第230話 宝くじ配信 その三

『──七袋目しゅーりょー。今回も当たりなし。意外と当たんないもんなんだねぇ……』


 パサリと画面端に外れクジが捨てられる。ちょくちょく整えてはいるものの、気付けば結構な量のクジの山ができていた。

 なお、現在のリザルトとしては、ほぼほぼ最低保証のまま。一回六等が当たって以降、てんで当たりは出てきていないという悲しい結果。現実とは非情である。


「なんというか、宝くじって思ってた以上にしょっぱいんですね……」

「そうだねー。正直、六等とかはもっと当たると思ってた」


 七十枚、つまり金額にして二万と千円。それでマトモな当たりか六等のみとは……。ハッキリ言って予想外である。

 いや、リターンが上回るようにできてはいないのは理解しているのだが。購入金額と払い出し金が毎度毎度釣り合う、またはちょい下ぐらいで収まっていたら、普通に商売として破綻してしまっているってのは重々承知だ。

 だが、それにしたってなぁ……。さすがにこりゃ夢がなさすぎる。七十枚買ってちゃんとした当たりが一枚って。しかも六等。三千円。ようこんなん買う人間おるなってなる。


『うーん。これが普通なのか、私が下振れてるだけなのか……。そこんとこどうなのリスナー?』


︰こんなもん

︰ぶっちゃけこれが普通

︰六等でも全然出ない

︰こんなもんなのか……

︰まあ、ぼちぼち?

︰まだまだいっぱいあるからなんとも……

︰二万買っても最低保証だけとか全然あるし

︰まあ普通よね

︰宝くじ買ったことないから分からぬ

︰で、デカイのが一枚当たればそれで勝ちだから……

︰そうポンポン出ないのよ

︰知らぬ

︰はえー

︰こうしてみると、やっぱり宝くじとか買うもんじゃねぇなぁ

︰こんなんです


 有識者たちも『こんなもん』って言ってる。本当に夢がねぇのな宝くじ。

 というか、こんな虚無虚無しい配信になるとは思わなかった。もうちょい一喜一憂というか、山あり谷ありな内容になるかなって思ってたんだけど……。

 いや、最初の方はもっとテンション高かったんだけどね。二袋目に六等も出たし。ただそこから怒涛の当たりナシ、それも当選番号に掠りもしないようなスカばっか引いてたせいで……その、ね?

 全然当たらないし、ハズレの数に比例するように雷火さんの確認の手際も洗練されていったせいで、想像してた以上にしょっぱい空気になってるというか。


『いやはや。こうして実際に体験してみると、宝くじはもう買おうとは思えないかなー。この一回で満足かも? ……っと。八袋目しゅーりょー。やっぱり当たりなーし』


 またハズレクジの山が増える。そして三百円の当たりクジだけを別の袋に入れ、次の袋の封を切る。……随分とスムーズになったものである。


『まあでも、こういうのは一回ぐらい経験しても良いかもとは思えたかな? 似たようなやつだと……パチンコや競馬とか? ああいうのも人生で一回ぐらいやってみても良いかもね』


︰パチンコはええぞ

︰競馬はええぞ

︰分かる

︰ハマるのは駄目だけど、楽しむ分にはええと思う

︰特に競馬はいま盛り上がってる

︰ワイ未成年、同じくどっちも一回ぐらいは経験してみたいと思っとります

︰競馬はソシャゲの影響で凄いことになっとるからな……

︰是非ともやってほしい

︰パチンコはアガるで

︰ギャンブル沼に沈んでほしい

︰きょ、競艇はどうでしょうか……?

︰分かるマーン

︰新台について熱く語るはにゃびはアリです

︰その時はどうか枠をですね……。感想枠でも良いので


 パチンコに競馬ねぇ……。なんだろうね。今回の宝くじをきっかけにそう思ったのなら、純粋な娘さんにギャンブルを教えてしまったような気まずさがある。


「ちなみにだけど、山主君はいま言ってた二つやったことあるの?」

「ないです。天目先輩は?」

「パチンコはないかなぁ……。競馬は何度か」

「え、意外」

「友達の付き合いでねー。それにライバーの人でも、競馬は結構やってる人いるし。大きいレースの同時視聴とか、枠取ってやってたり」

「あー。いますね」


 パッと思いつく中での筆頭は、とある個人勢の烏天狗様なんですが。他にも絡みのある人で何人かは、そういうことやってたはず。

 やっぱりソシャゲの影響がデカイのだろう。競馬をテーマにしたやつ。あれすっごい人気だし。……俺はやってないけど。


「山主君なら……まあ、競馬はやっても楽しくないかもね。勝つ馬とか分かりそうだし」

「そっすねー。そのあたりはわりと普通に」

「やっぱり」

「まあ、競馬に手を出すとしたら、レースに賭ける側じゃなくてレースに出す側でしょうね」

「……馬主ってこと?」

「はい。それなら勝敗分かろうがあんま関係ないですし。勝負っていうのは、基本的に事前の積み重ねがモノをいうので」


 勝敗を予想するゲームをやってるのが観客。対して、馬主がやってるのは育成ゲー。そもそものジャンルが違うので、観客として競馬をやるよりは楽しめそうかなって。……いや、馬主のやってることとか知らんし。俺の個人的なイメージでしかないんだけどさ。


