信心の濃い町――。創価学会の本部がある東京都新宿区信濃町は、信者らがそう呼ぶ特別な場所だ。
公明党は6月の都議選で、支持母体の創価学会の支援を受けたものの、その新宿区で議席を失った。
創価学会の池田大作名誉会長(故人)の出生地である大田区でも候補者が落選し、都議選では36年ぶりに全員当選を逃した。
「今までの学会ではあり得ないことが起きた」
複数の元学会員は驚きを隠さない。
盤石を誇ってきたかつての選挙を知る元学会員らの目に、都議選の結果はどう映ったのか。
土下座を繰り返した過去の都議選
「都議選は全国から学会員が応援に入る大事な選挙です」
半世紀前から約20年間、公明の選挙に携わった関西の元学会幹部の70代男性はそう語る。
公明が4月に発行したハンドブックには、参院選と都議選の立候補予定者がずらりと並ぶ。このハンドブックは全国の学会員らに配布されているといい、都議選が国政選挙と同等に重視されていることが分かる。
この男性によると、学会員の選挙活動は、組織内の票固めと、友人や知人に公明の候補者に票を入れるよう依頼する「F(フレンド)取り」の二つに大きく分かれる。
学会員でも選挙活動への力の入れようは温度差がある。
男性が活動していた当時、全国に張り巡らされた地区組織は、学会員の世帯構成を把握するとともに、個人を次のようにランク付けしていた。
A(普段から会合に参加し、F取りを積極的に行う人)▽B(会合には参加するが、F取りをしない人)▽C(会合に参加しない人)。
A、Bランクの人は票を見込めるが、Cランクの人は票を入れてくれるかどうか定かではない。
男性は20代の頃、都議選の票集めのため志願して夜行列車に乗り、東京都練馬区に入った。
その際に選対幹部から指示されたのは、…
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