―眞子さまのご婚約内定、こころよりお祝い申し上げます―
久しぶりに手放しで喜ばれる話題ですね。眞子さま、可愛さ引き立つアヒル口なんですね。
ところでお父様の秋篠宮殿下について、直接お目にかかったことはないけど、こんな想い出があります。
1990年、赤坂御用地が見える、渋谷のある雑居ビルの最上階近くに新しいバーがオープンした。タイで通訳やアテンドなどでお世話になったある女性がタイ留学から帰国し、その時のお礼を兼ねて食事に誘った後、このバーのドアを開けた。開店して10日ほどしかたっておらず、まだ常客はほとんどついていない状況で、ゆっくりと酒を愉しむことができた。
カウンターに席をとりタイやラオスのことを話しているうちに、杯が重ねられていった。ワタシが興に乗り「メコンなんか、あったら飲みたいね」と言うと「そうね、でもあるわけないわよね」と彼女。
バブルの頃だが、当時タイのメコンウィスキーは日本で販売する正規ルートがなく、並行輸入かタイを訪れた人に買ってきてもらうしか入手方法はなかった。ところで日本では便宜上「メコンウィスキー」と称しているが、焼酎の部類に近い酒で、現在タイ王国からの輸出品目としては「ラム酒」扱いとなっている。
ワタシはバーテンダーに冗談半分で訊いてみた、「タイのメコン、ありますか?」。するとバーテンダーは「ございますよ」とのこと。2人目を合わし、「え、本当?」。「じゃあワタシはオンザロックにチェイサーを、彼女にはハイボールにして」というと、あまたあるボトルの並びの左隅からメコンを取り出し、飲み方の異なる二杯のメコンが二人の前に置かれた。少し薄い色目の琥珀の液体、そして独特なこの香り。まさしくメコンだ。
バーテンダーは言う。「実は、これは秋篠宮様のお酒でございます。当店は企画の段階から室内レイアウトやサインボードなど殿下にアドバイスを頂いてまして。時々お忍びでいらっしゃるのですよ。そしてメコンをご自分でお持たせになられお飲みになられてます。もしメコンを望まれる方がいらっしゃったら、どうぞお出ししてください」とおっしゃっていただいてまして。で、このお酒を飲まれたのはお二人がはじめてです」。
ワタシがある団体のメンバーの一員としてタイを訪問中、日曜日をはさんだので彼女に声をかけ、二人でちょっと個別行動をとった時のこと、とりわけキックボクシング場でいくつかの試合にbet―お金を賭けたことなどを思い出し、話に花が咲いておかわりを続けた。
ふと、バーテンダーから「これが最後でございます」という声がかかった。どうやら二人で8分目ほど飲んだらしい。もちろん2分目は殿下が予めお飲みになられていた分。申し訳ない気持ちで一杯になり、一気に酔いが醒める思いがしたが、飲んでしまったものは仕方がない。
その後彼女はカクテルに戻り、ワタシはIWハーパー12年をストレートで飲み、支払い金額に楽しかった分をプラスしてバーテンダーに渡し、店を後にした。
……一週間後、二人は再びその店を訪ねた。件(くだん)のバーテンにそれとなく訊いてみた、「秋篠宮殿下はメコンがなくなったことをどのようにおっしゃられてましたか?」。バーテンダーいわく、(メコンが空になっていることを知って)「わたくしのお酒を飲まれたのはどういう方でしたか?」「タイがお好きな二人連れさんでしたよ。タイのお話で花が咲いてました」とバーテンダーが答えたところ、殿下は「楽しまれたのですね。それはよかった。ではまたご用意しておいてください。二本ですよ」と、タイが好きな二人連れの分まで気をまわしておられた様子。そしてこの夜ご自身は違うお酒を飲まれていたとのこと。
もちろん後日訪ねた私たちが飲む分のメコンは、すでに用意されていた。
頃は殿下がまだご成婚される前のバブル時代のこと。この件の前までは、物ごころついたころから皇室はどうにも好きにはなれなかったワタシだったが、秋篠宮殿下を間近に感じられ、一気に殿下のファンになった。
※現在もうこの店はなく、「メコンウィスキー」も流通量が極端に減少してしまっている。
なお写真はすべてお借りしています。
また皇室の方々のご真影を乗せるのはいかがなものかと思い、貼付しておりません。