日本の学校は本当のことを教えていない
法学の授業だから、法律に関することなら何を話してもいいんです。憲法から民法、刑法まで話していくんですが、私はフランスからみた日本の話ばかりしていました。帰国したばかりで、いかに日本の憲法がおかしいか、法の下の平等がいかに認められていないかの実例をバンバン出す上に、ピルの話もするわけです。法律より雑談が多くて人気になってしまいまして、男子学生も多かったですよね。
当時日本では解禁されていなかったピルが、フランスでは市販でも1カ月分300円ほどで買えましたから、「フランスで大量に買ってきて渋谷あたりで、1箱1000円くらいで売りさばきたい」と冗談を言っていました。
なぜここまで学生の人気を呼んだのかというと、結局、日本の学校ではだれもこうした本当のことを教えてくれないからじゃないでしょうか。
「ピルを解禁したら少子化になる」の大ウソ
ピルを誰でも手に取れる世の中にしましょう。寝た子を起こすなというが、起こしているのは誰なのかを一度よく考えていただきたいと思います。当たり前にピルが処方されるフランスのほうが、ピルを出してもらえない日本より出生率が断然高いという皮肉な事実がそこにはあります。
ピルは1960年にアメリカで経口避妊薬として認められて以来、65年が経過し今や世界中の至るところで避妊法の主流となっています。世界で9000万人以上の女性がピルで避妊をしている状態で、西欧諸国では妊娠可能女性のおよそ30%がピルで避妊をしています。ピルを飲むか飲まないかは、女性の自己決定権、つまり、女性たち自身の選択の自由に任されているのです。
ところが、日本ではピルによる避妊は3%にも満たない状況です。中でも、中用量のプラノバールという緊急避妊薬は60年代後半に世界で用いられていたものでホルモン量も比較的多いのですが、現在の日本では月経異常などの治療用薬剤として認可されているものを、ピルとして代用しているんです。その結果、多くの日本人女性はピルに対してネガティブなイメージを持ち、副作用神話を作り出すことにつながってしまっています。
日本の避妊法は古色蒼然とした男性主導のコンドームに強く依存しており、家族計画についての鍵は男性が握っていることになります。ここでも、女性に自己決定権がないのです。しかも日本国内の女性において、2023年の日本の人工妊娠中絶件数は12万6734件、前年度から4009件増加していることを厚生労働省が発表しています。特に、未成年を中心とした若年層において、その数がコロナ禍以降増加傾向にあることが統計上明らかです。
中絶件数:12万6734件
10代合計:1万53件(前年比+484件、+5.1%)
※うち、19歳:4707件(最多)、18歳:2641件

