異世界オルガ   作:T oga

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ナイツ&オルガ3

フレメヴィーラ王国の王都、カンカネン。

そのカンカネンの中央にそびえ立つフレメヴィーラ王国の王城『シュレベール城』にエルネスティ(マクギリス)達はやって来ていた。

 

ヤントゥネン守護騎士団の生き残りとライヒアラ騎操士学園の騎操士(ナイトランナー)達の叙勲式にエルネスティ(マクギリス)達(エルネスティ(マクギリス)とオルガ達『鉄華団』と石動、そしてタービンズの二人の計九人)も呼び出されたのだ。

 

ライヒアラ騎操士学園の学園長であり、エルネスティ(マクギリス)の祖父でもあるラウリ・エチェバルリアが此度の陸皇亀(ベヘモス)討伐の功労者であるエルネスティ(マクギリス)と鉄華団を紹介する。

 

「国王陛下、この者が我が孫、エルネスティ・エチェバルリア。そして、我が家に食客として招いております、鉄華d……」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「三日月・オーガス」

 

オルガと三日月はラウリが国王陛下へ紹介しようとしたのを(さえぎ)り、自ら挨拶をする。

 

それが良い事なのか、悪い事なのかは置いといて……。

 

 

「本日、こうして呼び立てたのには訳がある。此度の功績に対して、果たしてどれ程の褒賞を取らせるべきか、考えが浮かばなかった為だ。それで率直に聞こう。そなたら、何が欲しい?」

 

その国王の言葉にエルネスティ(マクギリス)は生前の記憶を思い出す。

 

《よお、坊主。欲しい物はあるか?》

《……バエル》

 

そう彼が欲する物は『バエル』それだけだった。

 

しかし、バエルをねだったところで意味はない。

 

これは彼にとって千載一遇のチャンスなのだ。

出来れば、この機を逃すと二度と手に入らない最高難易度の褒賞を得ようとエルネスティ(マクギリス)は深く、深く考えこむ。

 

その間、オルガと三日月もそれぞれの思惑を頭の中に浮かべていた。

 

(王になる。地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ない俺たちのアガリじゃねぇのか)

(チョコレート)

 

時間にすればさほどの事なく、エルネスティ(マクギリス)は思考から浮上する。

 

彼は陛下に次のように伝えようとするが、オルガは自らの思惑をなんとかして叶える為、エルネスティ(マクギリス)の言葉を止めようとする。

 

「では、陛下にお願い致します。僕が今、一番欲しているのは知識……」

「待ってくれ……」

幻晶騎士(シルエットナイト)の心臓部『魔力転換炉(エーテルリアクター)』の製法に関する知識にこざいます!」

「何やってんだぁぁっ!」

「き、貴様っ!己が何を言っているのかわかっておるのか!?」

 

エルネスティ(マクギリス)の願いを聞いたディクスゴード公爵が混乱のあまり激昂する。

 

それもそのはず、幻晶騎士(シルエットナイト)魔力転換炉(エーテルリアクター)の製法は一般には流布していない国家の秘事であったからだ。

 

しかし、そんな事など露知らず、三日月はオルガとディクスゴード公爵の声の大きさに不快感を抱く。

 

「うるさいなぁ」

 

ピギュ

 

「チョコレート」

 

火星ヤシに飽きてきた三日月はオルガの胸ぐらを掴み、自らの好物の一つであるチョコレートをねだる。

 

「放しやがれ!」

 

しかし、オルガはチョコレートなど持ってはいない。

胸ぐらを掴んできた三日月を彼は無理やり引き剥がした。

 

すると三日月は懐から銃を取り出す。

 

「え"え"っ!?……すいませんでした」

 

殺されると直感で悟ったオルガは三日月に頭を下げるが……。

 

「謝ったら許さない」

「勘弁してくれよ……」

 

パンパンパン

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

オルガに希望の花を咲かせた三日月はエルネスティ(マクギリス)にこう問う。

 

「っていうか、俺のおかげだよね?」

「勘違いしないで欲しい」

「あんた、倒してないでしょ~」

「ちゃんとレコーダーに残ってんだよ」

 

