「お呼びですか?」
「魔女のお茶会に招かれるなんて、ボクの世界では羨望の的なんだけど、君は不機嫌そうだね。……まぁいいや、聞いたよ彼から。ガエリオ・ボードウィンは無事送り出せたようだね」
「…………はい」
「それじゃ御望み通り、君もセッテルンド大陸に送ってあげるよ」
「えぇ……。お願いします。そこにマッキーはいるんですよね?」
「あぁ、彼は今、エルネスティ・エチェバルリアという人物として異世界生活を送っているよ」
「あの……一つ頼みたい事があるのですが……」
「いいよ、言ってみたまえ」
「……私をセッテルンド大陸へ送るなら「召喚」ではなく、「転生」という形をとって頂きたいのです。今の私の姿のままではマッキーに顔向け出来ません」
「何故だい?自分の成長した姿を彼に……
「嫌です!……今の私は穢れているから……」
「……いいだろう。そのくらいはやってあげようじゃないか。その代わり……」
「わかっています。
「その通り。理解しているならもう言う事はないね。……じゃあ、行ってくるといいよ」
そして、
後に『カサドシュ事件』と名付けられた一連の事件の数日後、テレスターレの開発に関わった鉄華団とライヒアラ騎操士学園の学生達は国王アンブロシウスの命により、シュレベール城へと集められた。
「此度の新型機開発、大義であった。しかし、そのうちの一機が何者かに持ち出された以上、今後さらなる向上と秘密の固持が求められるだろう。そこで任務の円滑な遂行の為、新たな騎士団の創設を命じる」
玉座より語りかけられる威厳にあふれる国王の声を聞き、オルガはこう思考する。
(ついにこの世界で鉄華団が国の騎士団として認められる訳だ……。ここが俺たちの辿り着くべき場所だったんだな……)
そう感傷に浸るオルガはその次に続く国王の言葉に耳を疑った。
「……エルネスティ・エチェバルリア!おぬしが団長となり、皆を導くのだ!」
「は?……まっ、待ってくれ!」
オルガはすぐさま、立ち上がり国王へ向けてこう告げる。
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……!」
「それを決めるのはお前じゃないんだよ……」
三日月はそう言って、オルガへと銃口を向ける。
「勘弁してくれよ……」
パンパンパン
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
オルガが希望の花を咲かせたのを見た国王は笑いを堪えながら、見てみぬ振りをして話を続ける。
「フフフッ……さて、名前を決めねばならんのう……」
「鉄華団」
「エルネスティ、お主にちなんで銀……」
「鉄の華……決して散らない鉄の華だ」
「ワシからは
そして、国王は少しの間を置いてからこう言った。
「
「何やってんだぁぁっ!」
──数日後──
「つい、勢いで乗っちまったけど、騎士団だとよ!俺達が!」
ライヒアラ騎操士学園の工房でダーヴィドがそう笑った。それに対し、
「親方はその場に居合わせただけまだましだ。俺など倒れてる間に入団が決まっていたのだぞ」
「「俺は入れてもらえないかも……」なんて悲壮な顔してた癖に。ねぇラフタ」
「ホント、あの時の昭弘の顔すっごい面白かったよ。あんな悲しそうな顔もするんだね」
「ラフタ、ヘルヴィ、お前らなぁ……」
彼らがそんな談笑をしていた中、オルガは一人、用務員室に引きこもっていた。
《……エルネスティ・エチェバルリア!お主が団長となり、皆を導くのだ!》
その国王の言葉がずっと彼の頭の中で響き続ける。
昨日のエチェバルリア家でもこのような会話があった。
「「「騎士団長!?」」」
「はい!僕を団長として、
「はははっ!じゃあオルガくんは団長を下ろされてしまったということか?」
「そういうことになりますね」
「勘弁してくれよ……」
(俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……!)
