それは
当然の如く
時に西方歴一二七四年。オルガ・イツカ、三日月・オーガスがエチェバルリア家の食客となって六年後の事である。
『ライヒアラ騎操士学園』の入学式は大講堂を包む初々しい緊張感の中で静かに始まった。
「君!入学式で何を食べとるんだね!」
「火星ヤシ」
「何だね、それは!没収する!」
パンパンパン
そして昼頃、入学式は終了し、大講堂の中から新入生達がぞろぞろと出て来て、彼らはそのまま学園の食堂へと流れ込んでいった。
その食堂で
黒髪をぼさぼさとゆるいウェーブで流し、肩丈にした双子の少年少女、アーキッド・オルターとアデルトルート・オルターである。
アーキッド達は以前魔法の練習をしていた
「ここいいか?」
「ええ、構いませんよ」
「いいよー」
「黒髪のお前、入学式で先生に向けてなんか魔法使ってたよな」
「
「ああ、それに銀髪のお前もいつも屋根の上をすげぇ早さで飛んでたヤツだよな。あれってよ、どうしてんのか、ずっと気になってたんだ」
「あ、ああ……。見られていたんですか……」
【
彼にとって日々の学びは全てアグニカ・カイエルとバエルに通ずる王道なのであった。
「あの魔法、俺たちにも教えてくれよ!」
「簡単に身に付くものではないですよ。まず本人の
「やるやる!任せな!すぐ追い付いてやるって」
「覚悟があるなら、教えるのはやぶさかではありませんが……」
「やったー!君可愛いのに頼りになる~!」
「その君というのはやめて頂けますか?僕はエルネスティ・エチェバルリア。エルと呼んで下さい」
「三日月・オーガス」
「んじゃ、俺もキッドでいいぜ!よろしくな、エル、三日月!」
「私もエル君って呼んでもいい?呼ぶわね?私のことはアディでいいから!でも本当に可愛いんだ~エル君。あっ、それと三日月君もこれからよろしくね!」
そして、今度こそは裏切らぬようにと心に誓うのだった。
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それから数日が経過したとある日の放課後。
学園内を楽しげな一団が駆け抜けていく。その一団の後方には一人だけ、大きく遅れてくる生徒がいた。
「ま、待て~!このヤロー!それ返せよ~!」
「新品の金槌なんて生意気だ!」
「そうだ、そうだ~!」
「ドワーフのクセに!」
それを目撃した
「どうしたんですか?」
「なんかあったの」
ドワーフ族の少年────バトソン・テルモネンの話によると、どうやら先ほど走り去った彼らはバトソンの足が遅いのを理由にいつも悪戯を仕掛けてくる者達らしい。
今回はバトソンが貯めたお小遣いで買った新品の金槌を盗って逃げているようだ。
そのバトソンがドワーフ族で
(ふむ、
「僕は
「「「ここまでおいで~!ノロマのバトソン!!」」」
バトソンの金槌を盗った悪戯っ子達はライヒアラ学園街の市街地の中央に位置する周りに建物のない大きな広場にいた。その広場はなんのひねりもなく中央広場と呼ばれている場所である。
「あいつら~!」
「二人とも行きますよ!これも魔法の訓練です!」
「「オッケー!」」
「「「【
小柄とはいえ筋肉質で重量のあるバトソンの身体が宙を泳ぎ、中央広場の清掃のアルバイトをしていたオルガを巻き込んで、悪戯っ子へバトソンの石頭が炸裂する。
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
勢いあまって壁に激突。悪戯っ子達はそのへんでのびたままだが、頑丈な身体を持つドワーフ族のバトソンと復活魔法【止まるんじゃねぇぞ……】を使えるオルガが真っ先に復活した。
「オルガ、こんなとこで寝たら風邪ひくよ」
「寝てねぇ、広場の清掃のバイト中だ……」
「お前ら何もんだ!?」
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」
街の中心地から少し離れたところ、住宅地ではなく商店が並ぶ区画。そこには周囲の建物よりも一回り大きな建物がある。外観を整えるよりも頑丈さを追求しているその建物は鍛冶屋である『テルモネン工房』だ。
バトソンに『テルモネン工房』へと連れてこられた
「つまりお前達二人とも、あいつから魔法を教わったのか?」
「そっ!大したもんだろ」
「こんくらい、なんてこたぁねぇ!」
中央広場の清掃のアルバイトを終え、
三日月は見栄を張るオルガの胸ぐらを掴む。
ピギュ
「すいませんでした……」
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それからまた数日後、入学して最初の『魔法学基礎』の授業が行われた。
記念すべき初回となるこの日の授業内容は、座学ではなく生徒達の魔法能力の測定だった。
先導する教師のあとについて、生徒達はがやがやと騒がしく運動場の一角へと集まった。
そこは壁に覆われた専用の魔法訓練場。日本の弓道場のように的がズラリと並び、その的へ生徒達が自分の得意とする魔法を撃ち込んでいく。
「【
【
入学当初から
「今年の生徒はなかなか粒揃いだねぇ」
「まことに」
「もっとも中には
教師から「自己評価の高すぎる」と言われている者の一人、三日月・オーガスはポケットから無造作に銃を取り出して的を撃ち抜き、
パンパンパン
そして、もう一人の「自己評価の高すぎる者」────
「先生!一つお願いがあります!」
「何かね、エチェバルリア君」
「もしこの魔法能力測定で授業内容を超える結果を出せたら魔法学基礎の受講を免除して頂けませんか?」
「……はぁ、エルネスティ・エチェバルリア君。どういうつもりだね?いきなり授業を拒否するのか?冗談にしてもたちが悪い」
「いいえ、いたって真面目な話です!僕には別に受けたい授業があります。だからこの授業を受けずに済むならとても助かるのです!」
「魔法学基礎を免除するという事はすでに君には中等部に匹敵するほどの
「もちろんです!」
「……よろしい。では見せてもらおうか、君の自信のほどを」
その言葉を聞いた
「ん?」
「なんだよ、あれ?」
「杖?」
「へんなの~」
「【
爆裂魔法を圧縮し作った炎の槍【
放たれた【
口を開けて驚愕する教師の方へと振り向き、
「それで先生、
初等科新入生が
だが、それは後にこのセッテルンド大陸で革命を起こす
三人称で書くの難しい……。
オルガの出番ほとんどないし……。