〈『現代ビジネス』の梅本千種氏による記事に対する反論〉
2025.2.13に梅本千種と名乗るライターが、インターネットメディア「現代ビジネス」に、集中連載として、『園子温監督の「性加害」を告発した故・千葉美裸さんに、何があったのか?急逝2年後にわかったこと』『映画界の「性加害」告発後に自死した千葉美裸さんが遺していた「もうひとつのSOS」〈前編・後編〉』という記事をアップした。その後も、2025.6.28に同媒体にて『園子温氏は「反撃」記者会見で、何を語ろうとしていたのか?…メディアで報じられなかった事情』と題して記事をアップし、以降連日、加害者サイドとされる園子温氏や坂口拓氏の主張を掲載した記事を出し続けている。
https://gendai.media/articles/-/146183
本稿はこの記事の不当性や問題点について、「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」の有志が反駁を加えたものである。
大前提として、この記事には大きな事実誤認がある。2022年に発足した「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」は、映像業界で起きた性加害・性暴力を告発した被害当事者と、映像業界から性暴力をなくすことに賛同した者による「有志」の集まりである。当初より、当事者の視点を取り入れつつ声をあげていくこと、発信していくことを重視しており、声明を出すこと以上の目的があったわけではない。その後も、ロビー活動や記者会見を通じて、映像業界における性暴力の現状を会なりに伝えてきた。現在は、クローズドではあるが、業界関係者向けの勉強会などを通じて問題意識を共有してもいる。つまり当会は「被害者を支援する支援団体」ではない。
被害者から相談を受けることもあるが、被害当事者個人のケースを解決することや、代理告発を期待されても沿うことはできないため、残念ではあるが会の性質を説明して、お断りしている。第一に、会のメンバーはそのようなケアの資格を有するプロの集まりではないからだ。また会にいる当事者もいまだに渦中にあり、問題が解決しているわけでもない(性暴力に解決というものがあるのかはさておき)。要するに、当事者ではない人のことを便宜上「支援者」と呼んでいるに過ぎない。会議のなかで被害当事者の怒りや悲しみを共有することもあり、広義の意味ではケアの役割が全くないとは言えないが、ケアをすることを活動の目的としているわけではない。その一方、性暴力に対する理解が進んでいるとは言えない状況で「支援者」が増えることを会としては望んできたが、それはあくまで、性暴力に対する理解を深めて連帯してくれる人のことである。
この記事はそういった根本的な誤解を元に書かれているのみならず、非常に悪質なのは、千葉美裸さんの追悼記事という体裁をとりながら、不当にプライバシーを侵害し、故人の評価を貶めている点である。記事に登場するA氏は梅本記者に「ご遺族への取材をすべきである、必要なら繋ぐ」と提案したのに対し、梅本記者は何らアプローチをした形跡がない。故人のプライバシーを恣意的に歪めた形で暴露したこの記事に対し、遺族は激怒している。
A氏は故人の「一定の症状(BPD)」について説明し、故人のアウティングに繋がるので慎重に記してほしいと伝えたにも関わらず、病状に対する取材をした形跡もない。記事中に出てくるカッターによる流血の件でA氏が全治3週間、20針近く縫った負傷を「怪我を負ったらしいが」程度の表現に留め、「DV」を強調するなどの印象操作が見られる。また当時、救急隊員という第三者がいたのにも関わらず、その点を意図的に隠している。
梅本記者は「よきことの中にも悪がある」という記者自身の描きたい「ストーリー」にすべてを結びつけるために、事実誤認、意図的/恣意的操作を行い、故人の尊厳を著しく傷つけ、遺族を深く傷つけ、A氏を含む会の名誉と信頼を損なわせた可能性がある。そして、千葉美裸さんが告発したような「加害者」たちを結果的に利しているのではないだろうか。
なお、5月27日に梅本氏から会宛に来たメールに対して以下のように返答しているが、梅本氏から返事は得られなかった。
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梅本 千種 様
講談社 石井 様
FCCJでの記者会見ご参加お疲れ様でございました。
ご質問のご様子拝見しておりました。二次加害に対するご質問、とても重要なご指摘かと存じます。
園子温氏は27日夕刻にアップされたyoutubeの動画内で、事実を歪曲し、かつ恣意的にまとめられた貴記事を引用し、故人の尊厳を貶める言動を行っています。
以下、園氏の動画から抜粋します。
〈抜粋箇所中略〉
あなた方の書いた記事を引き合いに、千葉美裸さんの病歴や疾患が乱暴に衆目に晒され、千葉さん並びにご遺族の尊厳が貶められたことについてはどのようにお考えでしょうか?
