2. 地域的経済統合機関は、その権限内の事項について、この条の規定に基づき、この条約の締約国であるその構成国の数と同数の票を投じる権利を行使する。当該機関は、その構成国が投票権を行使する場合には、自らの投票権を行使してはならない。また、その逆も同様とする。
第63条
紛争の解決
1. 締約国は、この条約の解釈又は適用に関する紛争を、交渉又は当該締約国が選択する他の平和的手段により解決するよう努める。
2. この条約の解釈又は適用に関する二以上の締約国間の紛争であって、交渉又は他の平和的手段により相当の期間内に解決することができないものは、当該締約国のいずれかの要請により、仲裁に付託される。仲裁の要請の日から6箇月後に締約国間で仲裁の組織について合意できない場合には、いずれの締約国も、国際司法裁判所規程に従って要請することにより、紛争を国際司法裁判所に付託することができる。
3. 各締約国は、この条約の署名、批准、受諾、承認又は加入の際に、本条2項の規定に拘束されない旨を宣言することができる。他の締約国は、そのような留保を付した締約国との関係において、2項の規定に拘束されない。
4. 本条3項の規定に従って留保を付した締約国は、いつでも、国際連合事務総長に対する通告により、当該留保を撤回することができる。
第64条
署名、批准、受諾、承認及び加入
1. この条約は、2025年にハノイにおいて、その後は2026年12月31日までニューヨークにある国際連合本部において、すべての国による署名のために開放される。
2. この条約は、地域的経済統合機関による署名のためにも開放される。ただし、当該機関の少なくとも一の加盟国が、本条第1項の規定に従ってこの条約に署名していることを条件とする。
3. この条約は、批准、受諾又は承認を受けなければならない。批准書、受諾書又は承認書は、国際連合事務総長に寄託する。地域的経済統合機関は、その加盟国のうち少なくとも一が批准書、受諾書又は承認書を寄託した場合には、その批准書、受諾書又は承認書を寄託することができる。当該機関は、当該批准書、受諾書又は承認書において、この条約の規律する事項に関する自らの権限の範囲を宣言する。当該機関は、その権限の範囲に関する関連する変更についても寄託者に通報するものとする。
4. この条約は、いかなる国又は、少なくとも一の加盟国がこの条約の締約国となっている地域的経済統合機関による加入のために開放されている。加盟書は、国際連合事務総長に寄託するものとする。地域的経済統合機関は、加盟の際、この条約の規律する事項に関するその権限の範囲を宣言するものとする。当該機関は、その権限の範囲に関する関連する変更についても寄託者に通報するものとする。
第65条
発効
1. この条約は、40番目の批准書、受諾書、承認書又は加盟書の寄託の日の後90日目に効力を生ずる。この項の規定の適用上、地域的経済統合機関が寄託した文書は、当該機関の構成国が寄託したものに追加して数えられない。
2. 40番目の文書の寄託後にこの条約を批准、受諾、承認又は加入する国又は地域的経済統合機関については、この条約は、当該国又は機関による当該文書の寄託の日の後30日目、又はこの条第1項の規定に従ってこの条約が効力を生ずる日のいずれか遅い日に効力を生ずる。
第66条
改正
1. この条約の効力発生の5年を経過した後、締約国は、改正を提案し、これを国際連合事務総長に送付することができる。事務総長は、直ちに、締約国及び締約国会議に対し、当該提案の審議及び決定のため、改正案を送付する。締約国会議は、各改正についてコンセンサスを得るようあらゆる努力を払う。コンセンサスを得るためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、当該改正は、最後の手段として、会議の会合に出席しかつ投票する締約国の3分の2以上の多数決をもって採択される。
2. 地域的経済統合機関は、その権限内の事項について、この条の規定に基づく投票権を、この条約の締約国であるその構成国の数と同数の票をもって行使する。当該機関は、その構成国が投票権を行使する場合には、自らの投票権を行使しないものとし、逆の場合も同様とする。
3. 本条第1項に従って採択された改正は、締約国による批准、受諾又は承認を条件とする。
4. 本条第1項に従って採択された改正は、当該改正の批准書、受諾書又は承認書が国際連合事務総長に寄託された日から90日後に、締約国について効力を生ずる。
5. 改正は、効力を生じたときは、当該改正に拘束されることに同意した締約国を拘束する。その他の締約国は、この条約の規定及び自国が批准、受諾又は承認した従前の改正に引き続き拘束される。
第67条
廃棄
1. 締約国は、国際連合事務総長に対する書面による通告により、この条約を廃棄することができる。廃棄は、事務総長がその通告を受領した日から1年後に効力を生ずる。
2. 地域経済統合機関は、そのすべての加盟国がこの条約を廃棄したときは、この条約の締約国でなくなる。
3. 第1項の規定に従ってこの条約を廃棄するときは、この条約のすべての議定書も廃棄する。
第68条
寄託者及び言語
1. 国際連合事務総長は、この条約の寄託者に指定される。
2. アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語の本文をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託される。
以上の証拠として、下名の全権大使は、各自の政府から正当に委任を受けて、この条約に署名した。1
附属書
サイバー犯罪に関する国際連合条約の特定の条項に関する解釈ノート情報通信技術システムを用いて行われる特定の犯罪への対処及び重大犯罪の電子的形態による証拠の共有のための国際協力の強化
第2条
1. 第2条(e)の「サービスプロバイダ」の定義には、(ii)において、(i)に規定するサービスの利用者に代わって電子データを保存し、その他の方法で処理する主体が含まれる。例えば、この定義では、サービスプロバイダには、ホスティング及びキャッシングサービスを提供するサービスと、ネットワークへの接続を提供するサービスの両方が含まれる。ただし、単にウェブサイトをホスティングするためにウェブホスティング会社のサービスを利用する者は、この定義の対象とはならないものとする。
2. 締約国は、条約第2条で定義されている用語を国内法において逐語的に転用する義務を負わない。ただし、当該国内法が条約の原則及び目的に合致する方法で当該概念を規定し、かつ、条約の実施のための同等の枠組みを提供する場合に限る。
第17条
3. この条約の枠組みにおいて、犯罪は、前提犯罪が条約第7条から第16条に従って確立された犯罪である場合にのみ、第17条に基づく犯罪とみなされる。
第23条及び第35条(「捜査」という用語に関して)
4. 「刑事捜査」という用語には、事実関係に基づき、刑事犯罪(条約第19条に規定する犯罪を含む)が行われたか、または行われていると信ずるに足る合理的な理由がある場合(当該捜査が、問題となる犯罪の実行を阻止し、または阻止することを目的とする場合を含む)が含まれる。
第35条
5. この条約の範囲外において、締約国は、自国の国際的義務に従い、要請を受けた締約国の国内法、適用可能な刑事共助条約、または同等の取決めによって認められるその他の形態の国際協力を相互に提供することができる。
__________________
1
本条約第2条、第17条、第23条及び第35条に関する解釈ノートは、犯罪目的での情報通信技術の利用に対抗するための包括的な国際条約を策定するための特別委員会により、2024年7月29日から8月9日までニューヨークで開催された同委員会の再招集された総括会合の報告書に添付されたことが留意される。
これって多くの漫画家やゲーム企業が手をデモのそれにしなきゃならねえ重大な事案のはずなのになぜネットでしか聞かない!?