「山主君が選んだ馬かー。……なんかすっごい無双しそう」

「いや、さすがにそこまでは……。運動能力が高い馬とかは見抜けるでしょうけど」

「いや絶対凄いって。山主君の馬ってだけで、多分だけど一番人気とかなっちゃうよ」

「いやいやいや」


 そんな間抜けな事態はさすがにないと思うけど……。ああいうのって勝負師の世界だし。かなりシビアに判断してくると思うけどなー。

 あー、でもアレか。普通に良い血統の馬を買えばなくはないか。元から見どころがあれば、そこに俺のネームバリューも加わって一番人気とかもワンチャン?

 と言っても、金にものを言わせて強い馬を買うのもなー。血統が保証されている順当に強い馬を買うのではなく、ぼちぼちぐらいの候補の中から掘り出しもの……掘り出し馬? を探してみたくもあり。


「……いや違うな。なんかいつの間にか馬主になる路線でイメージしてた。なんないなんない」

「そんなうっかりみたいな反応する?」

「気の迷いでうっかり始められるぐらいには、いろいろ余ってますからねぇ。下手に具体的なイメージを浮かべたらアカンのですよ」


 基本的に、思い立ったら即行動の人種なんで……。思い立つようなことを深く考えたらイカンのですよ。


「いまはそれより、雷火さんの配信です。そっちに集中!」

「そうだねー。……と言っても、あんまり変わり映えはしない感じだけど」

『──あぁぁぁっ! ぜんっぜん当たんない!! まだ六等二枚だよ! もう十二袋目だよ!? こんな当たんないの!?』


 画面の向こうで雷火さんがキレている。てか、三万六千円分も剥いてマトモな当たりが二枚か。本当にしょっぱいな。


『もうボタンさぁ! 用意するなら、せめて当たり入りのやつを持ってきてよね! 始める前はああ言ったけど、ここまでしょっぱいとちょっと考え、る……もの……が……あれ?』


︰どした?

︰え

︰なんだなんだ?

︰急に動き止まったぞ

︰ねぇいま一瞬映った番号……

︰は? ガチ?

︰え、だよねだよね!?

︰分からん。はにゃびがすぐカメラから外しちゃったし

︰カメラに映してー!

︰なんかそれっぽくなかった!?

︰ワイの見えた範囲だと、下の四桁と組版は合ってたと思う

︰え、これガチできたやつ!?

︰は!? うせやろ!?

︰え、待って待って! みんないまの一瞬で何見えたの!?

︰はにゃびさんカメラ! 早くさっきのクジ戻して!


 え、待ってなんか流れ変わった。ちゃんと見てなかったんだけど、もしかして何かしら当たった感じ? それも高額当選的なアレ? ……マ?











ーーー

あとがき


なんとか復活しました。いやはや、お騒がせいたしました。

まさかコロナだったとは……。いや、なんか薬飲んでもよくならねぇなとは思ってたんですが。翌日、もっと強い薬をもらいに病院いって、念のため検査したらですよ。

いやー、マジでキツかったですわ。もう二度となりたくないぐらいには地獄。ずっと熱出てるし。喉はクソ痛いし、ずっと咳出るし、痰は止まらないし、喉枯れるし、悪寒も酷いしでね……。

本当になんもできなかった。小説とか書く余裕ない。ずっとト〇コ読んでた。……あ、ネクストの方はコンスタントに更新されてたけど、アレはたんに一ヶ月分予約投稿してるってだけなんで。念のため。

なんなら、ストックとか減りまくってヤババです。回復したら取り返さないと。

ちなみに、後遺症はかなりマシな感じです。咳と声枯れとちょっとの痰。……あとは、体力の低下かな? なんか結構寝ちゃうんで。ただ、これは『もしかしたら』ぐらいの感覚ですね。特に倦怠感とかもないですし。

そんで一番不安だった、味覚と嗅覚は大丈夫です。最初は異常も出てたんですけど、どんどん回復していってるんで。いまはほぼほぼ問題ないかなと。


まあ、活動には支障がない形で落ち着いてラッキーだったなっと。そんな感じでしょうか? ということで、また今後もよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る