フレメヴィーラ王国の王都、カンカネン。
そのカンカネンの中央にそびえ立つフレメヴィーラ王国の王城『シュレベール城』に
ヤントゥネン守護騎士団の生き残りとライヒアラ騎操士学園の
ライヒアラ騎操士学園の学園長であり、
「国王陛下、この者が我が孫、エルネスティ・エチェバルリア。そして、我が家に食客として招いております、鉄華d……」
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」
「三日月・オーガス」
オルガと三日月はラウリが国王陛下へ紹介しようとしたのを
それが良い事なのか、悪い事なのかは置いといて……。
「本日、こうして呼び立てたのには訳がある。此度の功績に対して、果たしてどれ程の褒賞を取らせるべきか、考えが浮かばなかった為だ。それで率直に聞こう。そなたら、何が欲しい?」
その国王の言葉に
《よお、坊主。欲しい物はあるか?》
《……バエル》
そう彼が欲する物は『バエル』それだけだった。
しかし、バエルをねだったところで意味はない。
これは彼にとって千載一遇のチャンスなのだ。
出来れば、この機を逃すと二度と手に入らない最高難易度の褒賞を得ようと
その間、オルガと三日月もそれぞれの思惑を頭の中に浮かべていた。
(王になる。地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ない俺たちのアガリじゃねぇのか)
(チョコレート)
時間にすればさほどの事なく、
彼は陛下に次のように伝えようとするが、オルガは自らの思惑をなんとかして叶える為、
「では、陛下にお願い致します。僕が今、一番欲しているのは知識……」
「待ってくれ……」
「
「何やってんだぁぁっ!」
「き、貴様っ!己が何を言っているのかわかっておるのか!?」
それもそのはず、
しかし、そんな事など露知らず、三日月はオルガとディクスゴード公爵の声の大きさに不快感を抱く。
「うるさいなぁ」
ピギュ
「チョコレート」
火星ヤシに飽きてきた三日月はオルガの胸ぐらを掴み、自らの好物の一つであるチョコレートをねだる。
「放しやがれ!」
しかし、オルガはチョコレートなど持ってはいない。
胸ぐらを掴んできた三日月を彼は無理やり引き剥がした。
すると三日月は懐から銃を取り出す。
「え"え"っ!?……すいませんでした」
殺されると直感で悟ったオルガは三日月に頭を下げるが……。
「謝ったら許さない」
「勘弁してくれよ……」
パンパンパン
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
オルガに希望の花を咲かせた三日月は
「っていうか、俺のおかげだよね?」
「勘違いしないで欲しい」
「あんた、倒してないでしょ~」
「ちゃんとレコーダーに残ってんだよ」
三日月やラフタ、アジーの言う通り、
「マクギリス、あんたが一人で褒賞を決めんのは筋が通らねぇ。だからよぉ……、火星の王n……」
パンパンパン
再び、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
次に三日月はその銃口を
「待って欲しい」
「受け取ってもらえないだろうか」
「……いいよー」
「ミカ、お前っ……!」
そんな彼らの漫才を間近で見た国王は我慢出来ないとはがりに破顔する。
「ふははははっ!!なんと馬鹿馬鹿しい!」
たまらず笑い続ける国王を貴族達が呆然と見やる。
その様子から付き合いの長いラウリは国王が本気で面白がっている事を感じ取り、胸を撫で下ろしていた。
「よかろう。その願い聞き入れた!『
「陛下!」
「ただし、
「それはどのようにお見せすれば良いのでしょう?」
「容易い事だ。実際に
それを聞いた
そして、こう宣言した。
「拝命致します。必ずや国王陛下のお目にかなう
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「という事で、良い
その翌日、ライヒアラ騎操士学園の中庭で昼食をとる
「「なりました!」じゃねーよ!いきなり国王陛下に直訴とかどういう事?お前も本当になんというかさー、もうちょっとこう順番にさ……」
野外演出の話を聞こうと思っていたバトソンは予想外の話の展開に驚きを隠せないでいた。
それに対し、三日月やキッド、アディはこう返す。
「仕方ないじゃん、チョコなんだから」
「仕方ねーだろ、エルなんだから」
「そうだよ、エル君なんだから」
彼らの言う通り、
「……まぁいいや、エルだし。で、どーすんだよ?
