異世界オルガ   作:T oga

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魔女のお茶会にて──

「お呼びですか?」
「魔女のお茶会に招かれるなんて、ボクの世界では羨望の的なんだけど、君は不機嫌そうだね。……まぁいいや、聞いたよ彼から。ガエリオ・ボードウィンは無事送り出せたようだね」
「…………はい」
「それじゃ御望み通り、君もセッテルンド大陸に送ってあげるよ」
「えぇ……。お願いします。そこにマッキーはいるんですよね?」
「あぁ、彼は今、エルネスティ・エチェバルリアという人物として異世界生活を送っているよ」
「あの……一つ頼みたい事があるのですが……」
「いいよ、言ってみたまえ」
「……私をセッテルンド大陸へ送るなら「召喚」ではなく、「転生」という形をとって頂きたいのです。今の私の姿のままではマッキーに顔向け出来ません」
「何故だい?自分の成長した姿を彼に……エルネスティ・エチェバルリア(マクギリス・ファリド)に見せてあげればいいじゃないか」
「嫌です!……今の私は穢れているから……
「……いいだろう。そのくらいはやってあげようじゃないか。その代わり……」
「わかっています。六連星(むつらぼし)の導き手に相応しい者を選べばいいのでしょう」
「その通り。理解しているならもう言う事はないね。……じゃあ、行ってくるといいよ」

そして、ノーラ・フリュクバリ(アルミリア・ファリド)はセッテルンド大陸へと旅立った……。




ナイツ&オルガ6

後に『カサドシュ事件』と名付けられた一連の事件の数日後、テレスターレの開発に関わった鉄華団とライヒアラ騎操士学園の学生達は国王アンブロシウスの命により、シュレベール城へと集められた。

 

「此度の新型機開発、大義であった。しかし、そのうちの一機が何者かに持ち出された以上、今後さらなる向上と秘密の固持が求められるだろう。そこで任務の円滑な遂行の為、新たな騎士団の創設を命じる」

 

玉座より語りかけられる威厳にあふれる国王の声を聞き、オルガはこう思考する。

 

(ついにこの世界で鉄華団が国の騎士団として認められる訳だ……。ここが俺たちの辿り着くべき場所だったんだな……)

 

そう感傷に浸るオルガはその次に続く国王の言葉に耳を疑った。

 

「……エルネスティ・エチェバルリア!おぬしが団長となり、皆を導くのだ!」

「は?……まっ、待ってくれ!」

 

オルガはすぐさま、立ち上がり国王へ向けてこう告げる。

 

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……!」

「それを決めるのはお前じゃないんだよ……」

 

三日月はそう言って、オルガへと銃口を向ける。

 

「勘弁してくれよ……」

 

パンパンパン

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

オルガが希望の花を咲かせたのを見た国王は笑いを堪えながら、見てみぬ振りをして話を続ける。

 

「フフフッ……さて、名前を決めねばならんのう……」

「鉄華団」

「エルネスティ、お主にちなんで銀……」

「鉄の華……決して散らない鉄の華だ」

「ワシからは(おおとり)の名を贈ろう!」

 

そして、国王は少しの間を置いてからこう言った。

 

銀鳳(ぎんおう)騎士団!それが今日からお主らが名乗るべき名前だ!」

 

「何やってんだぁぁっ!」

 

 

──数日後──

 

 

「つい、勢いで乗っちまったけど、騎士団だとよ!俺達が!」

 

ライヒアラ騎操士学園の工房でダーヴィドがそう笑った。それに対し、エドガー(昭弘)がこう言う。

 

「親方はその場に居合わせただけまだましだ。俺など倒れてる間に入団が決まっていたのだぞ」

「「俺は入れてもらえないかも……」なんて悲壮な顔してた癖に。ねぇラフタ」

「ホント、あの時の昭弘の顔すっごい面白かったよ。あんな悲しそうな顔もするんだね」

「ラフタ、ヘルヴィ、お前らなぁ……」

 

