岡本 隆司教授、紫綬褒章を受章

2025年春の褒章受章者が発表され、教育・総合科学学術院の岡本 隆司教授が紫綬褒章を受章されました。

岡本 隆司 教授

1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科東洋史学博士後期課程満期退学。博士(文学)。宮崎大学助教授、京都府立大学教授を経て、2024年4月より教育・総合科学学術院教授。

専門は東洋史・近代アジア史。著書に『近代中国と海関』(大平正芳記念賞受賞)、『属国と自主のあいだ』(サントリー学芸賞受賞)、『中国の誕生』(樫山純三賞、アジア・太平洋賞特別賞受賞)、『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』、『倭寇とは何か』、『二十四史』など多数。

受章のコメント

東洋史の研究で受章することになりました。歴史はおなじみの教科・学問かもしれませんが、われわれは今の自分という立場でしか、過去の事実をみることができません。つまりおよそ日本の立場と欧米の見方でしか、歴史が書けないわけでして、そのままではアジアの歴史を、十分に正しく見て書いていないことになります。そのため、とくに日本の隣にある大国・中国の理解も容易ではなかったのです。

中国の歴史には、日本人・日本史では思いもよらないことが少なくありません。たとえば中国の税関を所轄した政府の官吏は、中国人ではなくイギリス人でした。そうでないと、密輸脱税がはびこるというのです。外国の関わる国境・貿易の管理を外国人に委ねるなんて、日本人には思いも寄りませんから、なぜそうなるのか、を考えてみました。その結果、日本や欧米とは国家・社会・経済の構造がまったく違っていて、税金の取り方、統治のしかたなど、想像以上に権力法令の及ばない領域があることが判明しました。同じ「税関」「属国」などの言葉でも、内実はかなり異なるばかりか、それが外交問題・国際問題に転化して、日本史を大きく動かしたことさえありました。そのいきさつとしくみを明らかにしてきた心算です。以上の貧しい知見をもとに、世界史の見なおしも試みてもいますが、まだまだわからないことはたくさんあります。これからも東洋史をみつめていきたいと思います。

かえりみまして、ひたすら目前に浮かんだ疑問を解くだけで、ここまで来たように感じます。それだけに今回の受章は、ほんとうに望外のことでした。やりたいことを存分にできるよう、自分を支えてくれている家族・師友のみなさんに感謝を捧げたいと思います。

箸本 健二 教育・総合科学学術院長のコメント

岡本隆司先生の紫綬褒章受章、まことにおめでとうございます。岡本先生の長年にわたる東洋史学への貢献が評価されたものであり、教育・総合科学学術院を代表し、また何より同じ社会科地理歴史専修に所属する同僚として、心よりお祝いを申し上げます。

岡本先生は、東洋史学、とりわけ中国の明代から民国までの時期(16 世紀から 19世紀)にわたる国家体制・社会経済・対外関係を中心とする歴史研究を重ねてこられました。岡本先生の手による膨大な研究成果は、『近代中国と海関』、『属国と自主のあいだ』、『中国の誕生』などの著作にまとめられ、その後の中国・東アジア認識に多大な影響を与える業績群として高い評価を得ています。

岡本先生の直近のテーマは、より長い時期からとらえた中国の国家体制の構造の理解や社会経済システムへの影響の把握と側聞しています。今後とも健康に十分に留意され、研究の進展と後進の育成とに邁進されることを願ってやみません。

春秋褒章について

科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方を対象とする紫綬褒章のほか、紅綬褒章、緑綬褒章、黄綬褒章、藍綬褒章があります。

 

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