三日月やラフタ、アジーの言う通り、陸皇亀(ベヘモス)を最終的に倒したのは彼のガンダム・バルバトスの活躍によるところが大きい。

エルネスティ(マクギリス)はディートリヒのグゥエールを強奪し、バエルと偽り、無理な機動をして破壊させただけである。

エルネスティ(マクギリス)が一人で褒賞を決めるのは間違っている。復活したオルガがエルネスティ(マクギリス)にこう言った。

 

「マクギリス、あんたが一人で褒賞を決めんのは筋が通らねぇ。だからよぉ……、火星の王n……」

 

パンパンパン

 

再び、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

次に三日月はその銃口をエルネスティ(マクギリス)へと向ける。

 

「待って欲しい」

 

エルネスティ(マクギリス)はそう言って、ポケットの中に入っていたチョコレートを差し出す。

 

「受け取ってもらえないだろうか」

「……いいよー」

「ミカ、お前っ……!」

 

 

そんな彼らの漫才を間近で見た国王は我慢出来ないとはがりに破顔する。

 

「ふははははっ!!なんと馬鹿馬鹿しい!」

 

たまらず笑い続ける国王を貴族達が呆然と見やる。

その様子から付き合いの長いラウリは国王が本気で面白がっている事を感じ取り、胸を撫で下ろしていた。

 

「よかろう。その願い聞き入れた!『魔力転換炉(エーテルリアクター)』の製法、教えてやらん事はない!」

「陛下!」

「ただし、陸皇亀(ベヘモス)ごときでは国家の秘事に釣り合わん。『魔力転換炉(エーテルリアクター)』の製法を得て、それを活用出来るという証を見せよ!」

 

エルネスティ(マクギリス)の表情が怪訝なものへと変化する。そして、ゆっくりと彼は国王にこう問いた。

 

「それはどのようにお見せすれば良いのでしょう?」

 

エルネスティ(マクギリス)と国王の視線が絡む。

 

「容易い事だ。実際に幻晶騎士(シルエットナイト)を作ればよい!炉を除き、おぬしの思う最高の幻晶騎士(シルエットナイト)筐体(きょうたい)を作りあげてみせよ!」

 

それを聞いたエルネスティ(マクギリス)はゆるりと笑い、その可憐な表情の中に獲物を見つけた肉食獣のそれを含ませる。

 

そして、こう宣言した。

 

「拝命致します。必ずや国王陛下のお目にかなう幻晶騎士(シルエットナイト)を作り上げる事をバエルとアグニカ・カイエルに誓いましょう」

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

「という事で、良い幻晶騎士(シルエットナイト)を作り、陛下にお見せする事になりました!」

 

その翌日、ライヒアラ騎操士学園の中庭で昼食をとるエルネスティ(マクギリス)はバトソン・テルモネンにこう告げた。

 

「「なりました!」じゃねーよ!いきなり国王陛下に直訴とかどういう事?お前も本当になんというかさー、もうちょっとこう順番にさ……」

 

野外演出の話を聞こうと思っていたバトソンは予想外の話の展開に驚きを隠せないでいた。

それに対し、三日月やキッド、アディはこう返す。

 

「仕方ないじゃん、チョコなんだから」

「仕方ねーだろ、エルなんだから」

「そうだよ、エル君なんだから」

 

彼らの言う通り、エルネスティ(マクギリス)の行動は大半が突拍子のない事なのだ。いちいちツッコミを入れていては疲れるとばかりにバトソンは大きく息をついた。

 

「……まぁいいや、エルだし。で、どーすんだよ?幻晶騎士(シルエットナイト)を作るっていったって当てはあるのか?」

「バトソンの家で作れちゃったりしませんか?」

「んなもん無理に決まってんだろ!」

「じゃあ、当てはありませんね」

「おい」

 

全高およそ10メートル、金属と結晶と魔導の集合体たる幻晶騎士(シルエットナイト)。技術や材料以前の問題として、その製造には専用の施設が必要だ。

間違っても街の鍛冶屋で気軽に作れるものではない。

 

「どうしましょうか?」

 

エルネスティ(マクギリス)がそう言うと、アディがこう言った。

 

