異世界オルガ   作:T oga

31 / 51
個人的にこの回が異世界オルガで一番好きかもしれない。


デスマーチから始まる異世界オルガ4

「ポチ、オルガがあの魔物を引き付けている間にヤツの側面から石を投げつけろ。石がなくなったらリザ達の元に戻れ」

「はい、なのです」

 

洞窟(どうくつ)を進んでいる途中で出会ったイモ虫みてぇな魔物を倒すため、サトゥーがポチに命令する。

 

その様子を見ていたミカが俺にこう質問した。

 

「俺は出なくていいの?」

「まだ、その時じゃねぇ。ミカの使いどころはちゃんと考えてある」

「そっか」

 

そうだ。ミカにはあの魔族が言っていた、ヤツの(あるじ)を倒してもらうっていう大事な役目がある。そのためにも、今は温存だ。

 

 

その前にまずは俺の仕事だな。

 

俺は無造作にイモ虫の前に出て、銃で牽制(けんせい)する。

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

俺がイモ虫を引き付けている間にポチはサトゥーの指示通り動き、石を投げつけた。

 

しかし、石はイモ虫に避けられ、俺に命中する。

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

イモ虫は石を投げたポチに反撃しようと毒液を放つが、サトゥーが素早く膝蹴(ひざげ)りをしたため、毒液の出る方向がズレた。サトゥーのその攻撃でイモ虫は倒れたようだ。

 

毒液がポチにかかることは回避出来たのだが、毒液に驚いたポチは慌てて、逃げ出してしまった。

 

「リザ、タマ、助けて、なのです~!」

「ポチ、止まれ!」

「はい」

 

慌てて逃げ出すポチをサトゥーが止める。

 

「止まるんじゃねぇぞ……」

 

俺がそう言うと再びポチは逃げ出す。

 

「助けて、なのです~!」

「ポチ、止まれ!」

「はい」

 

再び逃げたポチをまたサトゥーが止める。

 

「止まるんじゃねぇぞ……」

 

またポチは走り出す。

 

「うぇぇぇん~!」

「ポチ!」

 

サトゥーはまたも走り出したポチにダッシュで近づき、襟首(えりくび)を掴んで持ち上げた。

 

「ポチ、止まるんだ」

「なのです?」

 

ポチは止まったが、俺は止まらねぇ。

 

「俺は止まらねぇぞ!」

 

そうサトゥーたちに言い残して、俺は洞窟(どうくつ)の先を見に行くため走り続けた。

 

 

そして、その先の部屋でクモの魔物と(はち)合わせになる。

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

俺の放った銃弾でクモの魔物は撃退したが、魔物が死の間際に放ったクモの糸を受けて、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

止まらなかったオルガを追って、洞窟(どうくつ)を進むと、地面に白い粘糸(ねんし)が張られていた。

 

「ネチャネチャ~」

「足がくっつくのです」

蜘蛛(くも)の糸でしょうか?」

 

部屋に近づくほど厚みを増す蜘蛛(くも)の糸を、ポチとタマに小剣で切り開いて貰う。

 

そして入った部屋の入り口にはオルガが倒れていた。

 

「オルガ、なのです」

「だいじょぶ~?」

「こんな所で寝たら風邪ひくよ、オルガ」

 

部屋には(まゆ)のようなものがいくつかあり、その内三つの中には生存者がいるようだ。

 

「人が閉じ込められてる。手分けして助けるぞ」

 

 

復活したオルガも含めたオレ達で(まゆ)の中に閉じ込められている人達を助けた。

 

「助かったぞ。私は王祖ヤマト様の代から続く名家、ベルトン子爵家の当主をしている、ジン・ベルトンだ」

「助けてくれて、ありがとさんです。奴隷商人のニドーレンと言います」

「私は駆け出しの行商人、サトゥーと申します」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「オルガ・イツカだと……」

「は?」

 

ベルトン子爵がオルガの名前を聞いて、何故か驚いていたが、それについて(たず)ねる前に、最後の生存者とポチが言い争っている声が聞こえた。

 

「ちっ、獣人が触るんじゃねぇよ!その短剣を寄越(よこ)せ!」

 

そう言っている金髪の男には見覚えがあった。昨日、東街で(まき)を運んでいたポチを蹴り飛ばしたヤツだ。

 

「ダメなのです。この短剣はご主人様のなのです」

「なんだと!獣人が偉そうに!」

 

そう言えば、知らない間にオレの呼び方が若旦那様からご主人様に変わっている。

 

そんなことを考えていたら、オルガがポチの助けに入った。

 