 

彼らがそんな談笑をしていた中、オルガは一人、用務員室に引きこもっていた。

 

《……エルネスティ・エチェバルリア!お主が団長となり、皆を導くのだ!》

 

その国王の言葉がずっと彼の頭の中で響き続ける。

 

昨日のエチェバルリア家でもこのような会話があった。

 

「「「騎士団長!?」」」

「はい!僕を団長として、銀鳳(ぎんおう)騎士団が新設されたのです!」

「はははっ!じゃあオルガくんは団長を下ろされてしまったということか?」

「そういうことになりますね」

「勘弁してくれよ……」

 

(俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……!)

 

彼が一人で自問自答を繰り返している所に三日月が入ってくる。

 

「ミカ……」

「何やってんの、オルガ?」

「……鉄華団を解散する……。俺たちはこれから銀鳳(ぎんおう)騎士団として進み続けなきゃいけねぇ……」

「ダメだよ、オルガ。それはダメだ」

 

そう言った三日月はオルガの胸ぐらを掴む。

 

ピギュ

 

「前にオルガが言ってた。「鉄華団は家族だ」「みんなの帰るべき場所だ」って。家族って解散するようなものなの?教えてくれ、オルガ。オルガ・イツカ」

「…………っ!」

「待ってるよ、みんな」

 

その三日月の言葉を聞いたオルガは再び立ち上がる。

 

「あぁ……分かってる。俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……。最高にイキがって、かっこいいオルガ・イツカじゃなきゃいけないんだ!そうだろ、ミカァッ!!」

 

再び立ち上がったオルガに三日月は笑みを漏らしながらこう答える。

 

「あぁ、そうだよ。連れていってくれるんだろ?」

「あぁ、そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらねぇかぎり、道は続くっ!……俺は止まんねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先へ連れてってやるよ!

 

そのオルガの言葉は異世界で旅を続けていくと誓ったあの日の言葉。その言葉をもう一度、口に出す事で彼らは再び契約を結ぶ。──決して散らない鉄血の契約を。

 

「すまねぇな、ミカ。みっともねぇとこ見せちまってよ」

「謝ったら許さない」

「あぁ、頼むわ」

 

パン!パン!パン!

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

「鉄華団を解散する」などという言葉を口にしてしまった弱気なオルガ・イツカは今、ここで命を落とした。この希望の花はこれから決して弱気な態度は見せないというオルガの誓いでもあった。

 

 

オルガと三日月が工房の会議室へやって来るとそこには銀鳳(ぎんおう)騎士団の面々が集合していた。

 

その銀鳳(ぎんおう)騎士団の団長であるエルネスティ(マクギリス)が皆へ向けてこう言葉を発した。

 

「皆さんお集まりですね!では……聴け!ギャラルホルンの諸君!」

「それはいいから本題を話せ」

 

ダーヴィドがそう言うと、エルネスティ(マクギリス)は少し不服そうな顔をしながらも本題に入る。

 

「いよいよ我ら銀鳳(ぎんおう)騎士団がその使命を果たす時が来ました!」

「新型機の開発だな?」

「はい。国王陛下が最高と認める機体という大目標はありますが、それだけではありません!十ヶ月後、国機研(ラボ)開発の新型機との模擬試合を執り行います!」

 

国立機操開発研究工房(シルエットナイト・ラボラトリ)』──通称、国機研(ラボ)。その名の通り、国の下で幻晶騎士(シルエットナイト)の技術を管理する為の組織である。

 

その国機研(ラボ)との模擬試合が行われるとエルネスティ(マクギリス)から聞かされた銀鳳騎士団の団員達は各々反応を示す。

 

「何っ!それは本当か!?」

国機研(ラボ)との勝負か~」

「それは大物だな」

「相手にとって不足はねぇ!」

国立機操開発研究工房(シルエットナイト・ラボラトリ)を驚愕せしめる機体を作りましょう!」

「「「「おおっ!!」」」」

 

