東京・歌舞伎町を拠点に若者の支援などを行う公益社団法人「日本駆け込み寺」の元事務局長の男がコカイン所持の疑いで逮捕された事件を巡り、同法人の清水葵代表理事が2日、産経新聞の取材に応じ、行政や民間団体から受けていた年間計約4400万円の補助金や寄付が相次いで打ち切られ、運営が「あと1カ月ほどしかもたない」との窮状を明らかにした。組織の閉鎖が現実味を帯びる中、補助金再開など運転資金調達に一縷(いちる)の望みをかけて再建を図っている。
駆け込み寺を巡っては元事務局長だった田中芳秀容疑者(44)が5月18日、コカイン所持の疑いで警視庁が新宿区内で現行犯逮捕。駆け込み寺や関連団体「青少年を守る父母の連絡協議会(青母連)」に対する行政や民間団体の補助金が打ち切られた。
同法人によると、打ち切られた主な補助金は年間計約4400万円。内訳は東京都の「若年被害者女性等支援事業」に関する補助金が約3100万円。民間団体や寄付決済ツールなどからが計約1300万円。このほか、新宿区の「子ども未来基金」に関する年約90万円も打ち切られたという。
補助金の使途は、性暴力などから女性をかくまうシェルターや区内に所在する事務所の家賃、中絶費や入院費、スタッフの人件費など。家賃はシェルターが月15万円、事務所は駆け込み寺と青母連の計3フロアーで月額計約75万円だった。清水代表は産経新聞の取材に、「運営資金がまもなく底をつく。このままではあと1カ月、6月末までしかもたない。存続の見通しは立たない」と打ち明けた。
清水代表と共同で代表理事を務めてきた玄秀盛氏は、全ての役職と運営から退く。青母連は6月8日に、悪質ホストクラブ被害者の父母らを集め、解散について理解を求める。駆け込み寺は清水代表と3、4人程度のごく少数で規模を大幅に縮小して活動を続けたいという。
「存続できるのならばまずは周辺のゴミ拾いなど清掃活動から始めていきたい」と清水代表。トー横の少年少女への支援や、大久保公園周辺などで売春する若年女性らへのアウトリーチ支援といった事業は継続できないという。
容疑者の薬物使用、気づかず
逮捕された田中容疑者について、清水代表はこれまで2年以上、同法人内で活動をともにしてきたとし、「薬物使用を思わせるそぶりなどは一切なかった。素振り、挙動不審、におい、など一切感じさせるものはなかった」と話す。
一方、田中容疑者は相談者として通っていた20代女性にコカイン吸引を勧めていたとされ、女性は田中容疑者と一緒に逮捕されている。
この相談者からの電話相談に当初、窓口となったのが田中容疑者だったという。ただ、それ以降は清水代表が担当していた。今年2月以降は連絡が途絶えていたことから登録を外していたといい、清水代表は「まさか(田中容疑者が)連絡を取り続けていたとは」と驚き、「言語道断だ」と憤っている。
「警察は入れない」の真意は
SNS上などでは、清水代表が過去にインタビューで語った「(組織内に)警察を絶対に入れない」という発言について、田中容疑者逮捕の話と結び付け、組織が薬物を隠蔽(いんぺい)しているのではないかといった憶測が拡散。組織に対する批判が相次いでいる。清水代表は「警察官をそのまま通しては、女性らが安心して相談に来られない。あの日は警察を中に入れず、女性に警察への同行を促した」と振り返り、警察に協力してこなかったという印象が広まるのは「とても残念だ」とした。
組織の今後については、「これまで20年以上にわたってこの場所で活動してきたことや、支援を必要としている人たちがいる事実は変わらない」として、活動に理解を求め、個人などからの寄付金などを募り、再建の道を探っていく方針だ。