貴記事に対してご遺族も激怒しておられることを追記しておきます。
映像業界における性加害・性暴力をなくす会
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以下、記事に対する反駁である。
<元記事>
https://gendai.media/articles/-/146183
■1-1
※なお、本記事は、千葉さんの自殺の原因を特定する目的で執筆したものではありません。
>結果的に自死の原因を千葉さんとA氏の関係性にあるように誘導しているのではないか
■1-2
後日、坂口氏の所属事務所からも動画がアップされ、同様の趣旨のコメントがなされた。千葉さんへの直接の謝罪の意向も示されたが、その後のやりとりの中で、最終的には千葉さんから断りの連絡があったという。
>「最終的には千葉さんから断りの連絡があったという」はニュアンスが違う可能性がある
>千葉さんからライブでやりたいという提案をしたが坂口側から断られた
>千葉さんは撮影前に確認して欲しい事があると言われたが、八百長は嫌だと断った
■2-1
当時、千葉さんが交際していたのは、ユリ子さんが十数年前に離婚した元夫のA氏だった。A氏は映画の仕事をしており、近年では「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」の活動でも知られている。
業界の中から、性暴力をなくしていこうと率先して声を上げ、加害者として告発された側を鋭く追及する、心強い支援者として、A氏の言動はマスメディアでも好意的に取り上げられてきた。
>A氏を特定できるのではないか?
■2-2
こうしたA氏の姿勢について、千葉さんは「勇気をもらった」と、ブログやSNSで感謝の気持ちを綴っていた。2022年3月に千葉さんを週刊誌記者につなぎ、園子温氏から受けたという「性被害」の取材のきっかけをつくったのも、A氏だった。その頃から千葉さんとA氏の交際が始まったという。
>まるで園子温告発のためにA氏が千葉さんを利用したかの印象。A氏の自責の念などを記事のために利用しているのは梅本記者ではないか。
かつて一児を抱えるシングルマザーだったユリ子さんが、A氏と結婚したのは2004年のことだった。その後、A氏との間に2人の息子を授かったものの、末子を出産後、1年で離婚。ユリ子さんは再びシングルマザーとなった。それから十数年、3人の子どもたちはユリ子さんが地方で育ててきた。
>プライバシーの侵害では?
■2-3
「美裸ちゃんには、当時もうすぐ3歳になる息子がいました。同じ男の子の母親として、うちの息子のことを『なんて優しいお兄ちゃんなの!うちの子もあんなふうに育ってほしい』と言ってくれていました。
料理や手芸の話も楽しかった。美裸ちゃんとのやりとりは短い期間ではあったけれど、まさにシスターフッドだったと思います」
>LINEもしくは電話/通話によるコンタクトのみで千葉さんとユリ子さんは直接対面で会ったことはなく、3週間程度の期間にもかかわらず非常に近しい存在のように書かれている。
ユリ子さんによれば、千葉さんは「とても共感性の高い人だった」という。千葉さんはA氏に対しても、かつての離婚時のことを「ユリ子さんに謝るべきだ」と説得したことから、十数年ぶりにA氏とユリ子さんが電話で話すという一幕もあった。
>A氏とユリ子さんの結婚生活はユリ子さんの状態もあり非常に困難なものだったことが語られていない。
ところが、千葉さんの様子が急変する。2022年11月23日、千葉さんから、A氏に「暴力」を振るわれたとのLINEが届いたのだ。
>「血だらけになった」は千葉さんが振り回した大型のカッターナイフにより深さ約1.5センチ、20針近く縫ったA氏の血であり、A氏はその事実を本記者に話したが、意図的にオミットされているのではないか。また、気絶した千葉さんを一人残して病院に行ったのは、千葉さんの行動が不安定で気絶しているうちにしか病院に行けなかったため。また、突発的な行動の多かった千葉さんから目を離すことができず、A氏は極度の不眠状態だった。A氏が病院に向かった後に千葉さんが目を覚まし救急隊員を家に呼んだが、千葉さんに外傷など認められなかったため救急隊は何もせず帰った。また、A氏は救急隊からの連絡を受け、処置を受けずにすぐに帰宅したことも記者に話したがオミットされている。このような前後の事実関係を、記事はすべてオミットし、「千葉さんを置き去りにした」という側面のみを作為的に前面に打ち出している。
