UFOはいなかった。「エリア51=宇宙人研究所」は米国防総省が流したウソ…機密文書が明かす情報戦の内幕
■先端兵器の実験が「地球外の技術」に見えた また、1967年、モンタナ州の核ミサイル基地で起きた事件も、長年にわたってUFO神話を支える重要な根拠となってきた。 当時空軍大尉だったロバート・サラス氏(現在84歳)は、10基の核ミサイルを制御する狭い地下壕で勤務していた。ある夜の午後8時頃、上の警備所から緊急連絡が入った。「正門の上に赤みがかったオレンジ色の楕円形が浮かんでいる」という。地上では警備員たちが、門の上空で静止している謎の物体に向け、必死でライフルを構えている。その直後、サラス氏のいる地下壕で警報が鳴り響いた。10基のミサイルすべてが突如として無効化されたのだ。 サラス氏はこの一件から長年、UFOが核ミサイル基地に干渉したのだと信じてきた。しかし、2023年のAARO調査チームにより、全く違う真相が明かされた。当時の軍は、核爆発で発生する強烈な電磁パルスがミサイルシステムに影響を与えるのではないかと懸念し、核爆発を伴わない電磁パルス発生装置を開発していた。この装置が設置されていたのが、施設の18メートル上空だ。作動時には強烈なオレンジ色の光を放ち、時には稲妻のような放電現象も起こしたという。 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ではないが、当時の一般の軍関係者では知り得ない先端兵器の実験が目撃されたことで、地球外の技術であるかのような印象を与えた。 ■UFO神話は「冷戦期の国家安全保障」の産物 エリア51をめぐる壮大なUFO神話は、米軍自身が意図的に種をまいた偽装作戦だったようだ。冷戦期の国家安全保障を目的として始まった偽りの情報は、人々の好奇心を肥やしとして大きく根を張り、いつしか地元の人々の目を欺く当初の目的を超えて膨れ上がった。噂や映画のテーマなどを通じ、今日では世界の人々の好奇心を掻き立てている。 現在もエリア51の周辺は、新型航空機の実験場として活用されている。米技術誌のインタレスティング・エンジニアリングによると、世界で最も秘密のベールに包まれているとも言われる米空軍資材司令部のRAT55と呼ばれる機体が最近目撃された。 米国防総省は年内にAARO報告書の続編を公開する予定だ。米フォックス・ニュースは、そこには偽情報作戦の詳細、司令官たちの通過儀礼の実態、そして「本物でない資料」がどのように欺瞞の道具として使われたかが記されると伝えている。 今年後半の報告書で、壮大な虚構の全貌がついに明らかになるのか。エイリアン研究所という偽りのベールの向こうに隠されていた、冷戦期アメリカの知られざる偽装作戦のさらなる詳細が明かされる。 ---------- 青葉 やまと(あおば・やまと) フリーライター・翻訳者 1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。 ----------
フリーライター・翻訳者 青葉 やまと