2025-07-03

真冬の夜、東京の静かな街角に、小さなベンチがあった。そのベンチには、セーターの袖を引きずるように座っていた少年・蓮(れん)がいた。家の窓の明かりは温かそうだったが、自分の居場所のようには思えなかった。

両親は最近些細なことで口論ばかり。蓮は家にいても息苦しく、こっそりと外に出た。寒さが肌を刺すが、それ以上に心が冷たかった。

「なにしてるの?」と声をかけてきたのは、同じ年頃の少女美月みづき)だった。彼女は近くの自動販売機で温かいココアを買って、一本を蓮に差し出した。

ありがとう……」と呟く蓮。

「うちも最近、家がうるさくてさ。なんか逃げたくなるよね」と笑う美月の声は、凍った空気を少しだけ和らげた。

二人はベンチで並びながら、ただ缶ココアをすすり合った。話す言葉は少なくても、不思議と心が軽くなっていった。

やがて、時計の針が10時を回った。

「そろそろ帰ろっか。風邪ひくよ」と美月が言うと、蓮はうなずいた。

帰り道、蓮は思った。

――ひとりぼっちじゃなかったんだ。

それだけで、心が少し温かくなった。

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