海水浴場での“タトゥー・入れ墨露出”禁止…「自由を制約している」ものの「憲法規範に逸脱」しない理由とは?【弁護士が解説】
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「違憲ではないか」と議論が生まれる余地とは?
では、逗子市の条例による人権制約の程度は過剰なものになってはいないか。 日本の入れ墨規制を巡っては、入れ墨が暴力団とのつながりを示すものとして「周囲を畏怖させる効果がある」と伝統的に考えられていることは確かだろう。 「現状でも、公衆浴場でのタトゥーや入れ墨の禁止が、一定の限度で是とされていることからすると、海水浴場で、しかも『畏怖させるような』という一定の文言による制約の縮減も加えた規制が、日本の憲法規範に照らして、逸脱しているという評価を得る余地はないでしょう。 ただし、個別でのルール運用の問題はあります。 たとえば、花柄のかわいいタトゥーをした人が海水浴場に来た時には、畏怖させるものではなく、ルール違反にはならないようにも読めます。 そういう人を排除した時、初めて、条例としては必要な程度におさまっていても、実際の運用で過剰な権利制約があり『違憲』ではないかといった議論が生まれる余地があるのではないでしょうか」(同前)
「現場の人も柔軟に対応する気持ちを」
また、逗子市の「逗子海水浴場事業者・利用者ルール」では、入れ墨・タトゥーの制限について、以下のように記載している。 「(入れ墨・タトゥーの露出制限の)外国人への周知については、文化の違いなどを踏まえて、トラブルが発生しないよう努める」 この文言をそのまま読むと、日本人と外国人の間に、入れ墨・タトゥーを巡って対応の“差”が生じているようにも思える。 だが、杉山弁護士は「外国人にだけ過剰に制約を加えているわけではないので、差別にはあてはまらない」と指摘。以下のように続けた。 「上記の入れ墨規制の理屈が、過去の歴史を踏まえる必要があり、日本人でないとよりわかりにくく、頭ごなしにルール違反だから取り締まるといった対応をすると、もめる可能性が高いというケアを行っているだけなので、むしろ謙抑(けんよく)的、権利保護的とも言えます」(杉山弁護士) そのうえで、海水浴場の現場スタッフらに対し、次のようにアドバイスした。 「ルールを形式的に、杓子(しゃくし)定規に考えると、それこそ上記のような、花柄のかわいいタトゥーまで取り締まってしまいそうですが、そこまでを、条例が命じているかは疑問のあるところです。 現場の人も柔軟に対応する気持ちを持つことをオススメしますね」(同前)
弁護士JPニュース編集部
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