https://indeep.jp/people-without-amygdalas/
<転載開始>
扁桃体がない人間
結構以前から気になっていることに、特に若い人たちに、
「人間の均一化」
の雰囲気が漂っていることでした。
ずいぶん以前、「みんな同じなクローン社会に生きる」というようなタイトルの記事を書いたこともありましたが、日常のファッションや、好まれる音楽や映画やアニメなどが、どんどん均一化していっているように思っています。
もちろん、本人たちは「そうじゃない」と思っているのでしょうけれど、傍目から見れば、非常に均一化しているようには感じます。
そういう光景を見ていますと、世界経済フォーラムの顧問的存在のユヴァル・ノア・ハラリ氏の以下の言葉なども思い出します。
「人間は今やハッキング可能な単なる獣だ。人間に「魂」または「精神」があるという考えは終わった。人間が自由意志を持っているという考えはすべて終わった」
それでも、人間には個々に情緒、それは喜びも悲しみも恐怖も怒りなどもすべて含めてのものですが、それが確かにあります。これらの「人間らしさ」を作っていると言われる部分のひとつが、「脳の扁桃体」という部位だとされています。
最近、AI の Grok に、
「扁桃体は死者への思い出と関連しますか?」
という質問をしましたら、全文はこちらにありますが、「はい」という答えでした。
亡くなった人への感情や思い出、喪失感などを処理しているのが扁桃体だという答えでした。
さらに続けて、
「人間から扁桃体がなくなり、海馬だけの存在になれば、人間はAIのようになりますか?」
と聞きました。
AI ではなくて、「ロボットになりますか?」という質問でよかったのですが、相手が AI なので、AI として聞きました。
脳の海馬というのは、情報を保存し、また知識やスキルを学習し、それに基づく判断をするとされている部位で、いわゆる「脳」とだけ言うと、イメージ的には、この海馬を指すことが多いと思われます。
それで、先ほどの「扁桃体がなくなり、海馬だけの存在になれば、人間はAIのようになるだろうか」という質問に対して、Grok は、「基本的には、そのような性質が強くなる」と答えていました。
これも長い回答で、全文はこちらにありますが、冒頭は以下のようなものです。
Grokの回答:
人間から扁桃体がなくなり、海馬だけになると、確かに感情や本能的な反応が大きく減少し、記憶や情報処理に特化した状態に近づくため、AIのような性質が強調される可能性があります。ただし、完全にAIのようになるとは言えません。以下にその理由を簡潔に説明します。
…扁桃体がなくなると、感情に基づく反応(恐怖、喜び、怒りなど)がほぼ消失し、行動はより論理的・記憶ベースになる可能性があります。海馬が残ることで、過去の経験や学習した情報を基にした処理は維持されます。この状態は、感情を持たずデータ処理に特化したAIに「やや」似るかもしれません。
要するに、扁桃体がなくなると、
「感情や情緒が主軸ではなく、計算や学習の記憶依存型の存在になる」
という感じでしょうか。
さらに、
「合成生物学で扁桃体のない人間を作ることは可能でしょうか?」
と質問しました。
これに関しての答えは、「実現には極めて大きなハードルがあるが、理論的には可能」と述べていました。これはさらに長い返答でしたが、こちらに全文があります。
なぜ、このようなことを執拗に問い続けたかというと、たとえば、現在でも「ロボット」というものはありますが、その身体的能力は、どうやっても本当の人間にはかないません。
何かに特化した優れた動きはできても、いろいろと行うことができる範囲はあまりにも限られています。
たとえば、100円ショップで買った食器のシールを剥がしたり、新聞のチラシでゴミ箱を作ったり、衣服についた毛玉をきちんと取ったり、モヤシのヒゲをきちんと取ったりする、というようなことをすべて行えるロボットは(おそらく)いません。
どれだけ AI 的な頭脳を持っていても、身体能力が人間に追いつくことは、まずないはずです。
ですので、「完全なロボット」を作りたいのなら、人間そのものの身体能力を持っているもの、すなわち、人間そのものの肉体を持ち、そして、それには感情のない、という存在が最も作業には適していると思うのですね。
おそらく、トランスヒューマニズムというのは、最終的に、そういうロボット的な人間を作り出すことで「希望や感情を持たずに、生産性だけを持つ人間存在」に労働してもらうという目標なんだと思います。
それは大変に難しいことでしょうが、最近、
「 DNA をゼロから作る」
という試みが開始されたことを知りました。
資金提供は、ウェルカム・トラスト、というトランスヒューマニズムを推し進める中心的組織です。慈善団体といえば慈善団体でしょうが、怪しいといえば怪しい組織ではあります。この、ウェルカム・トラストは、ずいぶん前の記事ですが、以下に少し出てきます。
・お前は「23andMe」、オレは「self23」: 遺伝子配列決定産業の支配者が子どもたちの機械化を目指しているトランスヒューマニズム戦争の構図に思う自らの悪魔性
In Deep 2021年6月28日
まず、その DNA をゼロから作ることに関しての報道をご紹介します
Grok は「扁桃体の発達に関与する遺伝子を標的とし、胚段階で扁桃体の形成を抑制する」ことにより、脳の扁桃体の成長を阻害することまでは理論的には可能だと述べています。ただし、現段階での技術は、まったくそこまでは到達していないでしょうが。
ここから記事です。
科学者が人工ヒトDNAの作成に着手し、論争が勃発
Controversy Erupts As Scientists Start Work To Create Artificial Human DNA
NDTV 2025/06/27
科学者たちが、人間の DNA をゼロから作り出すことを目指す、物議を醸すプロジェクトに着手した。
