シリアに出張した6月初め、北部アレッポで日本語を学ぶ20~30代の大学院生らと話す機会があった。ある女性は「未来にわくわく、どきどきしている」と満面の笑みで語った。アサド前政権崩壊から半年が過ぎたが、喜びは冷めない。
前政権は2011年からの内戦で、ロシア軍とともにアレッポを激しく爆撃した。市街にはむき出しの廃虚が残る。独裁も長期に及び、盗聴や密告で民衆が不法に連行、拘束された。
院生たちの経験談で印象深かったのが、「日本語が身を守ってくれた」という話だ。「壁に耳あり、で前政権は批判するのがとても危険だった。だから私たちは、バッシャール(アサド前大統領)を、彼の特徴ある歩き方から『アヒル』などと呼び、日本語で批判していた。日本語なら盗聴されても理解できないと考えた」というのだ。
前政権の崩壊を受け、欧米は制裁解除に前向きだ。日本も一部の制裁を解除した。シリアでは「日本企業が進出するのでは」と期待する声も聞いた。
国によっては「日本企業がなく、日本語を学んでも就職に生かせず、メリットがない」といった声を聞くこともある。
シリアの治安は回復の途上にある。安全が確保され、遠く離れた「日本応援団」の願いがかなう日が来るよう願う。(佐藤貴生、写真も)