 

そして、季節は巡り、銀鳳(ぎんおう)騎士団は新たな学生達を迎えていた。

 

「今年度から学園の各施設は国王陛下直属である我ら銀鳳(ぎんおう)騎士団に徴用された状態にある。君たちは騎操士学園の学生であると同時に我が騎士団の見習い騎士の身分になると心得て欲しい」

 

ライヒアラ騎操士学園の新入生達にエドガー(昭弘)がそう告げる。その後、団長の紹介へと移る。

 

「そして、銀鳳(ぎんおう)騎士団の団長が彼、エルネスティ・エチェバルリアである」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

 

 

その新入生の中には……。

 

「三日月さん!」

 

かつて、三日月のたった一人の部下として鉄華団の遊撃隊に所属していたハッシュ・ミディの姿があった。

 

「ハッシュ!?何でいんの?」

「俺もこの世界に転生したみたいなんすよ。俺、この世界でも三日月さんに着いていくって決めたんで」

 

ハッシュのその言葉を聞いた三日月はその顔に笑みを浮かべる。

 

「また一緒に仕事だな」

「っす!」

 

そして、エルネスティ(マクギリス)もまた、とある新入生の視線を感じていた。

 

 

説明会の後、ライヒアラ騎操士学園の新入生達がぞろぞろと解散していく。その新入生の中の一人、エルネスティ(マクギリス)に視線を送っていた長身の女性は目立たぬようにさりげなく集団から離れると、全員が移動した隙を見計らって工房へと戻ってゆく。

 

「……エチェバルリア騎士団長」

 

エルネスティ(マクギリス)は彼女を見ると、笑顔で頷き返し、先に歩み始めたオルガと三日月、ダーヴィドとエドガー(昭弘)へと声をかける。

 

「すいません、先に戻っていてもらえますか?僕は少し話がありますので」

「どういうことだ?」

「いいから行くよ、オルガ」

 

オルガは三日月に連れていかれ、ダーヴィドとエドガー(昭弘)も顔を見合せ、そのまま工房の奥へと戻っていった。

 

それからエルネスティ(マクギリス)とその新入生は誰も使用していない会議室へと向かう。

 

「意外ですね。藍鷹(あいおう)騎士団に所属する貴女が騎操士学科の新入生になっているとは」

「もともと私は()()()()としてこちらに向かうことになっていました。そこで他にもいくつかの目的があり、こういった形での派遣となったのです」

 

エルネスティ(マクギリス)は身長差のある相手を見上げながら、何かに納得するような表情を見せる。

 

彼女の名はノーラ・フリュクバリ。エルネスティ(マクギリス)の言葉通り、藍鷹(あいおう)騎士団に既に所属している騎士の一人だ。

 

藍鷹(あいおう)騎士団──その名前は一般には知られていない。そもそもどこの砦を調べたとしても、そのような名前の騎士団は存在しない。

 

実体なき騎士団、つまり彼女らは先日のケルヒルト・ヒエタカンナス(カルタ・イシュー)の率いる銅牙騎士団(地球外縁軌道統制艦隊)と同じく、いわゆる()()の集団なのだ。その藍鷹(あいおう)騎士団が名前を出して動く理由は、彼女たちの任務に大いに関係があった。

 

「こうして報告に来たということは、例の事件解明に何か進展が?」

「はい。まずは先日の調査の結果についてですが、銀鳳(ぎんおう)騎士団、及び学園に所属する者全員の素性の洗い直しについては完了しました。結果として経歴に不審な点のある者が数名見つかりましたが、彼らの処置についてはすでに完了しております」

 

銀鳳(ぎんおう)騎士団の結成と前後して国王アンブロシウスから彼女達、藍鷹(あいおう)騎士団に下された命令は『ライヒアラ騎操士学園の徹底調査』であった。

 

