「くたばれトランプ」「米国を出ることも」TikTokで声を上げる米国市民 #SNSの功罪
そのため、トランプ氏がTikTokを禁止したり、他国への高い関税を続けたりするのであれば、米国から出ることもあるとクイルネンさんは語る。 「仕事の拠点をヨーロッパかアジアに移して、家族ごと移住することも選択肢に入れている。アメリカにこだわる必要はない」
カウボーイ親父の「くたばれトランプ」
口ひげとあごひげを蓄え、いくつものカウボーイハットを被り分け、コーヒーカップを片手に、現在の政治を語る。外見だけ見れば、多くの人が共和党員だと勘違いするだろうが、“テキサス・ポール”こと、テキサス州のポール・シュローダーさん(56)は「断固たる」民主党員だ。 YouTubeチャンネルの登録者数は15万人以上、TikTokのフォロワー数は28万人を超える。インスタグラムなど複数のSNSに多くのフォロワーを抱える、インフルエンサーだ。 そんなシュローダーさんにトランプ政権の何が問題なのかと問うた。 「トランプの政策で最も愚かしいのは、NATO(北大西洋条約機構)をはじめとした軍事同盟を、経済取引の道具に使って世界情勢を不安定にしていることだ。次が、関税を使って同盟国にまで経済戦争を仕掛けていること。隣国のカナダとは言語も同じで文化も非常に似通っている。そのカナダに向かって、アメリカの51番目の州になればいいなんて言うとは……」
シュローダーさんがSNSで発信を始めたきっかけは2022年。毎日シュローダーさんの政治談議を聞かされるのにうんざりしていた15歳の孫娘が「そんなに話したければ、おじいちゃん、ここで好きなだけ発信すればいいのよ」とシュローダーさんのスマホにTikTokアプリをダウンロードした。そこからシュローダーさんはTikTokをはじめ、YouTube、Facebookなど各種SNSでの発信に手を広げていった。 大学に入学するまでは、共和党員だった父親の影響を受け、自分自身も共和党支持者だと思っていた。しかし、大学の授業で共和党を支持する理由を語ると、教授にことごとく論破された。それが悔しくて、自分で新聞を読み、ニュースを見て、情報を集めるようになった。すると、民主党こそが一般大衆のための政治をしており、共和党は大金持ちと大企業の優遇を優先していることに気づいた、とシュローダーさんは言う。 本業は溶接工。その傍ら、民主党のいろいろな政治集会に参加して演説をしていた。政治評論家を名乗りだすのは10年ほど前のこと。政治評論家で生活ができるようになったのは、TikTokをはじめとするSNSで発信するようになってからだ。 収入の柱は、支援者からの献金、コーヒーカップなどの物販、YouTubeチャンネルの収益の3つだ。特徴的なのは直截的な言葉を使うことだ。シュローダーさんが販売するコーヒーカップには「FUCK TRUMP(くたばれトランプ)」と書いてある。会話の中でそうした〈Fワード〉を使うこともためらわない。 その率直さが民主党支持者に受けた。