ユリ子さんによると、A氏は概ね認め、深く反省している様子だったという。
>いつの話か分からない。記憶になく曖昧である。(A氏)
■3-1
ユリ子さんは、千葉さんにA氏と別れるよう助言したが、その後も千葉さんからはSOSが届いた。千葉さんは、自分が相談したことで、結果的にユリ子さんの息子をも傷つけてしまったと自分を責め、心を痛めていた。そうした中で、事態は混迷を深めていく。
>死因の特定に誘導しているように見える
ユリ子さんは訃報を聞いた数日後、A氏が運営する会社の社員に宛てて、千葉さんの死の経緯を尋ねるメールを送っている。その時点では、自殺なのかどうかも分からず、ユリ子さんも混乱していた。
だが、ユリ子さんのメールを見たA氏は激怒したという。「お前は美裸の何を知ってる」「自分も死のトリガーに関わったことを自認しろ」などのメッセージがユリ子さんに届いた。
>A氏が加害をしたと読み取れる文面のメールを、A氏の会社の社員・関係者に宛ててユリ子さんが一斉送信した
>これに対してA氏が怒ったところユリ子さんから着信拒否された
■3-2
もちろん、人が自ら命を絶つにいたる要因は、多様で複雑だ。何が引き金になってしまったのかは、当人にしか分からない。自殺の原因を単純化して、一つの事象のせいにすべきではないということも付言しておきたい。
>ではなぜ書くのか?こうした「付言」などは、記事が公平を装うためのアリバイづくりとして機能させているのでは?
A氏は、千葉さんの死後も、「彼女の怒りを代弁している」として、精力的に性被害者の支援活動や、告発された側の追及を行っている。
>「彼女の怒りを代弁している」は切り取りでは?
千葉さんは持病による苦しみも抱えていた。
>A氏が梅本記者に答えたことだが、病歴を公にするのはプライバシーの侵害では。遺族に取材もせず、一方的に故人のプライバシーを暴露したことにより千葉さんの遺族は大変な怒りを覚えている。遺族にさらなる苦痛を与えた記者が、千葉さんに対し「心から哀悼の意を表します」(5-3)などとの一文で記事を締めくくることは控えてほしい。
■3-3
千葉さんのLINEにあった「血だらけになった」ということについては、事実ではないと答えた。A氏はこう話した。「それが暴力だと言われたらそうかもしれませんが、自分から手をあげたことはありません。彼女が気を失った隙に病院に行ったのも事実ですが、気を失うことは結構頻繁にあって、僕もその時、2日間くらい寝させてもらえない状態だったんです。自分も追い詰められていました」
>千葉さんのLINEの文面にある「投げ飛ばされて、床に頭打って、気絶、血だらけになった。」の「血だらけになった」のは千葉さん本人ではなく床やテーブルのことであるが、千葉さん本人が血だらけになった前提で記事が書かれている。また前述のようにA氏の血液によるものであったことはどこにも書かれていない。千葉氏の要請で駆けつけた救急隊が処置を行わず帰ったことや通報を行わなかったことからも、千葉さんがA氏ともみ合いになったことで目に見えるような負傷をしていなかった事は明らかである。また前述の通り、病院より傷の手当てを受けずに急ぎ帰宅したA氏は救急隊員から千葉さんへの処置の必要は無いと口頭で説明を受けている。
11月に千葉さんがユリ子さんと連絡をとるようになってから、A氏の過去のプライベートな事情を知ったことで千葉さんの精神状態が悪化した――そうA氏は言う。それが先のユリ子さんに送った「自分も死のトリガーに関わったことを自認しろ」というメールに込められた意味なのだろうか。
>梅本記者の憶測である
■3-4
「まずは被害者の声を聴けよ」「加害者の言い分のみを鵜呑みにするな」ということは、A氏や「なくす会」自身が世の中に訴えつづけてきたことだったはずだ。
>「被害者」「加害者」という単語が急に出てきたが、この文中において「被害者」「加害者」とは誰であるのか全く不明。「なくす会」の活動に当てこするために、意図的に「被害者」「加害者」という、本来ならば極めてデリケートに扱うべき単語を、ここに持ってきたとの疑いがある。つまり印象操作ではないか。
>これが「なくす会」が9月に発表した声明文からの引用だとするのであれば、そこにおける「加害者」とは、「性暴力の"加害者"」を指す。したがって、この記事における「被害者」「加害者」の用法はひどく暴力的であり、極めて不当である。
取材の最後に、被害者を支援する立場にあるA氏が、被害当事者と交際するということを、どう捉えているか?と尋ねた。