「ねぇ、エル君。騎操士学科の工房は?」

「そうだよ、工房だ!こないだの戦いで幻晶騎士(シルエットナイト)がいっぱい壊れたんだろ?だったら今修理の真っ最中だと思うし、見学させてもらえばいいんじゃね」

「なるほど、それは名案です!今日の放課後、早速向かいましょう!」

 

 

ライヒアラ騎操士学園はフレメヴィーラ王国で最大の規模を持つ学園施設である。課程として騎操士学科を擁し、幻晶騎士(シルエットナイト)を運用しているこの学園には当然の事ながら、幻晶騎士(シルエットナイト)を整備する為の施設がある。

金属内格(インナースケルトン)外装(アウタースキン)といった金属部品を加工する鍛冶場や結晶筋肉(クリスタルティシュー)を接続し、全身の組み付けを行う作業場等を合わせたこの施設は『工房』と呼ばれていた。

 

その工房に運び込まれた幻晶騎士(シルエットナイト)の残骸を見て、鍛冶師科のとある生徒がこう呟いた。

 

「なんだ、こりゃ……」

 

彼は鍛冶師科の取りまとめにあたる生徒『ダーヴィド・ヘプケン』。他の生徒達から「親方」と呼ばれ、慕われるドワーフ族の生徒である。

 

そのダーヴィドの目の前にあるのは、先日の陸皇亀(ベヘモス)との死闘で完全なるスクラップと化したグゥエールであった。

 

「この機体の結晶筋肉(クリスタルティシュー)は先月新品にしたばかりだ……。どんな使い方をしたら、こんな有り様になる……?」

「バエルを手に入れた私はそのような些末事で断罪される身ではない」

 

グゥエールの残骸を手に取り、破損状況を確認するダーヴィドの隣に突如、現れた銀髪の小柄な美少年──エルネスティ(マクギリス)がそう言った。

 

「何だと!?」

「すいません親方……じゃなくてダーヴィド先輩!」

 

バトソンがエルネスティ(マクギリス)の口を塞ぎ、鍛冶師科の生徒達の邪魔にならないよう引き摺っていく。

 

しかし、ダーヴィドは彼から出た『バエル』という単語に興味を示す。

 

(……そういや、さっき呼び出したグゥエールの騎操士(ナイトランナー)のディートリヒも「バエル」やら「アグニカ」やらと口にしてたな……。あの男はそれ以外何も語らんし、この銀色坊主なら何か知ってるかもしれんな)

 

そう思考したダーヴィドは彼らを引き留める。

 

「待て!そのバエルとやらについて詳しく聞かせて貰おうか。それとこの幻晶騎士(シルエットナイト)がこんな有り様になった理由についてもな」

 

 

 

エルネスティ(マクギリス)がグゥエールを操り、陸皇亀(ベヘモス)と戦ったあの時、ディートリヒはその操縦を後ろから見ていた訳だが、彼はエルネスティ(マクギリス)が行った操作内容まで詳しく把握している訳ではない。

ダーヴィドがグゥエールの破損状況をディートリヒに確認したが、答えが得られなかったのはその為だ。

結局のところ、エルネスティ(マクギリス)の操縦は他人が見て理解出来る類いのものではなく、エルネスティ(マクギリス)自身が説明する他なかったのである。

 

そうして、エルネスティ(マクギリス)が説明を始めたまでは良かったのだが、間を置かずに様々な問題へと突き当たりまくっていた。

 

「……すまんが、もう一度言ってくれ」

「はい。ですから……」

 

エルネスティ(マクギリス)は両手を広げ、工房内に響き渡る大声でこう宣言する。

 

「三百年の眠りから、マクギリス・ファリドの下にバエルは甦った!」

「いや、バエルじゃなくて、その次に言った魔導演算機(マギウスエンジン)内の魔法術式(スクリプト)がなんだってとこだ」

「ああ、そちらですか。僕の体格上幻晶騎士(シルエットナイト)に乗っても操縦桿や(あぶみ)に手足が届きません。なので、魔導演算機(マギウスエンジン)内の魔法術式(スクリプト)を転写して、()()()()()()()幻晶騎士(シルエットナイト)を動かしたのですけど」

