政治家とキャリアデザイン#2 パラレルキャリアで政治に挑む、山口順平さんに聞く 茅ヶ崎市議会議員×正社員の“兼業”という新しい働き方. - 株式会社PublicBeyond 読み込まれました
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政治家とキャリアデザイン#2 パラレルキャリアで政治に挑む、山口順平さんに聞く 茅ヶ崎市議会議員×正社員の“兼業”という新しい働き方

なぜ正社員として働きながら市議会議員に?

遠藤結万(以下、遠藤):本日は、政治×パラレルキャリアというテーマで、茅ヶ崎市議会議員の山口順平さんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いします!

山口順平(以下、山口):よろしくお願いします。改めまして山口順平と申します。
私は2023年4月に行われた統一地方選挙で、初出馬・初当選という形で茅ヶ崎市議会議員になりました。また、2002年に新卒入社して以来人材サービスの会社で働いており、2025年4月で23年になるところです。現在は議員活動と会社員(正社員)としての仕事を兼業しています。

遠藤:政治家と正社員という「兼業」は全国的に見ても珍しいですよね。
どういった経緯で兼業議員になられたのか、お聞かせいただけますか?

山口:私自身、「政治家になりたい」と元々強く志していたわけではなく、議員になる前から市議会傍聴にもほとんど行ったことはありませんでした。ただ、振り返ると大きく3つのきっかけがあったと思っています。
1つ目は、新卒から勤務している人材サービスの仕事で就労支援をしていた経験です。リーマンショックや震災の影響で、大学を卒業しても就職が決まらない方が多く、民間として雇用を生み出すための支援に関わったことで、社会問題に向き合い関心を持つ機会を得ました。
2つ目は、キャリアについてふと考えたときに「会社だけでいいのかな?」と思ったんです。その時に、新たに自分の中に学びを入れようと思い、一新塾という社会起業や政治活動を学べる私塾に通いました。ちょうど勤務地も近く、通いやすかったという偶然もあります。
3つ目は、茅ヶ崎で市長選があったときに「こども選挙」という地域活動に関わったことです。こうした経験を通じて地域に興味を持つようになり、最終的に「議員として地域の課題解決に関わる」という道に進むきっかけになりました。

茅ヶ崎市議会議員の仕事とは

遠藤:地域に興味を持ったことが入り口だったんですね。では、実際に市議会議員としては、どのような活動をされているのでしょうか?

山口:一般的な地方議員の活動は、年4回(3月・6月・9月・12月)の定例議会に出席することが基本です。茅ヶ崎の場合は、1か月のうち20営業日ほどあるとすれば、そのうちの15日くらいは市役所に行って何らかの議会関連の委員会や打合せがあります。
私が所属している委員会は「都市経済常任委員会」なので、担当分野の議案審査を行ったり、市役所側から上がってくる予算や方針に対し、委員会で話し合ったりします。
もう一つは「一般質問」。こちらは議員が自分の関心や市民からの声をもとに、市役所の取り組み状況を問う場です。こういった審議や質問をきちんと行うためには、市民の皆さんからお話をうかがったり、現場を見たりする日々の活動も必要になります。

遠藤:なるほど。議会の期間以外にも、地域での活動は継続されているんですよね?

山口:はい。私自身、茅ヶ崎に来てまだ10〜11年ほどの“新参者”ですが、引っ越してからはずっと地域活動に関わってきました。議員になった今もそれは変わりません。

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正社員との兼業はどう成り立っている?

遠藤:もう一つのお仕事である人材サービスの会社勤務ですが、議会とはどのように両立しているのでしょう?フルタイム勤務で、議会のあるときだけ休むイメージですか?

山口:基本的には正社員でフルタイム勤務ですが、定例会などで公務があるときは、その時間を優先して休暇扱いにしています。議会は朝10時から午後3〜4時くらいで終わる日も多いので、午後から会社の仕事をする日もあります。

遠藤:会社のお仕事と議員のお仕事を1日の中でパラレルにこなしている感じですね。時間的には大変ではないですか?

山口:確かに時間は増えますけど、会社がリモートワークを認めてくれていることや、私自身の働き方の工夫もあって、今のところ無理なくやれています。1日の中で「この時間は議会、この時間は会社」というふうに切り替えながら進めています。

民間の感覚を忘れない政治家であること

遠藤:議員として専業で活動していると、どうしても“政治の世界”に偏りがちなのでは?という声も聞きます。一方で、山口さんのように兼業で民間企業に身を置き続けることのメリットは何でしょうか?

山口:私自身、良くも悪くも自分を「政治素人」だと思っていますが、兼業で会社員を続けることで常に一般市民の生活感覚を持ち続けられるのは、大きなメリットだと感じます。議会の中にいると、やはり「議員の常識」が生まれてしまう面はあると思うんですよね。そのときに民間の視点を忘れずにいられる。そこは自分の強みとして大事にしています。

遠藤:民間の仕事で得た知見やネットワークなど、会社側へのメリットを感じることはありますか?

山口:まだ議員になって2年ほどで、会社へどれだけ還元できているかはわからない部分もありますが、一番大きいのは人脈が広がったことですね。政治家としていろいろな場に呼ばれたり、地域の社長さんとお会いできたり。そうして得たつながりを会社の方に紹介できたりと、少しずつプラスになってきていると思います。

兼業の制度づくり 会社への相談と社内第1号エピソード

遠藤:実際、会社としては「兼業で議員をやる」という前例がないケースも多いと思います。山口さんは社内第一号だったと伺いました。当時を振り返って、具体的にどんなやりとりがあったのでしょうか?