彼が一人で自問自答を繰り返している所に三日月が入ってくる。
「ミカ……」
「何やってんの、オルガ?」
「……鉄華団を解散する……。俺たちはこれから
「ダメだよ、オルガ。それはダメだ」
そう言った三日月はオルガの胸ぐらを掴む。
ピギュ
「前にオルガが言ってた。「鉄華団は家族だ」「みんなの帰るべき場所だ」って。家族って解散するようなものなの?教えてくれ、オルガ。オルガ・イツカ」
「…………っ!」
「待ってるよ、みんな」
その三日月の言葉を聞いたオルガは再び立ち上がる。
「あぁ……分かってる。俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……。最高にイキがって、かっこいいオルガ・イツカじゃなきゃいけないんだ!そうだろ、ミカァッ!!」
再び立ち上がったオルガに三日月は笑みを漏らしながらこう答える。
「あぁ、そうだよ。連れていってくれるんだろ?」
「あぁ、そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらねぇかぎり、道は続くっ!……俺は止まんねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先へ連れてってやるよ!」
そのオルガの言葉は異世界で旅を続けていくと誓ったあの日の言葉。その言葉をもう一度、口に出す事で彼らは再び契約を結ぶ。──決して散らない鉄血の契約を。
「すまねぇな、ミカ。みっともねぇとこ見せちまってよ」
「謝ったら許さない」
「あぁ、頼むわ」
パン!パン!パン!
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「鉄華団を解散する」などという言葉を口にしてしまった弱気なオルガ・イツカは今、ここで命を落とした。この希望の花はこれから決して弱気な態度は見せないというオルガの誓いでもあった。
オルガと三日月が工房の会議室へやって来るとそこには
その
「皆さんお集まりですね!では……聴け!ギャラルホルンの諸君!」
「それはいいから本題を話せ」
ダーヴィドがそう言うと、
「いよいよ我ら
「新型機の開発だな?」
「はい。国王陛下が最高と認める機体という大目標はありますが、それだけではありません!十ヶ月後、
『
その
「何っ!それは本当か!?」
「
「それは大物だな」
「相手にとって不足はねぇ!」
「
「「「「おおっ!!」」」」
そして、季節は巡り、
「今年度から学園の各施設は国王陛下直属である我ら
ライヒアラ騎操士学園の新入生達に
「そして、
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」
その新入生の中には……。
「三日月さん!」
かつて、三日月のたった一人の部下として鉄華団の遊撃隊に所属していたハッシュ・ミディの姿があった。
「ハッシュ!?何でいんの?」
「俺もこの世界に転生したみたいなんすよ。俺、この世界でも三日月さんに着いていくって決めたんで」
ハッシュのその言葉を聞いた三日月はその顔に笑みを浮かべる。
「また一緒に仕事だな」
「っす!」
そして、
説明会の後、ライヒアラ騎操士学園の新入生達がぞろぞろと解散していく。その新入生の中の一人、
「……エチェバルリア騎士団長」
「すいません、先に戻っていてもらえますか?僕は少し話がありますので」
「どういうことだ?」
「いいから行くよ、オルガ」
オルガは三日月に連れていかれ、ダーヴィドと
それから
「意外ですね。
「もともと私は
彼女の名はノーラ・フリュクバリ。
実体なき騎士団、つまり彼女らは先日の
「こうして報告に来たということは、例の事件解明に何か進展が?」
「はい。まずは先日の調査の結果についてですが、
「ライヒアラ全市街に人員を配置、結界を敷きましたので今後同様の事態が起きる心配はありません。しかしテレスターレ強奪の首謀者はいまだ不明」
「ふむ……カルタがどこの国の者かまでは分からなかったと……。ご苦労だった。今後もこの件は貴女方
報告を終えた彼女は丁寧な一礼をした後、こう呟く。
「それよりもまだ気づかないんですか?」
その呟きに
「?」
「やはり気づきませんか……。私ですよ、
「マッキー」。彼女は確かに
生前、彼を──マクギリス・ファリドの事をそう呼んだのはただ一人。
(まさか……ノーラ・フリュクバリは……)
「アルミリア……君なのか……」
すると彼女は先ほど調査の報告をしていた時とは別人のような満面の笑みを浮かべ、こう言った。
「はい!マッキー!!」
その後、彼女の死の経緯などを聞き出そうとした
──数日後──
ライヒアラ学園街より少し離れた人気のない森の中。まばらな木々の合間を縫って、重量感溢れる足音を立てて歩く二機の巨人がいた。
