約20年前の話になりますが
当時の勤務先で企画・編集を担当した
『思いを伝えるために必要なこと』
という本があります。
著者はその当時
フジテレビの怪物番組と呼ばれた
『めざましテレビ』のチーフプロデューサー
五十嵐英次さん。
帯文の推薦は
人気作家の石田衣良さんにいただきました。
通常は帯推薦の謝礼を支払いますが
「五十嵐さんは盟友だから!」
と固辞されました。
2012年9月に
五十嵐さんは急逝してしまったので
これが最初で最後の著書ですが
私はいまも
たまにこの本を手に取ります。
妙に思い入れがあるんですよね。
五十嵐さんは親しい友人でありながら
ひとつ年上の兄貴分でした。
出会ったのは約30年前。
ファッション業界誌の編集部にいた私は
仕事の関係で交流があった女性たちに
下北沢での飲み会に誘われ
そこに五十嵐さんも誘われていました。
いまも忘れないのは
その場で彼と口論になったこと。
実につまらないことで。
なんだこいつと
まだ若かった私はムカつき
後日、仲良くなった五十嵐さんに聞くと
同じく「あの野郎」と思ったのだと。
どこか似ていたのでしょう。
五十嵐さんに最後に会ったのは
彼が亡くなる1週間前。
大井町でジャンボメンチカツを食べ
(ブルドッグって店)
別の店でお酒を飲みながら
お互い将来やりたいと考えてる話を
あれこれと交わしました。
その帰り道で私が言われたのは
「いつか本を出せよ」
というひと言。
「俺の本を出してくれたんだから
せっちゃんの本も読みたい」
これが彼との最後の会話でした。
なんであそこで
普段言わないようなことを言ったのか
いまも不思議です。
それから12年と4ヶ月が経った
先週金曜日(1/24)に
それが実現しましたが
五十嵐さんに読んでもらうことは
叶いません。
そんな五十嵐さんの唯一の著書
『思いを伝えるために必要なこと』
には
いま読み返しても刺さる箇所が
いくつもあります。
中でもこのくだりは
ぜひ大勢の方に読んで欲しいので
抜粋転載します。
・・・・・
どこの会社、組織でも、「これは私のミスです」と素直に言える人が少ない気がします。「自分がいかに間違っていないか」と懸命に理論武装する人は多いけど、それは何の解決にもなりません。
当然、私も間違えます。そのとき、それが日々の仕事の中でどんなに小さなことでも、「これは俺の判断ミスだ」と認めることにしています。会議のときにも素直に言います。
それが「責任を持つ」ということであり、スタッフを導くことにつながります。
ミスはミスですから、ではその責任は誰がとるのかというと、最終責任者が責任逃れしてしまえば誰も責任をとらなくなり、問題はそのまま放置されます。ミスをミスだと素直に認めなければ、「それはミスではない」ということに変化します。これが、テロップミスをしても「生放送なんだからたまにはあるさ」と考えてしまうことにつながり、ついには「たまには間違ってもいいんだ」と思い込んでしまう結果となるわけです。
(同書140、141頁より抜粋)
・・・・・
27日(月)の夜に放送された
フジテレビ「10時間会見」を見ながら
ふと、この箇所を思い出しました。
五十嵐さんはよく
「せっちゃん、俺が間違ってた!」
と口にしました。
見た目と口調はいかつい人でしたが
(ごめん五十嵐さん)
素直な人でした。
テレビの世界の人は
妙に計算高い人が多いのですが
そんな世界には珍しく
ストレートにぶつかってくる人でした。
だから小賢しい人や自分を隠す人を
彼は嫌ってました。
もし生きていたら
自局の不祥事会見をどう見たのかな?
本書に掲載された
五十嵐さんの言葉です。
「テレビには大きな力があります。その力を自分たちのために使うのではなく、なるべく多くの人のために使うのが、テレビマンとしての使命だと思います。」
フジテレビの関係者
ならびに
すべてのテレビマンに
この言葉を贈ります。
あ
『となりの小さいおじさん』も
どうぞよろしく!笑
書店にて絶賛発売中!