「お前状況わかってんのか?その台詞(セリフ)を言えんのは、お前か、俺か、どっちだ?」

「は?わかんねーよ!とっとと助けろよ!」

「黙れ平民。それ以上騒いで魔物を呼び寄せるなら、我が炎で骨の芯まで消し炭にしてくれるぞ」

 

オルガの言葉を聞いてなお、立場を(わきま)えずにがなり立てる若者をベルトン子爵が一喝した。

 

若いのに大した迫力だ。やはり、普段から使用人に(かしず)かれている人間は違う。

 

その後、静かになった若者はニドーレンが救出した。

 

 

ベルトン子爵やニドーレン、金髪の若者と共に、この先にいる軍の集団と合流するため、洞窟(どうくつ)を進んでいると、前方の喧騒(けんそう)が聞き耳スキルで敏感になった耳に届く。

 

ゼナさんのいる軍の集団はどうやらスライムと交戦中のようだ。

 

「向こうで誰か戦ってるよ」

「せんと~!」

「タマと三日月さんの言う通り、なのです!あっちから戦う音が聞こえるのです!」

 

三日月やタマ、ポチにも聞こえたようで、音の方を指差して報告してきた。

 

オレはそれに頷き、ベルトン子爵達に先行する事を伝える。

 

「この先で誰かが戦ってるようです。我々が先行するので、皆さんは後方を警戒しつつ後を追って下さい!」

「行くぞ、サトゥー!」

 

オルガの声と同時にオレ達は駆け出した。

 

 

「ポチ、タマ、リザ!そっちは任せた!オレとオルガはゼナさんを助けに行く!」

「ミカもポチたちに付いてやれ!」

「わかった」

 

ポチ、タマ、リザ、三日月の四人に軍の人達を任せて、オレはオルガとゼナさんを助けに行く。

 

ゼナさんは負傷していないようだけど、魔力の残量が少ないから、心配なんだよ。

 

 

レーダーに表示されているゼナさんのマーカーを頼りに、スライムと混戦を続ける人達の間を駆け抜ける。

 

居た!視線の先に果敢に長杖(ちょうじょう)でスライムを殴るゼナさんの姿が見えた。

 

「サトゥー!杖で戦ってるっつうことは!」

「ああ、やっぱり魔力が枯渇(こかつ)してるんだ!」

 

遠距離からナイフを投げてスライムの核を狙おうかと思ったが、角度が悪い。下手したらゼナさんを傷つけてしまう。

 

……オレはオルガのカウンターを使う事にした。

 

 

ナイフを横で走っているオルガに投げる。

 

「う"う"っ!」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

オルガの銃弾がスライムの核を撃ち抜く。

 

「なんだよ……結構当たんじゃねぇか……」

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

ゼナさん、今行きます!

 

 

「大丈夫ですか?」

「さ、サトゥーさん!?」

 

ゼナさんはオレの顔を見ると、驚きの声を上げて抱きついてきた。

 

「サトゥーさん!よくぞ、ご無事で!」

 

そこまで親しい間柄でもないと思うんだが、可愛い女の子に抱きつかれるのは大歓迎だ。再会を喜んでいるのはオレも一緒だしね。

 

 

その時、兵士や商人達から歓声が上がった。どういう事だ?

 

「おい宝箱があるぞ!」

「おお!迷宮では時折、宝箱が湧くと言うぞ」

「俺だ!俺が見つけたんだ」

 

そんな浅ましい主張は、ヤツの声と共に悲鳴に変わった。

 

「ストリッパー!コンナに大勢でやってクるとハ、ワテクシ感激!」

 

宝箱の中からあの目玉の魔族が飛び出てきた。

 

「いないと思ったらミミックの真似事か!」

 

 

 

「総員配置に付け!円陣ではなく三方に陣取れ!ヤツは魔法を使うぞ!ベルトン子爵とゼナの二人は前衛に防御魔法を!」

 

軍の隊長さんが素早く陣形を指示する。魔力の回復したゼナさんが【風防御(ウインド・プロテクション)】や【気壁(エア・クッション)】の魔法を順番に展開していく。

 

「やはり出たか!魔族め!悪いが火魔法には守りの術は無い。【豪炎柱(ブラスト・ポール)】の魔法を使う。時間を稼げ!」

 

ベルトン子爵は防御魔法はないようなので、攻撃魔法の詠唱を始めた。

 

「人の魔法は遅い、ワテクシ退屈」

 

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

「【……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】【止まるんじゃねぇぞ……】【止まるんじゃねぇぞ……】」

 

数分の戦闘の末、オルガは数えきれない回数の希望の花を咲かせたが、ようやくベルトン子爵の詠唱が完了し、目玉魔族の下から炎が吹き上がった。

 

