岩手在住の女性Ａ様から「昨日、あまりにも悲観的になってしまい、占い師に電話相談しました。その人の声を聴いた時点で『あ、切りたい』と思ったのに、20分も話し、6,600円支払いました。辛い記憶を楽しい記憶に入れ変えておきますね、効果は二週間ほどで出ると思いますと言われました。どんなに情けなくても恥ずかしくても、話したい人と、話すべきでした！！圭吾さんと電話でお話ししたいと思っています。よろしくお願いします」とご連絡をいただいた。私の正しい使い方である。電話が繋がり、私は「俺の声は大丈夫ですか？無理な場合はすぐ切ってください」と言った。Ａ様は「大丈夫です！！」と言って泣いた。

Ａ様は「泣いたらスッキリしました」と言った。五秒で解決。俺は神。最終学歴は小卒で、かれこれ三十年くらい引きこもっているＡ様は「人に会いたくなって、人と会うのに最後は疲れて、どんどん声が聞けなくなって、現在の総理大臣が誰かもわかりません」と言った。その感覚はわかる。私も、人間と話したいと思うのだが、人間と話していても人間と話している気になれず、お前は人間じゃないと他人を断罪する日々だ。感覚的に、人間は総人口の一割もいない。あとは、人間の形をしたアンドロイドに見えるため、生きづらい。

Ａ様は「どうやって生きていこうって毎日考えている。やるんだったらやれ、やらないんだったら死ねみたいなのがある」と言った。その感覚はわかる。私も、どうやって生きたらいいのかわからない。同じことで、Ａ様は悩み、私は悩まない。最近、小学生の頃の自分を頻繁に思い出す。学校から帰り、カレーの匂いが漂っていると、それだけで狂喜乱舞し、母親から「今夜はカレーよ」と言われた日には、喜びを丸出しにして家の中を絶叫しながら駆け回った。あの頃の自分は輝いていた。今も、あの頃の自分が私の中にいる。小学生の私に、将来設計は皆無だ。何もわかっていないのに、わからないまま、楽しんでいた。私はきっとバカで、Ａ様はきっと賢いのだと思う。賢い人は、わかったつもりになる必要がある。皮肉を込めて「思想家ですね」と言ったら、Ａ様は「思想家になんかなりたくない！！」と言って泣いた。

Ａ様は「職人に憧れる」と言った。私は「引きこもりの人って安易に職人に憧れるよね」と、嫌なことを言った。Ａ様は「圭吾さんは、昨日はあれになりたいと言っていたのに、今日はまったく別のものになりたいとか言う。そういうところが好きだ」と言った。私は「全部だから」と言った。全部欲しい。全部やりたい。ラーメンは好きだけど、ラーメンだけになると嫌。一つだけは嫌。おいしいものを全部食べたい。今日は海賊。明日はスチュワーデス。なりたいものに全部なりたい。Ａ様は「そういう柔軟さや軽やかさが好きだ。私がやるとジメッとする。圭吾さんがやるとカラッとする」と言った。そして「やりたい気分ならやればいいし、やりたくない気分ならやらなければいいし、固定しないで、その日の気分でいろいろなことを決めてもいい気がしてきた」と言った。

Ａ様は「圭吾さんの声が心地よくて、いままでなんであんな声を聞けていたのだろうと思っています」と言った。それは、センサーがおかしくなっている証拠である。やっておいた方がいいことはやらない。聞いておいた方がいい声は聞かない。役に立ちそうなことを集めない。役に立たなくてもいいから、聞きたい声を聞きましょう。Ａ様は「私は聞きたくない声をいっぱい聞いていたんだなって思いました」と言って泣いた。まったくよく泣く女の子である。聞いておいた方がいい声は聞かない。役に立ちそうなことを集めない。役に立たなくてもいいから、聞きたい声を聞きましょう。ナイスセンサーでよろしくお願いします。体調不良のレスキュー隊長。男一匹、今日も寝る。