「はぁ……」

「もう、エル君……」

「…………百歩譲って、そいつはまぁいい。で?それとグゥエールが自壊してるのとはどういう関係があるんだ?」

魔導演算機(マギウスエンジン)の代わりをするという事はあらゆる安全装置(リミッター)を解除して操作出来るという事です」

「つまり、昔俺がバルバトスの鎖を外してやったのと同じってこと?」

「三日月君の言う通りです。ガンダム・フレームは阿頼耶識システムの関係上、安全装置(リミッター)を解除するとそれが自分にフィードバックされますが、幻晶騎士(シルエットナイト)の場合は魔力を使いすぎて構造強化を維持出来なくなり、自壊してしまったのです」

「今の言葉に間違いないか?グゥエールの騎操士(ナイトランナー)殿!?」

 

そのエルネスティ(マクギリス)の説明を聞いたダーヴィドは話し合いをしているこの部屋──会議室の隅っこで(うずくま)っているディートリヒに声をかけた。

 

グゥエールの破損状況を確認する為、ダーヴィドが呼び出したディートリヒだったが、彼は「わからない」と言ってこの工房の会議室の隅っこに(うずくま)り、「バエル」「アグニカ・カイエル」と呟くのみであった。

 

そこで八方塞がりになっていたダーヴィドとエルネスティ(マクギリス)達が出会ったのが先程のことだ。

 

何故、ディートリヒはこのような状態になっているのか。それはエルネスティ(マクギリス)の洗脳魔法を受けたからである。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ぎゃああああああ!」

「あっ、おはようございます先輩。今は戦闘中なので、出来ればお静かにお願いしますね」

「お前っ!なんてことを、正気なのか!?いや、そもそもなぜ戦っている!?」

「私の言葉はアグニカ・カイエルの言葉」

「はぁ?」

「バエルは甦った!」

 

「【バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル…………】」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ああ……、彼の言う通りだ」

「話を戻すが、つまり坊主が本気を出せば、どんな機体でもぶっ潰れちまうって事か」

「バエル以外ならば、その可能性が高いですね。なので、僕は一刻も早くバエルを手に入れる必要があるのです!」

「バッカ野郎!一体どんな対策を取れって言うんだよ」

「バエルを手に入れれば全て解決します」

「そのバエルとやらはどこにあるんだってんだ!?」

「まぁまぁ、ダーヴィド先輩落ち着いて……」

 

エルネスティ(マクギリス)の言葉にダーヴィドは口調を荒くし、彼のしでかした無茶にしきりに頭を振っている。

 

そんな時、工房に鉄華団がやって来た。

 

「邪魔するぜ~」

「仕事中すまねぇが、おやっさんはいるか?」

「私達のモビルスーツは幻晶騎士(シルエットナイト)と設計構造が違うから一応、説明しておきたいんだけど……って、何で、三日月とマクギリスがいるのさ?」

「何やってんだ、ミカァァッ!」

「オルガ、それにユージンとアジーも。どうしたの?」

 

 

工房にやって来たオルガ、ユージン、アジーに幻晶騎士(シルエットナイト)安全装置(リミッター)解除にも耐えられる対策案について聞くとアジーからこんな答えが返ってきた。

 

「要は結晶筋肉(クリスタルティシュー)の耐久性を上げればいいんだろう」

「あん?結晶筋肉(クリスタルティシュー)の耐久性を上げるだとぉ?」

「あぁ、少し言葉が足らなかったね。耐久性を上げるとは言ったけど、結晶筋肉(クリスタルティシュー)自体に手は加えないよ」

「正直、ピンときませんね」

「要は使い方さ。こんなのはどうだい?」

 

アジーが提案した方法は、結晶筋肉(クリスタルティシュー)の繊維を束ねて、()る事で『綱』としてから使う。というものだった。一本一本では脆弱な繊維も()り合わせて使う事で耐久性は向上する。

さらに編み込む事で繊維を直線的に使うよりも長い収縮距離を確保出来、出力の増大へも繋がる。

 

「……名付けるなら、網型(ストランドタイプ・)結晶筋肉(クリスタルティシュー)ってところかな」

 