「魔族よ!いつまでも人族が貴族達に蹂躙(じゅうりん)されるだけの存在だと思うな!」

 

長杖(ちょうじょう)を構えて決めゼリフを言うベルトン子爵を嘲笑(あざわら)うように、目玉魔族は平気な様子で炎の中をヒラヒラ飛んでいる。

 

AR表示で「火魔法ダメージ75%カット」と出ているので、直前に防御系の魔法を使っていたんだろう。

 

アイツ自身も言っていたが、子爵が魔法を唱え始めてからでも対抗魔法が間に合うのだろう。

 

「熱い!アツい!素敵に熱い!ワテクシ常夏(とこなつ)

「なんっ、だと……!?中級魔法が効かない!?」

「ああ、ゼツボウが心地ヨイ!ワテクシ至福」

 

その様子を見たオルガがオレにこう言う。

 

「サトゥー!このままだと損害が出るのも時間の問題だぞ」

「わかってる!」

 

オルガの言う通りだ。ここは目立ってもいいから戦うべきだな。

 

 

その時だった。

 

「【光よ(ゆが)め、屈曲(くっきょく)の先導、インビジブル】!」

 

急にオレの体が透明化した。

 

「透明化じゃなくて、視覚の……。まぁいいわ」

「今の内に変装を!」

「モンターク商会で買った竜面(りゅうめん)があるはずだ」

 

そうだ、あの時買った竜面(りゅうめん)をつければ!……でも、この人達は?一人は三日月とオルガの知り合いの人だった……確か、マクギリス?他の人もオルガ達の知り合いなのか?

 

その疑問を問う前に白いコートの少年がこう名乗った。

 

「始めまして、サトゥーさん。僕は望月冬夜です」

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

「サトゥー!このままだと損害が出るのも時間の問題だぞ」

「わかってる!」

「【光よ(ゆが)め、屈曲(くっきょく)の先導、インビジブル】!」

 

その瞬間、サトゥーが消えた。……今、リーンの声が聞こえなかったか?

 

もし今のが本当にリーンの声ならもしかして…………よし、時間を稼いでやるか!

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

 

それから数分後、サトゥーが消えた空間から巨大な岩が飛んできて……希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

「騎士達よ、魔族の始末は任せろ!」

「ふざけるな!貴様らのような怪しげな仮面連中の手助けなどいらん!」

「貴方達は、一体?」

 

明らかにサトゥーの声だが、ジン・ベルトンもゼナも気付いていないようだ。

 

仮面を被ったサトゥーの他にあと二人、仮面の男たちがいた。……やっぱりな。

 

「ま、待ってくれ!」

「どうした、オルガ殿?」

「アイツらは俺の知り合いだ!」

 

そう言いながら、俺は仮面の男の一人、モンタークの仮面を被ったマクギリスを殴りつける。

 

「ははははっ、勇ましいな!」

「何やってんだぁぁっ!」

「久しぶり、オルガ」

 

そう言って、最後の一人が仮面を外す。仮面の下はやはり、冬夜だった。

 

「【ゲート】」

 

冬夜が【ゲート】を使うと、リーンを先頭に、エルゼ、リンゼ、八重、ユミナが【ゲート】の向こう側から現れた。

 

「っていうか、なんでいんの?」

 

ミカが冬夜たちにそう質問する。するとリーンが一から説明していった。

 

「ミスミドの西側にあるレレスという村から急使がきたの。数日前から空中に奇妙な亀裂があるってね。興味を持った私は、戦士団一小隊と共にその村に向かったわ。だけど、そこで見たのは潰滅(かいめつ)に追い込まれた村だった。魔物が村人たちを殺し、蹂躙(じゅうりん)の限りを尽くしている現場だったのよ。私と共にいた戦士小隊も戦ったのだけれど、歯が立たなかった。剣は通じず、魔法は吸収され、たとえ傷をつけられたとしても再生する……まさに悪夢だったわ。戦士たちは半数が再起不能、村は完全に潰滅(かいめつ)したわ。その魔物は村を滅ぼした事に満足したのか、空中の亀裂の中へと帰っていった」

「……俺たちはこの件とはもう無関係だ」

「ちなみにそこにいる魔族がその魔物よ」

「何っ!?」

「リーンからその話を聞いた僕たちはその魔物がこの世界の魔族だということを嗅ぎつけて、ここまで来たんだ。オルガは僕たちの世界にいるときに戦った山本完助って覚えてる?」

 