山口:まず最初に市役所で「正社員で市議会議員をやることはできるか?」と確認したら、「制度的には問題ない。けれど、大体は会社側がNGを出すことが多い」という話だったんです。なので、次に会社へ相談しました。
当然、最初は「えっ、急にどうした?」みたいな感じでしたけど、ありがたいことに役員や人事の方が協力的で、「とりあえず選挙に出るのはOK」「当選したら改めて考えよう」という形で進めてくれました。実際に当選してから、「会社を辞めるつもりはないし、議員もやりたい。両方できるような人事制度を作ってもらえないか」とお願いしたところ、本気で検討してくれたんです。

遠藤:どんな制度ができたのですか?

山口:「公職休暇」を使えるようになりました。本来、裁判員に選ばれたときなどに使う制度ですが、それを拡大解釈して「公務のためなら休暇をとれる」という仕組みにしてもらったんです。年間10日間は有給扱いで、それを過ぎると無給になるけれど在籍はOKというものですね。おかげで私は今も正社員として勤務しながら議員活動を続けられています。

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「政治はブラックボックス」なイメージを変えたい

遠藤:立候補のハードルや議員としての働き方って、まだまだブラックボックスな部分が多いですよね。若い人たちからも「議員になりたいけど兼業は無理なのでは?」といった誤解を聞くことがあります。そういう方々へのメッセージはありますか?

山口:実際私も最近、知らない方から「兼業はどうやって成り立たせているのか?」といった相談をよく受けます。まずは、自分の自治体の選挙管理委員会などに確認してみることが大切です。市議会であれば基本的に兼業は認められるケースが多いはず。次に、自分が所属する会社に制度があるか、なければ相談して作れるか。
ただ、いきなり議員を目指すのではなく、最初は地域活動や学びの場に参加するのもいいと思います。そこから「やっぱり議員としてチャレンジしたい」という段階に進んでいけば、イメージもしやすいですよね。

遠藤:政治を目指すとなると「白装束で、もう後戻りできない!」というイメージもありますが、そんなにかしこまらずに地域を良くする一つの手段として考えていいんですよね。

山口:そう思います。私はむしろ「必勝!」みたいなノリは苦手で、誰かを負かして自分が勝つ、ではなくて共感を得るためのチャレンジ、という感覚でした。落選したら別の手段を探せばいい。政治や議員がすべてではありませんし、同じ志を持った仲間が増えていったらそれが一番うれしいですね。

今後のキャリア:政治も民間も、“広げて深める”

遠藤:議員としてのキャリアと、民間企業のキャリアが両方あると将来の可能性も広がりますね。今後のビジョンはどんなイメージをお持ちでしょうか?

山口:「ずっと議員でいたい」かは、実はまだ決めていないんです。人によっては「2期、3期と続けるのが当たり前」と思われるかもしれませんが、私は、続けることで惰性になってしまうのはよくないとも感じます。仲間が増えて「今度はあの人に任せよう」と思えれば、私は他の仕事に戻ったり、新しい事業を始めるかもしれない。
ある人に、「40歳になったら出世(世に出る)しなさい」と言われたことがあります。その「世に出る」というのは、会社の中で肩書を上げることではなくて、社会に対して自分の力を発揮していくこと。その感覚を大切にしているので、常に「どこでどう役に立てるか?」を考え続けたいですね。

迷っている方へのアドバイス

遠藤:最後に、政治に興味がある若い方や、政治家だけど民間企業で働いてみたい方など、キャリアに迷っている方々へ一言アドバイスをいただけますか?

山口:まず、興味があるテーマを小さく始めてみるのがおすすめです。地域活動にいきなり飛び込むのが難しければ、好きな本を読んだり、PeatixやFacebookでイベントを探して参加してみる。それだけでも「自分が何に心が動くのか」が見えてきます。
それで少しずつやっていくと、「これ、自分の地域でやってみたいな」とか「こういう仲間をつくりたい」と具体的になってくるはずです。議員になる道を選ぶか、社会起業をするかなど、そこからどういう選択をするかは人それぞれですが、自分の“ライフワーク”と“ライスワーク”において複数の選択肢を持っておくことで、より柔軟に社会に関わることができると思います。

遠藤:すごく参考になりますね。

山口:この“兼業議員”という働き方が増えることで、政治の世界や日本の働き方が変わっていく可能性を感じています。もっとたくさんの方が「みんなで選挙に出ようぜ」くらいの軽やかさでチャレンジできるようになればいいなと思います。今日お話ししたことが、少しでもそのきっかけになればうれしいです。

遠藤:山口さん、本日はありがとうございました!

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おわりに

社会問題を解決したい、でも「政治の世界はちょっとハードルが高そう」と感じている方にとって、山口さんの話は多くのヒントが詰まっていたのではないでしょうか。政治家としての専業だけが道ではなく、「兼業」「パラレルキャリア」という選択肢がある。そして、そのあり方は会社との話し合いや、制度づくりの工夫次第で実現できる可能性があるとわかりました。
政治に限らず、地域活動や学び直しを通じて自分が「何に心が動くのか」を知り、少しずつ挑戦を広げていく。そんな一歩から、自分自身の新しいキャリアと、社会をよりよくする力が生まれてくるのだと感じます。
茅ヶ崎からはじまるパラレルキャリアの一例として、今後の山口さんの活躍にも注目です。

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