「ライヒアラ全市街に人員を配置、結界を敷きましたので今後同様の事態が起きる心配はありません。しかしテレスターレ強奪の首謀者はいまだ不明」

「ふむ……カルタがどこの国の者かまでは分からなかったと……。ご苦労だった。今後もこの件は貴女方藍鷹(あいおう)騎士団に一任する」

 

報告を終えた彼女は丁寧な一礼をした後、こう呟く。

 

「それよりもまだ気づかないんですか?」

 

その呟きにエルネスティ(マクギリス)は首をかしげる。

 

「?」

「やはり気づきませんか……。私ですよ、()()()()!」

 

「マッキー」。彼女は確かにエルネスティ(マクギリス)の事をそう呼んだ。

 

生前、彼を──マクギリス・ファリドの事をそう呼んだのはただ一人。

 

(まさか……ノーラ・フリュクバリは……)

 

「アルミリア……君なのか……」

 

エルネスティ(マクギリス)は恐る恐る彼女にそう問いかける。

すると彼女は先ほど調査の報告をしていた時とは別人のような満面の笑みを浮かべ、こう言った。

 

「はい!マッキー!!」

 

その後、彼女の死の経緯などを聞き出そうとしたエルネスティ(マクギリス)であったが、その真実の答えを知るのはもっともっと先の未来の話である。

 

 

──数日後──

 

 

ライヒアラ学園街より少し離れた人気のない森の中。まばらな木々の合間を縫って、重量感溢れる足音を立てて歩く二機の巨人がいた。

 

銀鳳(ぎんおう)騎士団所属の制式量産型幻晶騎士(シルエットナイト)『カルダトア』とP.D.世界の厄祭戦時末期に開発された「ヘルムヴィーゲ」のデータを元にモンターク商会の所持していたヴァルキュリア・フレームのMS「グリムゲルデ」を偽装する形で改修した『ヘルムヴィーゲ・リンカー』。

『カルダトア』を動かしているのはエルネスティ(マクギリス)、『ヘルムヴィーゲ・リンカー』を動かしているのは石動だ。

 

その足元には三機の幻晶甲冑(シルエットギア)が後について歩いていた。キッドとアディ、そしてもう一人はバトソンである。

 

森の中の開けた場所に着いた彼らは持ってきた荷物を広げ、中から奇妙な()()()()()エルネスティ(マクギリス)のカルダトアに取り付け始めた。

 

「よーし、取り付け終わったぜ~」

「あとで怒られないかな?勝手に新品のカルダトアを使って」

「私がバエルを動かす為です!」

 

カルダトアに取り付けられたこの筒状の装置は『魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスター)

 

バエルに最も必要なのは、機動力の高さだと考えたエルネスティ(マクギリス)幻晶騎士(シルエットナイト)の機動力を底上げする為にスラスターを後付けする事を思い付き、早速石動、アディ、キッド、バトソンとともにこの『魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスター)』を開発した。

 

今はその『魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスター)』の機動実験を行おうとしているところだ。

 

「四人は観測と計測を」

「は!」

「はーい」

「オッケー」

「あいよ」

「では……」

 

たっぷりと間を空けてから、エルネスティ《マクギリス》はこう言った。

 

エルネスティ・エチェバルリア(マクギリス・ファリド)、ガンダムゥ?バエル!出るぞ!!」

 

エルネスティ(マクギリス)は不敵な笑みを浮かべると、操縦桿の周りに増設したスイッチを一斉に押し込んだ。

 

 

──その瞬間、世界が切り替わった……。

 

 

最初に発生したのはまばゆい光、次に機体背後に長く伸びる炎の尾、少し遅れて(つんざ)くような轟音。

 

 

その轟音はライヒアラ学園街にも響き渡り、その轟音をライヒアラ騎操士学園の用務員室で耳にしたオルガは慌てて学園を飛び出す。

 