《御屋形様に刃を向けられないのは分かってるんですよぉ》

《なかなかやるじゃないですかぁ。だが、私にはまだこれがある!》

 

「ああ」

「あいつにアーティファクトを渡したのもあの魔族らしいんだ」

「何っ!」

 

ってことはあの魔族もあのアーティファクト……確か『不死の宝玉』だったか……それを持ってる訳か。

 

 

冬夜たちと話している最中に、目玉魔族がこちらに対し攻撃を仕掛けてくる。

 

「ワテクシを無視スルナ!ワテクシ不快」

 

そう言いながら、黒い光の玉を飛ばしてくる目玉魔族。その攻撃を難なく避けた冬夜がこう言った。

 

「何にしろ、この魔族は厄介だ。一気に始末した方が良さそうだな」

 

冬夜はそう言って、地面にあった小石を魔族に投げつける。

 

「えっ、エッ、エえェェぇぇ!」

 

その小石は尋常じゃないスピードで魔族に向かっていき、魔族の体を貫いた。

 

「ああ、人族に倒さレル?倒さレル!?ワテクシ無念」

「凄いな!このまま止めを……っ!」

 

サトゥーが止めを刺そうとしたその時、倒れた魔族を中心に黒い魔法陣が生まれる。そして、その魔法陣から湧き出すように漆黒の巨人が現れた。

 

「ギニャーーーー!あるじサマは魔王の側近!神にも近き、魔族の君主(デーモン・ロード)!」

「迷宮の設置とワガハイの召喚ゴクロウでアッタ、ワガハイ慰労(いろう)……シカシ、世界神の眷属を連れてキタのハ感心しナイ。ワガハイ立腹」

 

デーモン・ロードと呼ばれた魔族の(あるじ)は目玉魔族を掴みあげて、そのまま(かじ)り付いて食べ尽くした。

 

「雑魚共ヨ!恐怖せヨ!強者ヨ!立ち向かってくるがヨイ。ワガハイ選別」

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

「必ッ殺ッ!キャノンナックル!」

九重真鳴流(ここのえしんめいりゅう)奥義・龍牙烈斬(りゅうがれつざん)!」

「見せてやろう!純粋な力のみが成立させる世界を!」

 

冬夜君の仲間達に続いて、オレもアイテムストレージから聖剣を一つ取り出し、魔族の君主(デーモン・ロード)と対峙する。

 

ヤツは自分に立ち向かってくるオレ達の姿を(あざけ)るように睥睨(へいげい)するが、オレの持つ聖剣に気が付くと見下すような表情を改めた。

 

「まさか世界神の眷属の他に勇者もイルとハ。貴様も神の啓示を受けた者か?ワガハイ立腹」

 

その言葉を無視して、オレはヤツの足を斬る。しかしヤツの体力ゲージは全くと言っていいほど動いていない。

 

やっぱり『勇者』の称号がないと、聖剣は扱えないようだ。

 

「ドウシタ勇者?聖剣も(ろく)に使えヌのか?ワガハイ落胆」

 

……AR表示に「物理ダメージ90%カット」って出ているし、聖剣がダメなら後は魔法しか無いけど……。

 

「【……■■■ 気壁(エア・ハンマー)】!」

「【水よ来たれ、清洌(せいれつ)なる刀刃(とうじん)、アクアカッター】」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

「【……■■■■炎の槍(フレイム・スピア)】」

「【雷よ来たれ、白蓮の雷槍、サンダースピア】!」

「【■■聖なる槍(セイクリッド・ジャベリン)】」

「【光よ穿(うが)て、輝く聖槍(せいそう)、シャイニングジャベリン】!」

「ダインスレイヴじゃねぇか……」

 

皆が一斉に魔法(オルガは銃)を放つが、冬夜君の【シャイニングジャベリン】以外は吸収されてしまった。

しかも、魔法を吸収した瞬間に、何とか与える事が出来ていたダメージも全回復してしまった。

 

「世界神の眷属の魔法はナカナカだが、それ以外は惰弱(だじゃく)な魔法ダ!ワガハイ選別」

 

さっきからヤツが言ってる世界神の眷属ってのは何なんだ?冬夜君の事を言ってるんだろうけど……。

 

 

「魔法を吸収し、非常に硬い強度……なにか弱点はないのか?」

 

冬夜君が弱点が無いかを必死に考えている。確かに魔法は吸収して自らの体力に変えてしまうし、物理ダメージ90%カットの特殊効果もある。手の打ちようがない……。

 

オルガはいつまで三日月を温存するつもりなんだ?

 

「フッ……僕達の魔力を奪って再生か……」

「将棋か?」

「違います」

 

オルガは何を言っているんだ?何で今、将棋が出てくるんだよ……。

 

「まるで将棋だな」

 

えっ!?