>記者自身、交際開始当時のA氏と千葉さんの関係性が、「交際開始時点においては「被害者と支援者」という関係性は明確ではなかったかもしれない」と記しているが、当時のA氏は支援者とは言えない。映像業界の性暴力について告発する側に立っている立場にあり、要は告発者である。記事では一貫して、無理矢理に権力勾配の中で生まれた恋愛関係だとしたいように見える。まるで立場を利用して交際をA氏から無理矢理迫ったかのような印象を与えているのは事実とは異なり極めて不当。
>また、当会は被害者支援を目的とした団体ではない。被害当事者からの相談に対しても、専門家でないことから「個人の問題を解決することは私たちにはできない」という返信をしている。この団体はそもそも声明を出すために集まった集団であり、会則も無い。(グラウンドルールはある)。会に対する事実誤認である。
>一般論に対する質問か個人的な質問かをあえて混同しているようにとれる
A氏への取材は、3時間以上に及んだ。A氏の話から、千葉さんが訴えていたことの背景には複雑な事情があったことがうかがえるが、一方で、千葉さんのSOSを不問に付していいのか?という問題は残る。
A氏も「なくす会」も、千葉さんが遺した声にどう向き合うかが問われるのではないか。
>A氏や会が千葉さんからユリ子さんへの私信を知ることはできない。知りえない事柄を「不問に付した」と、表現するのは不当である。会が千葉さんの被害を無視したかのような言いがかりである。
>「遺した声」が公に書かれたSNSなどの投稿を指すのであれば、会員ではない千葉さん同様の、無数の被害者の声に対して会として可能な限り向き合ってきた事実がある。記事の結末に至るまで、記者はA氏もなくす会も知り得ない「SOS」に耳を傾けなかったという論法に終始するが、それ自体が故人に対する冒涜であり、A氏となくす会に対する悪しき印象操作である。
■4-1
業界の性被害を告発した被害当事者と、支援者という関係性にあったからだ。
>前述のように「被害者と支援者」という関係性ではなく事実誤認である
交際開始時点においては「被害者と支援者」という関係性は明確ではなかったかもしれない。
(中略)
そのため少なくとも現時点においては、支援者としてのモラルが求められるのではないだろうか。
>このような予防線を張りつつ、この後の専門家のコメントで個人の話から一般論にすり替えられ印象操作がなされている
>過去の事象と現在の時制が混同されており卑怯である。
しかし、千葉さんが亡くなった後も、A氏は「なくす会」の前面に立って活動を続け、記者会見など公的な活動を行っている。メディアにも支援者としてたびたび取り上げられ、A氏に寄せられた被害の告白件数は30件以上との新聞報道もなされている。
>個人が特定できる表現でありプライバシー侵害の可能性が高い。実際にSNSではすでにA氏を特定する言動が見られることからも明らか。
また、A氏によれば、2人が交際していたことは「なくす会」のメンバーも知っていたというが、会としての見解も問われるのではないだろうか。
>A氏は梅本記者の取材において一部のメンバーがA氏と千葉さんの個人的な関係性について知っていると答えたが、一部のメンバーが知りえたとしても、会としてメンバーの個人的な事柄は共有しておらず、当然両者の関係性を会としては認識はしていなかった。しかし、本稿ではあたかもなくす会が被害当事者の声に耳を塞いだ、隠蔽したかのような印象を読者に与える原稿に仕立てあげており、悪質である。
■4-2
千葉さんやA氏の名前は出さず、詳細は伏せたうえで、あくまで一般論として、2人の識者に意見を聞いた。
>個人の問題から一般論にすり替えられ印象操作がなされている。上述の通り、A氏と千葉さんの「詳細」が一般論に該当しない事例であるにもかかわらず、識者の意見を列挙し裏付けとすることは端的に的外れであり、A氏と千葉さんおよびなくす会の名誉を毀損するものである。
■4-3
今回、千葉さんからの相談内容を情報提供してくれたユリ子さんは、A氏の元妻だ。通常の取材では、情報提供者が誰であるかは秘匿されるが、今回は事の経緯を鑑みて、元妻であることは明らかにせざるをえないと同意の上で、ユリ子さんは取材に応じてくれた。
ここで梅本記者とユリ子さんの、これまでの長い道のりを記したい。
>梅本記者と取材対象が旧知の間柄であることを秘匿することで中立を装い、一般的にビューの落ちる最後のページで関係性を明かすことでA氏および会に対する評価を不当に落とす意図がうかがえる。