この網型(ストランドタイプ・)結晶筋肉(クリスタルティシュー)は早速、修理中の幻晶騎士(シルエットナイト)全てに試してみる事に決まった。

 

 

「んじゃあよ、俺もちょっと考えてた事があんだか……」

 

アジーの対策案が通った事を理由にユージンも前々から気になっていた事を彼らに伝える。

 

「人型の幻晶騎士(シルエットナイト)には腕が二本だけしかねぇだろ?グシオンリベイクフルシティみてぇに補助腕でもつけりゃ、魔法による遠距離攻撃と剣での近距離攻撃を同時に出来て便利だと思うんだよ。なんでやらねぇのかなって……」

 

 

こうして鉄華団はP.D.世界の技術を提供して、新たな計画をいくつも打ち出し、学園全体を巻き込み始めた。

 

 

実験中の事故で何度もオルガの希望の花を咲かせ続けながらも、研究と失敗、改良を繰り返して、半月後、ついに改良型幻晶騎士(シルエットナイト)『テレスターレ』の試運転の日を迎えた。

 

「やれやれ、ただの模擬試合だと言うのに……お祭り騒ぎじゃないか」

 

そう呟きを漏らしながら、テレスターレと対峙する白き幻晶騎士(シルエットナイト)エドガー・C・ブランシュ(昭弘・アルトランド)の乗る『ガンダム・グシオンリベイク・アールカンバー』である。

 

「今さらやめるなんて言わないでよ!」

 

張り切った声でそう言うテレスターレの騎操士(ナイトランナー)はヘルヴィ・オーバーリ。

彼女はエドガー(昭弘)やディートリヒの同級生で密かにエドガー(昭弘)に恋愛感情を抱いていたのだが、最近転校してきたラフタ・フランクランドにエドガー(昭弘)を取られそうになり、焦っている恋する乙女である。

 

「ヘルヴィもエドガーも準備はいいな!じゃあ、始め!」

 

その合図と同時に飛び出したのは、ガンダム・グシオンリベイク・アールカンバーでもテレスターレでもなく────ガンダム・バルバトスであった。

 

「ミカ、お前っ!」

「おい、オルガ!なんで三日月が乱入してんだよ?」

「勘弁してくれよ……」

「それは私から説明しよう」

 

模擬試合を見ていたオルガとユージンの会話に割って入ったのはエルネスティ(マクギリス)であった。

 

「三日月・オーガスが陸皇亀(ベヘモス)を倒したその時、私はそこにアグニカ・カイエルの姿を見た」

「アグニカ?」

「その力を再び見せて貰いたいのだ」

「だから、ミカを模擬試合に乱入させたって事か」

 

その問いに首を縦に振ったエルネスティ(マクギリス)をオルガは勢い良く殴り付けた。

 

 

そして、模擬試合はガンダム・バルバトスの圧勝で終わった……。

 

 

そして、その日の夕刻。反省回が行われた。

 

「お前達のおかげで、新型機テレスターレは無事、試運転を終えた」

「ヘルヴィ、なんか……ごめんな」

 

オルガに散々怒られた三日月はヘルヴィにそう謝る。

その様子を見てダーヴィドは一度、咳払いをしてから話を戻す。

 

「まぁ、それはそれで、とにかく今日は……」

「今日はとことんまで行くぞーー!」

 

ダーヴィドの前置きが長いと感じたオルガが強引に回の始まりを告げる。

 

「「「「「「乾杯(プロージット)っ!!」」」」」」

 

 

 

 

 

その反省回の後、オルガは飲み過ぎで嘔吐し、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「お呼びでしょうか。お父様」

「お前達はエルネスティ・エチェバルリアと友人らしいな。国王陛下が彼の事をいたく気に留めておいでだ。エルネスティが何かしら成果を上げるような事があれば、私に知らせて欲しいのだ。先んじて陛下のお耳に入れたい」

「それって、エル君のためになることですか?」

「無論だ。だが、この事はエルネスティには伝えずとも良い。彼の使命の妨げとなってはいけないからな」

「わかりました。お父様」

 

 

 

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