これは感情的な記述を可能な限り避け、できるだけ冷静に事実だけを述べようとした試みである。
ここでは筆者が地球に対して特異な反応を示すようになった経緯と、それに付随する認知の変化についてを公開する。
20歳前後の頃、筆者は従来の性的刺激に対して反応しにくくなっていることに気がついた。具体的には、成人向けコンテンツや裸体に対して興奮を覚えることが少なくなり、それまで日常的であった性的興奮との結びつきが希薄になっていた。
原因については特定されておらず、心理的・生理的要因の複合的なものであると考えられる。
ある日、図書館にて宇宙関連の資料を閲覧していた際、偶然、国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された地球の写真を目にした。
それは宇宙の暗やみの中、藍とした輝きを放つ地球を映した写真であった。
この視覚的刺激に対して、筆者の身体は従来の性刺激と同様の生理的反応を示した。
以後、地球に類する映像や画像に接触することで、同様の反応が継続的に確認された。
たとえば、グーグルアースにおいて任意の地点を拡大・縮小・回転させているだけで一定の満足感とともに、性的興奮に近い感覚を覚える。
丸みを帯びた地球を眺める他に、雲の切れ間から地表の一部が覗く場面や、海と陸の境界線が不規則に入り混じって見える地点などにも強く反応する傾向がある。
本来、地球という存在は万人にとって共通のものであり、抽象的で、感情や性的指向の対象となることは稀である……。
しかしながら筆者においては、それが性的な対象となっており、日常的に消費の対象になっている。
なお、現時点において筆者が最近最も利用しているコンテンツは、グーグルアースである。
そこで地球をあらゆる角度から視認することが、他のどの娯楽よりも筆者を興奮させ、そして落ち着かせる。
本現象をどのように位置づけるかは難しい。一般的にはフェティシズムの一形態とされるだろうが、筆者としては快楽というよりは審美的な感受性の延長線上にあるものと考えている。
今後このような傾向が個人的な範囲にとどまる限り、日常生活における支障は少ないと判断される。
ただし他者に対して共有・表現する場合は、理解を得ることが困難であるため、慎重な態度が望ましい(そのためここに書いた)。
地球は、色っぽい。