群発660回、巨大地震前兆「トカラの法則」の風説が広がる 専門家は「科学的根拠なし」

トカラ列島の悪石島 =2009年3月、鹿児島県十島村(本社機から)
トカラ列島の悪石島 =2009年3月、鹿児島県十島村(本社機から)

鹿児島県・トカラ列島近海で、地震が断続的に発生し続けていることを受け、交流サイト(SNS)上では、トカラ列島で地震が続くと、日本の別の場所で大地震が起きるいわゆる「トカラの法則」という言葉が拡散している。30日にも震度5弱を観測するなど、不安が高まるが、海洋火山学の専門家は「科学的根拠はまったくない」と指摘する。

福岡管区気象台の発表によると、30日午後4時までにトカラ列島近海で震度1以上を観測した地震は、21日から660回を超えた。同県十島村の悪石島(あくせきじま)でも30日に震度5弱の地震があり、震度4以下も相次いでいる。

「トカラの法則」については、平成28年の熊本地震や昨年元日の能登半島地震の前にもトカラ列島で群発地震が観測されたこともあって、今回も関連性がささやかれた。おりしも女性漫画家が「7月5日に大災害が起きる」と〝予言〟(後に「何かが起きる日というわけではない」と軌道修正)しており、これと相まってSNS上では「信憑性増してきたな」「ほんとになにかが起きるよ」とあおるような投稿も散見される。

これに対し、熊本大院先端科学研究部の横瀬久芳准教授(海洋火山学)はトカラの法則について、「科学的根拠がない」と指摘する。

国内では、平成7年の阪神大震災、23年の東日本大震災など多くの災害を受け、地震の観測体制が強化されてきた歴史がある。

横瀬氏は「精度がよくなると、これまでこぼれていたものも拾い集めることができる」とトカラの群発地震の感知は観測体制の強化の恩恵だと話す。

また、トカラ近海で頻発する地震の規模を表すマグニチュードは比較的小さく、南海トラフ巨大地震などを誘発する可能性は考えにくいと指摘する。そのうえで、「エンターテインメントとして楽しむだけなら構わないが、サイエンスとしてやるのならデータを提示しないと意味がない」と厳しく批判する。

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