UFOはいなかった。「エリア51=宇宙人研究所」は米国防総省が流したウソ…機密文書が明かす情報戦の内幕
だが40年以上の時を経た2023年、現在では退役しているこの大佐は、AARO調査に対して思わぬ告白をした。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が入手した国防総省の調査文書によれば、彼はペンタゴンの調査官に「写真は改ざんされたもので、作戦全体が欺瞞工作だった」と認めた。 米ソ冷戦の真っ只中、当時のエリア51では、F-117ステルス戦闘機が開発されていた。レーダー波に発見されにくいよう平たい三角形をしており、当時とすればまるで別世界から来たかのような外観だ。軍幹部は、この最高機密の機体の試験飛行を地元住民が目撃すれば、ソ連との軍拡競争における切り札が暴露されかねないと危惧していた。そこで、「アンドロメダから来たと信じさせた方がまだましだった」との発想から、UFOの噂を意図的に流布したという。 ■UFO神話は格好の隠れ蓑に 開発中の戦闘機や兵器を隠蔽したい空軍にとって、UFO神話は格好の隠れ蓑だった。軍事技術専門家のアレックス・ホリングス氏は、米公共TV放送のPBSの番組でこう分析している。「政府は国民が(情報の)空白を自分たちの(想像で)好きなように埋めることを期待できますし、実際そうしています。人々がエリア51で活動するエイリアンについて話している限り、そこで実験されている真の軍事技術については何も明かさなくてよいのです。一種の煙幕を作り出しています」 実際、時期的にも符合する。B-2スピリット爆撃機が開発されていた時期、アメリカ各地でのUFO目撃談は従来の円盤型から三角形へと変化していった。実際には「TR-3B」と呼ばれる三角形の機体が米国上空を飛行していたのだが、人々はエイリアンの技術を応用した航空機だと噂した。 この現象は1990年代には大衆文化にまで浸透した。人気テレビドラマ『Xファイル』では、主人公のフォックス・モルダー捜査官の頭上に三角形の宇宙船が浮かぶ場面が描かれており、印象的なシーンとして視聴者の想像力をかき立てた。1996年の米映画『インデペンデンス・デイ』でも宇宙人やUFOの秘密研究施設として登場するなど、エリア51といえば宇宙人という印象を形成することに成功している。 ■密かに試験飛行を重ねていた エリア51の歴史は、冷戦初期にさかのぼる。1955年にアメリカのドワイト・D・アイゼンハワー大統領が、荒涼とした砂漠地帯に過ぎなかったエリア51を、ネバダ実験場に追加するよう承認したことで正式に設立された。当初の目的は高高度偵察機U-2の開発だった。 その後も米国の航空技術の最先端を担い続けた。宇宙・航空メディアの米スペース・ドットコムは、音速を超えるA-12偵察機、伝説的なSR-71ブラックバード、そして角張った形状で当時の常識を覆したF-117ステルス戦闘機など、これらすべてがエリア51の広大な砂漠で密かに試験飛行を重ねていたと報じている。