「何があった!?」

 

その時、上から落ちてきた割れたガラスの破片が刺さり、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

エルネスティ(マクギリス)により目醒めを告げられた魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスター)は全く停滞なく、猛然とその本性を剥き出しにした。圧縮を経た大気の塊が連続して爆発膨張し、強烈なジェット噴流による反動がカルダトアへと圧倒的な加速を与える。……いや、それはすでに加速などという生易しいものではなく、言うなれば()()()()()()という表現のが正しいか。

 

「うおっ!おおおぉぉぉぉぉぉう!?」

「准将ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

暴走するエルネスティ(マクギリス)のカルダトアを何とかして止めようと、石動のヘルムヴィーゲ・リンカーが飛び出す。

 

しかし、石動もどうすることも出来ずに、カルダトアに追突され、そのまま加速を続ける。

 

そして、急激な魔力(マナ)の消費に対し、魔力貯蓄量(マナ・プール)が枯渇する寸前のところでカルダトアの安全装置(リミッター)が作動し、カルダトアは停止した。ヘルムヴィーゲ・リンカーはそのカルダトアの下敷きになっている。

 

それを端から見ていた三人は……。

 

「うわぁ……こりゃヤベェことになったな」

「エル君と石動さん、生きてるかな?」

「いや、今のはまずいだろ!助けに行くぞ!」

「うん!エルく~~~~ん!!」

 

 

 

結果的にいえば、エルネスティ(マクギリス)は無傷、石動も軽症で済んだのだが、もちろんダーヴィドからは新品のカルダトアとヘルムヴィーゲ・リンカーを壊したことについてこっぴどく怒られることとなった。

 

「こっの、バッカ野郎!!」

 

ダーヴィドの声が工房中に響く。

 

「貴重なカルダトアとヘルムヴィーゲ・リンカーを大破させた上に死にかけただとぉ!!?一体何を考えてやがる!」

「何を、と言われましても……。新しい幻晶騎士(シルエットナイト)を作る為の前準備です。幻晶騎士(シルエットナイト)でバエルを作る為にはまず空を飛ばせなくてはいけませんから。機動力を上げる為にあのスラスターを……」

「そういう事を言ってるんじゃねぇよ!!ちょっとは反省しろ!!」

「バエルを持つ(予定の)私は、そのような些末事で断罪される身ではない」

「それの!どこが!!反省してるってんだ!!!」

「すみません。しかし、幻晶騎士(シルエットナイト)の機動力を上げるのは重要な事だと思うのです」

「まぁ、それはそうだが……」

 

エルネスティ(マクギリス)は工房の隅でチョコレートを食べながら、エドガー(昭弘)、ラフタ、アジーと話している三日月へと声をかける。

 

「三日月・オーガス。君が今まで戦ってきた相手の中で機動力の高いと思った機体を教えてもらっていいかな?」

「ん?うーん。ラフタが最初に乗ってたやつと……」

「百里ね」

「あとは……ガリガリかな」

 

「ガリガリ」、三日月がそう呼んだ男の名は『ガエリオ・ボードウィン』。ギャラルホルンを束ねるセブンスターズの一家門ボードウィン家の嫡男であり、マクギリスとカルタとは幼馴染の関係であった。

 

「ガエリオ……キマリスか……」

 

エルネスティ(マクギリス)の言う通り、そのガエリオの搭乗機は『ガンダム・キマリス』。各部に搭載されているバーニアによって、高い推進力と機動力を両立させている。

キマリスは長距離飛行・低軌道戦闘を想定して専用に開発された「キマリスブースター」や地上戦を想定した「キマリストルーパー」などのバリエーションがある。

 

そこまで思考したエルネスティ(マクギリス)は気が付いた。空を飛べない幻晶騎士(シルエットナイト)の機動力を上げる方法。それは……。

 

「人馬型だ……」

「は?」

 