 

「ほら、将棋じゃねぇか……」

 

意味がわからない……。

 

「……そうか、()を取れば!」

 

王って、魔核(コア)の事か?魔族も魔物同様に魔核(コア)を持ってるなら、それを砕けば、倒せるだろうけど、どうやって?

 

「【アポーツ】!」

「……何も、起きませんね……」

「は?」

「大きすぎてダメとか?」

「なるほど」

「勘弁してくれよ……」

 

よくわからないが出来なかったようだ。

 

「仕方ねぇな、【ミカァ!】」

「バルバトス、出るよ」

 

やっとオルガが三日月を召喚した。ここまでの流れは何だったんだ?漫才か?

 

 

 

召喚と同時にバルバトスルプスのツインメイスを投げつける。

 

「ぐぬぬウ、ワガハイ油断」

 

ダメージは与えられたが、決定打にはならない。魔王を倒すには、『勇者』の振るう聖剣が必要だ。

 

上級魔族は、魔王の側近にして()()()()()魔族の君主(デーモン・ロード)

 

だが、オレには聖剣はあるが、『勇者』の称号がない。だから有効打を与えられない。

 

いくら三日月のバルバトスが()()()()()くらい強くても……。ん?

 

「サトゥーさん、アイテムストレージから聖剣を全部出して貰えますか?」

「冬夜君!もしかしたら、なんとかなるかも!……って、えっ?」

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

ミカのバルバトスルプスがデーモン・ロードの攻撃を食らい、吹き飛ばされる。

 

「ミカァ!」

「大丈夫」

 

 

 

 

《俺は落とし前をつけにきた。最初にそう言ったよな?》

《待っ!!》

《パンパンパンパン》

 

>『神殺し(世界神)』の称号を得ました。

 

 

《竜を討った勇者か!ハッハッハッハ!久しぶりに血が(たぎ)るのう!》

 

>『勇者』の称号を得ました。

 

 

《でも聖剣に認められれば、青い輝きを放つ筈です》

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

「行くよ!ミカさん!」

「任せた、冬夜」

「【モデリング】!」

 

オレのアイテムストレージにあった何本もの聖剣を冬夜君の【モデリング】で一つにまとめ、巨大な聖剣を造り出す。

 

「ミカさん!」

「借りるよ」

 

冬夜君が作った巨大な両刃の聖剣……名付けるなら『セイクリッド・バスターソード』。それを三日月が受け取り、魔力を流したその瞬間、『セイクリッド・バスターソード』が青い輝きを放った。

 

「冬夜が作ったんだ、これなら……殺しきれる!」

 

三日月のバルバトスルプスは『セイクリッド・バスターソード』を水平に構え、そのまま突撃し、魔族の君主(デーモン・ロード)の胴を突き穿つ。

 

刺した所から黒い塵が吹き上がり、魔族の君主(デーモン・ロード)の体が崩壊していく。

 

「ナンダ、その剣は!?……ワガハイ……敗……北」

 

その言葉を言い終わるのを待って、黒い塵は(かすみ)のように透けて消えてしまった。

 

今ここに『鉄華団の悪魔』三日月・オーガスとバルバトスルプスの下に魔族の君主(デーモン・ロード)は討ち取られた。

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

ミカの活躍に周りの奴等は呆気にとられている。

 

「あれは……モビルスーツ、なのか?」

「バカな!『マクギリス・ファリド事件』は3万年前の出来事では無かったのか!?」

「あんな、古代兵器で……」

 

いくつか気になる台詞(セリフ)があったが、それよりまずは冬夜たちについてだ。

 

「お前ら、なんでこの世界にいるんだよ!?それにリーンたちは俺らの事は記憶から消えたって聞いたぞ!」

「それはワシが説明しよう」

「は?」

 

その台詞(セリフ)は空から聞こえた。

 

頭上を見上げると、まばゆいばかりの輝きに包まれて、一人の老人が降りてきた。

 

「神の爺さんじゃねぇか……」

 

 

 

 




次回の序盤、オリ展開になります。

あと、オルガーベイベーを書いて欲しいとリクエストを頂きましたが、私のノベライズ版ではなろう系アニメとのクロスオーバーだけ書く予定でいますので、申し訳ありませんがオルガーベイベーは書きません。


それと、転スラアニメ化決定しましたね!

転スラアニメ化を記念して、ニコニコ動画になろう作品のOP集を上げました。動画初投稿です。

音量調整が出来てないなどの至らぬ点もありますが、良ければ見てやって下さい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。