「バトソンの家で作れちゃったりしませんか?」
「んなもん無理に決まってんだろ!」
「じゃあ、当てはありませんね」
「おい」
全高およそ10メートル、金属と結晶と魔導の集合体たる
間違っても街の鍛冶屋で気軽に作れるものではない。
「どうしましょうか?」
「ねぇ、エル君。騎操士学科の工房は?」
「そうだよ、工房だ!こないだの戦いで
「なるほど、それは名案です!今日の放課後、早速向かいましょう!」
ライヒアラ騎操士学園はフレメヴィーラ王国で最大の規模を持つ学園施設である。課程として騎操士学科を擁し、
その工房に運び込まれた
「なんだ、こりゃ……」
彼は鍛冶師科の取りまとめにあたる生徒『ダーヴィド・ヘプケン』。他の生徒達から「親方」と呼ばれ、慕われるドワーフ族の生徒である。
そのダーヴィドの目の前にあるのは、先日の
「この機体の
「バエルを手に入れた私はそのような些末事で断罪される身ではない」
グゥエールの残骸を手に取り、破損状況を確認するダーヴィドの隣に突如、現れた銀髪の小柄な美少年──
「何だと!?」
「すいません親方……じゃなくてダーヴィド先輩!」
バトソンが
しかし、ダーヴィドは彼から出た『バエル』という単語に興味を示す。
(……そういや、さっき呼び出したグゥエールの
そう思考したダーヴィドは彼らを引き留める。
「待て!そのバエルとやらについて詳しく聞かせて貰おうか。それとこの
ダーヴィドがグゥエールの破損状況をディートリヒに確認したが、答えが得られなかったのはその為だ。
結局のところ、
そうして、
「……すまんが、もう一度言ってくれ」
「はい。ですから……」
「三百年の眠りから、マクギリス・ファリドの下にバエルは甦った!」
「いや、バエルじゃなくて、その次に言った
「ああ、そちらですか。僕の体格上
「はぁ……」
「もう、エル君……」
「…………百歩譲って、そいつはまぁいい。で?それとグゥエールが自壊してるのとはどういう関係があるんだ?」
「
「つまり、昔俺がバルバトスの鎖を外してやったのと同じってこと?」
「三日月君の言う通りです。ガンダム・フレームは阿頼耶識システムの関係上、
「今の言葉に間違いないか?グゥエールの
その
グゥエールの破損状況を確認する為、ダーヴィドが呼び出したディートリヒだったが、彼は「わからない」と言ってこの工房の会議室の隅っこに
そこで八方塞がりになっていたダーヴィドと
何故、ディートリヒはこのような状態になっているのか。それは
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「ぎゃああああああ!」
「あっ、おはようございます先輩。今は戦闘中なので、出来ればお静かにお願いしますね」
「お前っ!なんてことを、正気なのか!?いや、そもそもなぜ戦っている!?」
「私の言葉はアグニカ・カイエルの言葉」
「はぁ?」
「バエルは甦った!」
「【バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル…………】」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ああ……、彼の言う通りだ」
「話を戻すが、つまり坊主が本気を出せば、どんな機体でもぶっ潰れちまうって事か」
「バエル以外ならば、その可能性が高いですね。なので、僕は一刻も早くバエルを手に入れる必要があるのです!」
「バッカ野郎!一体どんな対策を取れって言うんだよ」
「バエルを手に入れれば全て解決します」
「そのバエルとやらはどこにあるんだってんだ!?」
「まぁまぁ、ダーヴィド先輩落ち着いて……」
そんな時、工房に鉄華団がやって来た。
「邪魔するぜ~」
「仕事中すまねぇが、おやっさんはいるか?」
「私達のモビルスーツは
「何やってんだ、ミカァァッ!」
「オルガ、それにユージンとアジーも。どうしたの?」
工房にやって来たオルガ、ユージン、アジーに
「要は
「あん?
「あぁ、少し言葉が足らなかったね。耐久性を上げるとは言ったけど、
「正直、ピンときませんね」
「要は使い方さ。こんなのはどうだい?」
アジーが提案した方法は、
さらに編み込む事で繊維を直線的に使うよりも長い収縮距離を確保出来、出力の増大へも繋がる。
「……名付けるなら、
この
「んじゃあよ、俺もちょっと考えてた事があんだか……」
アジーの対策案が通った事を理由にユージンも前々から気になっていた事を彼らに伝える。
「人型の
こうして鉄華団はP.D.世界の技術を提供して、新たな計画をいくつも打ち出し、学園全体を巻き込み始めた。
実験中の事故で何度もオルガの希望の花を咲かせ続けながらも、研究と失敗、改良を繰り返して、半月後、ついに改良型
「やれやれ、ただの模擬試合だと言うのに……お祭り騒ぎじゃないか」
そう呟きを漏らしながら、テレスターレと対峙する白き
「今さらやめるなんて言わないでよ!」
張り切った声でそう言うテレスターレの
彼女は
「ヘルヴィもエドガーも準備はいいな!じゃあ、始め!」
その合図と同時に飛び出したのは、ガンダム・グシオンリベイク・アールカンバーでもテレスターレでもなく────ガンダム・バルバトスであった。
「ミカ、お前っ!」
「おい、オルガ!なんで三日月が乱入してんだよ?」
「勘弁してくれよ……」
「それは私から説明しよう」
模擬試合を見ていたオルガとユージンの会話に割って入ったのは
「三日月・オーガスが
「アグニカ?」
「その力を再び見せて貰いたいのだ」
「だから、ミカを模擬試合に乱入させたって事か」
その問いに首を縦に振った
そして、模擬試合はガンダム・バルバトスの圧勝で終わった……。
そして、その日の夕刻。反省回が行われた。
「お前達のおかげで、新型機テレスターレは無事、試運転を終えた」
「ヘルヴィ、なんか……ごめんな」
オルガに散々怒られた三日月はヘルヴィにそう謝る。
その様子を見てダーヴィドは一度、咳払いをしてから話を戻す。
「まぁ、それはそれで、とにかく今日は……」
「今日はとことんまで行くぞーー!」
ダーヴィドの前置きが長いと感じたオルガが強引に回の始まりを告げる。
「「「「「「
その反省回の後、オルガは飲み過ぎで嘔吐し、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「お呼びでしょうか。お父様」
「お前達はエルネスティ・エチェバルリアと友人らしいな。国王陛下が彼の事をいたく気に留めておいでだ。エルネスティが何かしら成果を上げるような事があれば、私に知らせて欲しいのだ。先んじて陛下のお耳に入れたい」
「それって、エル君のためになることですか?」
「無論だ。だが、この事はエルネスティには伝えずとも良い。彼の使命の妨げとなってはいけないからな」
「わかりました。お父様」