エルネスティ(マクギリス)はそう言うと、ホワイトボードに設計図を書き上げた。

 

ホワイトボードに書かれた幻晶騎士(シルエットナイト)の姿はキマリストルーパーと同様『半人半馬(ケンタウロス)』のような見た目だった。

 

 

「……こりゃああれか、銀鳳騎士団(うち)はひょっとして、ゲテモノ専門になるのか?」

 

数分の沈黙の後、ようやく搾り出されたダーヴィドの感想はこうだった。

 

P.D.世界の者はキマリストルーパーを見ているのでそこまでの驚きはないが、セッテルンド大陸出身の者はやはり驚きを隠せないでいた。

 

「ゲテモノというか……いや……その、何といったものか。結局、何だいこれは?」

「脚が速くて、見た目にもわかりやすい機体です」

「え?いやそうかもしれないが、え?」

 

思考が迷走を始めたディートリヒに対するエルネスティ(マクギリス)の答えは簡潔だった。

 

「これくらいやれば、国機研(ラボ)の方々の度肝を抜くこともできると思いますし」

「頭に血が上りすぎるか、心臓破裂して死ぬんじゃねぇか、国機研(ラボ)の連中。……百歩譲って“馬”はいいとしようや。逆にだ、何故“上半身”をつけた!?」

 

いっそこれが完全に馬の姿をした幻晶騎士(シルエットナイト)を作ろうというのならば、この馬鹿馬鹿しい発想に呆れはしてももう少し抵抗は少なかったかもしれない。

 

このセッテルンド大陸(世界)にも人の体と馬の体をもつ生物、ケンタウロスは実在しない。やはり御伽噺や、空想上の存在なのだ。

 

幻想と空想の中にある存在を形にしようとするエルネスティ(マクギリス)。ひょっとして彼はかなり詩的メルヘンチックな趣味を持っているのだろうか、そんな別種の心配が鍛冶師達の背筋を寒くしていた。

 

そんな中でエルネスティ(マクギリス)はこう説明した。

 

「普通に馬の形をしただけでは格闘しづらいですし、それでは機動力だけ高くても意味がないではないですか。だからと言ってわざわざ他の機体を乗せて走るのでは、単に二度手間です。そこで高速で移動しながら単体で戦えるように、人と同じ上半身を備えつけたのです。つまりこれの目的は一機の幻晶騎士(シルエットナイト)で騎馬兵と同様の運用を再現する、と言う事になりますね」

 

一応真っ当な理由があったことに、鍛冶師達はそろって胸をなでおろした。手段が常識を一欠片も考慮していないだけで、彼の目的自体は極めて具体的なものである。過剰にメルヘンチックになることも無いだろう。

 

「あー、まぁ言いたい事とやりたい事はわかった。間違った方向に正しいが、とりあえずは置いてやる。だが、だからって馬に体くっつけるかよ普通……」

 

そう言いながら、ダーヴィドは覚悟とも諦めともつかぬ心境の中でその人馬型の幻晶騎士(シルエットナイト)の具体的な構想を考え始めた。

 

 

そして、十ヶ月後、国王アンブロシウスが定めた国機研(ラボ)との模擬試合の期日は後三日に迫った。

新型の幻晶騎士(シルエットナイト)も完成し、準備は万端である。

 

「それでは皆さん、陛下と国機研(ラボ)の度肝を抜きに行きましょう!」

 

皆の前でエルネスティ(マクギリス)はこう言った。

 

銀鳳(ぎんおう)騎士団、王都へ向けて出発です!」

 

 




やはり遅くなりました。

おそらくですが、これからの更新はオルガ細胞と同様の更新速度(一ヶ月に一話ペース)になりそうです。

遅くはなりますが、頑張って書いていくので皆さんも感想等で応援よろしくお願いします!


次回のナイツ&オルガ7は二話に分けます。
一話はまるまる戦闘回にする予定です。

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