意外と知らない「未成年者との性交渉」ルール
【弁護士が解説】
最近、YouTuberや芸能人が「未成年者と性交渉をした」というニュースが流れ、炎上や活動自粛を余儀なくされているケースをよく見ます。
マイナスイメージがつきまとうのは事実ですが、具体的な取り締まり内容について理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、この「未成年者との性交渉」に関連する法律や逮捕の可能性について、詳しく説明していきたいと思います。
真剣交際であれば問題はない
18歳未満の男女との性交渉を取り締まる法律はいくつか存在します。これらを明確に区別するのは困難なのですが、大まかな分別は次の通りです。
○青少年保護育成条例違反(みだらな性交渉やわいせつな行為)
2年以下の懲役または100万円以下の罰金
※いわゆる淫行条例。各都道府県により異なる場合があります。○児童買春禁止法違反(対価の提供を前提とした性交渉など)
5年以下の懲役または300万円の罰金○児童福祉法違反(立場や関係性などの影響力を利用した性交渉)
10年以下の懲役または300万円の罰金(その両方)
よく「淫行」や「みだらな性行為」という言葉が使われますが、これをわかりやすく説明すると、“18歳未満の男女の心身の未成熟さを利用して、①青少年を誘惑したり騙したり脅したりして性交渉またはそれに類似する行為をすること、または②自分の性的欲望を満足させる目的のためだけに青少年と性交渉またはそれに類似する行為をすること”だと思ってください。
つまり、18歳未満との性交渉であっても、自由恋愛・真剣交際を前提としていれば問題ないのですが、そうでない場合の性交渉は刑罰の対象となってしまいます。
実際に逮捕される可能性は
では、18歳未満の男女と「淫行」「みだらな性行為」をしたとして、実際に警察に逮捕されて裁判に発展する可能性はどのくらいあるのでしょうか。
これに関しては、本当にケースバイケースなので確定的なことはいえません。
というのも、先ほど説明したように「真剣交際を前提とした性交渉」であれば犯罪行為ではありませんので、罪を免れたい容疑者としては「真剣交際のつもりだった」と弁解するのがほとんどです。
この場合、警察は慎重に捜査を進めて証拠を収集しなければいけません。
真剣交際の意思があったのかどうかは容疑者の内心ですので、第三者が断定するのは困難です。
その場合、警察としては、お互いの年齢差の大小、これまでのLINEのやり取り、相手(被害者)の証言、金銭授受の有無、容疑者の前科の有無など、さまざまな事情を総合的に判断して「淫行」と認定していくことになります。
逆に証拠が十分でない場合は、被害届だけで容疑者を逮捕することができないのです。
ですので、たとえばネットニュースなどで「有名YouTuberが未成年者と性行為…!」という記事が出てしまい、炎上しマイナスイメージがついてしまったとしても、淫行条例違反で逮捕できるだけの証拠が揃いそうにないと警察が判断した場合、逮捕については消極的になってしまうと思います。
また仮に、証拠が揃っていて逮捕されたとしても、犯行態様が軽いものであったり、相手が処罰を望んでいなかったり、示談が成立した場合には、裁判することなく釈放、という可能性も十分あります。
いずれにしても私たちは、ネットニュースの見出しを鵜呑みにして過剰に反応することなく、事実を冷静に見極めていく必要があるのかなと思います。
弁護士 北川貴啓
慶應義塾大学法学部卒、明治大学法科大学院卒、神奈川県弁護士会(川崎支部)所属
■メディア実績
日本テレビ「実は私こういう者でして…」、フジテレビ「バイキング」、テレビ朝日「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」、TBS「ゴゴスマ」ほか多数