吉田隆記者、ジャーナリスト
1984年に写真週刊誌「FRIDAY」の創刊準備メンバーとして専属記者契約を結ぶ。87年の大韓航空機爆破事件では、犯人の金賢姫たちが隠れていたブダペストのアジトを特定、世界的に話題となる。初代「張り込み班チーフ」として、みのもんたや落合博満の不倫現場、市川染五郎（現・松本幸四郎）や石原慎太郎の隠し子、小渕恵三首相のドコモ株疑惑などジャンルを問わずスクープ記者として活躍。
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対象は宿泊棟と温泉があるスポーツ施設だった。バブルの頃に５億円を融資し、そのほとんどが返済されているが、未回収が100万円程度ある事案だった。施設は何年も前に破産しており、土地などの不動産は全て差し押さえがされているので、社長は動産のみに対して差し押さえができた。
「金利も十分に取っているし、社長としてもたいして損はないんですね」
書類を一瞥して私は感想を漏らした。
「まあ、そうなるかな」
社長もそのことは理解しているようで表情は柔らかく、若い従業員２人にベンツを運転させて一足先にアプリコを出発していった。
私は市内のスナックに酒の配達をするマコやんに付き合い、のちほど施設近くの喫茶店で社長と合流することにした。
「社長の胸にミミズ腫れがありましたよ」
午前の仕事を終えてから、配達用トラックの助手席に座る私が聞いた。熊野本宮大社までは田辺の中心部から北東に40分ぐらいはかかる距離だ。
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