遅くなりましたが、どうぞ
王都カンカネン。
オービニエ山地のゆるい傾斜を生かした、砦としての風格を色濃く残す街である。
この街を守る騎士団は『近衛騎士団』と呼ばれ、都市守護騎士団の一つではあるが特例的に国王直属の騎士団として扱われる。当然、カンカネンには彼らのための設備があり、郊外に存在している演習場もそのひとつだ。
その演習場で
演習場の中央はむき出しの地面が平らに
そしてその観覧席の一角、特に高くなっているところが
「参れ!
国王アンブロシウスのその言葉とともに演習場にファンファーレが響き、
観覧席に
「国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます!この模擬試合に相応しい最高の乗り手を用意致しました!そして、あれなるがテレスターレの技術を応用・発展して我が
ガイスカは嬉々として国王へ新型
カルダトア・ダーシュは見た目こそカルダトアと似た形状であるが、中身はほとんど別物といっていいものである。
テレスターレに比べ、その操作性は雲泥の差であった。
プレゼンを聞き終えた国王は笑みを浮かべながら好評する。
「うむ。さすがは我が国が誇る
その国王の言葉に会場が喚く。皆この後、何がやってくるのかは周知の事実であった。
「来い!
そして、彼らが現れた瞬間、絶叫の唱和が大地を揺らした。
「なんだ、この足音は?」
「何っ!?あれは!」
「あれはなんだ!?」
観客席にいた者、控えの工房にいた者、その場にいた全ての者が驚愕のあまり声をあげて立ち上がった。立ち上がらない者は単に腰を抜かしていただけである。
会場中の全ての人の視線を奪った
驚きのあまり思考を凍らせていた会場の皆は徐々に冷静さを取り戻していく。
人馬の騎士が纏うは鋼鉄の鎧。額に突き出た一本の角。右手には巨大な
「ふふ、ふはははは……やりおったわエルネスティ! それでこそわしが見込んだものよ!いや予想以上か、これほどとは!まったく、まったく楽しいぞ!!」
熱に浮かれたようになっていた会場の皆を正気に戻したのは、国王の高らかな笑い声だった。
人馬型の
「陛下より御命を受け、
銀色の髪を翻し、
その
大破したヘルムヴィーゲ・リンカーの修理はこの模擬試合にまで間に合わなかったため、偽装解除を施したグリムゲルデを
他の三人の乗機はいつも通り変わらず
ディートリヒは『グゥエール』
三日月は『ガンダム・バルバトスルプス』
「ま、待ってくれ……」
そして、その後ろから遅れてやってきたモビルワーカーからも一人の青年が現れた。
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」
「さて改めて紹介しよう。
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」
「両雄並び立つこの場にてこれ以上の長口上は無粋であろう。これより
国王の命に従い、
──そして、数十分後。
「これより
ガンダム・バルバトスルプスとグリムゲルデは
「俺のモビルワーカーを無視するんじゃねぇぞ……」
何故、オルガは獅電ではなくモビルワーカーなのか。その理由は単純である。ツェンドルグの
「それでどうすればいいの、チョコ?」
三日月が
「俺達はどう戦えばいいんだ?」
「やっぱりエルくんとミカくんが二機、私たちが三機相手にするの?エルくんとミカくんは大丈夫かもしれないけど私たちは自信ないよ?」
「それについては僕に考えがあります」
「んじゃあ、行くかぁ~!」
「俺も行くぞ!!」
高らかな
さらに戦闘の始まりを告げる
「戦闘、はじめぇーーーー!!」
直後、大地を揺らしながら巨人の騎士が突撃を開始した。
最初に動きを見せたのは
その後方で一歩も動かず止まっているのが
「止まるんじゃねぇぞ……」
「これも作戦のうちです。それよりも……」
「あぁ、わかってる……。やっちまえ!ミカァッ!!」
「ばっ……なんだこいつは!?」
「槍では間に合わん!撃て!!」
カルダトア・ダーシュが
「ごちゃごちゃうるさいよ」
そして、バルバトスのメイスでカルダトア・ダーシュの一機が吹き飛んだ。
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」
「フィリア!!」
「くっ、悪魔め……」
「まずいな、私があれを抑える!ユンフは後ろを……」
「ゼルクス、敵はあれだけではない。下手に動くな!」
同僚の言葉にゼルクスは自分たちがもともと何と対峙していたのかを思い出す。
「ミカが戦線を撹乱してくれた今が好機だ!行くぞ、お前ら!」
「ツェンドルグはとにかく走り回って場をかき乱すんだ!私とディーで奴らを抑える!」
「させるかぁ!!」
土煙を跳ね上げながらツェンドルグが密集しているカルダトア・ダーシュへと突撃、
ツェンドルグはそのまま戦線を走り抜けていき、その隙をついてオルガのモビルワーカーと
「俺は止まらねぇぞ!」
そう言って一番最初に突っ込んだオルガのモビルワーカーはカルダトア・ダーシュの剣の一閃を受け、木っ端微塵と化した。
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「……オルガは死んでいいやつだから」
「勘弁してくれよ……」
そのまま互いに見合っている時、
その
「……っ!エチェバルリアの紅色の機体は何処へ行った!!?」
その問いに答えるかのように
「バエルッ!!」
その声が聞こえたのは────
「エリック!上だ!」
「何っ!?うわぁぁ!!」
……空の上からだった。
後方から跳躍して、方円陣形を取るカルダトア・ダーシュの上空の隙をついた
「このまま一気に畳み掛けるぞ!三日月、エドガー!」
「いいよー」
「相手はあの
「あぁ!分かっているさ!」
方円陣形の内側から
「ちぃっ!このまま負ける
「アディ、回り込んで仕掛けるぜ!旋回始め!」
「りょーかーい!ツェンちゃんの足さばきを見せてあげるわ!」
戦線から少し離れた所で待機していた人馬騎士ツェンドルグが演習場の土を蹴り立て駆ける。
リズミカルな
「何っ!? か、【
────
「そこまで!この模擬戦は
その国王の言葉に(三日月とオルガ以外の)全
この模擬試合を見た
「これは……ハハッ、聞きしに勝る常識破りですね」
そして、
「エルネスティ・エチェバルリア!!」
止まらずに
「誰?」
「さぁ?
ガイスカは
「あの人馬型はどうやって動かしている!?四本足の連携は!?あんな巨体が何故動く!?どんな秘密を隠してる!?教えろ!!」
その問いに対する
「残念ながら、我々には話し合う必要も心を通わせる必要もないのです」
「んぬぬ……!!おのれ、
この模擬試合を少し離れた所から見ていた一人の男がいた。
「こいつはぶったまげた!しばらく留守にしている間にフレメヴィーラはすごいもんを作ったなぁ……」
その男は近くにいた少年にこう問いかける。
「あの銀髪、名前は何と言ったか?」
「たしか……エルネスティ・エチェバルリアと……」
「エルネスティ・エチェバルリア……フフッ、面白い奴だ」
読んで下さってありがとうございます!
活動報告にも書きましたが、今年はナイツ&オルガとオルガ細胞の完結を目指して頑張って書いていこうと思います!
今年も変わらず応援のほどよろしくお願いいたします!
P.S.
ニコニコ動画の方に異世界オルガMADを投稿したのでそちらも合わせて見て下さると嬉しいです。
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm34407724