社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」が13日、東京・銀座博品館劇場で7月公演(18日まで全10回)をスタートさせた。8日の街頭演説中に銃撃され、死去した安倍晋三元首相を長年演じ、約15年の交流がある福本ヒデ(51)は「不動心 安倍晋三」と書かれた形見のネクタイをつけて登場。「大事に演じ続けます」と誓った。
開演直後、「アベ」つながりで、通常公演同様に「アヴェ・マリア」の音楽が流れる中、安倍氏に扮(ふん)した福本が登壇すると大きな拍手が。参院選でのお礼を述べ「今回分かった大事なことは何か。人の命を奪ってはいけない、ということ」。さらに「本日集まった方にあって私にないもの、それは『生きている』ということ。父の晋太郎には総理になった報告をし、積もる話をします」と続けた。
普段は政治風刺で爆笑が渦巻く観客席には、涙ぐんでいる人も。一方で、ほとんどテレビ局が訃報(ふほう)で特番になる中、予定通りアニメ放送を続けたテレビ東京に「子どもたちの笑顔を守ってくれて、私はありがとうと言いたい」としっかりユーモアも盛り込んだ。
公演初日を目前にしての突然の訃報。どうするべきか、メンバーと議論を重ねた。「封印して扱わない案もあった」が、大々的に報じられたことに触れないのは不自然と判断した。福本は12日の東京芝・増上寺での葬儀に参列。手を合わせ、「ありがとうございました。明日(13日)からさせていただきます」と伝えた。
安倍氏の妻・昭恵さん(60)が同集団を観劇して交流が始まって約15年。元首相自ら福本の携帯に電話がかかってきたことも。公邸でのクリスマスパーティー盛り上げに一役買ったお礼だった。「見知らぬ番号で早口でした。でも、こういう気配りをずいぶんされていたのでしょう」
風刺する側、される側という“対立関係”を超越して親交は続いた。肝心の福本のモノマネには「そんなしゃべり方してますかね」と苦笑されつつも、「どんどんやってください。でも、ほどほどにね」と“公認”をもらった。穏やかな優しいまなざしを思い出しつつ「このネクタイも、モノマネも、大事にします」恩人に捧(ささ)ぐ舞台となった。
◆節目100公演 〇…1988年の結成以来、この夏公演が100公演目という節目でもある。キシダ総理、スガ前総理、ばいでん米大統領などが登場。それぞれを浜田太一、山本天心、松下アキラらが演じた。時事問題を巧みに扱い、おなじみの舌戦を繰り広げた。