『カルダトア』を動かしているのは
その足元には三機の
森の中の開けた場所に着いた彼らは持ってきた荷物を広げ、中から奇妙な
「よーし、取り付け終わったぜ~」
「あとで怒られないかな?勝手に新品のカルダトアを使って」
「私がバエルを動かす為です!」
カルダトアに取り付けられたこの筒状の装置は『
バエルに最も必要なのは、機動力の高さだと考えた
今はその『
「四人は観測と計測を」
「は!」
「はーい」
「オッケー」
「あいよ」
「では……」
たっぷりと間を空けてから、エルネスティ《マクギリス》はこう言った。
「
──その瞬間、世界が切り替わった……。
最初に発生したのはまばゆい光、次に機体背後に長く伸びる炎の尾、少し遅れて
その轟音はライヒアラ学園街にも響き渡り、その轟音をライヒアラ騎操士学園の用務員室で耳にしたオルガは慌てて学園を飛び出す。
「何があった!?」
その時、上から落ちてきた割れたガラスの破片が刺さり、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「うおっ!おおおぉぉぉぉぉぉう!?」
「准将ぉぉぉぉぉぉ!!」
暴走する
しかし、石動もどうすることも出来ずに、カルダトアに追突され、そのまま加速を続ける。
そして、急激な
それを端から見ていた三人は……。
「うわぁ……こりゃヤベェことになったな」
「エル君と石動さん、生きてるかな?」
「いや、今のはまずいだろ!助けに行くぞ!」
「うん!エルく~~~~ん!!」
結果的にいえば、
「こっの、バッカ野郎!!」
ダーヴィドの声が工房中に響く。
「貴重なカルダトアとヘルムヴィーゲ・リンカーを大破させた上に死にかけただとぉ!!?一体何を考えてやがる!」
「何を、と言われましても……。新しい
「そういう事を言ってるんじゃねぇよ!!ちょっとは反省しろ!!」
「バエルを持つ(予定の)私は、そのような些末事で断罪される身ではない」
「それの!どこが!!反省してるってんだ!!!」
「すみません。しかし、
「まぁ、それはそうだが……」
「三日月・オーガス。君が今まで戦ってきた相手の中で機動力の高いと思った機体を教えてもらっていいかな?」
「ん?うーん。ラフタが最初に乗ってたやつと……」
「百里ね」
「あとは……ガリガリかな」
「ガリガリ」、三日月がそう呼んだ男の名は『ガエリオ・ボードウィン』。ギャラルホルンを束ねるセブンスターズの一家門ボードウィン家の嫡男であり、マクギリスとカルタとは幼馴染の関係であった。
「ガエリオ……キマリスか……」
キマリスは長距離飛行・低軌道戦闘を想定して専用に開発された「キマリスブースター」や地上戦を想定した「キマリストルーパー」などのバリエーションがある。
そこまで思考した
「人馬型だ……」
「は?」
ホワイトボードに書かれた
「……こりゃああれか、
数分の沈黙の後、ようやく搾り出されたダーヴィドの感想はこうだった。
P.D.世界の者はキマリストルーパーを見ているのでそこまでの驚きはないが、セッテルンド大陸出身の者はやはり驚きを隠せないでいた。
「ゲテモノというか……いや……その、何といったものか。結局、何だいこれは?」
「脚が速くて、見た目にもわかりやすい機体です」
「え?いやそうかもしれないが、え?」
思考が迷走を始めたディートリヒに対する
「これくらいやれば、
「頭に血が上りすぎるか、心臓破裂して死ぬんじゃねぇか、
いっそこれが完全に馬の姿をした
この
幻想と空想の中にある存在を形にしようとする
そんな中で
「普通に馬の形をしただけでは格闘しづらいですし、それでは機動力だけ高くても意味がないではないですか。だからと言ってわざわざ他の機体を乗せて走るのでは、単に二度手間です。そこで高速で移動しながら単体で戦えるように、人と同じ上半身を備えつけたのです。つまりこれの目的は一機の
一応真っ当な理由があったことに、鍛冶師達はそろって胸をなでおろした。手段が常識を一欠片も考慮していないだけで、彼の目的自体は極めて具体的なものである。過剰にメルヘンチックになることも無いだろう。
「あー、まぁ言いたい事とやりたい事はわかった。間違った方向に正しいが、とりあえずは置いてやる。だが、だからって馬に体くっつけるかよ普通……」
そう言いながら、ダーヴィドは覚悟とも諦めともつかぬ心境の中でその人馬型の
そして、十ヶ月後、国王アンブロシウスが定めた
新型の
「それでは皆さん、陛下と
皆の前で
「
やはり遅くなりました。
おそらくですが、これからの更新はオルガ細胞と同様の更新速度(一ヶ月に一話ペース)になりそうです。
遅くはなりますが、頑張って書いていくので皆さんも感想等で応援よろしくお願いします!
次回のナイツ&オルガ7は二話に分けます。
一話はまるまる戦闘回にする予定です。