■5-1
表沙汰にせずとも、A氏や「なくす会」の側で、内々にでも千葉さんのSOSに向き合い、何か対応してくれれば、それがいいと思っていた。
>同前
会としても私信やプライバシーを知ることはできず、よって知りえないSOSを不問に付すことはできない。会が千葉さんの被害を無視したかのような不当な印象操作である
■5-2
千葉さんが遺したSOSは、こうして、ほとんど取り合ってもらえないまま、ずっと置き去りにされてきた。このまま「なかったこと」にしていいとは思えなかった。
性被害の告発も、ユリ子さんに相談していた内容も、どちらも同じ千葉美裸さんの声なのに、なぜこんなにも受け止められ方に差があるのか。それが、この問題の核心なのではないかと、今、感じている。
>同前
会としても私信やプライバシーを知ることはできず、よって知りえないSOSを不問に付すことはできない。会が千葉さんの被害を無視したかのような不当な印象操作である
一方、近年では、社会運動や慈善活動など、いわゆる「よきこと」の中でも人権問題が起きていること、そして「よきこと」の名のもとに問題が埋もれがちであることも、注目されつつある。
>一般的なイシューを、記事の構成のため恣意的になくす会に当てはめて語り起こそうとしており、不当である。
■5-3
質問事項について
>梅本記者のストーリーに基づいた事実誤認を前提とした質問であり、答えるに値しない。それでもあえて個別に指摘するなら・・・
1)貴会では、映像業界における性暴力の被害当事者と支援者とが、共にメンバーとなり活動されておられます。A氏によると、A氏と千葉さんが交際していたことは貴会の他メンバーも知っていたとのことで、
>同前
A氏と千葉さんが交際していたことは、会全体としては「知らない」。
A氏と千葉さんの交際は、貴会の前身となるワーキンググループの活動が始まった時期に開始されており、その一事をもって強く非難されるようなものではないかもしれませんが、千葉さん亡き後も、A氏は貴会のいわば顔として、記者会見などの公的な活動をされており、同氏のもとへは被害告白が30件以上寄せられているとの新聞報道もあります。
貴会は被害者と支援者との関係性について、特に両者が恋愛関係になることについて、現在、どうお考えになりますか。
>前段部分について、前述のように実際には千葉さんとA氏は被害者と支援者ではなく、被害者と告発者であり事実誤認である。そのうえで「被害者と支援者との恋愛」という一般的な事象に紐づけられておりこの質問は印象操作である。また、被害告白が30件以上寄せられたのは会の発足以前にA氏が告発者として関わっていた事案に関してである。
(2)千葉さんがA氏から暴力を振るわれたと周囲に相談していたことは、貴会の一部メンバーには伝えられていたとの情報があります。
>伝えられていない。不正確な情報に基づく質問であり、これを公の記事として発表したことは非常に問題がある。
記事化すれば法的措置をとると、「なくす会」は言う。だが、他にどんな方法があるのか。どうすれば千葉さんの声が、かえりみられる日が来るのか。個人的に伝えても、正面から会に質問状を送っても、結局、「千葉さんはどんなことを相談していたの?」という目が向けられないことが、何より悲しかった。
繰り返しになるが、人が自殺に至る要因は多様で複雑であり、短絡化して決めつけることはしてはならない。問いたいのはむしろ、千葉さんが亡くなった後の2年間だ。深刻な訴えをしていた千葉さんの声に向き合わないまま、A氏が性被害者の支援者・代弁者として、フロントに立って公的活動を続けることに、問題はないのか。A氏も「なくす会」も、報道する側も、今からでも考えてほしい。
>ユリ子氏と記者の間だけで共有された「声」を知るよしもないA氏やなくす会が、千葉さんの声を黙殺したような悪質な印象操作である。
千葉さんがユリ子さんに吐露していた苦しみは、ただの男女間のいざこざとして片付けてしまって良いものではない。内容に一部誤りがあったとしても、無視して良いものではない。
>「男女間のいざこざ」は梅本記者の主観である。
千葉さんが私たちに遺した課題は、そのようなことだったのではないか。彼女の声に向き合い、それを教訓とすることが、せめてもの死者への敬意なのではないか。
>記者の知古であるユリ子氏の一方的な証言を基に、ご遺族への取材を行うこともなく思い込みと作為と恣意的操作に満ちた長大な原稿を世に出したこと自体、故人とご遺族への敬意を著しく欠いた行為である。