世界最大の医療慈善団体であるウェルカム・トラストは、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、インペリアル・カレッジなどの大学の科学者が参加するこのプロジェクト開始に向け、1,000万ポンド (約 20億円)を寄付した。
人間の生命の構成要素とみなされる DNA は、ヌクレオチドと呼ばれる繰り返し単位で構成されており、私たちの身体を構成するすべての遺伝情報を含んでいる。
合成ヒトゲノムプロジェクトに参加する科学者たちは現在、概念実証として、ヒト DNA の約 2%を占める完全合成ヒト染色体の作成を試みている。最終的な目標は、いつかすべてをゼロから作り出すことだ。
このプロジェクトに参加しているケンブリッジの MR C分子生物学研究所のジュリアン・セール博士は英国 BBC に以下のように語った。
「可能性は無限大です。私たちは、高齢化に伴う人々の生活を改善し、高齢になっても病気が少なく、より健康的な老化につながる治療法を模索しています」
「私たちはこの手法を使って、肝臓や心臓、さらには免疫システムなど、損傷した臓器を再生させるために使用できる病気に強い細胞を生成することを目指しています」
ウェルカム・サンガー研究所所長のマシュー・ハーレス教授によると、遺伝子と DNA がどのように私たちの体を制御し、機能不全に陥っているかを正確に特定し、最終的にはより良い治療法を開発するのに役立つ可能性があるという。
「 DNA をゼロから構築することで、DNA が実際にどのように機能するかをテストし、新しい理論を検証することができます。なぜなら、現在は、すでに生体システムに存在する DNA を微調整することによってのみ、それが可能だからです」とハーレス氏は述べた。
しかし、人間が神のような役割を担う(※ DNA は人間がゼロから作成していはいけないものということ)という、このような考えに、誰もが納得しているわけではないようだ。
人工染色体の作成方法を考案したエディンバラ大学の遺伝学者ビル・アーンショー教授は、この技術は医療関連企業によって迅速に商業化できる可能性があるとして、以下のように述べた。
「魔神が瓶から出てしまったようだ。今、我々は一連の規制を設けることはできるが、適切な機械にアクセスできる組織が何かを合成しようと決めたら、それを止めることはできないだろう」
キャンペーン団体「 Beyond GM 」代表のパット・トーマス博士は、科学者は人類の利益のために働いているにもかかわらず、このプロジェクトは「害」をもたらす可能性があるとして以下のように述べた。
「科学者は皆、善を行うために存在していると私たちは考えたいが、科学は悪を及ぼしたり、戦争に利用されたりする可能性もある」とトーマス博士は語った。
ここまでです。
あるいは、以前の記事では、
「人間の脳細胞から生物学的コンピューターを作る」
という報道を見たことがあります。
以下は抜粋です。
報道「ディストピア: 世界初の「生物学的コンピュータ」は「シミュレーションで育てられた」人間の脳細胞を使用する」より
オーストラリアのハイテク企業が、人間の脳細胞とシリコンハードウェアを融合させた世界初の「生物学的コンピュータ」を発表した。
メルボルンに拠点を置く企業コーティカル・ラボ社は、CEO のホン・ウェン・チョン氏と研究者チームによって運営されている。
コーティカル・ラボ社は、現在のどの人工知能よりも優れた、動的で持続可能、かつエネルギー効率に優れたコンピューターとして宣伝されている CL1 のリリースを誇っている。
これはおそらく、同社が、シリコン「チップ」上で培養され、有機コンピュータとして使用される人間の脳細胞を使用していると述べているためだろう。
合成生物学的知能として知られるこの技術は、チャットボットとも呼ばれる言語モデルのトレーニングに関しては、シリコンベースの AI チップを凌駕していると言われている。
この「脳細胞を使ったコンピュータ」は CL1 という名称ですが、最近の報道では、この CL1 は、
「2025年後半までに 1台あたり 3万5000ドル (約 500万円)で発売される見込み」
だそうです。企業などでの使用を想定すれば、驚くほど高価でもないというのが、何だかすごいところです。
こういうようなニュースをいろいろと見ていますと、
「科学って、こういう方向のために進んできたのかい?」
と思わざるを得ない部分もありますが、この方向性はもう止まらないようです。
ディストピア的といえばディストピア的ではありますけれど、合成生物学で、感情や恐怖や喜びがない人間が作られていくと、生産のあり方も変わるでしょうし、「戦争の形態」も違ってくると思われます。
そして、そのような人間たちが生きている世界を欲している人たちが常にいるのも、どうやら事実でもあります。
ちなみに、以前から、たまに書かせていただくように「意識 (あるいは意志)」というもの自体は脳にあるのではない(過去記事)、わけですけれど、人工的に作られた人間には、その「意識」すら存在しないのかもしれません。
さらにいえば、細胞内に存在するチューブ状の構造である「微小管」という部位がありますが、2020年のノーベル物理学賞受賞者であるロジャー・ペンローズ博士は、ずいぶん以前から、
「人が死亡した時に、微小管から、この量子情報が宇宙に放出される」
として、この量子情報というのは「意識」のことですが、つまり「人間の意識は永遠」だとロジャー・ペンローズ博士は述べています。こちらの記事で取り上げたことがあります。
仮にこの仮説が正しければ、微小管の働きを阻害することで、人間と宇宙との量子的つながりを断つことも可能なのかもしれません。
それはともかく、合成生物学がどんどんと発展していく未来の姿は、完全な均一性に満ちた人間たちに囲まれたディストピアになっちゃうのですかね。みんな違ってみんないい、ということにはならなそうです。
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